ご家庭の庭でも育てられるイチジクの木。
木は育つのに、うまく実がならなくて困ったことはありませんか?なぜ実がならないのか、どんな育て方をしたら良いのかなど、項目ごとにご紹介していきます。
目次
イチジクの木に実がならない3つの原因とは
イチジクの木に実がならないのは、大きく分けて3つの原因があります。
お庭のイチジクがどれかに当てはまらないか確かめてみましょう。
もちろん、これら3つ以外の原因で実がならない場合もあるので、いずれも全く心当たりが無いという場合は別の原因を探ってみてください。
水不足
イチジクは初夏に熟すものと秋に熟すものがあり、品種などによって片方つくものと両方つくものなどあります。
そのうち、秋に熟すものは夏の間に果実が太るため、水不足になるとしおれてしまうことがあります。
夏につぼみらしきものが出ているのは確認したけどいつのまにか落ちている、という場合はこちらが原因かもしれません。
梅雨明けからの暑い時期には朝と夕方に水やりを行ったり、地面に敷き藁をするなどして乾燥を防いだりといった対策ができます。
湿気で腐る
イチジクの原産地はアラビア地方と言われ、全体的に乾燥する気候の地域です。
日本は比較的雨が多い国で、湿気が多いと果実が裂けてしまう場合があります。
特に、梅雨時期に成熟する夏果では注意が必要です。
実がなりかけているのは見たけどいつのまにか落ちている、実がなったけどグズグズになって食べられないなどはこちらが原因かもしれません。
混みあった枝を剪定して風通しを良くするなどの対策が必要です。
日当たり
イチジクは多少の耐陰性はありますが、日陰だと実付きが悪くなります。
日陰に植えていて、実の数が少なかったり全く無かったりする場合はこちらが原因かもしれません。
葉っぱのついた状態で急に日陰から日なたに植え替えたり、周りの木を剪定して光を当てたりすると、葉焼けしてしまうことがあります。
できるなら徐々に環境を変えるようにしましょう。
イチジクの木の実らせ方
イチジクの木自体は、枝葉がよく茂り日本の気候でも育てやすい樹木ですが、実をたくさんつけて安定して収穫するためには少しコツが必要な場合があります。
実をたくさんつけるためには、どんな育て方をするのが良いのかチェックしてみましょう。
イチジクの木の育て方とは
イチジクの木は日当たりの良い場所を好み、適度に湿った肥沃な土でよく育ちます。
また、土には石灰を施用しましょう。
肥料は冬の時期に寒肥として有機質肥料を施しますが、与えすぎには注意です。
秋果がつく品種の場合、梅雨明けから夏の間はこまめに水やりをすると水不足になりづらいです。
剪定は葉っぱが落ちた秋から冬に行い、夏果がなる品種では新しく伸びた枝のうちよく育ったものを残し、秋果がなる品種では前の年の実がなった枝を根元の2芽ほどまで切り詰めるようにします。
イチジクの木の実がなるまで何年掛かる?実をつける時期は?
