一面の綺麗な芝生をつくろうと思ったら、実際には小さな雑草が生える芝生になってしまった…。そんな経験、ありませんか?この記事では、芝生によく生える雑草と、その対策についてご紹介します。

目次

雑草対策で芝生を綺麗に保つ5つの方法

芝が張られた庭

 芝生を綺麗に保つためには、いくつかの方法があります。雑草を引っこ抜くなど直接駆除する方法もあれば、雑草が生えにくい環境をつくることで対策する方法もあります。様々な視点から雑草対策を行って、一面の綺麗な芝生を目指しましょう。
 また、紹介する方法の多くは、それ一つやっただけでは完全な対策とはならないものなので、複数の方法を併用して同時進行で進めていくのがおすすめです。


芝生用の除草剤を使う

 芝専用の除草剤を使って、雑草を直接駆除、あるいは発芽させないようにする方法です。
 除草剤と聞くとあまり良いイメージを持たない方もいるかもしれませんが、除草剤は厳しい試験をクリアして製造されるものなので、用法容量を守って正しく使えば、安全で効果の高いものになります。
 注意書きをよく読んで、使用する際の風や周囲の条件、濃度や量などを必ず守って使うようにしましょう。


駆除したい雑草に合わせて選ぶ

 除草剤には、種類によってどの雑草に効くのか、あるいはどの芝に使うことができるのか、という条件が決まっています。
 たとえば、広葉雑草(タンポポのようなキク科やクローバーのようなマメ科など、葉っぱの幅広い種類の雑草)に効くものや、スズメノカタビラなどのイネ科雑草に効くものなど、種類によってその効果は様々です。
 また、日本芝には使って良いが西洋芝には使っていけないものなどもあります。庭の芝生について、どの雑草を駆除したいのか、庭の芝に使っても問題ない除草剤なのか、しっかりチェックしておきましょう。


茎葉処理剤と土壌処理剤

 芝に使える除草剤には、大きく分けて発芽した後の雑草に対して使用して、その雑草を枯らすことができる茎葉処理剤と、土の中にある発芽する前の雑草の種に対して使用して、その発芽を抑える効果のある土壌処理剤があります。
 茎葉処理剤はすでに発芽した茎や葉っぱに使用して枯らすものなので、土の中の種の発芽を防ぐことはできず、逆に土壌処理剤は多くの場合発芽した雑草には効果がありません。前述した効く雑草の種類と併せて、茎葉処理剤と土壌処理剤のどちらに効果がありそうなのかよくチェックしておきましょう。
 土壌処理剤の場合、夏雑草が発芽する前の春先や、冬雑草が発芽する前の秋口などに使用することが多いです。


手で地道に引っこ抜く

草むしりをする人

 手で地道に引っこ抜く方法です。シンプルですが、雑草の量が少ない間は、こちらの方法でなんとかなる場合も多いです。また、除草剤を使用しない、できない場合はこの方法を主軸に対策を行うことになります。
 雑草を引っこ抜く際、地面から上の葉っぱだけむしり取ってもまた再生してきてしまってあまり意味がないので、根っこや地下茎からしっかり抜くようにしましょう。タンポポのようなまっすぐ下に伸びた根っこを抜き取りやすい器具なども販売されているので、雑草の種類によってはそれらも役に立ちます。
 ただし、この方法はある程度時間と労力が確保できる場合に成り立つものなので、あまりにも雑草が多くて取り切れない場合や、長時間作業する体力がない場合にはおすすめできません。抜いても抜いても生えてくる雑草にイライラさせられるだけになってしまいます。
 そうした場合は、素直に他の方法を使って駆除することにしましょう。

芝生を元気に保つ

 芝生が一部枯れて穴があいたような状態になったり、衰退してあまり茎や葉を広げられていない場合、その隙間に雑草が生えやすくなります。
 もちろん、元気な芝生を保っていても雑草が生えてこないわけではありませんが、密に芝が生い茂っている方が、雑草の生えられるスペースは少ないです。適度な芝刈りや施肥、病害虫の防除などを行うことで、元気な芝生を保つことができます。
 実際にはそれが一番難しいところではあるのですが、他の雑草対策も行いつつ、平行して芝生を元気に保つことを意識してお手入れしてみてください。


