シラカバは、山地などに生える落葉樹です。美しい白い樹皮を持つことが特徴で、木に興味が無くてもシラカバの姿をイメージできる人は少なくないでしょう。シラカバの特徴や育て方についてご紹介します。
基本データ
- 分類
- 庭木-落葉
- 学名
- Betula platyphylla Sukaczev var. japonica (Miq.) H.Hara
- 科・属名
- カバノキ科カバノキ属
- 別名
- シラカンバ
- 草丈・樹高
- 10~25m
- 栽培可能地域
- 中部地方以北
- 花色
- 茶色
- 開花期
- 4月
- 結実期
- 9月~10月
- 耐暑性 / 耐寒性
- 耐暑性は弱く、耐寒性は強い
シラカバ(白樺)とはどんな木?
シラカバ(白樺)は、カバノキ科カバノキ属の落葉広葉樹です。
シラカンバとも呼ばれ、国内では北海道から本州(福井県、岐阜県から北)にかけての地域に分布しています。
白い樹皮が特徴的で、木についてあまり興味のない人にも知られている、有名な木です。
大きく成長すると高さ10mを超える大きな木になります。枝が落ちた痕は黒い「へ」の字のような模様になり、白い樹皮の表面でよく目立ちます。
この模様と枝のついていた丸い痕が、人の目のように見えて話題になることも少なくありません。
秋になるとみられる黄葉は非常に美しいです。
材は家具や器具、白く美しい樹皮は工芸品に、樹液は飲料にと、様々な用途で活用されています。
また、ジャクモンティーというヒマラヤ原産の木が庭木として植えられることがありますが、こちらはシラカバの近縁種で、樹皮が若木のうちから白いことや、暖かい地域でも育てられることなどが特徴です。
シラカバ(白樺)の特徴
シラカバは山地などでみられることが多く、土砂崩れなどが起こって他の木がいなくなったところにいち早く侵入して森をつくる性質があります。
真っ白な色をした樹皮が大きな特徴で、他の樹種との見分けは難しくありません。
一つの木に雄花と雌花が両方とも咲く雌雄同株で、雄花は垂れ下がるしっぽのような形をしており、風に乗せて花粉を運びます。
対する雌花は立ち上がるようにつき、受粉すると松ぼっくりを小さくしたような果穂をつくり、中にできる薄く平べったい形をした種のような果実を風によって飛ばすのが特徴です。
いずれも、他の木々が芽吹いていないか芽吹いたばかりで、風通しの良い春先に咲きます。
風で花粉を飛ばす性質のため、シラカバがよく見られる北海道などでは花粉症の原因となることもあります。
食品・化粧品で活用される樹液
シラカバは、春になると枝や幹の傷口などから樹液を出します。
これはカエデのメープルシロップと似たようなもので、春先に樹液が湧き出るように溢れてくるものです。
こうして採取した樹液には様々なミネラル成分などが含まれており、飲料などに用いることがあります。
古くはアイヌ民族が飲料や料理用に用いた他、海外でも健康に良い、病気に効く効果があるなどの理由で飲む習慣のある国も多いです。
現代でもシラカバの樹液が注目され、飲料水として販売されることがあります。
シラカバの樹液を採取できるのは春先に水を上げる短い期間だけなので、そのレアな感じも価値を高めているかもしれません。
また、化粧品として用いられることも多く、シラカバの樹液を使ったスキンケアに使う化粧水や保湿クリームなど、様々な商品が販売されています。
シラカバの葉っぱを使ったお茶などもつくられており、活用方法は様々です。
木材は主に民芸品に利用される
シラカバの樹皮や木材は、民芸品などに利用されることが多いです。
樹皮を編み込んでカゴをつくったり、木材を掘ってインテリアとなる木彫りの工芸品をつくったりと、つくられるものには様々なものがあります。
シラカバの木材を使って、コップや皿、スプーンなどがつくられる場合も多いです。
変わったところでは、白色で美しい樹皮を活かして、樹皮ごと丸太にされるようなこともあります。
他にも、家具をつくるのに扱われたり、パルプ材として扱われたり、細いものは燃料として扱われたりと、利用方法は様々です。
先駆樹種(パイオニア樹種)としての役割
シラカバは、深い森の中ではなく何らかの条件でできた撹乱地で見られることが多いです。
撹乱地とは、土砂崩れや洪水、山火事などで元いた植物の生育地が破壊されたような状態です。
そうした場所は、光や養水分を奪い合うライバルとなる植物がいないため、シラカバのような樹種がいち早く入り込んで光や養水分などを独占します。
そうした性質をもつ樹種は「先駆樹種(パイオニア樹種)」などと呼ばれます。
シラカバの種はとても小さく、風に乗って飛んでいきますが、これはまだ見ぬ撹乱地を目指して分布を広げるのに適した性質です。
