カシ(樫)

日本に自生するどんぐりの木のうち、常緑樹のいくつかを含む総称。
社寺林や屋敷林などを始め常緑広葉樹林に当たり前に生える木だが、庭木や高生垣として活用されることも多い。
材の丈夫さや木目の美しさから、木材としての利用もされる。

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氏永 勝之
監修者 smileグループCEO
株式会社ガーデンメーカー 代表取締役
愛知農園植木苗木株式会社 専務取締役
一般社団法人ガーデンビジネス協会 代表理事
氏永 勝之

愛知県稲沢市生まれ。稲沢市が「日本四大植木産地」であることもあり、幼少期から植木に囲まれて成長。
東京農業大学卒業後、名古屋市内の造園会社に就職。公園の整備工事から国交省事業の国道整備工事における土木及び街路樹等の植栽工事に現場代理人として携わる。

執筆者 瀬尾一樹

樹木医です。木も草も大好きで、将来は自分だけの森を持ちたいと思っています。木の美しさや育てる楽しさだけでなく、生きものとしての生態的な面白さも伝えていきたいです!好きな木はケヤキです。

基本データ

分類
庭木-常緑
学名
Quercus(Cyclobalanopsis) spp.
科・属名
ブナ科コナラ属

古くから日本に自生する常緑樹

カシとは

カシとは、ブナ科コナラ属に属す木のうち、一部の常緑樹を総称したものです。
「樫」と書いてカシという読み方をします。
たくさんの種類がありますが、「樫の木」と一括りに呼ばれることが多いです。
どんぐりをつくる木で、公園に生えている・植えられていることも多く、昔から多くの人々に親しまれてきました。
森林を構成する種類というだけでなく、冬でも葉っぱを落とさず、剪定にも耐えることから、大きな屋敷では古くから北側に樫の木を防風林として植えられてきました。
また、木へんに堅いと書いて樫と書きますが、その意味を示すように、材がとても堅くて丈夫なことも大きな特徴です。

加工がしにくいことや乾燥させづらいことなど欠点もありますが、古くから木材として利用されてきました。
また、樫の木は虎斑や樫目と呼ばれる、特有の木目が現れるのも大きな魅力です。
建築材だけでなく、木刀や木槌などの道具としても使われています。
花言葉は「勇気」「力」など。

日本は放っておくとカシの森に?

日本列島は雨が多い気候なので、人が手を加えず時間が経てばほとんどの場所が森になるといわれています。
その中でも、関東地方から西の標高の低い地域は、その多くがカシの森になると考えられています。
人間が長期間手を加えた結果、そうした景色は神社や屋敷の周りなどに残される程度になってしまいましたが、元々カシの仲間は非常に広大な森を形作る木だったはずです。

また、近年では人が森に手を加えることが少なくなったためか、そうした常緑樹林が増えてきています。

種類がたくさんある

カシと一括りにいっても、種類がたくさんあります。
カシとついているのに厳密にはカシの仲間ではないものなどもありますが、人里によく植えられるものなど代表的なものをいくつかご紹介します!

また、どんぐりの特徴についても紹介しますが、カシ類に共通する特徴として、帽子(殻斗)の部分がリング状になるというものがあります。
名前に「カシ」とついているのに帽子がリング状にならないものは、他のカシ類とはやや違うグループに含まれる(別属あるいは別亜属)ということです。

シラカシ

シラカシのドングリの写真
東日本に多いカシです。
最も耐寒性のあるカシともいわれ、南東北くらいまでなら街路樹として植えられているのもみかけます。
名前の由来は材の色が白っぽいところからきており、木材として利用されることも少なくありません。
どんぐりは他のカシ類に比べ若干小さいことが多く、帽子がどんぐりの半分くらいを覆うことが特徴です。

