低地の内陸部を中心に生える常緑のどんぐりの木。
神社や屋敷林などによく生えていて、とても大きくなる。防風林や目隠しとして生垣にしたりどんぐりのなるシンボルツリーとして育てたり、いろいろな用途がある。
基本データ
- 分類
- 庭木-常緑
- 学名
- Quercus glauca Thunb.
- 科・属名
- ブナ科コナラ属
- 別名
- クロガシ
低地の気候に適応した身近などんぐりの木
アラカシとは
アラカシは、日本だと宮城県・石川県から西の本州と、四国、九州、沖縄に分布するブナ科の常緑広葉樹です。
里山に植えられるコナラと近い仲間で、コナラ属に属しています。
同じくブナ科コナラ属に属すシラカシととてもよく似ていますが、葉っぱの形がシラカシよりも幅広く、ギザギザ(鋸歯)が大きく粗く、多くの場合ギザギザが半分より先にしか出ないことで見分けられます。
葉っぱに変異が大きく、時々どちらかわからないものに出会うこともありますが、葉っぱの裏に張り付くように毛が生えているのを確認すれば見分けることが可能です(シラカシの葉っぱの裏には毛が生えません)。
丸っこいどんぐりをつける
ブナ科コナラ属に共通して、みんな大きくなるとどんぐりをつけます。
アラカシのどんぐりはその中でも丸っこく、かわいらしい形をしているのが特徴です。
どんぐりの形から種類を見分けるのはなかなか難しいですが、アラカシのどんぐりの帽子はリングを重ねたような形になっていて、先っちょは他のものよりシンプルな形をしていることで見分けられます。
常緑のどんぐりでは一番多い?
アラカシは、冬でも葉っぱが落ちない常緑のどんぐりの木の中では、最も個体数が多いのではないかといわれている木です。
元々関東平野に人間の手が一切入らなかったと仮定した場合、内陸部には一面アラカシやシラカシが広がっていたと考えられています。
実際、放置されるようになった関東平野の森ではアラカシやシラカシが大きく成長している様子をよく見かけます。
また、西日本を中心に植栽としてもよく植えられていて、東日本では比較的寒さに強いシラカシ、西日本ではアラカシがよく見られる印象です。日本の低地の気候によく適応した木のようです。
カブトムシが集まることも
コナラやシラカシなど、ブナ科のどんぐりの木に共通して、樹皮から樹液が出ることがあります。アラカシも例外ではなく、樹液が出てカブトムシなどの虫が集まってくることがあります。ただコナラやクヌギよりは少し出が悪いようで、それらに比べるとカブトムシの集まり具合は少ないです。
機能的で、なおかつかっこよさやかわいさも兼ね備えた木
防風林、目隠しなどの生垣に
アラカシは、並べて植えて生垣にするのがオススメです。
冬でも葉っぱが落ちない常緑樹なので、北側に並べて植えると北風を防いでくれます。
また、枝を切るとよく芽が出るアラカシの性質を生かして、横枝を払って棒のように仕立てる棒ガシ仕立てという方法もあります。
大きくなると10m以上になる木なのでうまく調整する必要はありますが、扱いやすい木です。
もちろん、大きくなってかっこいい木なのでシンボルツリーとして庭のど真ん中に植えてみるのもアリです。
どんぐりの木として活用
アラカシの木は、成熟して花を咲かせるようになると、毎年どんぐりをつけるようになります。
どんぐりの木には1年に1回実をつけるものと2年に1回実をつけるものがありますが、アラカシは1年に1回実をつけるタイプ。
アラカシの丸っこいどんぐりは子どもに大人気。
親子揃ってお気に入りの木となること間違いないですよ。
夏にはお子さんと昆虫採集も
アラカシの木はうまくいけば樹液が出てカブトムシやクワガタが来るようになります。
あえて強めに剪定して樹液が出やすくするのでも良いし、虫が来るのがイヤなら木が弱らないような慎重な管理をしましょう。
