日本の伝統的な建築や庭園は、外国の方々から見ても魅力的に映ると言われています。
独特の美観、作りこみ方や構成が諸外国に比べると緻密に計算されているとのこと。
私たち日本人になじみ深い「和」の伝統をご自宅のお庭にも取り入れられたら、おうちにいながらにして豊かな心をはぐくめますね。
洋風化が進んだ現代だからこそ、落ち着きを感じられる「和」の空間がおすすめです。
今回はお庭に和風テイストを取り入れるコツやおすすめアイテムをご紹介します。
和風建築のおうちだけでなく、現代建築のおうちにも取り入れやすいポイントをお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
目次
知っておくと取り入れやすい!和風のお庭の特徴とは?
目で見て「このお庭は和風だな」と理解できても、お庭をどのように構成すれば「和」の空間になるのか考えるのは難しいですよね。
ここでは和風のお庭の特徴をお伝えします。
余白を含めた構成
赤い字の部分は他サイトで被る和風のお庭を頭の中でイメージすると、落ち着いた風景が思い浮かぶのではないでしょうか。
日本美術の特徴の一つに「余白の美」というものがあります。
和風のお庭にもアイテムとアイテムの間にある余白から美しさを感じます。
和風のお庭を構成する時には空間に対して余白のある配置、つまりアイテムを配置しすぎないことが大切です。
低めの目線を意識した構成
お庭に和風テイストを取り入れる時は、背の高いアイテムを採用しないことがポイントです。
目線が低い位置にいくようにアイテムを配置すると「和」の空間を演出しやすくなりますよ。
具体的には地面に景石を置く、植栽には低いものを使う、高い木にはシダ類などの下草を植えると和風の雰囲気づくりがしやすいです。
シンプルでシャープな印象を取り入れた構成
和風のお庭は直線的なアイテムや植物が印象的です。
具体的には敷石、竹垣など直線的なイメージのもの、植物ではマツやナンテンなど鋭角的であまり葉が大きくないものを採用すると「和」のイメージに近づきます。
お庭に和風テイストを取り入れる時のポイント4つ
前項で挙げた和風のお庭の特徴をさらに深掘りして、実際にお庭に和風テイストを取り入れる時に抑えておきたいポイントをまとめました。
おうちとお庭の「調和」を考える
近年の住宅は純和風で作られている建物はあまりありません。
お庭に和風テイストを取り入れる場合は、現代的な建物とマッチする「和」の空間を考える必要があります。
例えばアルミのフェンスでも縦向きの格子のものや、格子状のデザインは和風・洋風どちらの建物にもマッチします。
建物とお庭の全体的なバランスを考えることが大切です。
自然由来のものを採用する
お庭に和風テイストを取り入れるには、自然を感じさせる素材を使うと雰囲気が出ます。
水・石・木、ほかにも漆喰などです。
木は天然のものを屋外で使用するとメンテナンスは欠かせません。
それが負担に感じる方は既製の部材を使用されることをおすすめします。
近年のエクステリア部材には本物の木材と見間違うほどリアルなものもたくさんありますし、漆喰のようなぼってりとした塗り壁を表現できる塗料もあります。
上手に利用しましょう。
カラーの彩度は控えめに
多くの寺社をはじめ、さまざまな歴史的建造物や名所旧跡がある京都市では、昭和31年(1956年)から屋外広告物条例を制定し、お店の看板などにも一定の規制を設けています。
それほど「色」が人に与える印象は強いものなのでしょう。
単色で「和」を意識するポイントは色の鮮やかさである「彩度」を抑えることです。
原色よりも茶色や灰色がかった色味が「和」に近いものと言えるでしょう。
複数の色を使用する時にはコントラスト(対比)を強めにすると「和」の雰囲気を出しやすくなります。
例えば白い砂利と黒い格子を組み合わせる、赤い花をつける椿などを植えるなどです。
暗めの色は植栽の緑を引き立てる役割も果たしてくれますよ。
お庭で感じられる季節を楽しむ
日本の庭園の魅力のひとつに「季節ごとの美しさ」が挙げられます。
日本の四季の美しさをお庭に表現したことが、日本の庭園文化を発展させてきたとも言えるでしょう。
お庭に和風テイストを取り入れる時は四季を感じる植栽を取り入れるのもポイントです。
春に咲く桜、秋に紅葉する紅葉などはお庭に季節を感じさせてくれますね。
広くない庭でも鉢植えや盆栽で育てられる品種もありますよ。
お庭に和風テイストを取り入れる。「和モダン」という選択
純和風ではなく、ほどよくお庭に「和」を取り入れたいという方が多くいらっしゃいます。
そんな方におすすめするのが「和モダン」です。
ここでは和モダンの特徴や取り入れる時のコツをご紹介します。
和モダンの特徴
現代の日本のライフスタイルには欧米や西洋の文化を取り入れたものがたくさんあります。
室内ではフローリングなどの床材、家具ではベッドやソファなどです。
機能的で体に負担をかけず、デザイン性に富んでいるのが特徴です。
それらの機能的な要素を活かしながら、日本の伝統あるアイテムを取り入れたのが「和モダン」です。
和モダンを取り入れる割合
例えばフェンスの代わりに竹垣を使い、枯山水を敷き、つくばいを設置するなど、外構の部材から仕上げまで、すべてに和風を取り入れたお庭は「純和風」になりますし、和風の度合いが高いほど現代建築の建物とバランスが取りづらくなります。
「和」を感じさせる色の部材やアイテムをほどよく取り入れるのがポイントです。
割合としては3~5割程度、「和」を意識した部材や色を取り入れるとバランスのいい「和モダン」になります。
割合が上がるほど「和」のイメージが強くなります。
おしゃれな和風のお庭におすすめのアイテム8選!
