駐輪場があって当然のマンションから戸建てに住み替えると、自転車の保管場所に悩む方は少なくありません。特に近年の自転車は電動アシスト付きのものや海外製のものなど高価なものも多いので、できる限り大切に保管したいですよね。戸建てでの自転車の保管場所としてサイクルポートを検討される方もいらっしゃると思います。
サイクルポートにはDIYで設置できる簡素なものから設置工事が必要なものまでさまざまな種類があります。採用したサイクルポートがご自宅にふさわしくない、機能を果たせないものだと何度も自転車を保管する方法を検討し直さなければいけません。そういった手間がないように当記事ではサイクルポートを設置する際に知っておきたいことをまとめました。サイクルポートをご検討中の方は設置してから後悔しないためにもぜひ参考にしてください。

目次

サイクルポートを意味がないものにしないために。サイクルポートを設置する目的を明確にする。

まずはサイクルポートの役割をあらためて認識し、サイクルポート設置の目的を明確にしましょう。ポイントをまとめましたので参考にしてください。

サイクルポート設置の目的①:自転車を紫外線から守る。

自転車にかかわらず屋外で保管するものはすべて紫外線の影響をうけます。自転車なら車体の色あせやゴムやビニールの硬化などが顕著です。

紫外線は雨と違い浴びても濡れることがないため、知らず知らずのうちに自転車を大きく劣化させてしまいます。自転車を長く美しく保つためにはできる限り紫外線を浴びせないことが大切です。

サイクルポート設置の目的②:自転車を雨から守り、雨天時の乗り降りをスムーズにする。

自転車は金属でできている部分が多いのでサビの原因になる雨は大敵です。また雨の日の自転車への乗り降りや雨の中を自転車で帰宅した時、自転車を乗り降りする場所に屋根が架かっていないとレインコートの着脱や水を払うのに不便です。

サイクルポートのようにおうちの周りに雨をしのげるポイントがあれば便利ですよ。

サイクルポート設置の目的③:自転車を盗難から守る。

盗難の被害に遭わないために一番効果的なのは、人目につく場所にものを置かないことです。しかし自転車をはじめ、アウトドアグッズやスポーツグッズなど屋内で保管しづらいものはたくさんあります。

屋外で保管するものには防犯対策が必要です。施錠やチェーンで自転車を簡単に移動させられないようにするのはもちろんのこと「無造作に置いているように見せない」ことも大切です。敷地の隅に無造作に停められた自転車よりもサイクルポートに整然と保管された自転車は盗難しづらく見えるはずです。

意味がない!サイクルポートが残念になるポイント。失敗しないための選び方。

せっかくサイクルポートを設置しても意味がないと感じるサイクルポートをまとめました。失敗しないサイクルポートの選び方として参考にしてください。

①:設置費用をケチりすぎると意味がない!「とりあえず感」が否めないサイクルポート。

「自転車を雨や風から守りたいけど、サイクルポートにそこまでお金はかけたくない」と考える場合、1万円前後で購入できる簡易的なサイクルポートがあります。

骨組みがアルミで屋根がポリエステルなど撥水する生地でできているサイクルポートは簡単な日除けにはなりますが、強風や大雨には耐えることができません。

簡易的なサイクルポートを常時屋外に設置する場合は風にあおられないように脚の部分に重りを置き、サイクルポートの支柱をフェンスなどに固定するなど、サイクルポートが飛ばないための対策が必要です。

対策しなければほぼ確実に意味のないサイクルポートになってしまいますのでご注意ください。

②:設置場所を誤ると意味がない!サイクルポートへの出入り動線を考える。

サイクルポートの設置場所は敷地の中の限られたスペースになりますが、自転車の出入りがどのような動きになるか動線を考えることが大切です。

駐車スペースに車が停まっていても簡単に乗り入れできるか、サイクルポートから玄関へのアプローチはスムーズにできるかなども考えましょう。また自転車の乗り降りは自転車の左側からする人がほとんどです。自転車の左側にすぐ壁があるような場所も不便を感じる原因になる可能性があります。

敷地の形や建物の位置によって、どうしてもサイクルポートの設置に向いていない敷地はありますが、間口が狭い駐車スペースの奥や室内の日当たりを妨げてしまう場所はサイクルポートの設置にふさわしい場所とは言えません。不便を感じるようだとサイクルポートを設置した意味がなくなってしまいます。事前によく検討しましょう。

③:サイクルポートにじゅうぶんな大きさがないと意味がない!自転車の台数の増減を見据える。

自転車は家族の生活環境などで数の増減があります。お子さんが増えた、通学で必要になった、通勤用の自転車のほかに趣味で使う自転車もほしくなった、高齢で運転に自信がなくなったので自転車を処分したなど、ご家族のライフスタイルに合わせて自転車の数も変化します。

サイクルポートを設置してもご家庭で所有しているすべての自転車が停められなければ意味がありません。自転車の数が多少増えても対応できるように将来を見据えてサイクルポートを検討することが大切です。

