「王者の風格」の花言葉をもつボタンは春に咲く紫や白の大きな花が美しく、上品で趣の庭を演出したい方におすすめの庭木です。
ボタンの剪定の時期や方法、育て方や鉢植えでの植え替え方はもちろん、シャクヤクとの違いなど、魅力をたっぷりと紹介します!
基本データ
- 分類
- 庭木-落葉
- 学名
- Paeonia suffruticosa(英名:Peony tree)
- 科・属名
- ボタン科ボタン属
- 別名
- ハツカグサ(二十日草、廿日草)、フウキグサ(富貴草)、フウキバナ(富貴花)、ヒャッカオウ(百花王)、カオウ(花王)、カシン(花神)、テンコウコクショク(天香国色)、ナトリグサ(名取草)、フカミグサ(深見草)、ワスレグサ(忘れ草)、ヨロイグサ(鎧草)、花中の王百、花の王、ぼうたん、ぼうたんぐさ、ボタンピ(牡丹皮)、モウタン(牡丹)、ツリー・ピオニー(Tree peony)
- 草丈・樹高
- 0.5〜3m
- 栽培可能地域
- 全国
- 花色
- 赤、ピンク、オレンジ、黄、緑、紫、黒紫、茶、白、複色
- 開花期
- 4月下旬〜5月中旬
- 結実期
- 6〜9月
- 耐暑性 / 耐寒性
- 強い/強い
ボタンの花・実・葉の特徴と花言葉
地面からなめらかな曲線を描くように茶色の幹が伸び、枝先に幾重にも重なった紫やピンク薄い花びらをもった大輪の花を咲かせるボタン。
「花の王」の別名をもち、バラのように美しいふわりとした花を咲かせて上品で趣のある庭を演出します。
生長スピードがゆっくりで、寒さに強いので初心者でも育てやすく剪定(せんてい)もシンプルなので庭木におすすめです!
ボタンとは
ボタンは冬に葉が一斉に落ちる落葉性で、ボタン科ボタン属の低木です。
中国北西部を原産とする花木で、日本には奈良時代以降に薬用として渡来したといわれ根の樹皮部は生薬として使われます。
その後観賞用として改良され、原種は単弁花ですが八重咲き・千重咲き・万重咲きという花びらより多くなった品種が生まれました。
ボタンは肥料を多く与えることで毎年大輪の花を観賞できるようになるので、ケアは欠かせません。
ボタンは寒さにも耐性があり、防寒対策をしないで冬越しができるので北海道でも庭木として育てることができます。
ただし高温多湿な環境では株が枯れてしまうこともあるので、日当たりと風通しを良くして管理することがポイントです。
また基本的にボタンは、シャクヤクの台木を使った接木で増やされ販売されています。
挿し木では根が出にくく、増やすのが難しい植物といわれているからです。
増やす場合は、長く伸びた枝を地面に付けて土をかぶせると数年後には根が伸びていることもあるので取り木で増やしましょう。
ボタンの花と花言葉
4月下旬〜5月中旬ごろにかけて、ボタンは枝の先端に直径10〜25cm程度の花を咲かせます。
赤・ピンク・オレンジ・黄・緑・紫・黒紫・茶・白・複色など、品種によってさまざまな花の色があり姿のバリエーションが豊富です。
開花期間が長く20日間ほど観賞することもできるため、別名「ハツカグサ(二十日草、廿日草)」といわれることも。
また、品種によっては、12〜1月の寒い冬に咲くものもあります。
花が咲く庭木や草花が少なくて殺風景になりがちな冬の庭でも、寒い時期に花が咲くボタンを植えれば上品で明るく温かみのある庭をつくれますね!