秋冬の肥料を控える

 無駄な肥料を控えることで、雑草を成長しにくくする方法です。
 たとえばコウライシバでは、9月以降には肥料を与えない方が良いとされています。秋になると、冬に葉っぱを広げて成長し、翌年の春や夏に花を咲かせるタイプの雑草が芽生え始めます。秋に肥料を与えることで、それらの雑草が成長してしまうことになるのです。
 肥料を植物のご飯のようなイメージで捉えている方は意外に多く、なんとなく肥料をあげてみたくなるような場合もあるのですが、秋口にはグッとこらえて肥料をあげず、見守っておいてください。


雑草が生える隙間を減らす

 芝生を元気に保つことと通じるのですが、雑草がなるべく生えないように隙間を減らすことで、雑草抑制につながります。
 たとえば、芝生をホームセンターなどで購入する際、四角い板のような状態で売られていると思うのですが、それを庭に敷いて植えた際に、その芝生と芝生に空いた隙間がいつまでも残っていると、そこから雑草が生えてくることがあります。
 それ以外にも、頻繁に人が踏む場所の芝が一部剥げて、そこから雑草が芽生え、地下茎を伸ばしたり種を飛ばしたりして芝生の中に侵入してくるような場合もあるでしょう。
 庭に隙間が多いと、そこから芝生内に雑草が入ってくるきっかけになります。すべての隙間を埋めろというわけではありませんが、芝生の周りの隙間をなるべく埋めておくと、雑草が少し減らせるかもしれません。

雑草が生えない庭にするためのコツとは

草刈り

 芝生に雑草が生えないようにするには、雑草が生えない庭を目指す必要があります。
 雑草として扱われる植物の多くは人の生活圏で子孫を残すことに特化した植物なので、それを防ぐことは容易ではありません。
 しかし、完全に防ぐことはできないまでも、何も対策しないのと少しでも対策しているのとでは雑草の量や雑草駆除の手間に大きな差があります。どんな方法で芝生の雑草を生えにくくできるのか、しっかりチェックしておきましょう。

芝生を密に茂らせる

 芝生を密に茂らせることで、雑草が生えにくくなります。多くの雑草は、ライバルとなる他の植物がいない場所でいち早く子孫を残すことが得意なので、既に他の植物が茂っている場所にはなかなか入ることができません。
 そのため、スカスカであまり元気のない芝生より、元気で密に葉が茂る芝生の方が雑草の生育に適していないというわけです。
 とはいえ、元から背の低い芝生では雑草の生えるちょっとした隙間ができやすいので、いくら芝を茂らせてもそれだけでは完全に雑草を防ぐことは難しいです。あくまで方法の一つと考え、他の方法と併用しながら雑草対策をしていきましょう。

見つけた雑草はなるべく早く対処する

 雑草の発芽を見かけたら、なるべく早く抜き取って対処することが大事です。雑草の中には、わずか1か月のうちに次の子孫を残すようなものがあります。
 また、地下茎で繁殖する雑草の場合、あちこちに地下茎を伸ばしてはびこった後での駆除はかなり難しいです。
 そのため、少しでも芝生の葉っぱとは違う草が生えているのを見かけたら、なるべく早く抜き取って駆除するようにしましょう。小さい芽生えだからといって油断していると、たくさんの種を撒かれたり地下茎で芝生の隙間を縫ってはびこったりして、気づいたころには取り返しがつかなくなります。
 雑草がはびこる前に対処することで、雑草の生えにくい庭をつくることができます。

芝生の様子を日頃から見ておく

 日頃から、芝生に何か変化がないかよく見ておくのも重要です。芝生が剥げていたり枯れていたりしたら雑草のすみかになるし、端っこで芽生えた小さな雑草が駆除の難しい雑草になるかもしれません。
 変化に気づくことのできる目を養っておくことで、早い段階から雑草対策ができるようになり、結果的に雑草の生えにくい庭ができます。
 もちろん、常に監視するように見るということではなく、芝刈りのついでになにか変化がないかチェックしてみる、くらいの意識を持つというイメージです。

