日本ではあまりなじみのない果物「ポポー」。
アメリカ原産のポポーは、甘く美味しい実をつけるので果実を収穫して美味しく食べたいという方にオススメの植物です。
この記事では、ポポーの生態から育て方、花言葉などについて解説します。
「ポポーを育ててみたいけどどう育てていいか分からない」
「ポポーの食べ方を知りたい」
こんなお悩みが解決しますので、是非読み進めてみてください!
基本データ
- 分類
- 庭木-落葉-果樹
- 学名
- Asimina triloba(英名:Pawpaw)
- 科・属名
- バンレイシ科・ポポー(アシミナ)属
- 別名
- ポーポー、ポポーノキ、アケビガキ
- 草丈・樹高
- 2〜10m
- 栽培可能地域
- 全国
- 花色
- 赤紫
- 開花期
- 3月下旬〜5月上旬
- 結実期
- 9月中旬〜10月上旬
- 耐暑性 / 耐寒性
- 強い/強い
ポポーの花・実・葉の特徴と花言葉
春にワインカラーの花が咲いたあと、秋にフルーティーな甘い香りのするアケビに似た実を付けるポポー。
上品で大人っぽさのある花はひかえめで美しく、実は生のまま食べることができる珍しい果樹で個性的な庭を演出してくれるでしょう。
芽吹く力が強く、強い剪定(せんてい)にも負けないので、初心者でも育てやすく庭木におすすめです。
ポポーとは
ポポーは、冬に葉が一斉に落ちる落葉性の高木。
熱帯のフルーツのような雰囲気がありますが、カナダからアメリカにかけて自生する果樹で、アケビのような楕円形(だえんけい)の実を付けます。
春先に赤紫色の花弁を付け、秋に実を収穫します。
筆者が住むカナダではポポーの木は少なく、現地のスーパーで見かけることはおろか現地の人でさえそのフルーツの実態を知っている人は少ないです。
また、日本では明治時代に伝わったとされていますが、現在では見かけることが少なく「幻のフルーツ」といわれることも。
バンレイシ科のポポー(アシミナ)属に分類する樹木で、ほとんどが熱帯に生息するバンレイシ科の中では唯一の「温帯」の植物です。
そのため暑さや寒さに強く、北海道でも庭木として育てることができます。
ポポーの花と花言葉
葉がまだ芽吹く前の3月下旬〜5月上旬ごろにかけて、ポポーはその年に新しく伸びた枝の先端付近からうつ向きになってバーガンディー色のしわのある花びらを持った花が咲きます。
咲き始めたころは黄緑色の花びらですが、満開になるころには暗い赤紫色へと変色していきます。
個体によっては葉が展開すると同時に花が咲くものもあり、苗木を購入するまではわからないかもしれません。
ただし花からは肉が腐ったような独特な匂いを放ち、臭いと不快に感じる場合もあります。
ポポーの花言葉
ポポーの花言葉は、「健康」です。
ポポーの実と葉の特徴
ポポーの実
9月中旬〜10月上旬ごろにかけて、丸みのある楕円形の緑の実を付けるポポー。
直径5〜15cmほどのサイズになり、できはじめは黄緑色ですが熟すと褐色に変色していきます。
実は自家受粉をする品種もありますが、ほとんどが人工授粉が必要です。
自然界ではハチが花粉を運ぶのではなく、ポポーの独特な匂によってハエが花粉を運びます。
そのため、屋外でも自然に受粉することもあります。
実は、バナナとマンゴーを合わせたようなトロピカルな風味でとても甘いです。
果肉はカスタードのようなクリミーさで、なめらかさのある舌触りが特徴。
現地では、「インディアンバナナ(Indiana banana)」「りんごのカスタード(Custard apple)」や、「貧乏人のバナナ(Poor man’s banana)」などと呼ばれています。
ポポーは2種類以上の苗木を用意すると良い
自家受粉しにくいポポーですが、実を収穫したい場合は苗木を2本用意するのがおすすめです。
ポポーは雄と雌が同じ1本の株に2つ存在する雌雄同種(しゆうどうしゅ)の樹木。
