シラカシは常緑のどんぐりの木で、屋敷の防風林や高生垣などに古くから使われてきました。今でも、庭木としてよく用いられています。この記事では、そんなシラカシの剪定方法や病害虫などについてご紹介していきます。
目次
シラカシの剪定方法と剪定時期
シラカシの剪定を行うにあたって、適切な剪定方法や時期などがあります。
生け垣にしたいのか自然樹形にしたいのかなど、自分がシラカシに対して求める姿によっても方法が異なるので、どんな姿にしたいか考えながら見てみましょう。
シラカシの剪定方法
シラカシの剪定は、どんな姿を目指すのかによって剪定方法が変わってきます。
たとえば、四角く剪定して生垣や高生垣のようにしたいのなら、刈り込みばさみなどを使った刈り込み剪定を行います。
森の中に生えているような自然樹形にしたい場合は、枝の途中の枝分かれの部分で剪定し、樹形はそのままで木の大きさだけ小さくする切り戻し剪定を行うのがおすすめです。
ただし、大きさをあまり気にせず、大木に育ってほしい場合は、剪定をしないという選択肢もあります。
庭木を育てるにあたって剪定はしなければならないものと考えている方も多いですが、自然の中で生きる木は当然剪定などされていませんし、剪定不足で木が枯れたり弱ったりすることは基本的にありません。
ご家庭の庭でも環境によっては15mくらいに育つこともある木なので、落ち葉の量や樹形などを制御できる高さに抑えておきたいという場合は切り戻し剪定で定期的に小さくしていきましょう。
シラカシの剪定ポイント
シラカシを剪定する際に、いくつか気をつけるべきポイントがあります。
刈り込み剪定で生け垣のようにしたい場合、四角く刈り込みを行うことになりますが、枝の長さを全体で均一にしてしまうと日がよく当たる上の方だけ枝が伸びて、バランスの悪い形になってしまいます。
そのため、よく日の当たる上の方だけ強めに刈り込んで、台形のような形をイメージして刈り込むのがおすすめです。
切り戻し剪定の場合、枝を途中までたどり、同じような方向に枝分かれした部分の付け根で切るようにします。
ずっと剪定をしているとバランスが崩れていても気づくことができないので、時々少し離れて全体を見るようにしましょう。
また、使う剪定方法は切り戻し剪定が多いですが、基本的には最初に混んでいる枝や密度を下げたい箇所の枝などを付け根から剪定し(枝抜き)、その後切り戻し剪定で整え、それでもうまく短くできない枝を途中で切る(切り詰め)という順番で剪定を行うことできれいな樹形になりやすいです。
枝を切っていくとついたくさん切りたくなってしまいますが、剪定は「いかに枝を残すか」がコツなので、むやみやたらに枝を切りすぎないようにしましょう。
シラカシの剪定時期
シラカシの剪定は、3月ごろの寒さのやわらいできた芽吹きの時期に行うのがおすすめです。
次点で、暖かくなって暑くなりすぎない5〜6月ごろ、もしくは夏が終わって暑さのやわらいできた10月ごろに行うと良いでしょう。
暖かい地域なら冬の休眠期に剪定しても良いですが、北限に近い東北や標高の高い地域など、寒さが厳しい地域ではダメージになる可能性があるのであまりおすすめできません。
木が元気なら真夏の剪定も耐えますが、暑い時期の剪定は木への負担が大きいので基本的には避けるようにしましょう。
シラカシが枯れる原因とは
シラカシは丈夫で育てやすい樹種ですが、それでも枯れることがあります。
枯れる原因は様々ですが、「よくあるパターン」のようなものがあります。
枯れやすい原因がわかれば対処もしやすいので、どんな原因で枯れることがあるのかチェックしておきましょう。
複合的な要因で枯れることが多い
シラカシに限らずですが、木が枯れる原因は一つではなく、複合的であることが多いです。
単に「水不足で枯れた」というものではなく、「水不足と猛暑が重なり、加えて昨年行った強剪定から回復するのにエネルギーを使いすぎて枯れた」といったようなものです。
枯れた原因についても、実際のところは多くの場合推測でしかなく、たくさんの木を見てきた経験や枯れ方の様子、今までとの手入れ方法や気候の違いなどから判断しているに過ぎません。
いずれにせよ、それ単体では枯れないような要因でも、複数重なるとダメージに耐えられずに枯れてしまう可能性があるということを覚えておきましょう。
植え替え時の失敗
植え替え時に、うまく根付かないなどの理由で枯れてしまうことがあります。
木を庭に地植えする際、植え付けてからしばらくはまだ根っこが地面に伸びておらず、根付いていない状態です。
しばらく経ってしっかり根付くまでは、鉢植えの植物のように定期的に水やりをしなければいけません。