お庭に取り入れると和風テイストを味わえるアイテムです。
これらをたくさん取り入れるとより和風になるというわけではありませんのでご注意ください。
本格的な和風でも現代建築にマッチするようなサイズやデザインが考えられています。
これらのアイテムを上手に取り入れてお庭に「和」の空間を演出しましょう。
建仁寺垣(けんにんじがき)
建仁寺垣は竹垣のひとつで、竹を隙間なく詰めて塀のような形にしたものです。
京都・建仁寺で最初に使われたことから名づけられたと言われています。
和風のお庭の装飾としてよく用いられるアイテムです。
生垣やフェンスの代わりはもちろん、「純和風のお庭にしたいわけではない」という方にも、お庭の空間の仕切りとして和風の雰囲気を演出できますよ。
石灯籠(いしとうろう)
石灯籠は日本の伝統的な照明です。
石灯籠は純和風のイメージが強く「取り入れるのはハードルが高い……」と思われるかも知れません。
しかし近年は、現代建築にも似合うモダンなデザイン、安全に使用できるLED照明の製品も登場しています。
和風のお庭のアクセントにぴったりなアイテムです。
ししおどし
竹筒に水が溜まった重みで傾き、岩を打って「カコン」という音がする「ししおどし」。
和風の庭といえばししおどしをイメージされる方もいらっしゃるでしょう。
もともとは音で田畑を荒らす鳥獣を追い払うためにつくられたそうです。
近年はポンプで機械的に循環させる製品が「和」を演出するアイテムとして重宝されています。
蹲(つくばい)
蹲は手水鉢(ちょうずばち)の置いてある場所を指します。
手水鉢は手や口を清める水を張った鉢のことです。
石や岩をくりぬいて水を溜め、手水で身を清めるための柄杓を添えているのが特徴です。
手水鉢は神社に置いてあるので一度は見かけたことがあるのではないでしょうか。
近年はエクステリア部材としても販売され、「和」の趣を出すアイテムとして庭に設置されることも多くなりました。
枯山水(かれさんすい)
赤い字の部分は他サイトで被る日本庭園でよく見られる枯山水は、水を用いずに風景を表現する庭園様式です。
白い砂や砂利で「水」を、樹木で「山」などの風景を表現しています。
砂利の上を熊手でなぞった溝を波に見立て、石を鳥に見立てます。
お寺や庭園のような枯山水をお庭に取り入れるのは難しいかも知れませんが、お庭の一部に枯山水を採用されるケースはあります。
日々の暮らしの中で枯山水を見るたびに心を豊かにできますね。
砂利とオブジェと植物で構成された枯山水はDIYでリーズナブルに楽しむこともできますよ。
苔(こけ)
緑色が綺麗な苔は和風のお庭によく似合います。
雨に濡れるとより一層「和」の雰囲気を演出してくれます。
お庭で使われる苔はスギゴケやススナゴケです。
どちらも苔の中では日当たりを好み、比較的入手しやすい品種です。
スギゴケは名前のとおり杉のような葉の形をしています。
あまり日の当たらないお庭ではホソバオキナゴケというふわふわとした感触が美しい苔がおすすめです。
お庭の日当たりを考慮して選びましょう。
敷石
石は空間に「和」を取り入れたい時、ぜひ採用していただきたいアイテムです。
敷石はお庭の地面の仕上げとして使われますが、素焼きの石や天然石は和風・洋風を問わず取り入れやすく人気があります。
雑草対策にもなりますし、メンテナンスの手間もほぼかかりません。
地面の一部分だけ敷石を設置する、砂利と組み合わせて敷石を設置するなど、設置のバリエーションも豊富に楽しめます。
景石
景石とは、お庭の景観を美しくすることを目的とした石です。
天然の石や岩を自然な形のまま加工せずに配置します。
どのポイントに、どのように石を据えたらお庭が美しくなるかを考えることが重要で、自然のものでありながら奥が深いアイテムでもあります。
まとめ
今回はお庭に和風テイストを取り入れて素敵にする方法をお伝えしました。
外構部材で構成されたエクステリアは、建物とは違い生活に直接必要なものではありません。
人がお庭やエクステリアにこだわりを持つのは単に贅沢を味わいたいということではなく、日々の中で心に豊かさを保ちたいという思いからだと感じます。
お庭をお気に入りの場所にして、毎日を心豊かに暮らしませんか?
静岡県御殿場市の土建屋に生まれ、大型重機が大好きな子供時代を送る。
建築に憧れ、三重短大で住環境を学ぶ。新卒でハウスメーカーFC工務店の「インテリアプランナー」に応募するも、社長の勘違いで募集したかったのはなんと「エクステリアプランナー」!!
ハウスメーカーで個人住宅のエクステリアを担当。その後、ゼネコン住宅事業部のインテリアプランナー、植木屋の外構プランナーを経て、現在は(株)ガーデンメーカーで営業設計を務める。