1株だけで受粉することもありますが、実の収穫量を増やす場合は別の品種の苗木を2種類以上用意しましょう。
日本では現在16種類の品種が出回っていますが、2種類以上あることでさらに実が付きやすくなり収穫の量も増えます。
ポポーの実の食べ方
追熟させたポポーは、実の中心で半分にカットしてスプーンですくって食べることができます。
ケーキ・ヨーグルト・アイスクリームの飾り付けやフルーツ感覚で、一緒に食べるのがおすすめです。
また、ミキサーにかけてフルーツジュースやスムージーにして飲むこともできますよ。
ただし、日持ちが短く収穫した実はすぐに黒く変色してしまうので、生のままで販売されていることが少ないです。
ジェラートやジャムなどに加工されて販売するところが多いようです。
ポポーの葉
花が咲き終わると、ポポーは10〜30cm程度の大きさになる楕円形の葉を枝節から互い違いに展開します。
葉の先端はしゅっととがり、葉脈が際立ちます。
春に新芽を芽吹き、秋には黄色く紅葉した後冬に落葉します。
ポポーの生長スピード・樹高・苗木の価格
幼木のポポーは生長スピードがゆっくりですが、成木になったものは早く大きくなると樹高が5〜10mほどになることもあります。
定期的な剪定をすれば狭いスペースでも安心して育てられるので、庭で楽しむこともできます。
価格は苗の大きさや品種によって違いますが、3号サイズ(樹高20cm)ほどで1,400円程度から販売されていることが多いようです。
挿し木で増やそう!ポポーの増やし方
ポポーを増やしたいときは、枝の一部を切り取って「挿し木」をつくりましょう!
ポポーの挿し木づくりに最適な時期
ポポーの挿し木は、3月ごろにつくります。
この時期に枝を切っても花芽を切り落とすことがなく、暑さで株にストレスを与える心配もありません。
ポポーの挿し木の手順
- Step1. ポポーの新しい枝を、先端から数えて4〜6節目でカット。先端のやわらかい部分もカットします(5〜15cmほどの長さ)。これを「挿し穂」といいます。
- Step2. ポポーの挿し穂の上部に付いた葉を1/3程度(2〜4枚)ほど残し、下部の葉や枝は全て摘取り除きます。
- Step3. 小さめのコップや花瓶に入れた水か、水はけの良い土が入ったビニールポットなどにポポーの挿し穂を挿して、涼しい日陰で管理しましょう。2〜3カ月で根が出ます。
余談:種まきでもポポーは増やせる
ポポーの実の中には、カキのような黒いタネが5〜6粒入っています。
タネまきをしてポポーを増やすことができます。
ポポーは発芽適温度が25℃以上必要なので、5〜7月ごろにタネまきするのがベスト。
水はけの良い土にタネをまき、乾かさないように涼しい場所で管理すると数ヶ月で芽が出ます。
ポポーの3つの魅力
フルーティーな風味がする果肉がおいしいポポーですが、収穫時期には実からもトロピカルな甘い香りが漂います。
秋には紅葉を観賞しながら、香りも楽しめる魅力があります。
ポポーの魅力1|花や紅葉など季節によって色や姿の変化を楽しめる
春に花、夏に青葉、秋に実と紅葉など、季節によって色や姿の変化を観賞できるポポー。
9月中旬〜10月上旬の間は、収穫時期でもあるので実を採って、そのトロピカルな甘さや香りを楽しむこともできる魅力があります。
ポポーの木を植えれば、家族みんなで景色の変化を楽しめる印象的な庭づくりもできますね!
ポポーの魅力2|寒さで枯れることがない強い木
カナダやアメリカなど北米が原産地とされるポポー。
氷点下28.9℃程度(USDA zone 5a)までなら耐えることができるといわれていますが、実際カナダでは年によっては氷点下30〜40℃になる時期もあります。
そのため、氷点下40℃ぐらいまでなら庭で育てることもできるでしょう。
ポポーの魅力3|病害虫の被害が少なくて、管理が楽!