また、アラカシにはムラサキシジミやムラサキツバメといったとてもきれいなチョウが集まります。
本来木の高いところにいて普段はなかなか見かけないチョウなのですが、うまく仕立てることによって低い位置でもよく見られるようになります。
アラカシの育て方と特徴の詳細情報
- 草丈・樹高
- 15~20m
- 栽培可能地域
- 東北南部以南
- 花色
- 薄黄色
- 開花期
- 4~5月
- 結実期
- 10~11月
- 耐暑性 / 耐寒性
- 耐暑性は強く、耐寒性はやや弱い
アラカシの育て方と特徴の育て方・管理方法
- 植え付け・植え替え
- 乾燥しすぎない、水はけの良い肥沃な土に植えるようにしましょう。
植え付け・植え替えの時期は5~6月で、根っこをよく張った状態から植え替えする場合はきちんと根回しをする必要があります。 - 肥料
- あまり気を遣う必要はありませんが、気になるなら冬の寒い時期に寒肥として堆肥や鶏糞などの有機質肥料を与えるようにしましょう。
- 剪定
- 芽を出す力が強いので、剪定によく耐えます。
生垣にする際は、横枝を剪定して全体のシルエットが棒のようになる棒ガシ仕立てをすると良いでしょう。
ただし強剪定をするのであれば春先の木が芽吹く前、3~4月ごろに行うと木へのダメージが少ないです。
剪定に強いからと言ってあまり必要以上に剪定しすぎると弱ってくるので、葉っぱの色や芽吹きの量などよく見ておくようにしましょう。 - 病害虫
- 病害虫には比較的強いです。
害虫としては葉っぱを食べるガの幼虫や、汁を吸うアブラムシの仲間が発生することがありますが、よっぽど大発生しない限り木が弱ったり枯れたりすることはありません。
見た目として気になる場合は薬剤などで対処しましょう。
ただ、カシノナガキクイムシによる「ナラ枯れ」には注意が必要です。
ナラ枯れはつまようじよりも細いくらいの小さな虫が大量に幹に入り込んで、その虫が持ち込む菌によって木が枯れてしまう病気で、近年被害が多発しています。
枯れやすいのはコナラやミズナラなどの冬に葉っぱが落ちるどんぐりの木ですが、アラカシでも枯れることがあります。
幹の太いどんぐりの木に優先して入り込み、幹から大量の粉が出てくるのが特徴です。
よっぽどの大木が無ければあまり気にする必要はないですが、近くの公園で被害が多発しているようだったら、念のため警戒しておくようにしましょう。
もしナラ枯れによって木が枯れてしまった場合、冬のうちに木を伐採して中の虫ごと焼却処分してしまうのが被害を抑えるコツです。
病害としては、葉っぱに斑点や模様ができる紫カビ病や丸斑病などがあります。
木が弱ったり枯れたりするものではありませんが、見た目として気になるなら病気の出ている葉っぱを取って焼却処分することで対策できます。 - 日当たり
- 植え付け時から活着までを除けば特に気を遣う必要はありません。
乾燥にもよく耐えます。
ただ本来は少し湿ったくらいの場所が好きな木なので、地面が乾燥して葉っぱの先だけ枯れているよう状態を見かけたら、水をあげるようにしましょう。 - 水やり
- 植え付け時から活着までを除けば特に気を遣う必要はありません。
乾燥にもよく耐えます。
ただ本来は少し湿ったくらいの場所が好きな木なので、地面が乾燥して葉っぱの先だけ枯れているよう状態を見かけたら、水をあげるようにしましょう。
出典(引用元)
「樹木医必携」
山と渓谷社
「山渓ハンディ図鑑3 樹に咲く花 離弁花1」
村越匡芳監修
「庭に植えたい樹木図鑑」
愛知県稲沢市生まれ。稲沢市が「日本四大植木産地」であることもあり、幼少期から植木に囲まれて成長。
東京農業大学卒業後、名古屋市内の造園会社に就職。公園の整備工事から国交省事業の国道整備工事における土木及び街路樹等の植栽工事に現場代理人として携わる。