芝生に生えやすい雑草の種類とは

スズメノカタビラ

 芝生に生える雑草の中には、芝生に生えやすい種類のものがあります。芝生の草丈や芝刈りの頻度などにマッチした雑草の種類があるためです。それらの特徴や対処方法をよく覚えておくことで、芝生の雑草対策が楽になります。
 芝生によくみられる雑草の共通点としては、背が低いこと、芝刈りに耐えられること、芽生えが小さい(芝生の隙間からでも芽生えられる)ことなどがあります。
 どんな種類がいてそんな対処方法があるのか、しっかりチェックしておきましょう。

スズメノカタビラ

 スズメノカタビラは道ばたのコンクリートの隙間などによく生える種類の雑草で、芝生にも生えて問題になることがあります。
 厄介なのは、芝と同じイネ科の植物なので、芝生の中に生えていても見分けがつきづらいこと。気づいたら種を残して繁殖されてしまうというわけです。ほとんど一年中開花結実するのも厄介なところで、どこか特定の時期に対策をすれば良いというものではなく、日ごろから目を光らせていなければいけません。
 ゴルフ場などでも問題になる植物ということもあり、芝には効かずスズメノカタビラには効くという除草剤も開発されています。増えすぎて手に負えない場合はそれを使用して対処しましょう。
 手で引っこ抜いて対処する場合、芝とスズメノカタビラを見分けるのが難しくなりますが、スズメノカタビラは冬でも葉っぱを茂らせていることと、葉っぱの先がボートのように折れ曲がっていることが特徴になります。
 また、スズメノカタビラは冬でも葉っぱを茂らせているので、冬に枯れる芝の場合はパッと見でわかるようになります。節から根っこを出すツルスズメノカタビラを除けばふつうは横に広がることは無いので、地道に一つずつ引っこ抜くようにしましょう。

オオアレチノギク

 オオアレチノギクは、空き地などによく生える雑草です。種がとても小さく、芝生の隙間でも発芽できるためか、芝生の雑草として問題になることも多いです。
 成長すると1mを超えて大きくなるのですが、冬の間はロゼット葉という地面に張り付いた葉っぱを広げるため、どんどん芝の育つ場所を奪っていってしまいます。
 対処法としては、広葉雑草に効く除草剤を使うか、地道に手で抜き取るというものになります。地道に抜き取る場合、根っこがタンポポのように太くまっすぐ伸びるタイプなので、そうした雑草を抜き取りやすい器具を使うと良いでしょう。
 幸いに種が地面の中で何年も眠ることがなく、地下茎で広がることもないので、すべて抜き取ればいったんは駆除ができたことになります。しかし、風で遠くからとても小さい種が飛んでくるため、いったん駆除すれば終わりというものではないことに注意しておきましょう。

ハマスゲ

 ハマスゲは、カヤツリグサ科に属する雑草で、芝生でよく見かけます。地中を伸びる地下茎であちこちに広がり、低い位置に葉っぱを広げるのが特徴で、その成長の仕方は芝によく似ています。見た目も芝によく似ているので、気が付いたら芝生の一部がハマスゲの群落に置き換わっていたという場合があるのが厄介なところです。
 ハマスゲの対策としては、除草剤を使って駆除することが挙げられるのですが、キク科やマメ科などの広葉雑草に効果のある除草剤の場合、広葉雑草ではないハマスゲには効果がない場合があります。除草剤を選ぶ際に、カヤツリグサ科雑草にも効果があるかどうかをよくチェックしておきましょう。
 また、手で抜き取る場合は、地下茎をすべて抜き取る必要があるので、取り組む際は長い戦いになることを覚悟しておくのがおすすめです。
 見分け方としては、葉っぱの色が芝より濃くて光沢があり、真ん中に折れ目が入っているのがハマスゲやその仲間のカヤツリグサ科雑草の特徴です。慣れてくればパッと見でも芝との違いがわかってくるかと思います。

チドメグサ

 チドメグサは、湿ったコンクリートの隙間などによく生える雑草です。小さなコインのような葉っぱを広げ、地面を這うように茎が伸びて広がる特徴があります。芝生でも、芝の隙間から芽を出し、広がっていく様子がみられます。
 ものが小さいのでしっかり抜き取るのが難しく、花や実が目立たないので気づいたころには種を残されており、一通り抜き終わったと思っても再び発芽してしまいます。
 対処法としては除草剤を使うのが無難かと思いますが、手で抜き取りを行う場合、茎のかけらをとり逃さないようにしっかり抜き取るようにしましょう。また、春から冬まで長い間花が咲くので、種を残される前にできるだけ早く対処するのがおすすめです。

