裸子植物の中でも特異的な生態・形態を示す。南国のような風貌が人気の木。
基本データ
- 分類
- 庭木-特殊樹
- 学名
- Cycas revoluta Thunb.
- 科・属名
- ソテツ科ソテツ属
風変り…でも身近なソテツの特徴とは?
ソテツとは
ソテツは、日本では九州南部から沖縄に分布する裸子植物の一種です。かなり成長が遅く、1年に1㎝しか伸びないといわれています。
珍しい生態・形態をもつ植物
ソテツは他の植物よりも原始的な珍しい性質をもっていることで知られています。例えば、裸子植物はスギやヒノキのように風で花粉を媒介するものが多いですが、ソテツはゾウムシなどの昆虫により花粉が媒介されるといわれています。さらに、虫をおびき寄せるために花が発熱するというから驚きです。他にも精子により受精したり、根っこでシアノバクテリアと共生していたりと、他の植物では見られない珍しい性質を多く持っています。見た目からしても、シダ植物やヤシに似ているけどそのどちらとも違う、独特の風貌をしていますよね。
国際的に保護されている
ソテツの仲間はソテツ科、ザミア科、スタンゲリア科の3つに分けられていますが、それらすべてがCITES(ワシントン条約)により国際的に保護されています。学術目的以外での輸出入ができない、輸出入に許可がいるなど種類によって規制がかかっています。国際取引への規制なので日本で日本のソテツを買う分には問題ありませんが、それだけソテツの仲間に学術的に価値があり、貴重なものだということですね。国内の自生地や立派な個体などは、天然記念物に指定されているものも多いです。
実には毒がある
ソテツの実や幹には多くのデンプンが含まれています。きれいなオレンジ色でおいしそうにも見えるソテツの実ですが、これには強い毒が含まれているのです。見たり触ったりする分には問題ないですが、食べると最悪の場合死に至ることもあるので、絶対に食べないようにしましょう。ただ、水にさらしたり加熱したりすることで念入りに毒抜きすれば食べることができ、奄美大島などではソテツ味噌と呼ばれるものが売られています。
庭を南国風に!
羽状複葉と呼ばれる長い葉っぱを大きく広げるソテツには、他の植物には無い圧倒的な存在感があります。一株植えるだけで、庭が南国のようなさわやかな雰囲気に。その原始的な雰囲気も相まって、愛好家も多い植物です。長年かけて大きく育ったソテツは間違いなく庭の主役となってくれることでしょう。長い時間をかけてじっくり成長する植物なので、植えるならなるべく早い方がおすすめです。玄関先や庭のど真ん中に、ぜひ植えてみてください。
株分けして増やす
ソテツを育てていると、根元から子株がポコポコでてきます。こぶしくらいの大きさになった子株を切り離して植え替えることで、簡単に増やすことができるのです。普通にたくさん増やして植えてもいいですが、ソテツは盆栽にすることもできます。成長が遅いソテツは盆栽にぴったり。うまく育てれば、鉢の中に南の島が凝縮されたような迫力満点の盆栽ができあがります。どんどん増やしていろいろな育て方をしてみると楽しいですよ。
原始的な形を観察する
ソテツの魅力はなんといっても原始的なその形。高く伸びる大迫力の雄花と、まるで燃え上がる炎のような雌花は、他の植物では見られない造形です。太くがっしりした幹にヤシの木を思わせる大きな葉っぱも魅力的です。大昔の地球では、このような植物がたくさん生えていたと考えると、とてもワクワクしますね。また、新芽はとてもやわらかく、くるくる巻いた葉っぱが少しずつ広がっていく様子がとてもかわいらしいです。かっこよさとのギャップも兼ね備えていて、いつ見ても飽きない植物です。
ソテツの育て方と特徴の詳細情報
- 草丈・樹高
- 2~4m
- 栽培可能地域
- 東北以南
- 花色
- クリーム色
- 開花期
- 4~6月
- 結実期
- 12~2月
- 耐暑性 / 耐寒性
- 耐暑性は非常に強いですが、耐寒性は弱いです。最低気温が5℃を下回る場合は、12月ごろから冬越しの処理が必要になります。古い葉を取り除き、幹から葉の先まですっぽり包み込むようにワラなどで覆ってしまいましょう。
ソテツの育て方と特徴の育て方・管理方法
- 植え付け・植え替え
- 6~8月ごろ、土を高く盛り上げたところに支柱を立てて植え付けます。根が張るまでは水をあげないようにしましょう。
- 肥料
- やせ地でも育つ強い植物なので、肥料はほとんど必要ありません。もしあげるのなら、2月ごろ寒肥として堆肥や油かすなどを与えます。
- 剪定
- 剪定は枯れた葉をとるくらいで十分です。茎の先端からしか葉を出さないので、変に強剪定すると枯死のもととなります。
- 病害虫
- 病害虫の少ない木で、病害として目立ったものはありません。害虫として被害のあるものはクロマダラソテツシジミとクワシロカイガラムシが挙げられます。
クロマダラソテツシジミはもともと東南アジアなどで見られたチョウですが、植えられるソテツとともに移動していき、今では関東地方でも確認されるようになっています。幼虫がやわらかい新芽を食害し、被害が大きいと新芽がボロボロになり、枯れることもあるほどです。新芽の出る時期に食害を確認したら、薬剤を散布して対処するようにしましょう。
クワシロカイガラムシは、ソテツ以外にもチャノキなど多くの植物に発生する虫で、暖かい地方だと年に3回発生することもあります。こちらも薬剤での対処が可能なので、幼虫の発生する5~8月ごろに薬剤を散布するようにしましょう。 - 日当たり
- 地植えの場合、基本的には水やりのいらない植物です。乾燥がひどいときはあげるようにしましょう。
- 水やり
- 地植えの場合、基本的には水やりのいらない植物です。乾燥がひどいときはあげるようにしましょう。
出典(引用元)
「樹木医必携」
城川四郎・高橋秀男・中川重年ほか解説
「樹に咲く花 合弁花・単子葉・裸子植物」
成美堂出版
「増補改訂版 実用庭木・花木の手入れと剪定」
ブティック社
「実用庭木図鑑
愛知県稲沢市生まれ。稲沢市が「日本四大植木産地」であることもあり、幼少期から植木に囲まれて成長。
東京農業大学卒業後、名古屋市内の造園会社に就職。公園の整備工事から国交省事業の国道整備工事における土木及び街路樹等の植栽工事に現場代理人として携わる。