実がなるまでに掛かる時間は、イチジクの木の生長具合や育てる環境によって変わりますが、一般的には植え付けてから2〜3年ほどで実がつき始めます。
ただし、適切な環境や管理を行っていない場合、結実までにもっと時間が掛かることも。
環境や管理方法などによって、結実するまでの年月は変わるので、これよりも早くなることも遅くなることもあります。
また日当たりが悪い場所で育てたり、むやみに剪定したりなどすると、結実開始が遅れる場合や実がつかないこともあるので、適切な管理を心がけましょう。
イチジクの実がつく時期
ザ・キングやビオレドーフィンなど、たくさんの品種があるイチジクですが、基本的に夏果・夏秋果・秋果の3つのタイプがあります。
それぞれで実がつく時期が異なるため、収穫するタイミングも違います。
夏果(なつか)
実る時期:6月〜7月
夏果は、前年に伸びた枝に実がつくイチジクです。
春に葉が出る前から果実がつき始め、6月から7月ごろに収穫ができます。
日本では、比較的温暖な地域で見られるタイプで、初夏の時期に収穫できるので、早く果実を楽しみたい場合には夏果品種がおすすめです。
夏秋果(なつあきか)
実る時期:6月〜11月
夏秋果は、夏果の時期の6月〜11月に続き、その年に伸びた新しい枝にも実をつけます。
2度にわたって果実を収穫できることから、長期間楽しめる品種として人気です。
温暖な地域で多く栽培されており、6月から11月ごろまでは果実が連続的に収穫できるのが特徴です。
秋果(あきか)
実る時期:8月〜10月
秋果は、その年に伸びた新しい枝に果実がつき、8月から10月ごろにかけて収穫が可能です。
夏の終わりから秋にかけて実をつけるため、暑い夏が終わってからじっくり育つのが特徴です。
日本の広い地域で育てやすい品種で、収穫時期がやや遅めになります。
イチジクの品種や地域によって多少前後することもありますが、基本的にはこのようなスケジュールで実がなります。
イチジクの木の寿命って?
イチジクの寿命は環境などにも左右されるので一概にはいえませんが、いわゆる「経済樹齢」といわれる、農家さんが実を収穫して儲かる期間は10~15年くらいといわれています。
そこから先は、木が生きていても実付きが悪くなってくるという形です。
いずれにせよ、日本の気候ではあまり長生きしないことが多いようです。
海外では100年以上生きているイチジクの木もあるといわれていますが、日本では数十年育てば良い方かもしれません。
枯れる事はあるの?
どんな木でもそうですが、イチジクの木は育て方によっては枯れることもあります。
環境が合わずに枯れてしまうことや、肥料のあげすぎなど管理方法の影響で枯れてしまうこと、病虫害の影響で枯れてしまうことも考えられます。
イチジクの実を大きくする方法は?
イチジクの実が小さい、あるいは、なかなか大きくならない…。
そんなお悩みを抱えている方も少なくありません。
イチジクの実を大きく育てるためには、いくつかの栽培ポイントに気をつけることが大切です。
肥料の成分や土壌の状態、植え付け・育てる場所など、基礎からしっかりと管理しましょう。
イチジクの実を大きくするコツ
Point1. 肥料やり|実がついたらカリウムを多めに与え、冬には有機質肥料を元肥として使う
イチジクは肥沃な土壌を好むため、必要な栄養素を十分に与えることがポイント。
特に窒素(N)、リン酸(P)、カリウム(K)がバランス良く含まれた肥料を与えることが大切です。
窒素は葉や茎の生長を促進し、リン酸は実付きや根の発達に役立ち、カリウムは果実の成熟を助けます。
特に実が大きくなる時期には、カリウムを意識した追肥が効果的でおすすめです。
ただし、肥料は与えすぎても、少なすぎてもいけません。
基本的には冬に有機質の寒肥を与えますが、実が膨らむ春〜夏には追肥を行うといいです。
・寒肥:12月〜2月頃、有機肥料(油かす、堆肥など)を根元に施す
・追肥:5月〜7月頃、化成肥料や液肥を薄めて与える
Point2. 水やり|夏の乾燥時期には注意し、朝夕の水やりをする
イチジクは乾燥には比較的強い木ですが、実が大きく育つためには適度な水分が必要です。
特に夏場は実が膨らむ時期なので、水やりを怠ると実が小さくなってしまうことも。
