庭木としてアセビの木を植えていると、どうしても剪定作業が必要になってきます。アセビの剪定は、他のツツジの仲間と異なり少しコツが必要です。失敗すると樹形が崩れたり、来年花が咲かなくなったりします。アセビの剪定についてやり方や注意点をご紹介します。
目次
アセビ(馬酔木)の剪定方法
アセビはツツジ科の常緑樹で、その育てやすさと花のかわいらしさなどから庭木としてよく用いられています。
春になるとつぼのような形の花を連なるように咲かせ、花にはハナバチなどが集まります。
アセビは漢字で「馬酔木」と書きますが、これはアセビの葉などに含まれる毒性のため、馬が食べるとまるで酔っぱらったようになるということから来ているものです。
庭木として扱いやすく魅力的なアセビの木ですが、大きく育つと人の背を越すくらいに大きくなります。
大きさの調整のためには、剪定を行わなければいけません。
アセビの剪定は仕立て方によっては少しコツがいります。
アセビの剪定方法についてご紹介します。
花がらを摘んでおこう
アセビの花は春先から咲き始めますが、咲き終わったら花がらを摘むようにします。
この作業を行う理由は、花のあとにできる果実や種に余計な栄養を取られないようにということと、花が終わったあとの見た目を維持するため、花がらが病気の原因になるため、といったものです。
やり方としては、花が咲き終わったら、穂のように花がついていた枝(花序枝)ごと切り取ってしまえばOKです。
ただし、アセビはあまり大きな果実をつくらないし、街中では結実率もあまり高くありません。
また、他のツツジ類のように花びらがしおれて残るようなことも無いので、他の庭木と違ってそこまで気にしなくても大丈夫です。
剪定方法1 【切り戻し】
アセビの剪定方法の一つに、切り戻し剪定があります。
アセビを庭木として育てる場合、こちらが最も樹形をきれいに保ちやすい剪定方法です。
アセビは長く伸びた枝の先に葉っぱをまとまってつけるという育ち方をします。
そのため、生垣のツツジ類のような刈り込み剪定を行うと樹形が崩れてしまうため、一本の庭木として育てている場合はあまりおすすめできません。
樹形を崩さないために、切り戻し剪定を行います。
切り戻し剪定のやり方は、伸びている枝を途中の枝分かれの部分で切るというものです。
アセビをよく日の当たる場所で密に葉が茂るように育てると、葉っぱのまとまりの間から葉っぱのまとまりが高く伸びてくるという形になります。
この高く伸びてきた葉っぱのまとまりを付け根から切ると、樹形をほとんど崩さないどころか剪定したことすらわからないような剪定が可能です。
暗い場所でやや枝葉がまばらになっている場合も、同じように切り戻し剪定を行うとあまり樹形が崩れません。
バランスが崩れないように、時々一歩引いて全体を見ながら剪定を行うようにしましょう。
剪定方法2 【刈り込み】
刈り込み剪定は、アセビを生垣として育てている場合に行う剪定方法です。
この方法であれば、一律に刈り込むので手間がかからない上に、生垣らしく形を整えることができます。
一本の庭木として育てている場合は行うと樹形が崩れる場合があるので注意しましょう。
やり方は、刈り込みばさみでザクザク刈り込むだけです。
まず最初に全体を見てどれくらい刈り込むか決めたあと、それに合わせて刈り込みます。
アセビは伸びた枝の先に葉っぱをまとめてつけるので、深くまで刈り込みすぎると葉っぱをすべて落としてしまい、突き出た枝だけになってしまう場合があるので注意しましょう。
生垣の高さや形にもよりますが、上の方が光が当たりやすくて成長しやすいので、きれいな直方体を目指すのではなく、上の方を少し強めに剪定して台形のようにすることを意識すると綺麗に整いやすいです。
剪定に最適な時期とは
アセビを剪定する場合、花が終わってからなるべく時間が経たないうちに行うようにしましょう。
アセビは7月中旬ごろから次の年の花芽がつくられ始めるので、剪定する時期が遅くなると、大事な花芽ごと剪定せざるを得なくなってしまうためです。
晩夏~秋ごろになると、アセビの枝先につぼみのような花芽がみられるようになります。
これが次の年の春になるとそのまま開花するので、切らないようにしましょう。
また、真夏に剪定するとアセビ自体への負担が大きくなるので、その意味でも早めの剪定を行うのが無難です。