それをせずにいて、なおかつ雨が長期間降らないと、水をうまく吸い上げられずに枯れてしまうことがあります。
また、植え替えや植え付けによる環境の急激な変化にも注意が必要です。
木はふつうその場から動かずに生きていく生き物なので、日当たり、風当たりなどの条件が急に変わるとそれがダメージになることもあります。
芽吹く力の強いシラカシなら、一度枝が枯れても幹から芽吹いて復活する可能性も考えられますが、いずれにせよ大きな負担となるということは覚えておきましょう。
乾燥
シラカシは本来、落ち葉の積もる森の中で育つ木です。
乾燥に弱いわけではありませんが、極度の乾燥は枯れる原因になり得ます。
落ち葉が掃除されて地面がむき出しで、直射日光がガンガンあたるような場所で育てる場合は注意しましょう。
乾燥すると、場合によっては落葉樹のように多くの葉っぱが落ちるようになり、急速に枯れた場合は葉っぱが枝についたまま茶色くしおれたようになります。
土壌の固結
これ単体で枯れることは少ないですが、周囲の土が踏み固められている状態はあまりよくありません。
土が踏み固められると、根っこが伸びられなくなります。
それだけではなく、土が水や空気を保持しておく隙間がごく小さくなるので、乾燥または過湿状態になりやすくなり、落ち葉などを分解する土壌生物もいなくなるので、栄養も供給されづらくなります。
地下に潜れずに地面の浅いところでばかり成長し、周囲のコンクリートなど構造物を破壊しやすくなることにも注意が必要です。
踏み固められて雑草もまばらな土になっている場合は、シラカシに大きな負担がかかっている可能性があるので注意しましょう。
対処方法の紹介
ここまで紹介した枯れる原因について、それぞれ対処方法があります。
植え付け時の手入れに関して、植え付けてから暖かい時期で2週間から一ヶ月くらいの間は、土が乾いたらたっぷり水をあげるようにしましょう。
ジョウロでちょっと水をかけたくらいでは、下まで浸透していない場合があります。
不安なら土を少し掘るなどして確かめながら、たくさん水をあげましょう。
また、急に日当たりの強い場所に植え替える場合は、日の射す方に寒冷紗を設置するなどして徐々に環境に慣らすようにするのがおすすめです。
乾燥や土壌の固結はセットで起こることも多いですが、土が適度な水や空気を保持できるようにすることが重要です。
落ち葉を除去しないようにして、踏まれないように柵で覆うなどで対処が可能です。
土の中に半分に割って節を取り、筒状になった竹を埋め、良い土をつくるための通気口とする方法もあります(割竹挿入法)。
土壌の固結によるダメージは、この方法で緩和できることが多いです。
真夏に雨の降らない日が続き、明らかに葉っぱが萎れているような場合は水をあげるのもおすすめです。
その場合も植え替えのとき同様、地下まで浸透するよう一度にたくさんの水をあげるようにしましょう。
ただし、不安だからと毎日水やりしていると、常に土の表面が濡れた状態になり、根っこが土の表面に集まり、かえって乾燥で枯れやすい木になってしまうので注意が必要です。
シラカシのかかりやすい病気とは
シラカシは比較的丈夫な木ですが、病気にかかることもあります。
シラカシにみられやすい病気についてご紹介します。
ただし、根っこに出る比較的まれな病害を除けば、病気だけで枯れることはあまりありません。
葉っぱに出る病気などでは、よほどの大発生でない限り、あまり神経質になりすぎなくても問題ないことが多いです。
紫かび病
紫かび病はシラカシなどのカシ類によく発生するカビによる病気です。
表面は黄色っぽくなり少ししおれ、裏面に紫色のビロード状の病斑がみられるのが特徴です。
葉っぱが白く粉を吹いたようになるうどんこ病の菌と近縁で、それそのものが葉っぱを枯らすほどの致命的な病気ではありません。
しかし、葉っぱの表面から見ても病気の発生がわかるので、見た目は悪くなります。
対処しなくてもそれだけで枯れることはありませんが、気になるようであれば病気の出ている葉っぱを摘み取って、焼却処分するか土深く(1m以上)に埋めるようにしましょう。
カビのついた葉っぱをそのまま地面に落としていると、そこから再び感染してしまうおそれがあります。
また、発生がひどい場合は新芽が芽吹く時期に適用のある殺菌剤を散布するなどして抑えることも可能です。
うどんこ病
うどんこ病はカビによる病気で、葉っぱの表面に白い粉を吹いたようになるものです。
菌の種類こそ異なるものの、他の植物でもよく見かけることができます。
うどんこ病菌の場合、とりついている葉っぱの細胞が生きていないと菌も生きていけないので、葉っぱの細胞を殺すようなことはありません。
そのため、これ単体で木が枯れるようなことは無いと考えて良いでしょう。