ほかの庭木と比べると、ポポーは病気や害虫に強くて被害にあいにくいです。
薬剤散布などの管理があまり必要がないので、楽に育てることができるでしょう。
そのため農薬を使わないで、収穫を楽しむことができる魅力があります。
ただし、枝葉が伸び過ぎて鬱蒼(うっそう)としてしまうと、まれにハダニやカイガラムシの被害にあう場合も。
定期的に剪定をして、株の内側にも光や風が通るようにすっきりとさせましょう。
ポポーの育て方・管理方法
植え付け・植え替え
ポポーは有機質がたくさん入った水持ちの良い土がおすすめ
春に花をたくさん咲かせ、秋にかけて大きな実を付けるポポーは、有機質がたっぷりと入ったふかふかの土がおすすめ。
また、自生地では河川沿いに生えていることが多い、水はけと水持ちの良い土を用意するのがポイント。
ただし、水はけが悪くて粘土質のように固まってしまう土では根腐れが起こりやすく、株が枯れてしまうことも。
地面に植え付ける前に、腐葉土、赤玉土、黒土を、掘り起こした土に混ぜて、排水性・通気性・保水性を良くしておきましょう。
ポポーの適切な植え付け時期
落葉性のポポーは、休眠期に入る11〜2月ごろに植え付けや植え替えをします。
真夏の時期では株が弱って枯れてしまう場合もあるので、植え付け時期は寒い時期を選びましょう。
直径7〜10mほどのスペースを確保してから
樹高が5m以上になることもあるポポーは、できるだけ広めのスペースを確保して植え付けることが大事です。
2本の苗木を植え付ける場合は5m程度の距離を空けて、1本の苗木で直径7〜10mの広さになるように植え付けましょう。
スペースが十分でないと、ポポーの枝葉が周辺の草花に覆いかぶさってしまったり、周りの建造物を傷つけたりする可能性もあります。
苗木が小さくても、植え付ける場所はある程度の広さを確保してくださいね!
ただし、狭い庭など植え付けるスペースがない場合は、2mほど距離を離して大きくなったときに2本で1本の木になるように樹形を仕立てるといいです。
また、移植を嫌う性質があるので、植え付け場所はしっかりと決めておくことが大事です。
ポポーの苗木の植え方
ゴボウのような根を地面に一直線に伸ばし、細い根があまり伸びないポポーの木。
苗木を植え付けるときは、あらかじめ深く耕しておくと植え付け後でも根の張りが良くなります。
植え穴の深さは根鉢の高さよりも3cmほど低くし、根鉢の周りに片足が入るぐらいの広さをつくりましょう。
植える前に一度ポットから抜いた苗木を穴に入れてみて、深さ・横幅を確認し微調整を行うといいです。
手を離しても苗木が直立するように、穴の底に土を加えてから植え付けます。
足で踏み固めながら用土を継ぎ足し、しっかりと地面に定着させましょう。
ポポーの鉢植えの植替え
鉢植えでポポーを育てている場合は、2〜3年に1回のペースで植え替えをします。
生長スピードが早いので、放置していると根詰まりを起こして枯れてしまうことも。
定期的に植え替えをして、根が回りやすい状態を作りましょう。
水が土に浸透しにくくなったときや、鉢底から根が出ているときにも植え替えをするといいです。
肥料
冬に葉を落として秋に実をたくさん咲かせるポポーには、2月に寒肥を、10月に追肥として肥料を与えましょう。
生長の流れが鈍くなりにくく、春に新芽を芽吹くようになります。
ただし、肥料の与え過ぎは生長の流れを早くさせるので、大きくなり過ぎたり剪定などの管理が大変になったりする場合もあるので注意してください。
肥料は、植え付けてから2年目までの間は油かすと骨粉を混ぜたボカシ肥を一握り程度株周りにまきます。
3年目以降は生長の流れにあわせて量を増やして毎年与えましょう。
株の周りには、完熟腐葉土やバーク堆肥でマルチングを行っておくと、さらに実に栄養が行き、収穫量が増えます。
剪定
生長スピードが早いポポーの木は、年2回のペースで剪定を行いましょう。
樹高が大きくなり過ぎたときや葉が混みあっているときも、剪定をすると樹形が整い花芽や実の付きが多くなります。
ポポーの適切な剪定時期|6月と12〜2月
ポポーの木は休眠期の12〜2月ごろにバッサリと剪定しますが、実がなり始めて摘果の時期となる6月にも枝の整理をしましょう。