大きさの調整などで花芽ができ始めてから剪定を行う場合、暑さが和らいだ秋ごろか、冬の寒さが和らいできた早春ごろに行うのがおすすめです。
その場合も、既にできた花芽をなるべく避けるように剪定するようにしましょう。
手入れ方法と育て方のコツ
剪定以外にも、アセビの手入れや育て方のコツがあります。
上手に育つと、毎年きれいな花をたくさん咲かせることができます。
また、剪定枝などを使って株を増殖させることも可能です。
アセビの手入れや育て方のコツをご紹介します。
日当たりの良い場所で植え付け
アセビは、日当たりの良い場所を好みます。
山に行くと、自生しているアセビをみることがありますが、山の尾根沿いのような日当たりの良い場所に生えていることが多いです。
そのため、アセビを庭に植え付ける場合も、日当たりの良い場所を選んで植えるようにしましょう。
アセビには耐陰性もあるので、暗い場所でも育てること自体は可能です。
ただし、枝や葉っぱがまばらになったり、花があまり咲かなくなったりします。
日当たりの良い場所で元気に育ったアセビの方が、花つきが良くなりやすいです。
また、植え付ける場合はやや水はけの良い土を使うようにして、春先または秋ごろに作業を行うようにしましょう。
最適な水やりで植物の生長を促進
庭に地植えして育てる場合、水やりは基本的に必要ありません。
自然の中で生きる樹木と同様に、基本的には土の中に広く根っこを伸ばして、雨水などから水分を取って育つためです。
しっかり根付いているのに中途半端に水やりをすると、土の表面にだけ根っこが集まり、乾燥により枯れやすい木になってしまいます。
ただし、植え付けてから一か月くらいは、根っこが十分に土の中に伸びておらず水分を取ってこれない場合があるので、土の表面が乾いたらたっぷり水やりを行うようにしましょう。
また、真夏に雨が降らない期間が長く続くと、暑さの厳しい街中で育っているアセビは乾燥で弱ってしまう場合もあります。
アセビは比較的乾燥には強いですが、葉っぱが明らかにしおれている場合や、葉っぱの先端から枯れてきている場合は、水やりをするようにしましょう。
鉢植えで育てる場合は木が根っこを伸ばせる範囲が限られているので、地植えより水不足になりやすいです。
その場合は、雨水だけでは限界があることが多いので、鉢植えの場合は土の表面が乾いたらたっぷり水やりをするようにしましょう。
効率的な肥料の与え方ガイド
アセビに肥料を与える場合、冬と初夏ごろの2回与えるのがおすすめです。
冬は1月から2月ごろに有機質の肥料を、初夏は5月の下旬ごろに化成肥料や油かすを与えるようにします。
十分に土が肥えているなら、肥料を与えなくても花が咲く場合もありますが、土が十分に肥えていないと、花が咲かなかったり生育がうまくいかなかったりします。
たくさん花を咲かせたい場合は、肥料を忘れずに与えるようにしましょう。
ただし、たくさん花を咲かせたいからと肥料を与えすぎると、逆に枯れる原因になってしまうことがあるので、肥料を与えながら適切な量を見極めるのが大切です。
挿し木で株を増やす方法
アセビは、枝を切って発根させる挿し木で株を殖やすことができます。
枝を切って土に挿し、発根したら植え替えて一つの苗にするというものです。
これにより、様々な育て方をすることができますし、剪定枝を有効活用することもできます。
挿し木で増やした個体はすべて親株と同じ遺伝子を持ったクローンなので、それぞれの株が全く同じ性質を持っています。
そのため、並べて植えて一律の形に仕立てる生け垣にもおすすめです。
やり方は、芽吹いてから2年目以降の木質化した枝を斜めに切り、1時間ほど水につけて水を吸わせた後、葉っぱをカットして減らし、鹿沼土などの無菌の土に挿すというもの。
ホームセンターや園芸店などで挿し木用の発根促進剤も売られているので、そうしたものを使ってみるのもおすすめです。
土に挿したあとは、土が乾かないように定期的に水をやりつつ、半日陰で管理を行います。
枝を斜めに切るのは、根っこのついていない枝が少しでも水を吸える面積を増やすためで、葉っぱをカットして減らすのは、挿し木した枝が水を吸う量より蒸散により出ていく水の量の方が大きくならないよう調整するためです。
土は病原菌のいる可能性がある腐葉土などは使わずに、赤玉土や鹿沼土などの無菌の土を使用します。