失敗しない雑草対策の注意点

悩む女性

 雑草対策をするにあたって、注意しておいた方が良いポイントがいくつかあります。雑草対策に関する考え方が間違っていると、せっかく手間暇かけて雑草対策したのに、結果的にあまり雑草が減らなかったり、気づいたら雑草が増えているということになりかねません。
 対策を成功させるためにも、注意点をしっかり覚えておきましょう。

対策を後回しにしない

 よくあるのが、「雑草の芽生えを見かけてもいったんスルーして後で駆除しようとする」というものです。雑草の芽生えに気が付かないというパターンもあります。
 雑草対策は早め早めに対策を行うのが重要です。図鑑ではしっかり成長した大きな見た目の写真が使われているものも、環境によっては小さい姿のままで花を咲かせ、こっそり種をつけていることがあります。
 また、地下茎で広がるタイプの雑草の場合、広がれば広がるほど抜き取りが必要な量は増えるので、単純に早めに抜いてしまった方が手間はかかりません。
 あとでやろうと思っていると、あっという間に種を残してネズミ算的に増えてしまう場合もあるので、基本的に駆除や対策は早めにするのがおすすめです。

種の供給源を把握する

 いくら駆除しても雑草が生えてくるという場合、近くに種や地下茎の供給源がある可能性があります。近くに供給源があるのであれば、そこを断たない限りは永遠に駆除が終わらないという場合もあります。
 どこからやってきた雑草なのかは、雑草の種類ごとによく考えておくようにしましょう。例えば、芝生の端っこにたくさん種を付けている雑草が無いか、近所の草むらに風で飛ぶタイプの種をつけた雑草が群生していないか、隣の花壇から地下茎が伸びてきていないか、といったものです。
 必ずしもすべての供給源をつぶせるとは限りませんが、供給源がわかれば取れる対策の幅が広がる可能性があります。「雑草は放っておけば生えてくるもの」という価値観は捨てましょう。
 ただ抜き取りのために手を動かし続けるのも時には重要ですが、いったん冷静になってどこからその雑草が来ているのか考えてみるのがおすすめです。

芝刈りをしすぎない

 雑草が生えてくるからといって、通常より芝刈りの回数を増やしたり、刈高を下げたりするのはあまりおすすめできません。もちろんそれで対策できる雑草が無いわけではありませんが、芝生によく生えてくる雑草は、芝刈りにも耐えて繁殖します。いくら頑張って芝刈りをしても、芝が無事なら雑草も無事ということがあるわけです。
 かえって芝を傷めてしまう可能性もありますし、頑張って雑草対策をしているつもりが、ほとんど効果が無くてむしろ雑草が増えていた、ということになりかねません。

まとめ

庭に置かれた除草剤

 芝生の雑草は、対策が難しい厄介なものも多いです。しかし、こと芝生の雑草対策に関しては、古くから様々な場所で考えられてきており、様々な除草剤も開発されています。綺麗な庭を保つために、それらの歴史は存分に活用していきましょう。
 また、いくらやっても雑草対策がうまくいかない、雑草対策に取れる時間があまりないという場合には、スマイルガーデンなどのプロに頼んでみるのもおすすめです。プロからアドバイスを聞きながら、その後のお手入れに活かしてみるのも良いでしょう。ぜひ検討してみてください。

氏永 勝之
監修者 smileグループCEO
株式会社ガーデンメーカー 代表取締役
愛知農園植木苗木株式会社 専務取締役
一般社団法人ガーデンビジネス協会 代表理事
氏永 勝之

愛知県稲沢市生まれ。稲沢市が「日本四大植木産地」であることもあり、幼少期から植木に囲まれて成長。
東京農業大学卒業後、名古屋市内の造園会社に就職。公園の整備工事から国交省事業の国道整備工事における土木及び街路樹等の植栽工事に現場代理人として携わる。

執筆者 瀬尾一樹

樹木医です。木も草も大好きで、将来は自分だけの森を持ちたいと思っています。木の美しさや育てる楽しさだけでなく、生きものとしての生態的な面白さも伝えていきたいです!好きな木はケヤキです。