毎年3月20日前後にある「春分の日」は、昼と夜の時間の長さが同じぐらいになります。
そのため、昔から「彼岸の中日」といわれることも。
では、なぜそう呼ばれるのか。
この記事では春分の日とは何か、春分のころに花が咲く樹木やおすすめの場所などたっぷりと紹介します!
目次
そもそも春分(しゅんぶん)とは?何の日?
春分の日は、一年を24つの季節に分けた二十四節気(にじゅうしせっき)の4つ目の節気とされ、昼と夜の時間の長さがほぼ同じになるころで、毎年3月20日ごろに訪れます。
春分の日を境に夏至までの間、ゆっくりと昼の時間が伸びていきます。
そもそも中国から渡来したとされる暦(こよみ)において、「立春」が一年で最初の節気です。
「春分の日」としばしば混同されることもありますが、二十四節気においては全くの別物です。
では、一年を春夏秋冬の4つの季節に分け、さらにそれぞれの季節を6つに分けた二十四節気(4×6=24)はどのような節気があるのか。
下記の表が、二十四節気と現在の日付です。
季節 | 二十四節気 | 月 | 新暦の日付 |
春 | 立春(りっしゅん) 雨水(うすい) 啓蟄(けいちつ) 春分(しゅんぶん) 清明(せいめい) 穀雨(こくう) | 1月節 1月中 2月節 2月中 3月節 3月中 | 2月4日ごろ 2月19日ごろ 3月5日ごろ 3月21日ごろ 4月5日ごろ 4月20日ごろ |
夏 | 立夏(りっか) 小満(しょうまん) 芒種(ぼうしゅ) 夏至(げし) 小暑(しょうしょ) 大暑(たいしょ) | 4月節 4月中 5月節 5月中 6月節 6月中 | 5月5日ごろ 5月21日ごろ 6月6日ごろ 6月21日ごろ 7月7日ごろ 7月23日ごろ |
秋 | 立秋(りっしゅう) 処暑(しょしょ) 白露(はくろ) 秋分(しゅうぶん) 寒露(かんろ) 霜降(そうこう) | 7月節 7月中 8月節 8月中 9月節 9月中 | 8月8日ごろ 8月23日ごろ 9月8日ごろ 9月23日ごろ 10月8日ごろ 10月24日ごろ |
冬 | 立冬(りっとう) 小雪(しょうせつ) 大雪(たいせつ) 冬至(とうじ) 小寒(しょうかん) 大寒(だいかん) | 10月節 10月中 11月節 11月中 12月節 12月中 | 11月7日ごろ 11月22日ごろ 12月7日ごろ 12月21日ごろ 1月5日ごろ 1月21日ごろ |
もともとは古代中国で作られたもので日数によって分けていましたが、現在では太陽の位置から日割りして日付を定めているようです。
また、中国と日本では季節の流れが少し違います。
「季節感のずれ」を補足するために日本では「節分(せつぶん)」「彼岸(ひがん)」「土用(どよう)」「八十八夜(はちじゅうはちや)」などの「雑節(ざっせつ)」も取り入れて、1年を調節しているようです。
昼と夜の時間が同じぐらいである春分の日は、太陽がちょうど真東から昇って、真西に沈みます。
日本では昔、真西に極楽浄土があると信じられていたため、「先祖の魂と通じ合える日」とされる春分の日は「彼岸の中日」とも呼ばれています。
さらに、春分の日は「自然をたたえ、生物をいつくしむ日」ということから、国民の祝日に定められたとされたようです。
ちなみに、この二十四節気をさらに細かく3分割したものを「七十二候(しちじゅうにこう)」と呼び、72つの節気があります。
2023年の春分(しゅんぶん)はいつ頃?
2023年の春分の日は、3月21日(火)です。
黄道を24等分した二十四節気によって日付が決まるので、毎年同じ日付とは限らないのでカレンダーでチェックしてみましょう!