朝夕に土が乾かないよう注意し、地面に敷き藁やマルチングを行うと保湿効果があり、水分をキープできます。
また、イチジクは水はけの良い土壌で育つと実が大きくなりやすいです。
過湿になりやすい土壌では、根腐れを起こし、実の生長が止まってしまうこともあります。
赤玉土や腐葉土など、通気性と排水性の良い土を使いましょう。
さらに土が硬くなりすぎると根がうまく広がらず、実も大きく育ちません。
定期的に土を耕し、ふかふかの状態を保つことが大切です。
・夏場は朝夕にしっかりと水やり
・敷き藁やマルチングで保湿
Point3. 剪定|実をつける枝を優先し、無駄な枝は切り落とす
イチジクの実を大きく育てるには、木の状態も重要です。
枝が混み合っていると光が十分に行き渡らず、実が小さくなる場合も。
冬の剪定で不要な枝を間引き、枝が適度に広がるようにしましょう。
夏果を狙う場合は前年に伸びた枝を残し、秋果を狙う場合は実がついた枝を切り詰めることがポイントです。
・枝が混み合っている場合は冬に間引き
・新しい枝を残して剪定
Point4. 植え付け|日当たりの良い東・南向きに植え付ける
イチジクは日当たりがとても大事。
日がよく当たる場所に植えることで光合成が促進され、実が大きく育ちます。
特に東・南向きや周囲に大きな樹木がない場所に植え付けると良いでしょう。
もし日陰で育てている場合は、できるだけ光が当たる場所に移植することを考えてみてください。
また、イチジクは根っこが広く伸びるため、狭い場所に植えると栄養が不足しがちに。
鉢植えで育てる場合は、2年に1回のペースで一回り大きい鉢に植え替えを。
庭で育てる場合は、スペースに余裕を持って植え付けると良いです。
・南向きで日当たりの良い場所に植える
・広いスペースで育てる
イチジクの木を育てる上での注意点
イチジクの木を育てるうえで、いくつか注意点があります。
育て方が問題無くても、病害虫によって枯れてしまうなどの問題です。
どんな病虫害が発生するのか知っておくだけでも異常を見つけやすくなるので、対処がしやすくなります。
害虫に注意
イチジクの害虫には様々なものがいて、アメリカシロヒトリやオオミノガ、オオワタコナカイガラムシなどの枝葉を食害するものもいますが、中でも被害が大きくなるのがクワカミキリ、キボシカミキリ、ゴマダラカミキリといったカミキリムシ類です。
幼虫が枝や幹の中身を食べて育つので、場合によっては枝や木自体を枯らしてしまうこともあります。
幼虫はフラスと呼ばれる食べかすのようなものを定期的に外に出すので、粉のようなものが地面に落ちていたら注意が必要です。
成虫を見つけたら捕殺したり、被害が大きい場合には成虫の発生初期や直前に薬剤を使って対処しましょう。
病気に注意
イチジクのかかる病気にはいくつかありますが、葉っぱに出る病害には疫病と呼ばれるカビによる病害があります。
葉っぱや果実などに斑点ができ、腐ってしまうというものです。
苗木や幼木だとそのまま枯れてしまう場合もあります。
病原菌は地面に落ちて越冬し、次の年の初夏に雨の跳ね返りによって再び感染します。
病気が出たら出来るだけ早くその部分を切除して焼却処分し、地面に敷き藁をするなどして雨の跳ね返りを防ぐ工夫をしましょう。
地面の水はけを良くすることも大事です。
他には、根に発生する根頭がんしゅ病や紫紋羽病や白紋羽病などがあります。
その中では根頭がんしゅ病は比較的病原性が弱いですが、紫紋羽病と白紋羽病は木を枯らすこともある病害です。
根頭がんしゅ病含め、いずれも一度かかると治療の難しい病気です。
他の木への感染を防ぐために伐採、伐根し、周りの土ごと入れ替えるなどの対処が必要になることもあります。
まとめ
イチジクの木にはどんどん大きくなったり、他の木には無い花や実のつき方をしたりと、イチジクの木ならではの魅力があります。
普通に育てていても楽しい上に、果実がたくさん収穫できたらもっと最高ですね。
たくさん実がなるように、ぜひ育ててみてください。
愛知県稲沢市生まれ。稲沢市が「日本四大植木産地」であることもあり、幼少期から植木に囲まれて成長。
東京農業大学卒業後、名古屋市内の造園会社に就職。公園の整備工事から国交省事業の国道整備工事における土木及び街路樹等の植栽工事に現場代理人として携わる。