時期を間違えると花芽を切り落としてしまい、花が咲かず実を収穫できません。
ポポーの剪定の手順
冬の剪定は、不要な枝や枯れた枝や伸び過ぎて樹形を見出している枝などを強剪定をしてコンパクトに仕立てます。
夏の剪定は、不要な枝や伸び過ぎた枝を軽く剪定して整える程度です。
ここでは、ポポーの冬の剪定方法について解説します。
Step1. ポポーの木の理想の高さ・幅のラインを決める
伸び過ぎた枝葉をなんとなくの感覚で切っていくと、切り詰め過ぎたり透かし過ぎたりしてポポーの木の樹形が思うように整わないことがあります。
花芽を余計に落としてしまう場合もあるので、まずはポポーの木の理想の高さと幅のラインを決めてから切りましょう。
失敗するリスクが減り、春・秋に花と実が楽しめる美しい庭木になります。
Step2. Step1で決めたラインに沿ってポポー枝葉を切り詰める
Step1で決めたラインの外側に出ている枝を、枝分かれしているところまで切り戻して短くしましょう。
できるだけ短く伸びた枝を残しながら切ると花芽が付きやすく、たくさんのポポーの実を収穫できます。
ただし、節と節の間で切ってしまうと新しい枝葉が無数に出てポポーの樹形が不自然になりやすいので注意してください。
ある程度剪定ができたら何度か遠くからも見て、木全体のバランスや周りの植物や物との間隔を調整します。
Step3. 枯れ枝と不要な枝を剪定する
大きくなると枝葉が横に広がるように伸びるポポーの木は、枝葉外側に出る外芽を残しながら内芽を切り落とします。
また、下記の不要な枝は生えている付け根から全て取り除き、株の内側の日当たりと風通しを良くしましょう。
- 徒長枝:株から強く飛び出すように、太く長く伸びる枝
- 立ち枝:横に伸びている太い枝に対して、直立したように上に強く伸びる枝
- 内向枝:株の内側に向かって伸びる枝
- 交差枝:枝同士が十字に交差する枝
- 絡み枝:太い枝に絡みつくように伸びる枝
- 平行枝:近い位置で平行に同じ方向へ伸びる枝
- 逆さ枝:地面に向かって伸びる枝
病害虫
生命力の強いポポーは、比較的庭木の中でも病害虫の被害にあいにくいです。
ただし枝葉が混み合って日当たりと風通しが悪くなると、まれにハダニやカイガラムシといった害虫の被害にあう場合も。
定期的な剪定を行い、日当たりと風通しを良くしましょう。
病気
特になし
害虫
・ハダニ
1年を通して葉の表裏に発生しやすいです。
風通しがなく乾燥した枝葉に現れ、放置をするとコロニーを形成し大量に繁殖する場合も。
ハダニは葉の養分を吸汁するため、落葉の原因になります。
定期的な剪定をしますが、大量に発生した場合は薬剤で対処するといいです。
・カイガラムシ
1年を通して枝や幹に発生しやすく、養分を吸汁します。
成虫になると甲羅が硬質化し、薬が効きにくくなります。
できるだけ薬の効く幼虫のうちから薬剤散布を行うといいです。
成虫は歯ブラシや軍手を使って擦るようにして補殺します。
日当たり
基本的には自然に降る雨だけの水分で育つポポーですが、乾燥し過ぎると生長不良を起こすこともあります。
湿った場所を好むので夏場は地面を乾かさないように、水をたっぷりと与えましょう。
また、植え付け直後や苗木が地面にしっかりと根付くまでの1年間は、土が乾燥しないように定期的に水やりをするといいです。
水やり
基本的には自然に降る雨だけの水分で育つポポーですが、乾燥し過ぎると生長不良を起こすこともあります。
湿った場所を好むので夏場は地面を乾かさないように、水をたっぷりと与えましょう。
また、植え付け直後や苗木が地面にしっかりと根付くまでの1年間は、土が乾燥しないように定期的に水やりをするといいです。
リゾートガーデンスタイル専属の庭師×Webコンテンツクリエイター。 カナダのトロントで造園士を、その後日本で花屋のバイヤー・鉢物の管理・アドバイザーを経験した後、ヤシの木を主体とするリゾート・ドライガーデンの造園士に。 現在は、リゾートガーデンスタイルの社会福祉施設・DOG CAFEの専属庭師に加え、畑の開拓・管理、SNSも兼務。 植物を専門とするWebコンテンツクリエイター、ガーデニング商品の監修者としても活躍中。