ちなみに2023年以降の春分の日は、下記の日付となっています。
- 2024年(令和6年):3月20日(水)
- 2025年(令和7年):3月21日(金)
- 2026年(令和8年):3月20日(金)
春分(しゅんぶん)のころ【季節を感じる樹木】
まだまだ寒い時期でもある春分の日。
花を咲かせる樹木は少ないですが、いくつかあります。
ここでは、春分のころに花を咲かせる樹木を紹介します。
春分のころ|花を咲かせる木
春分のころに花を咲かせる樹木は、以下の種類です。
- エドヒガン
- ミツマタ
- モクレン
- コブシ
- ボタン
- ユキヤナギ
- レンギョウ
エドヒガン
3月ごろから見ごろを迎え、春分の代表的な樹木ともいえるエドヒガン。
サクラの代表的な品種であるソメイヨシノの片親としても知られ、日本に自生する天然のサクラです。
エドヒガンはサクラの中で最も寿命が長く、樹齢千年を超えるものが日本各地にあり天然記念物に指定されています。
関東を中心に自生しているものが多く、彼岸の時期に咲くことから「江戸彼岸(エドヒガン)」と名付けられたようです。
そのため、春分の日を代表するような花木でもあります。
ミツマタ
3〜4月ごろにかけて地面から軽やかに伸びた幹が3つに枝分かれをし、枝先に小さい花が集まって丸いぼんぼんのような姿になるミツマタ。
黄色やオレンジ色の球体状の花は上品な甘い香りを放ち、庭木として植えればその香りを楽しめる風勢のある景色を演出してくれます。
ほかの植物よりも花が早く咲くので、春分の日ごろには花が満開となることも多い木。
低木でも存在感が強く、早春に重宝される庭木にもなります。
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モクレン
空へ反りかえるように短く枝分かれをし、その先端にカップのような薄紫色の花が咲くモクレン。
春分の日ごろには花が満開になり、上品で圧倒的な存在感を見せます。
比較的寒さにとても強く、氷点下15℃を下回るような場所でも枯れずに、たくましく育ちます。
高温多湿な環境には弱いですが、湿気がたまらない場所で管理すれば、花だけでなく秋に鮮やかなピンク色の実も観賞できますよ。
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コブシ
モクレンの一種であるコブシは、春分の日ごろになると枝先に次々とレモンのような爽やかな甘い香りのある白い花を咲かせます。
天に向かって花が咲くモクレンとは違い、花びらが地面の方向へ垂れるように咲くのが特徴です。
秋には先端がしゅっと尖った楕円形(だえんけい)の葉が黄色く紅葉し、ユニークな形をした赤い実も観賞できます。
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ボタン
「立てば芍薬(シャクヤク) 座れば牡丹(ボタン) 歩く姿は百合(ユリ)の花」と、女性の姿や立ち振る舞い形容した言葉にも登場するボタン。
枝分かれした先に横向きになって美しい大輪の花が咲くことから、女性が腰かけているように見える様子を表現しているようです。
春分の日には赤やピンク、一重咲きや八重咲きなど色とりどりの花を観賞できます。
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ユキヤナギ
春分の日ごろになると枝垂れた枝に小さな白い花がたくさん咲き、まるで滝が流れるような豪華な姿になるユキヤナギ。
地面から無数に伸びた長い幹と枝葉は風に吹かれるとしなやかになびき、フローラルな甘さのある花の香りがただよいます。
陽の光をたっぷりと浴びたユキヤナギは春に花が咲いたあと秋に返り咲きすることもあり、赤やオレンジの紅葉と一緒に楽しむこともできます。
レンギョウ
白味がかった茶色の幹から、枝いっぱいにバナナのような形をした黄色い花がぶら下がるように咲くレンギョウ。
3月中旬ごろから長く伸びた枝の節から花がパッと開き始め、4月になる前には満開を迎えます。
「希望」の花言葉をもつレンギョウは春の訪れを知らせる樹木として知られ、昔から公園や道路の寄せ植えとして使われています。
春分(しゅんぶん)といえば【行事や食べ物】
「自然をたたえ、生物をいつくしむ日」であり、国民の祝日である春分の日。
ここでは、春分のころに行われる行事と食べ物について紹介します。
春分の行事
春彼岸
彼岸の中日ともいわれる春分の日。
前後3日間をあわせた7日間を彼岸と呼び、冬の厳しい寒さに別れを告げる意味として手をあわせるようです。
さらに7日間のうちメインとなる春分の日は、ご先祖様への感謝の意味を込めてお墓参り、お墓・仏壇の掃除、お供物などの供養を行います。
元々は自分自身の日頃の行いを見つめて、改め直すのが古い習わしといわれることも。
春分の食べ物
ぼた餅(おはぎ)
お彼岸と切り離せない日でもある春分の日には、お供物である「ぼた餅」が定番です。
一般的には「おはぎ」といいますが、春に食べるおはぎのことをぼた餅と呼び分けています。