アラカシ

アラカシ

シラカシと同じような場所に生えていることが多いですが、やや暖かい場所を好むカシです。
シラカシのように植えられることもあり、人里でよくみられます。
シラカシに比べて葉の幅が広く、鋸歯が半分から先にしか出ず、葉裏に毛が生えることなどが特徴ですが、まれに葉っぱが極端に細いものなど変異が出ることがあり、識別に迷うことも。
どんぐりはやや横幅が広いものが多く、縦じま模様が入ることが多いことや、首(先端の尖った部分)が他のカシ類より若干小さいことなどが特徴です。

ウラジロガシ

名前の通り、葉っぱの裏が真っ白なことが特徴です。
他のカシ類でも葉っぱの裏が白っぽくなるものがいくつかありますが、ウラジロガシは粉を吹いたような真っ白さで見分けることができます。
アカガシと並んで暖温帯上部のやや標高の高い場所に生えていることが多いです。
どんぐりはこれといった特徴が少なく、幅の狭いものから球体に近い形のものまで様々ですが、帽子は浅く、どんぐりから外れてしまっていることもよくあります。
また、沖縄など南の方にはオキナワウラジロガシというよくにた葉っぱのものが自生しますが、そちらは日本で一番大きなどんぐりをつけることで有名です。

アカガシ

西日本に比較的多いカシです。
カシ類は似たものが多いですが、アカガシは葉っぱの鋸歯がほとんど出ないことや、葉裏の緑色が濃いこと、幹が太くなると樹皮の割れ目が目立ち、剥がれてくることなど、特徴の多い種類です。
ただ、西日本では同じカシ類のツクバネガシとしばしば雑種をつくり(オオツクバネガシ)、見分けに迷う個体も出てきます。
どんぐりはシラカシやツクバネガシとも似ていて単体での見分けは難しいこともありますが、帽子に細かい毛が密生するのが特徴です。

ウバメガシ

ウバメガシの木の写真
備長炭の原料となる種類の木です。
「カシ」と名前についていますが、シラカシやアラカシなどのカシ類がコナラ属アカガシ亜属に含まれるのに対し、ウバメガシはコナラ属コナラ亜属に含まれます。
他のカシ類とは近いけど若干違う仲間と考えて良いでしょう。
丸っこい小さな葉っぱが特徴で、葉っぱが分厚くて潮風に強いため、海沿いに植えられることが多いです。
どんぐりは、カシ類と違って帽子がリング状にならず、他のコナラ亜属の種と同様に鱗を重ねたような模様になるのが大きな特徴です。

シリブカガシ

ウバメガシと同じで他のカシ類とは若干違うグループに含まれる種類です。
こちらはコナラ属ですらなく、同じブナ科でもマテバシイ属というグループに含まれます。
どんぐりはコナラ亜属と同じように帽子がうろこ状で、へそ(帽子で隠れている部分)が少し凹んでいるのが大きな特徴です。
また、ろうを塗ったような独特の質感があります。

楽しみ方色々の木

高生垣にもシンボルツリーにも

カシ類の大きな利点は、背が高くなることと刈り込みに耐えることです。
種類によって性質が違うので扱いやすさに差はありますが、シラカシやアラカシなら高生垣として活用することができます。冬でも葉っぱが落ちないので、目隠しだけでなく防風林としての活用も可能です。

また、長い年月育てると非常に大きくなるので、シンボルツリーとして育てることもできます。
庭の広さや用途に応じて、ある程度形を変えて対応できるのがカシ類の良いところです。

どんぐりの違いを楽しむ

様々などんぐりの写真
カシ類は種類ごとにどんぐりの形が微妙に違うので、いろいろな種類を植えてそれを楽しむのも良いでしょう。
カシ類以外にもコナラやクヌギなども植えて、バリエーション豊かなどんぐりが手に入るようになれば、きっとお子様は大喜びです♪ 毎年の秋が楽しみな庭になること間違いありません!