それでも気になる場合や発生が多い場合は、葉っぱを摘み取って焼却処分するか土の中(1m以上)に埋めて再感染を防ぐようにして対処します。
なるべく早めに対処した方が良いので、適用のある殺菌剤などを使用して抑えるのも一つの手です。
円斑病
円斑病はカビによる病気で、葉っぱの表面に灰白色の斑点が出るものです。
他の葉っぱに出る多くの病気と同様、これだけで致命的な被害になることは少ないです。
そのため、多少発生したくらいでは気にしなくても大丈夫ですが、気になる場合やあまりに発生の多い場合などは斑点の出ている葉っぱを摘み取って、焼却処分するか地中(1m以上)に埋めて対処を行います。
下枝に発生しやすいので、目の届くところの枝はよく見ておくようにしましょう。
害虫対策|シラカシで要注意の病害虫
シラカシには、いくつかの害虫がつくことがあります。
こちらも病気と同様に、これ単体で木を枯らすようなものは少ないです。
若木の頃や木が弱っているときに発生が多いなら対処したほうが良いこともありますが、そこまで対処に気を取られなくても大丈夫なことが多いです。
カシノナガキクイムシ
カシノナガキクイムシは爪楊枝ほどの太さのとても小さな虫なのですが、シラカシやコナラなどのどんぐりの木の幹に集団でトンネルを掘って潜り込み、中で菌を栽培し、それを食べて育つという生活をしています。
トンネルを掘るだけなら問題ないのですが、カシノナガキクイムシが運んで栽培する菌の一種が「ブナ科樹木萎凋病(通称ナラ枯れ)」という病気を引き起こす場合がある点が厄介です。
この病気にかかると、ひと夏のうちに枝が枯れたり木そのものが枯れてしまうことがあります。
幸いにもシラカシはカシノナガキクイムシがトンネルをつくってもナラ枯れになりづらい性質があるため、そこまで心配するようなものでもありません。
また、幹の太いものにトンネルをつくることが多いので、これからシラカシの苗木を育てるか、育て始めたばかりという場合もそこまで心配しなくて良いでしょう。
幹に穿入されると、爪楊枝ほどの小さな穴と、そこからあふれる粉状の木くず(フラス)が目立つようになります。
対策するとなると予防するしかないので、既にカシノナガキクイムシが入っている他の木に専用のシートを貼って出てこられなくするなどの方法がとられています。
カミキリムシ類
シラカシにはシロスジカミキリやゴマダラカミキリなどのカミキリムシ類が見られることがあります。
これらのカミキリムシ類は幼虫が木の幹を掘り進んで食害します。
ある程度太くなった木であればそれだけで枯れることは少ないのですが、若木などでは幼虫が幹を一周グルッと食べただけで枯れてしまう可能性があるので注意が必要です。
まだ育てているシラカシが若木で、周囲でカミキリムシ類が発生しているような状態であれば、幼虫の出す木くず(フラス)がみられた場合など、専用の薬剤を使って対処しましょう。
クリオオアブラムシ
クリオオアブラムシはクリにつく害虫ですが、シラカシにも発生することがあります。
見た目は真っ黒で少し大きなアブラムシといったところで、若い枝にたくさんの個体がまとまってつき、枝の汁を吸います。
シラカシについた場合、そこまで大きな被害になることは少ないですが、多く発生すると葉っぱに黒いカビがつくすす病を併発するおそれがあるので注意が必要です。
対処法としては冬に枝にびっしりつく卵をすりつぶしたり、幼虫発生時期に適用のある薬剤を散布するなどの方法があります。
シラカシの上手な育て方
シラカシは丈夫な木なので、環境さえ悪くなければ特に気にしなくてもよく育ちます。
寒い地域ではあまり元気に育たず、極度の乾燥や過湿なども避けたほうが良いです。
逆にそれらの環境を避けるか緩和できれば、放っておいても元気に育つことが多いと思います。
シラカシが庭のどんな環境に適しているのか、よく観察してみるようにしましょう。
まとめ
シラカシの剪定方法や発生する病害虫、育て方などについてご紹介しました。
シラカシは病害虫にも強剪定にも比較的強い樹木なので、育てやすい部類に入ると思います。
ぜひ色々試しながら育ててみてください。
もし剪定を失敗するのが心配という場合は、smileガーデンなどのプロに一度お願いしてみるのも手です。
最初にどのように手入れすれば良いのか質問しながら技術を盗むつもりで見ていれば、次からは自分でもできるようになるかもしれません。
ぜひご検討ください。
愛知県稲沢市生まれ。稲沢市が「日本四大植木産地」であることもあり、幼少期から植木に囲まれて成長。
東京農業大学卒業後、名古屋市内の造園会社に就職。公園の整備工事から国交省事業の国道整備工事における土木及び街路樹等の植栽工事に現場代理人として携わる。