うまくいけば1〜数ヶ月ほどで発根するので、その後別の鉢などに植え替えれば完了です。
殖やした株は並べて植えても良いですし、それぞれ別の育て方をしてみるのも良いでしょう。
様々な楽しみ方を探してみてください。
害虫対策|アセビで要注意の病害虫
アセビは葉っぱなどに毒があるうえに、硬くて丈夫な葉っぱをしています。
そのため、アセビにつく害虫はあまり多くありません。
しかし、一部の虫はアセビの葉っぱを食害します。
アセビにつく害虫の中で、比較的よくみられるものをピックアップしてご紹介します。
トサカグンバイ
トサカグンバイによる被害は、アセビでよくみられるものの一つです。
トサカグンバイは葉っぱの汁を吸う吸汁性害虫で、葉っぱの裏によく潜んでいます。
アブラムシくらいの大きさをしており、半透明の体に黒い模様が入っているような見た目です。
それぞれの個体はとても小さいですが、集団で葉っぱの汁を吸うため、被害が出ると葉っぱが白くかすれたようになります。
葉っぱの裏面に、黒いフンがこびりついたようにつくのも特徴です。
1年に4回以上世代交代し、4月から9月ごろまで不規則に幼虫が発生します。
その時期に、適用のある薬剤を散布することで対処が可能です。
また、風通しの悪い場所で発生しやすいので、枝を間引くか、風のよく当たる場所に植え替えることで発生しづらくなります。
季節によってはコブシなど他の植物に移動している場合もあるので、トサカグンバイの姿をしっかりと確認してから防除を行うのが重要です。
キシタエダシャク
キシタエダシャクは、アセビ以外のツツジ類にも発生する害虫です。
ガの仲間で、幼虫がアセビやツツジ類などの新芽を食害します。
幼虫は新芽の芽吹く時期に見られるのが特徴で、4月ごろ孵化して5月ごろまでに成長し、6月に成虫がみられます。
その後は卵を産み、その状態で冬を越すため、夏から冬には姿をみることができません。
グンバイムシのように小さくないので、発生量が少なければ直接捕殺することもできますし、適用のある薬剤を散布することで対処することも可能です。
チャハマキ
チャハマキは、アセビ以外にも広葉樹や針葉樹問わず様々な植物に発生する害虫です。
小さなガの一種で、幼虫が葉っぱを糸で綴り合せて巣をつくり、葉っぱを食害します。
トサカグンバイ同様に年に複数回世代交代するため、発生期間は春から秋までと非常に長いです。
また、夏の間に最も被害が多く発生します。
幼虫が発生すると、葉っぱを糸で綴り合せた巣が目立つようになるので、その部分を切除することで駆除が可能です。
他の多くの樹木に発生するので、庭に植えてある他の木から飛んでくることもあるので注意しましょう。
アセビの剪定時の注意点
アセビは、葉っぱなどに毒を持っています。
ただし、触っただけでどうこうなるようなものではありませんし、山菜と間違って食べるような見た目もしていません。
そのため過剰に恐れる必要は全く無いのですが、小さなお子様など、誤って口に入れることが無いよう剪定枝はきちんと管理しておきましょう。
まとめ
アセビの剪定は、仕立て方によってはコツがいるので、うまくやらないと樹形が崩れたり生育が遅くなったり、花が咲かなくなったりします。
また、来年の花芽がつくられる時期の都合で、剪定時期も夏場になることがあり、量が多いと大変です。
うまく剪定するのにあまり自信がない場合は、smileガーデンなどのプロに依頼するのもおすすめです。
知識と経験のあるプロになら安心して任せられますし、もし自分でも剪定できるようになりたいのなら、プロの技を見て勉強してみても良いでしょう。
ぜひご検討ください。
愛知県稲沢市生まれ。稲沢市が「日本四大植木産地」であることもあり、幼少期から植木に囲まれて成長。
東京農業大学卒業後、名古屋市内の造園会社に就職。公園の整備工事から国交省事業の国道整備工事における土木及び街路樹等の植栽工事に現場代理人として携わる。
植物・自然Webライター・kindle作家 「自然を感じる暮らしがしたい!」からスタートした庭づくり。気づけば小さな森のような庭になっていた。「自然の豊かさ=心の豊かさ」を体感し、シンプルで大切な気づきをkindle本で出版する日々。自然から得られる視点や生きる勇気を届けたいと思っている。