関西地方などで仏事に使われることのある植物。
日本の山野にも自生し、良い香りの葉っぱと果実や枝葉に含まれる強い毒性が特徴的。
庭木として植えられることは比較的少ないが、刈り込むとよく芽吹くので生垣にしたり、美しい花を楽しんだりできる。
基本データ
- 分類
- 庭木-常緑
- 学名
- Illicium anisatum L.
- 科・属名
- マツブサ科シキミ属
- 別名
- シキビ、ハナノキ、ハナシバ
利用のされ方と毒性が大きな特徴
シキミとは
シキミはマツブサ科シキミ属の常緑樹です。
かつてはシキミ科として分けられていましたが、今はマツブサ科に含まれることが多いです。
シキミ属は世界におよそ40種類ほどが知られ、北アメリカとアジアに隔離分布しています。
日本でも神社の周りやモミ林などで見られることが多いです。
屋久島の森などでは、シカの影響によりシカが食べないシキミが増えてきているといわれています。
仏事に使われる木
シキミの木は古くから邪気を払うとされ、関西地方などでは仏事でよく用いられてきました。
使い方は様々ですが、葬儀会場の入り口や祭壇に飾るなどの使用方法が多いようです。
そのため、仏花として栽培されることもあります。
玉串としてよく似たサカキが用いられますが、そちらは神事に使われるのが一般的です。
仏事で使われることから縁起が悪いとされることもありますが、むしろ縁起木として庭木にされることもあります。
植物で唯一の「劇物」
シキミは葉っぱを揉むと甘いような良い香りがするのが特徴ですが、全体に強い毒を持っています。
特に果実は毒性が強く、「毒物及び劇物取締法」により植物としては唯一の劇物として指定されています。
近い仲間のトウシキミの果実は「八角」という名前で中華料理などに使われているので、そちらと間違えて食べないように注意が必要です。
とはいえ食べなければ特に害があるわけではないので、そこさえ気を付けていれば心配する必要はありません。
特性を活かして魅力的な木に
暗い場所でもよく育つ
シキミは半日陰程度の場所が好きで、多少日が当たらなくてもよく育ちます。
明るい場所を好む木を日陰に植えると徒長したり元気に育たなかったり、枯れてしまうこともありますが、シキミは多少日陰でも光沢のある美しい葉を保って元気に育つのが魅力です。
庭に木を植える際、レイアウトに困ったときなどに植えることができます。
生垣として使う
シキミは刈り込むとよく芽吹くので、生垣としても使うことができます。
光沢のある葉が密生してつくので見た目も悪くありません。
虫があまりつかないのも魅力的です。
仏花であることや縁起を気にして庭木に植えられるのは敬遠されることもあるシキミですが、特性を活かして植えると素敵な木になります。
花を楽しむ
花びらがたくさん重なったようなシキミの花は、よく見るととても美しいです。
仏花のイメージが強くてあまり注目されませんが、花木として楽しんでみても良いでしょう。
シキミは日本に近縁種が少なく、他には無い独特な姿をしています。
他の花に先駆けて早春から花が咲くのも魅力的です。
また、花がピンク色や赤色のもの、垂れ下がる花など色々な種類や品種があるので、好きな苗を買ってみると良いでしょう。
シキミの育て方と特徴の詳細情報
- 草丈・樹高
- 2~5m
- 栽培可能地域
- 東北南部以南
- 花色
- 薄黄色
- 開花期
- 3~4月
- 結実期
- 9月
- 耐暑性 / 耐寒性
- 耐暑性は強く、耐寒性はやや弱い
シキミの育て方と特徴の育て方・管理方法
- 植え付け・植え替え
- 植え替えや植え付けの作業は5月から6月上旬にかけての間に行います。
日当たりはやや半日陰を選び、水はけの良い肥沃な土に植え付けるようにしましょう。 - 肥料
- 冬に寒肥として有機質肥料などを与えます。
- 剪定
- 作業は芽吹き前の3~4月ごろか、花の終わった5~6月ごろに行います。
強剪定にもある程度は耐えますが、樹形が崩れる場合もあるので、どんな樹形にしたいかイメージしながら剪定するのがおすすめです。
自然樹形を活かす場合、グンバイムシなどの病害虫対策として、混んだ枝をすいて風通しを良くしつつ、伸びた枝を切り戻して大きさを調整するときれいにまとまります。 - 病害虫
- 病気や害虫の種数は比較的少ないですが、一部でやっかいなものもあります。
病害としては葉っぱに丸い斑紋ができる輪紋葉枯病が知られ、被害が大きいと落葉したり、下枝が枯れたりします。
なるべく早いうちに病気の出ている葉っぱを摘み取って焼却処分するなどして対処しましょう。
また、サカキやツバキなどに同じ病気が出ているとそこから感染する場合があるので注意が必要です。
害虫としては、枝葉の汁を吸うミカンヒモワタカイガラムシやシキミグンバイ、幹や枝を食べるクスアナアキゾウムシなどが発生します。
シキミグンバイはグンバイムシの仲間で、葉っぱ表面に小さな白い点々が出ていることで発生しているのがわかります。
ミカンヒモワタカイガラムシとシキミグンバイは、必要に応じて薬剤を散布する(ミカンヒモワタカイガラムシは5~6月ごろの幼虫発生期、シキミグンバイは葉裏を中心に散布)ことで対処が可能です。
クスアナアキゾウムシは対処が難しく、被害が増えると木が枯れる可能性もありますが、木の根元に卵を産むので、根元付近の雑草や落ち葉などを掃除しておくと被害が少なくなります。 - 日当たり
- 庭に地植えする場合、植え付けてしばらくは土が乾いたら水やりをします。
枝葉がよく伸び始めてからは基本的に気にする必要はありません。
ただ、やや湿った場所を好む木なので、夏場など土が乾燥して葉っぱが先から枯れてくるようなことがあれば水やりを行いましょう。 - 水やり
- 庭に地植えする場合、植え付けてしばらくは土が乾いたら水やりをします。
枝葉がよく伸び始めてからは基本的に気にする必要はありません。
ただ、やや湿った場所を好む木なので、夏場など土が乾燥して葉っぱが先から枯れてくるようなことがあれば水やりを行いましょう。
出典(引用元)
「樹木医必携」
村越匡芳監修
「庭に植えたい樹木図鑑」
山と渓谷社
「樹に咲く花 離弁花1」
愛知県稲沢市生まれ。稲沢市が「日本四大植木産地」であることもあり、幼少期から植木に囲まれて成長。
東京農業大学卒業後、名古屋市内の造園会社に就職。公園の整備工事から国交省事業の国道整備工事における土木及び街路樹等の植栽工事に現場代理人として携わる。