サイクルポートは意味がない?サイクルポート以外に自転車を保管する方法。

自転車の保管は雨や風がしのげて、紫外線に当たらなければ特にサイクルポートを設置する必要はありません。ここではサイクルポートの設置以外に自転車を保管する方法をお伝えします。

サイクルポート以外の保管方法①:カーポートを広めに設置する。

カーポートの屋根を広めに架けて、駐車スペースの余った部分に自転車を停める方法です。

サイクルポートを独自に設置しないケースではポピュラーな方法です。しかし敷地面積に余裕がないと、車の周りに停めた自転車が、風にあおられて転倒すると車を傷つけることが懸念されます。

サイクルポート以外の保管方法②:屋内に自転車を入れる。

大切に保管するという意味では自転車を屋内に保管するのが一番理想的な方法です。

特に高級なロードバイクなどは盗難に遭わないためにも屋内で保管するのが定番です。近年は戸建てでもマンションでも室内の一部に土間(玄関を広くするイメージ)を採用し、自転車や屋外で使用するものを保管する方が増えています。おうちの構造にもよりますが、戸建てでもマンションでもリフォームで玄関を広げられるケースもあります。

自転車や屋外で使用するものを室内に入れるにはその都度土や砂ぼこりなどを綺麗にする必要がありますが、土間があればそのストレスも軽減されます。自転車以外にもアウトドアグッズやスポーツグッズの保管場所にも便利です。

新築やリフォームをお考えの方は土間についても検討されてみてはいかがでしょうか。

サイクルポート以外の保管方法③:物置に自転車を入れる。

容量の大きい物置があれば自転車を保管することができます。

近年はただの収納とは思えない、お庭のフォーカルポイントになりそうな物置も多く販売されています。ほかにも物置の横にサイクルポートが併設されているものなど、自転車の保管場所を解決しようとさまざまなメーカーが工夫を凝らした製品を開発しています。

毎日乗る自転車を物置に出し入れするのは少し手間がかかりますが、風雨や紫外線に当たらないので自転車にとっては最適な保管場所です。また物置とサイクルポートが兼用なら、自転車のメンテナンスグッズや雨具も一緒に収納しておけばいつでも使いやすいですね。

サイクルポート以外の保管方法④:玄関ポーチや軒下など雨のかからない場所に自転車を停める。

現代の住宅は屋根の軒の出やケラバの出が短い傾向があります。そのためおうちの屋根を利用して雨をしのぐのが難しくなりました。

しかし玄関部がその周辺よりも奥まっている「入り玄関」のおうちでは、玄関付近で自転車を保管すれば雨にさらされることはありません。

しかしこの場合、玄関ポーチは地面と高低差があるため自転車の出し入れに手間がかかります。玄関ポーチに停めた自転車を頻繁に出し入れする場合、市販の段差プレートなどを設置すればストレスが軽減されますよ。

サイクルポート以外の保管方法⑤:庇(ひさし)の下に自転車を停める。

屋根は建物の上に架かるものですが、庇(ひさし)とは外壁から突き出すようについているものを指します。

透過する素材のものもあればアルミなど非透過でスタイリッシュなものもあり、リフォームで後から設置することも可能です。

庇の役割は日差しを遮るためのものですが、出幅が900㎜程度あればちょうど自転車1台分の雨除けになります。日差しを遮り、自転車も停められたら一石二鳥ですね。

サイクルポート以外の保管方法⑥:自転車にカバーをかける。

屋外で保管する自転車を風雨や紫外線から守るためには、自転車の使用後にカバーをかけることが理想です。

自転車カバーは100円ショップのものからメーカー推奨のものまで幅広くあります。安価なものは簡単に劣化します。撥水・防水・紫外線カットなどの加工がしっかりされているものを選ぶことが大切です。カバーの縫製やカバーをどのように固定するのかもチェックしましょう。

まとめ

当記事ではサイクルポートを設置して失敗しないためのポイントをまとめました。

車と違い、自転車には車庫証明のように保管場所を明確にする決まりはありません。

しかし快適な生活を過ごすには、毎日の通勤や通学の必需品となる自転車を大切に保管し、スムーズに乗り降りできることが大切です。

サイクルポートは快適な生活をサポートするものだとも言えるでしょう。ご自身のライフスタイルに合わせて最適なサイクルポートが設置できるように当記事がお役に立てば幸いです。

高杉 有希子
監修者 エクステリアプランナー 高杉 有希子

静岡県御殿場市の土建屋に生まれ、大型重機が大好きな子供時代を送る。
建築に憧れ、三重短大で住環境を学ぶ。新卒でハウスメーカーFC工務店の「インテリアプランナー」に応募するも、社長の勘違いで募集したかったのはなんと「エクステリアプランナー」!!
ハウスメーカーで個人住宅のエクステリアを担当。その後、ゼネコン住宅事業部のインテリアプランナー、植木屋の外構プランナーを経て、現在は(株)ガーデンメーカーで営業設計を務める。

執筆者 らいち

大阪生まれ大阪育ち。古めの建築物が大好きです。暇さえあれば、団地建て替えの現場を見物に行って萌えています。