ボタンの花言葉
ボタン全般の花言葉は、「王者の風格」「高貴」「富貴」「壮麗」「誠実」「恥じらい」です。
ピンクの花が咲くボタンには、「風格ある振る舞い」の花言葉が付けられています。
ボタンの実と葉の特徴
まずは牡丹の実と花の特徴を解説します。
ボタンの実
受粉をしたボタンは、6〜9月ごろにかけてしゅっと立ち上がるように伸びた枝の先端に存在感のある先のとがった卵型の実を付けます。
直径3cmの産毛の生えた実が集まって付き、9月ごろになると熟して縦に割れます。
実の中には直径5mm程度のタネが10〜20粒ほど入っていて、タネで増えることもあります。
ボタンの葉
細い茶色の幹から、横へしゅっと伸ばすように葉を広げるボタン。
葉軸から先が複数に裂けた小葉を3枚程度で出す羽状複葉(うじょうふくよう)です。
全体の直径は20〜50cmほどで、つやがあり濃緑色です。
ボタンの葉は2月ごろから芽吹き始め、秋には落葉します。
ボタンの生長スピード・樹高・苗木の価格
ボタンは生長スピードがとてもゆっくりで、園芸品種は大きくなっても樹高が1.5mほどにしかならないといわれています。
自生地に生える原種は樹高が3mほどになるものもありますが、庭で育てるボタンは大きくなりにくいです。
狭いスペースでも安心して育てられるので、いつまでも庭で楽しむこともできます。
価格は苗の大きさや品種によって違いますが、6号サイズの2〜3年生苗ほどで1,950円程度から販売されていることが多いようです。
ボタン(牡丹)とシャクヤク(芍薬)の違い
▲写真はシャクヤク
「立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿は百合(ゆり)の花」という女性の容姿や立ち振る舞いを花にたとえた言葉がありますが、ボタンとシャクヤクの花はとても良く似ています。
どちらも同じボタン属の木で、遠目に見ると花の形や色が似ていてしばしば混同されることが多い「ボタン(牡丹)」と「シャクヤク(芍薬)」。しかし実際には、下の表にまとめたように花の形状や開花時期、葉、実、枝の見た目が違います。
ボタン(牡丹) | シャクヤク(芍薬) | |
形態 | 低木 | 草花 |
開花時期 | 4月下旬〜5月中旬 | 5〜6月 |
花の散り方 | 花びらが1枚ずつ散る | 花が頭ごと落ちる |
香り | 香りがしない | バラのような甘い香り |
葉の形 | 切れ込みがある | 切れ込みがない |
葉の表面 | つやがある | つやがない |
ボタンの3つの魅力
たくさんの園芸品種が毎年誕生し、年々豪華な花が咲く品種がお店に出回るようになるボタンは自分の好みのものを選べる魅力があります。
ボタンの魅力1|狭い庭でも植えられるコンパクトな樹形
ほかの庭木と比べると、ボタンは生長スピードがとてもゆっくりで大きくなり過ぎることがあまりありません。
定期的な剪定をすることで樹高を低くするだけでなく、横幅も狭められるため、スリムでコンパクトな樹形をつくれます。
スペースが小さい庭でも植えられ、花壇で楽しむこともできます。
ボタンの魅力2|ほかの植物と寄せ植えして楽しめる
低木で背の高い草花のように存在感のある花を咲かせるボタン。
高木のシンボルツリーや庭木の下に植えたり、さらには背の高さの違う草花と寄せ植えしたりするととても上品で華やかな風景を演出することができます。
ボタンは秋に葉を落としてしまうので、1年中葉が付いた色味のある常緑樹や、秋・冬に花や実をつける庭木や草花を近くに植えておくのもおすすめです。
ボタンとの寄せ植えにおすすめの庭木や草花
- ボタンと相性の良い庭木:サザンカ、シャクナゲ、ナンテン、カルーナなど
- ボタンと相性の良い草花:フッキソウ、ツワブキ、ヤブラン、ハツユキカズラなど
