好きな形に仕立てたシンボルツリーから防風林としての生垣まで、庭のどんなところにも使える扱いやすい針葉樹。
果実は片方は食べられて、もう片方には毒があるという、面白い性質をもっている。
基本データ
- 分類
- 庭木-常緑
- 学名
- Podocarpus macrophyllus (Thunb.) Sweet f. spontaneus H.Ohba et S.Akiyama
- 科・属名
- マキ科マキ属
- 別名
- イヌマキ、クサマキ、ホンマキ
- 草丈・樹高
- 5~20m
- 栽培可能地域
- 東北南部以南
- 花色
- 黄緑
- 開花期
- 5~6月
- 結実期
- 10~12月
- 耐暑性 / 耐寒性
- どちらも普通
昔から利用されてきた、独特の姿をした木
マキとは
マキ(槙)とは、イヌマキやラカンマキなどと呼ばれるものの総称です。
イヌマキは本州~沖縄までに自生する針葉樹の一種で、暖かい地方に多いです。ラカンマキはイヌマキの変種で、全体的に小型で葉っぱが少し短い種類。どちらも庭木で植えられますが、ラカンマキの方が多く植えられているように思います。
昔から利用されてきた木
マキの木は、古くから生垣や庭木として植えられてきました。潮風に強いので、防風林や防砂林として、暖かい西日本の海沿いなどで生垣として植えられることが多いようです。
また、庭木としても髪の毛のように出る独特の葉っぱが人気で、玉散らしという仕立て方をされたものや、トピアリー状になったものが時々植えられています。
また、木材に耐朽性があり、シロアリの被害を受けづらいので、沖縄では建築材として重宝されています。中国では、風水で縁起の良い木として扱われることもあるとか。
変わった形の実をつける
マキの木は、丸い実が二つ連なったような変わった実をつけます。
柔らかい赤い部分と固い緑の部分があり、食べられるのは赤い方で、緑の方には毒があります。これは赤い方を餌に鳥に運んでもらい、緑の方が捨てられることで遠くまで種が運ばれるというもの。赤い方は花床という部分が大きくなったもので実ですらありません。
鳥が食べる赤い部分は大味なグミのような味がして、ちょっと美味しいです。
刈り込みに強いので、色々な姿が楽しめます
生垣として
マキは刈り込みにもよく耐えるので、生垣として利用することができます。
生垣や次に紹介する玉散らし仕立てなどではなかなか実を楽しむことはできないのですが、それも管理の方法次第。
マキの木は実生のほかに挿し木でも増やすことができるので、同じ性質を持ったマキの木を並べて植えて生垣にすることもできます。
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玉散らしなどに仕立てて風情ある庭に
マキの木は、丸く刈った枝葉をいくつもつけた「玉散らし」という仕立て方ができます。
風情のある和風の庭などで行われる仕立て方で、これにするとグッと「和風感」が出ます。マツなども和風の庭にはいいですが、なかなか刈り込みには耐えないので、自由に仕立てられるのはマキの木のメリットと言ってもよいでしょう。
玉散らしに仕立てる場合は、イヌマキでもいいですが、葉っぱの短いラカンマキを使った方がおさまりのいい整った形に仕上がります。
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変わった実を食べる
赤と緑がくっついた変わった形の実を食べて楽しむという方法もあります。
主に西日本によく植えられる木ですが、「グミの木」や「やんぞうこんぞう」などと呼ばれて小さいころに食べた方も多いのではないでしょうか?
もちろん毒のある緑の方は食べないように最大限注意する必要がありますが、割と小さい子どもに人気の実です。親子で世代を越えて共通の話題をつくるのも楽しいでしょう。
マキの育て方と特徴の育て方・管理方法
植え付け・植え替え
植え付け、植え替えの適期は3月下旬~5月上旬です。
昔から親しまれている木というのもあって比較的扱いやすいですが、なるべくなら適期に作業を行うようにしましょう。植え付ける土は水はけの良い肥沃な土がオススメです。
肥料
土はあまり選びませんが比較的肥沃な土を好むので、植え付け時にたい肥などの肥料を元肥として与えると良いでしょう。
後は冬の寒い時期に寒肥として鶏糞や油粕などの有機質肥料を与えます。
剪定
骨格を整える剪定は、3月~4月くらいの、新芽が芽吹く前に行うと良いです。
生垣やトピアリー状に仕立てる場合などは形を整える作業が必要になりますが、その場合は真夏と真冬を除いた時期に行うようにしましょう。
また、前の年の枝に花を咲かせるので、実をつけてほしいときはそれらの枝を刈り込みすぎないように残しておくと良いです。
マキ(槙、マキ、イヌマキ、ラカンマキ)の木の管理方法
病害虫
病害虫は比較的少ないですが、いくつか特定の病害にかかることがあります。
病害としては、葉っぱが先から枯れていってしまう「白葉枯病」や、虫にかじられた痕などから変色していってしまう「ペスタロチア病」などが挙げられます。
また、南西諸島や沖縄などの暖かい地方では「南根腐病」にかかる危険性があるので注意が必要です。
白葉枯病とペスタロチア病の場合、病気の出ている葉っぱを集めて焼却処分することで被害を防ぐことができます。
南根腐病は根っこや飛んできた胞子から感染する病気で、成長が遅くなることから始まり、葉っぱが変色し、やがて木が枯れてしまいます。マンゴーなどでも問題になっている病害の一つで、暖かい地方でなければ今のところ警戒する必要はないですが、沖縄などでもしそれらしき症状がみられる場合、専門機関に相談すると良いでしょう。
虫害としては、「キオビシャチホコ」や「ケブカトラカミキリ」などが挙げられます。キオビシャチホコは葉っぱを、ケブカトラカミキリは幼虫が幹を食害します。どちらもすぐに木がどうこうなるようなものではないですが、多数発生している場合は直接駆除したり、カミキリの幼虫のいる穴に薬剤を注入するなどして対処しましょう。
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日当たり
植え付けして活着してからは特に気を遣う必要はありません。夏にあまりにも乾燥がひどいときには水をあげるとよいです。
水やり
植え付けして活着してからは特に気を遣う必要はありません。夏にあまりにも乾燥がひどいときには水をあげるとよいです。
出典(引用元)
「樹木医必携」
城川四郎・高橋秀男・中川重年ほか著
「山渓ハンディ図鑑5 樹に咲く花 合弁花・単子葉・裸子植物」
村越匡芳監修
「庭に植えたい樹木図鑑」
愛知県稲沢市生まれ。稲沢市が「日本四大植木産地」であることもあり、幼少期から植木に囲まれて成長。
東京農業大学卒業後、名古屋市内の造園会社に就職。公園の整備工事から国交省事業の国道整備工事における土木及び街路樹等の植栽工事に現場代理人として携わる。