庭をつくると、蚊が発生することがありますよね。「庭に蚊が多すぎて外に出られない」「池をつくりたいけど、蚊が沸くのが心配」と考える方もいるかもしれません。しかし、蚊は適切に対処すればかなり数を減らすことができます。蚊の特性と、対処方法についてご紹介します。
目次
蚊の活動について
日本には、およそ100種類程度の蚊(カ科というグループの昆虫)が存在するとされています。その中でも、人里に現れて人間の血を吸う生活をするのは十数種類ほど。環境や地域にもよりますが、庭で問題となるのは1〜3種類ほどかと思います。
これらの蚊は、普段は花の蜜などを吸っていますが、メスが産卵に使うエネルギーを補給するために人の血を吸いにやってきます。蚊の種類によって吸血する動物は変わるので、その場所の環境によってみられる蚊の種類が変わることが多いです。秋頃に長距離を移動して、本来の生息地ではない場所でみられることのある種類などもいますが、とりわけ一般的に人の目につくのは人の血を吸うことがある種類の蚊であることがほとんどでしょう。
蚊の活動時期と特徴
蚊は、基本的に春から秋までの暖かい時期に活動します。冬でも屋内など暖かい場所なら活動がみられることもありますが、少なくとも活発ではありません。また、蚊の種類によって成虫で冬越しするか卵で冬越しするかなどが違うため、それによっても少し変わります。
また、種類によって活動する時間帯も異なり、人里でみられる代表種では、アカイエカが夜行性、ヒトスジシマカが薄明薄暮性(夜明けや夕暮れ時など、日が昇り降りする時間帯)の強い昼行性で、日陰では昼でも活動しているといった形です。
ヤブ蚊とは?
一般的にヤブ蚊と呼ばれるのは、ヒトスジシマカやアカイエカ、あるいはそれらの近似種であることが多いです。また、場合によってはキンイロヤブカ、オオクロヤブカなどの種類や、キンパラナガハシカのような美麗種が発生することもあります。これらは竹やぶなどのやぶになっている場所に潜んでいることが多く、やぶに入ったり近づいたりすると刺されてしまうことがあります。
また、蚊柱をつくるのは基本的にユスリカの仲間で、これらはカ科とは違うグループに属します。これらが血を吸いに来ることはありません。
庭に蚊が発生する原因
庭に蚊が発生する原因としては、庭の中や周囲に蚊の幼虫(ボウフラ)の育つ場所があることが考えられます。蚊が庭やその周辺で卵を産んで幼虫が育つことで、たくさん蚊が発生するというわけです。また、近隣から移動してくる場合もあるので、庭での蚊の発生を完全に無くすことは難しいです。
蚊の発生源と生態
蚊の発生源は、主に小さな水たまりです。庭の池のような場所ではなく、庭に放置された空き缶やバケツなどに溜まった水たまりに発生します。また、竹を伐採したあとの切り株に水がたまるようになっていれば、そこから爆発的に発生することも少なくありません。もともと、多くの蚊は樹洞や岩のくぼみにできた水たまり、洪水後にできた水たまりなど、一時的にできた外敵のいない水域などで育つ生き物です。蚊の幼虫(ボウフラ)は捕食にとても弱いので、魚やトンボの幼虫(ヤゴ)のいる場所ではほとんど生きられません。それらの敵が入ってこない、入ってくる前の水たまりで繁殖することで、捕食されずにいるという暮らしです。
そのため、庭の池のような場所ではたとえ都市部でも時間が経てばトンボのヤゴなどの捕食者がやってくるので、ほとんどの場合発生することはありません(例外的に、水田では、広い面積であるにも関わらずコガタアカイエカという種類が発生します)。
蚊が人に寄ってくる理由
庭で土いじりなどをしていると、どこからともなく蚊がやってきますよね。人の血を吸って産卵するタイプの蚊は、人が吐く二酸化炭素などの成分を感知してやってくると考えられています。よく人の血を吸うヒトスジシマカは薮などで待ち伏せをするタイプの蚊で、5mほど離れていても人の出す二酸化炭素などを感知してやってくるようです。蚊の調査をする際には、米ぬかを発酵させたものやドライアイスなどから二酸化炭素を発生させ、蚊を集めるという方法があります。
また、蚊は種類によって血を吸う対象が変わり、それによって誘引される方法が変わってきます。チビカの仲間などカエルの血を吸うタイプの蚊では、ラジカセなどからカエルの鳴き声を出して、蚊を集める方法が知られています。
庭の水たまりと蚊の関係