小さい種は軽い上にたくさん作れるため、風に乗せて運任せで広範囲に飛んでいくのに役立つ他、乾燥しやすい環境で定着しやすい性質があります。
また、シラカバが結実してから早い時期に飛んでいった種子はその年に発芽しますが、遅い時期に散布された種子は休眠する性質があるため、撹乱などが起こり良い環境になるまで眠っていることができます。
パイオニア樹種は土砂崩れなどの撹乱が起きてしばらくは旺盛に成長して森をつくることもありますが、やがて長い時間が経つと、後から生えてきた木々との競争に負けて衰退してしまい、ふつうは生き残ることができません。
一時的にできたライバルのいない環境を求めて、様々な方法を駆使して生きているのです。
また、シラカバのこうしたパイオニア樹種としての性質を活かし、人為的に撹乱を起こしてシラカバを生やして森を更新する「掻き起こし」という技術があります。
シラカバ(白樺)の仲間
シラカバが属すカバノキ科カバノキ属には、様々な種類のものが存在しています。
シラカバと同じように樹皮が剥がれて、葉っぱの特徴などがよく似たものもあれば、葉っぱも樹皮もあまり似ていないものまで様々です。
それぞれのシラカバとの違いや特徴などについてご紹介していきます。
ウダイカンバ
ウダイカンバは、シラカバと同じような分布をしており(北海道から本州の福井県、岐阜県まで)、山地にややまれにみられる落葉高木です。
葉が10㎝以上の長さになり、他のカバノキ属の仲間と比べて一番大きくなります。
また、葉っぱがハート形をしているのも特徴的です。
樹皮は横すじが入り、茶色っぽい色をしていることが多いですが、シラカバのような白っぽい色になることもあります。
果実(果穂の中に入っている種のようなもの)の翼と呼ばれる薄い部分が他のカバノキ属と比べて幅広いことや、雌花序が細長く、垂れ下がることなども大きな特徴です。
マカンバとも呼ばれ、カバノキ属の中では最も良質の材が採れるとも言われています。
ダケカンバ
ダケカンバは、国内では北海道から本州中部、四国に分布する落葉高木です。
山地に生えるシラカバよりも標高の高い亜高山帯に生えることが多いです。
ただし、北海道ではシラカバと共に低地にも生えます。
生態もシラカバと似通っていて、雪崩や土砂崩れなどが起きて他の植物がいなくなったところにいち早く侵入し、純林をつくります。
標高の高い寒いところに生えることが多いこともあり、雪の多いところでは人の背よりも低い低木状になっていることも多いです。
大きくなると樹皮は薄く剥がれるようになり、樹皮の色はシラカバと違って赤茶色になります。
葉っぱはシラカバとよく似ていますが、葉脈の側脈がシラカバの5~8対に比べてダケカンバは7~15対と多いこと、葉っぱがシラカバよりハート形になりやすいことなどが特徴です。
ミズメ
ミズメは本州の岩手県から西、四国、九州に生える日本固有種の落葉高木です。
アズサ、ヨグソミネバリなどとも呼ばれています。
枝などを傷つけると湿布のような(サロメチール)匂いがするのが大きな特徴です。
同じカバノキ属のウダイカンバやネコシデなどからも同じようなサロメチールの匂いがすることがありますが、本種がサロメチール臭のする植物として最もよく紹介されます。
樹皮は横すじが入り、サクラの樹皮によく似ています。
葉っぱは卵型で、先に紹介したシラカバ、ウダイカンバなどと比べて細長いです。
葉身の付け根は少しハート形になることもあります。
葉っぱに目立った特徴があまりないので、枝などを傷つけて出るサロメチール臭を見分けのポイントにするのが良いでしょう。
その他カンバ類
ここで紹介したもの以外にも、国内にはカバノキ属植物がたくさん存在しています。
葉っぱが他のカバノキ属よりもギザギザしたネコシデや、樹皮が幾重にも剥がれるヤエガワカンバ、地球上で北海道のアポイ岳にしか生えないアポイカンバなど、どれも個性的な樹種です。
アポイカンバのように分布が狭いものも多いですが、山などでシラカバっぽい雰囲気だけどシラカバではないものを見つけたら、ぜひ名前を調べてみてください。
シラカバ(白樺)の育て方・管理方法
植え付け・植え替え
植え付け、植え替え作業は落葉してから春に芽吹く前までの11月~3月までに行うのがおすすめです。
土は水はけの良い土を選び、明るい場所に植え付けます。
日当たりの良い場所でよく育つ木なので、他の木などがあって暗くなっているとうまく育ちません。
肥料
植え付け時に堆肥などを植穴に入れますが、それ以降は特に気にしなくても問題ありません。
元々崩壊地などで育つ樹種ということもあり、肥料はそこまで必要ないようです。