ただ、自家受粉を防ぐために雄花と雌花の咲くタイミングがずれる場合があるので、可能であれば種類ごとに複数本植えるようにしましょう。

木材としての利用

木材の写真
カシ類は木材としても優秀なので、それを見越して育てることもできます。
コナラなどに比べると成長が遅いので、そう頻繁に丸太を取れるような感じでもありませんが、その分丈夫な材ができるので、それを楽しみに育ててみるのでも良いでしょう。
世代を越えて受け継ぐ形で、子どもや孫に受け継ぐ財産のようにしても素敵です。

カシ(樫)の詳細情報

草丈・樹高
10~20m(一部低い種類もある)
栽培可能地域
東北以南
花色
クリーム色
開花期
4~6月(種類によって若干の差がある)
結実期
9~11月(種類によって若干の差がある)
耐暑性 / 耐寒性
種類によって違いがあるが、耐寒性がやや弱く耐暑性が強いものが多い

カシ(樫)の育て方・管理方法

植え付け・植え替え
水はけのよい土に植え付けるのがおすすめです。
植え替えは少し難しいのでちゃんと根回し等するようにしましょう。
肥料
あまり必要ありませんが、気になるようであれば1~2月頃に寒肥として鶏糞などの有機質肥料を与えましょう。
剪定
剪定作業は3~4月の芽吹く前に行うのがおすすめです。
大きく育てる場合はあまり必要ないですが、防風林のように生垣として活用する場合、大きくなりすぎないよう剪定での管理を行います。
芽吹きやすいカシの仲間では、株立ちにして横枝を切った「棒ガシ仕立て」や、主幹をちょうどいい高さで切り、横枝も短く切り戻す「寸胴仕立て」などが用いられます。
刈り込んでもいいですが、自然樹形を保ちたい場合は、他の枝と違った方向に伸びている枝や密生した枝をすくように切るとともに、枝先を切り戻すようなイメージで剪定するときれいに仕上がります。
病害虫
病害虫には比較的強いです。

かかる病気はいくつかありますが、紫カビ病や円斑病など、葉っぱに異常が出る病気が目立ちます。
致命的なものではありませんが、多く発生すると美観を損ねます。
病気にかかった葉っぱを集めて焼却処分するようにしましょう。
 
また、幹が太くなってくると、近年問題になっているブナ科樹木萎凋病(通称ナラ枯れ)にかかる可能性があります。
カシノナガキクイムシという1㎝にも満たないような小さな昆虫が、幹に穿孔し、その虫が運ぶ菌が枝枯れや枯死を引き起こすというものです。
カシノナガキクイムシはフェロモンを出して、他の個体を呼び寄せる性質があるため、一度にたくさんの孔ができ、粉状の木くずがたくさん積もります。
ただ、カシ類が枯れる可能性はやや低い(コナラやミズナラなどが枯れやすい)ことや、直径20㎝を越えるような大きい木を好むということがあるので、少なくとも木が若いうちは、あまり気を張らずに知識として知っておくくらいで大丈夫でしょう。
 
害虫は、上述のカシノナガキクイムシ以外に大きな被害になるものは少ないですが、チョウやガの幼虫が葉っぱを食べたり、アブラムシの仲間がついたりします。
アブラムシは葉っぱが黒いカビに覆われるすす病を併発することがあるので、美観的に気になる場合は薬剤などで対処するとよいでしょう。
害虫という感じでもないですが、どんぐりはゾウムシの仲間などが食べていることが多いです。
日当たり
庭に地植えする場合、植え付け後しばらくは土の表面が乾いたら水をあげるようにします。
枝葉を旺盛に伸ばすようになってきたら、それ以降は特に気にする必要はありません。
水やり
庭に地植えする場合、植え付け後しばらくは土の表面が乾いたら水をあげるようにします。
枝葉を旺盛に伸ばすようになってきたら、それ以降は特に気にする必要はありません。

出典(引用元)

日本樹木医会
「樹木医必携」
矢口行雄監修
「樹木医が教える緑化樹木事典―病気・虫害・管理のコツがすぐわかる!」
山と渓谷社
「樹に咲く花 離弁花1」
成美堂出版
「増補改訂版 実用庭木・花木の手入れと剪定」
村越匡芳監修
「庭に植えたい樹木図鑑」

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