ボタンの魅力3|寒さに強くて防寒対策がいらない
寒さに耐性があるボタンは、氷点下26℃程度(USDA zone 5b)までなら耐えることができます。
日本なら防寒対策をしないで管理することができ、手間があまりかかりません。
写真は「わらぼっち」といわれる、わらの帽子のようなものです。本来は冬の間に雪や霜から守る役割がありますが、カンボタン(寒牡丹)の場合は、装飾的な目的で行われます。
ボタン(牡丹)の育て方・管理方法
植え付け・植え替え
ボタンは有機質がたくさん入った水はけ・水持ちの良い土で
ある程度湿った場所を好むボタンは、有機質がたっぷりと入った水はけ・水持ちの良い土でよく育ちます。
ただし水はけが悪くて粘土質のように固まってしまう土では根腐れが起こりやすく、枯れてしまうことも。
地面に植え付ける前に、腐葉土、赤玉土を、掘り起こした土に混ぜて、排水性・通気性・保水性を良くしておきましょう。
土が乾きやすい場合は、黒土を混ぜるのもおすすめです。
ボタンの適切な植え付け時期
落葉性のボタンは、葉が落ちて休眠期に入った9〜11月ごろに植え付けや植え替えをしましょう。
株に大きなストレスを与えにくく、植え付け後も生長が良好です。
ボタンは直径1.5〜3mほどのスペースを確保してから
樹高が低く枝葉も横に広がりにくいボタンは、直径1.5〜3m程度のスペースを確保して植え付けましょう。
植え付けるスペースが小さ過ぎると、ボタンの枝葉が建物や周辺の庭木にぶつかって樹形が乱れたり周りの建造物を傷つけたりする可能性も。
苗木が小さくても、植え付ける場所はある程度の広さが必要です。
また、移植を嫌う性質があるので植え付け場所はあらかじめしっかりと決めておくことが大事です。
ボタンの苗木の植え方
シャクヤクの台木を使って接木されたボタンの苗木を植え付けるときは、あらかじめ深く耕しておくことがポイント。
植える穴の深さは50cmほど低くし、根鉢の周りに片足が入るぐらいの広さをつくります。
植え付けるときは、接木した箇所が見えるように土を入れていきます。
先に穴の底に堆肥を入れておき、混ぜ合わせておいた用土を足で踏み固めながら継ぎ足してしっかりと地面に定着させましょう。
地面に植え付けられたら、接木した箇所5〜10cmほど高くなるように土を被せて盛り土をつくります。
苗木から周囲50cmほどの平らな盛り土ができれば完了です。
ボタンの鉢植えの植替え
鉢植えでボタンを育てている場合は、2〜3年に1回のペースで植え替えをします。
生長スピードがゆっくりですが、放置していると中の栄養バランスが崩れたり根詰まりを起こしたりして枯れてしまうことも。
定期的に植え替えをして、根が回りやすい状態を作りましょう。
水が土に浸透しにくくなったときや、鉢底から根が出ているときにも植え替えをするといいです。
肥料
ボタンに毎年大輪の花を咲かせるには、定期的な肥料が欠かせません。
年に3回程度、窒素(N)・リン酸(P)・カリウム(K)のバランスの取れたものか、リン酸の多い花木・庭木用の油かす・有機肥料を与えます。
生長の流れが鈍くなりにくく、春に新芽や花芽を芽吹くようになります。
花が咲く前の2〜3月に追肥、花が咲いた後の6月にお礼肥を休眠期に入る直前の9月下旬に追肥を与えましょう。
剪定
生長スピードがゆっくりで難しい剪定がないボタンは、枝を切っても新しい芽が出にくく枝葉が混み合うことがあまりありません。
ただし、毎年たくさんの大きな花を観賞するのであれば、剪定だけでなく花が終わったあとの「花がら摘み」と新芽の「芽かき」作業が欠かせません。
年に1回のペースで夏に花がら摘みと芽かきを行った後、秋に剪定をしましょう。
ボタンの適切な剪定時期|9月下旬〜10月中旬
ボタンの剪定は、葉が落ち始める9月下旬〜10月中旬に行うのが最適です。