庭の水たまりには、蚊が発生することがあります。バケツやトレイ、木のうろ、その他オブジェなどに小さな水たまりができていないでしょうか。竹林が庭にある場合は、伐採後の切り株が水たまりになっているようなこともあります。そうした場所が蚊の発生源になることがあるので注意が必要です。小さな水たまりでも、数十匹以上の蚊が発生し、問題となることがあります。逆に、ある程度面積のある庭の池などでは、蚊が発生しないことが多いです。そうした池では、都心部であっても蚊の幼虫(ボウフラ)の天敵であるトンボのヤゴが発生するので、池ができてから数ヶ月を除けば蚊が発生することはほとんどなくなります。
池の上から覗くだけではトンボのヤゴはなかなか見つかりませんが、泥の中などに上手に隠れていて、ボウフラを食べてくれているのです。
庭の蚊対策:基本的なアプローチ
庭の蚊を減らすための対策は、基本的には「蚊の生息地をなくす」というところになります。庭に蚊が大量に発生しているのであれば、発生源はそう遠くないことが多いです。庭の環境を、蚊にとって良くない環境にしてあげれば、自ずと蚊の発生する量も少なくなります。
発生源を断つ
まずは、蚊がどこから発生しているのか調査してみましょう。先ほど説明したとおり、蚊が卵を産んで幼虫が育つのは、トンボのヤゴなどの外敵がいない水たまりです。必ずしも庭の中に発生源があるとは限りませんが、蚊が大量に発生しているのであれば、庭や家の周りに蚊が好むような小さな水たまりがあるはずです。そうした場所を潰していくことで、蚊の数が少なくなってきます。
ボウフラの発生を防ぐ方法
ボウフラの発生を防ぐためには、ボウフラの発生に適した水たまりが無くなることが一番です。しかし、雨水の排水桝のように、どうしても水たまりを塞ぐことができないということも少なくありません。そうした場合は、ネットを被せて蚊が卵を産みに来られなくしたり、薬を使ってボウフラをやっつけることもできます。ボウフラ対策のために専用の薬が売られているので、それを活用しましょう。それらを使う場合、蚊以外の水生生物に悪影響を与える可能性があるので、使用方法を守って最大限の注意を払うことが大事です。
水たまりを作らない、または無くす
蚊の発生を防ぐために、庭になるべく水たまりをつくらないようにしましょう。庭に放置したバケツやトレイなど、意外と水たまりはできやすいものです。東京都内の公園を調べた研究では、公園内の大多数の蚊が、ごく少数の雨水浸透桝の水たまりから発生していたという結果になったことがあります。そのため、ボウフラが大量に発生している水たまりを見つけて対処できれば、一気に蚊の数を減らせるかもしれません。
蚊の隠れる場所を減少させる
ボウフラの発生する水たまりの対処が完了したら、蚊の成虫が隠れる場所を減らしましょう。ヒトスジシマカなど一部の蚊の仲間では、薮などに潜んで待機して、人が近づいてきたら血を吸いに寄ってくるという暮らしをしているものがあります。庭の中にそうした場所がなくなれば、蚊がやってくる頻度も少なくなるかもしれません。
蚊の成虫が潜伏するのは、草木が生い茂って茂みになるような場所。他の生き物のすみかにもなるような場所ですが、その分蚊にとっても好適な隠れ場所となります。そうした場所を減らせば、蚊が少なくなる可能性があります。ただし、薮の面積を半分にしたからといって、蚊の数が半分になるとは限らないことには注意しておきましょう。
除草と環境の整備
草むらや笹薮、低木やつるの生い茂った茂みなど、蚊の成虫にとって良い隠れ家となる場所はたくさんあります。そうした場所をきれいにすることで、蚊の発生を抑えることができます。ボウフラの発生する水たまりでも同じことがいえますが、環境を整備して庭を蚊の生息に適さない環境に変えていくことが、蚊の発生を少なくするために重要なことです。
蚊の好む場所を理解する
蚊がどんな場所を好み、どんな場所で暮らしているのかわかれば、自ずと対処すべき方法もわかってきます。どんな場所に蚊が多いのか、どんな暮らしをしているのか、しっかり観察して解き明かしてみましょう。たとえば、真夏に直射日光のあたるような場所には、ほとんど蚊はやってきません。そうしたことも、意識して観察してはじめてわかることです。敵と戦うには、まず敵を知らなければなりません。どんな場所に多いのか、どこから発生しているのか、よく観察してみましょう。
自然な蚊対策:おすすめの屋外ハーブ
香りのするハーブを植えていれば、蚊が寄り付きづらくなるといわれています。そうしたハーブの香り成分は、多くの場合虫にとって嫌な香りなためです。実際に、蚊対策としてハーブを庭に植えている場合もあります。ただし、いずれの場合も少し植えれば良いというものではなく、たくさん植えなければ効果はあまり出ません。そのハーブに蚊がとまって休むことは少なくなりますが、その周りに茂みがあればそちらに潜んで、通常通り血を吸いにくるためです。あくまで一通りの蚊対策が終わったあと補助的に植えるものだと考えておきましょう。