逆に肥料をあげすぎるなどすると土の中の環境が変わり、共生している菌根菌(根っこについているキノコなどの菌類)が弱ってしまう可能性もあるので注意しましょう。
また、種や小さな苗を採取して育てる場合、採取地の土や大きな木の根端などを持っていくようになると菌根菌との共生がスムーズにできる可能性があります。
剪定
自然樹形が美しい木のため、剪定は基本的には必要ありません。
そのまま育てても、立派なシンボルツリーとなります。
大きさを抑えたい場合などは、切り戻し剪定を行い、樹形が崩れないように注意しながら剪定を行いましょう。
剪定時期としては、秋から春先までの落葉期が最もシラカバへの負担が少なく、次点で初夏ごろや秋ごろがおすすめです。
枝の密度を下げたい場合は、枝を付け根から抜いてすくような形で剪定するのがおすすめです。
樹木は葉っぱで光合成をするので、目的もなく剪定をするとただ木を弱らせるだけになってしまいます。
剪定を行うのであれば何のために行うのかはっきりさせてするようにしましょう。
また、シラカバは春先に枝の切り口などから水があふれ出てくる性質があります。
放っておいてもそこまで問題はありませんが、気になるようなら冬から春先にかけての剪定は控えるようにしましょう。
病害虫
病気としては、葉っぱに発生する褐斑病や大型褐斑病などがあります。
褐斑病は、カビにより葉っぱに濃い茶色の小さな斑点ができ、被害が大きくなるとやがて落葉する病気です。
大きくなった木だとあまり大きな影響はありませんが、苗木や幼木で被害が大きくなることが多いです。
病原菌が冬を越す様式はよくわかっていませんが、新たな感染源となる可能性があるので、落葉は秋から冬の間に集めて焼却処分しましょう。
また、落葉するまでの期間は病原菌が雨粒または虫により感染を広げる場合があるので、葉っぱを食べる害虫の駆除も行います。
大型褐斑病は、カビにより初夏から秋にかけて葉っぱに直径2~3cmの斑点ができる病気です。
発生が多いと斑点の出た葉っぱが縮れ、早い時期に落葉することがあります。
病原菌は落ち葉の上で冬を越し、春になると再感染します。
そのため、発生がみられたら落葉した葉っぱは春が来る前にすべて集めて焼却処分しましょう。
他にも、葉っぱがブドウハモグリダニというダニによりけば立った形になるビロード病などが発生することがあります。
害虫にも様々な種類がみられますが、代表的なものとしてハンノキハムシなどがあります。
ハンノキハムシは青から紫の光沢をもった美しい小さい姿で、シラカバに限らず様々なカバノキ科の樹木に発生する虫です。
幼虫は短いイモムシのような姿をしており、成虫と幼虫ともに葉っぱを食害します。
春になると冬越ししていた成虫が現れ、開いたばかりの新芽を食害し、やがて発生した幼虫も葉っぱを食べて成長します。
その後、夏から秋ごろに新しい成虫が見られるというサイクルです。
葉脈を残して食害し、大発生すると葉っぱが丸坊主にされてしまいます。
発生がみられたら、成虫を直接捕殺することで対処が可能です。
他にも、幼虫が葉っぱを集団で食害するガの仲間のアメリカシロヒトリ、幼虫が幹に穴をあけて食害するゴマダラカミキリやガの仲間のコウモリガやゴマフボクトウなど、様々な害虫が発生します。
日当たり
庭に地植えする場合、植え付けてから暖かい時期で1週間~1か月ほどは土が乾いたらたっぷり水やりを行います。
枝葉が旺盛に成長するようになり、根付いたらそこから先は基本的に雨水のみで問題ありません。
根付くまでの水やりは、下まで浸透するようにたっぷりと行うようにしましょう。
ジョウロで軽く水やりする程度だと、パッと見は土が濡れているように見えても下の方には全く浸透していないことがあります。
また、本州の低地など暑くなる場所に植えた場合、真夏などに雨が降らない時期は定期的に水やりをするのがおすすめです。
水やり
庭に地植えする場合、植え付けてから暖かい時期で1週間~1か月ほどは土が乾いたらたっぷり水やりを行います。
枝葉が旺盛に成長するようになり、根付いたらそこから先は基本的に雨水のみで問題ありません。
根付くまでの水やりは、下まで浸透するようにたっぷりと行うようにしましょう。
ジョウロで軽く水やりする程度だと、パッと見は土が濡れているように見えても下の方には全く浸透していないことがあります。
また、本州の低地など暑くなる場所に植えた場合、真夏などに雨が降らない時期は定期的に水やりをするのがおすすめです。
愛知県稲沢市生まれ。稲沢市が「日本四大植木産地」であることもあり、幼少期から植木に囲まれて成長。
東京農業大学卒業後、名古屋市内の造園会社に就職。公園の整備工事から国交省事業の国道整備工事における土木及び街路樹等の植栽工事に現場代理人として携わる。