時期を間違えると株に大きなストレスを与えてしまい、枝がれを起こして株が枯れてしまう場合もあります。
ボタンの花がら摘み・芽かきと剪定
ボタンの花がら摘み
ボタンの花が咲き終わるころは、花首を手で折って摘み取りましょう。
花を付けたままだとタネができてしまい、栄養がタネに流れて株が弱くなります。
ちなみに翌年の花は7月中旬〜8月上旬ごろにでき始めます。
ボタンの芽かき
花がら摘みができたあとは、枝上部の新芽をかき取り、芽かき作業を行います。
幹から伸びる枝をした方2〜3個の芽を残しながら、上部の新芽をマイナスドライバーなどを使ってかき取りましょう。
このとき、葉に傷ができないよう注意しながら丁寧に作業を行なってください。
ボタンの剪定
秋には葉が落ちるので、残った枝を剪定します。
芽かき作業で残した新芽が出ている箇所から、上部の枝を切り詰めて剪定しましょう。
また、ボタンは地面から幹が複数で伸びる「株立ち樹形」です。
株元からは細い枝(ひこばえ)が伸びやすく、放置していると花芽が付きにくくなります。
地面から全て切り落としてすっきりとさせましょう。
病害虫
病気の被害が比較的少なくて管理が楽なボタンですが、枝葉が混み合って日当たりと風通しが悪くなるとまれにカイガラムシの被害に合うおそれがあります。
さらにはカミキリムシといった害虫の被害にあう場合も。
定期的な剪定が欠かせませんが、梅雨の時期に入る前や夏前の薬剤の散布も行いましょう。
2月ごろに切開硫硫黄合剤10倍液を散布して、株を消毒しておくのもおすすめです。
病気
特になし
害虫
・カイガラムシ
1年を通して枝や幹に発生しやすく、養分を吸汁します。
成虫になると甲羅が硬質化し、薬が効きにくくなります。
できるだけ薬の効く幼虫のうちから薬剤散布を行うといいです。
成虫は歯ブラシや軍手を使って擦るようにして補殺します。
・カミキリムシ
比較的1年を通して枝や幹の中に発生し、中身を食害します。
成虫は5〜9月ごろに発生することが多いです。
幹を食害され続けると生長する勢いが著しく鈍くなり、やがて枯れてしまうことも。
木も強風によって折れやすくなるので、日頃から穴が空いて木くずが出ていないかチェックしましょう。
穴を見つけた場合は針金やピンセットを刺して補殺するか、殺虫剤を使って駆除します。
日当たり
ボタンは基本的には自然に降る雨だけの水分で育ちますが、乾燥し過ぎると生長不良を起こすこともあります。
特に夏場は地面を乾かさないように、水をたっぷりと与えましょう。
ただし、高温多湿な環境には弱いので、夏場の水やりは朝の涼しい時間帯に行うか日が沈んで気温が緩やかになる夕方に行います。
また、植え付け直後や苗木が地面にしっかりと根付くまでの1年間は、土が乾燥しないように定期的に水やりをするといいです。
水やり
ボタンは基本的には自然に降る雨だけの水分で育ちますが、乾燥し過ぎると生長不良を起こすこともあります。
特に夏場は地面を乾かさないように、水をたっぷりと与えましょう。
ただし、高温多湿な環境には弱いので、夏場の水やりは朝の涼しい時間帯に行うか日が沈んで気温が緩やかになる夕方に行います。
また、植え付け直後や苗木が地面にしっかりと根付くまでの1年間は、土が乾燥しないように定期的に水やりをするといいです。
リゾートガーデンスタイル専属の庭師×Webコンテンツクリエイター。 カナダのトロントで造園士を、その後日本で花屋のバイヤー・鉢物の管理・アドバイザーを経験した後、ヤシの木を主体とするリゾート・ドライガーデンの造園士に。 現在は、リゾートガーデンスタイルの社会福祉施設・DOG CAFEの専属庭師に加え、畑の開拓・管理、SNSも兼務。 植物を専門とするWebコンテンツクリエイター、ガーデニング商品の監修者としても活躍中。