レモングラスの効果
レモングラスの葉っぱの香りには、虫よけの効果があるとされます。レモングラスの成分を含んだ虫よけスプレーなどを使うことで、蚊対策となることがあります。庭に植えて蚊対策とする場合、蚊の隠れ場所が少なくなるとは思いますが、別の場所に潜んだ蚊が血を吸いにくることは依然としてあると思われるので、根本的な解決にはならないかもしれません。
ローズマリーで蚊を遠ざける
ローズマリーの香りには、虫よけの効果があるとされます。葉っぱを少しこすっただけで良い香りがするので、うまく植えれば蚊が近寄りづらくなるかもしれません。隠れ場所になるような植物がローズマリー以外になくなれば、蚊は潜伏しづらくなるはずです。また、ローズマリーの成分を含んだ虫よけスプレーなどを使えば、蚊が近寄りづらくなることがあります。
ラベンダーの蚊対策効果
ラベンダーの香りには、虫よけの効果があるとされます。上手に植えれば、蚊の隠れ場所がなくなって蚊が近寄りづらくなります。ただし、ラベンダーは種類や品種によって香りの強さが違い、あまり香りがしないものもあるので、しっかりと香りのするものを選んで植えるのが良いでしょう。
ミントを使った自然な対策
ミントの香りには、虫よけの効果があるとされます。ミントの成分を含んだ虫よけスプレーを使うと、蚊が寄り付かなくなることがあります。ミントを植えると蚊の隠れ場所が少なくなり、蚊が近寄りづらくなるかもしれませんが、ミント自体は庭での繁殖力がとても強いので、なるべく地植えはしないようにしましょう。
蚊対策スプレーと商品の選び方
虫除けスプレーを使って蚊の対策をするのも有効な方法です。その場合、薬局などで市販されているものを使えば問題ありません。蚊に効く成分は大概入っているので、どれを選んでも一定以上の効果は得られるでしょう。スプレーの種類によって、霧状に散布してそのあと肌に塗るタイプと、煙状に吹きかけるだけのものなどがあります。スプレーではありませんが、蚊取り線香のように腰などにぶら下げるだけのものも多いです。
煙状に吹きかけるだけのものは、大量にかけるとむせてしまう場合もあるので、ちょっと苦手だという場合は他のタイプのものを選びましょう。また、室内で生き物を飼っている場合、蚊取り線香タイプのものはそれらの生き物に悪影響を与える場合もあります。好みや家の状況などをみて選んでみてください。ハーブなどを使ったオーガニックな虫除けスプレーもありますが、ものによってはあまり効果が無いということも少なくないので、そうしたものを使う場合は、可能であれば何種類か買って試してみるのがおすすめです。
おすすめの対策スプレーとその特徴
虫除けスプレーでおすすめは、「天使のスキンベープミストプレミアム」です。同じ会社から出ている他の製品と比べると少し値は張りますが、値段に見合うだけの効果があります。霧状に散布して肌に塗るタイプのものですが、塗ったところにはほとんど蚊が来なくなります。周りに蚊がたくさんいるのに、自分にはとまってこないという少し不思議な状態です。効果があるのは塗った部分の周辺だけなので、肌の露出している部分にはまんべんなく塗るのが大切です。
スプレーの使用時の注意点
虫除けスプレーを使う際には、家で飼育している生き物への影響が極力無いように気をつけましょう。魚やエビ、昆虫などを飼っている場合、室内で虫除けスプレーを使用することで悪影響を及ぼす可能性があります。使う場合は屋外でスプレーしたり、蚊取り線香タイプなら室内では電源を切ったりと、なるべく配慮することが大事です。
また、スプレーは虫除けの成分がきちんと肌にかかってないと意味がありません。スプレーしてから肌に塗るタイプの場合、てきとうに何回か吹きかけただけではほとんど効果が得られないので、きちんと肌の露出しているところにかけてから丁寧に塗るのがおすすめです。また、パッケージの裏面に書いてある注意書きなどをよく読んで、虫除けをしたい虫が対象に入っているか、自分の体質的に問題ないかなどよくチェックしておきましょう。
プロによる蚊対策:専門家のアドバイスとサービス
どうしても蚊がいなくならない場合や、やる時間がない、きちんとできる自信が無いなどの場合は、プロに相談してみるのもおすすめです。経験値のあるプロならば、蚊の発生源を見極め、上手に対処してくれるはずです。迷ったらとりあえず相談してみてください。