蒸したもち米とうるち米にあんこを付けたぼた餅は、春分の日ごろに咲くボタン(牡丹)の花のように見えることから「ぼたん餅」といわれるようになったようです。
また元禄時代の書物によると、ぼた餅は「民家の食にして貴人の食するは稀(まれ)なり」と記されていて、昔から庶民の和菓子として食べられていたことがわかります。
さらに、江戸時代にはお彼岸の時期になると、ぼた餅を配る風習が生まれたようです。
ちなみに、ぼた餅に使われる餅やアズキには邪気を払うパワーがあるとされ、縁起良い食べ物としても扱われます。
ツクシ
和歌では季語として扱われることもあるツクシ。
春の代表的な食材として知られ、春分の日ごろには田畑や野原でたくさん収穫ができます。
春の山菜としておひたしや天ぷらで食べると、春分の日の料理としてぴったりです。
フキノトウ
早春に地面から顔を出すように芽を出すフキノトウ。
花の蕾(つぼみ)のことを指し、日本の田畑や野原で見られる山菜です。
新鮮なものは苦味やえぐみが少なく、天ぷらとして食べると口の中に爽やかな香りが広がります。
ハッサク
日本を代表するミカン科のハッサクは、厚みのある果皮をむくとぷちっとした食感のある甘酸っぱい果肉がぎっしりと詰まっています。
通常は11〜12月ごろから収穫が始まりますが、しっかりと完熟させた「木なり」は3月中旬ごろから収穫時期を迎えます。
そのため、春分の日には皮をむいて、デザートとして食べるのがおすすめです。
春分(しゅんぶん)の時期に【おすすめの場所】
一年で最も寒い時期とされる立春ですが、この時期でしか見られない・楽しめない場所がたくさんあります。
ここでは、春分の日におすすめの場所を3つ紹介します。
四賀福寿草まつり
春分の日ごろになると長野県松本市にある赤怒田(あかぬた)福寿草公園で「四賀福寿草まつり」が開催され、園内のフクジュソウが満開に咲きます。
フクジュソウは春の訪れを告げる縁起の良い花とされ、古くから人々に親しまれています。
寒い長野県では開花時期が遅く、3月上旬〜4月上旬ごろまで楽しめるようです。
- 所在地:〒399-7415 長野県松本市四賀会田118-1 赤怒田福寿草公園
- 開園期間:2023/03/04(土)〜3/26(日)※フクジュソウの開花状況に応じて変更あり
- 開園時間:AM10:00〜PM3:00
偕楽園
日本三名園の1つとして数えられる茨城県水戸市にある「偕楽園」。
春分の日ごろである3月には園内にある約3,000本の早咲きの梅が満開を迎えます。
梅はおよそ100種類ものの品種が植えられていて、遠くから見ると白やピンクの海のように見えます。
通年3月下旬ごろまで見頃を迎えているようなので、気になる方はぜひ足を運んでみてください!
- 所在地:〒315-0912 茨城県水戸市見川1-1251
- 開園時間:2月中旬〜9月30日:AM6:00〜PM7:00、10月1日〜2月中旬:AM7:00〜PM6:00
- 料金:一般:大人300円 小人150円、団体:大人230円 小人120円
- 駐車場:駐車場あり(多数)
なばなの里
三重県桑名市にある「なばなの里」では、春分の時期を迎えると園内のウメやサクラ、さらにはチューリップなどの草花を四季折々に楽しめます。
特に3月からではサクラが満開を迎えるころで、3月上旬ごろに早咲きの「カワヅザクラ」が、3月下旬ごろから「ソメイヨシノ」「シダレザクラ」「ハナモモ」が見ごろを迎えます。
春分の日に行けなくてもその時期に咲く花木や草花のリレーが続くので、観賞を見逃す心配もあまりありません!
所在地:〒511-1144 三重県桑名市長島町駒江漆畑270
開園期間:年中(休園日は年によって変更あり)
開園時間:AM10:00〜PM9:00 ※週末はPM10:00まで
駐車場:無料駐車場あり(多数)
まとめ
昼と夜の時間の長さがほぼ一緒になる「春分の日」。
暦の中では4番目の節気として存在し、春の中盤に差し掛かったことを示す日でもあります。
また、真西に太陽が沈むことから秋分の日と並んで極楽浄土に一番近い日として「彼岸の中日」とも呼ばれることも。
お彼岸とは切っても切れない存在であり、ぼた餅などのお供物を見ることが多くなるでしょう。
春分の日ごろになるとサクラが本格的に開花シーズンを迎え、暖かい場所であればお花見ができるところもあると思います。
ぜひ、春分の日には屋外に足を運んで、自然の美しさを堪能してみてください。
愛知県稲沢市生まれ。稲沢市が「日本四大植木産地」であることもあり、幼少期から植木に囲まれて成長。
東京農業大学卒業後、名古屋市内の造園会社に就職。公園の整備工事から国交省事業の国道整備工事における土木及び街路樹等の植栽工事に現場代理人として携わる。
リゾートガーデンスタイル専属の庭師×Webコンテンツクリエイター。 カナダのトロントで造園士を、その後日本で花屋のバイヤー・鉢物の管理・アドバイザーを経験した後、ヤシの木を主体とするリゾート・ドライガーデンの造園士に。 現在は、リゾートガーデンスタイルの社会福祉施設・DOG CAFEの専属庭師に加え、畑の開拓・管理、SNSも兼務。 植物を専門とするWebコンテンツクリエイター、ガーデニング商品の監修者としても活躍中。