お庭の雑草を処理していると必ずと言っていいほど見かける、葉っぱの細いイネ科の植物。
そんな身近なイネ科植物には、数えきれないほどたくさんの種類があります。
どんなものがあり、それぞれどんな特性があるのか、その一部をご紹介します。
目次
雑草の中のイネ科の種類・生態・生える時期
イネ科の雑草には、身近に生えるものだけでもかなりたくさんの種類があります。
草花遊びにもつかわれるエノコログサ(ねこじゃらし)から、秋の風物詩として親しまれてきたススキ、それ以外にも一般に名前が知られていないようなものも含めて、その種数は膨大です。
それぞれの種類に穂の出る時期やよく生える場所など特性があり、きちんと対処するなら自分の庭に生えるイネ科植物についてよく知っていなければなりません。
たくさんあるイネ科植物の中から、よく見られるものを一部紹介します。
エノコログサ
いわゆる「ねこじゃらし」と呼ばれるものの中で、最も身近にみられる種類です。
エノコログサの仲間にはたくさんの種類がありますが、普通のエノコログサは穂が短く粒が小ぶりで、他の種に比べてコンクリートの隙間などに生えてきやすい、という特徴があります。
また、5月ごろから穂が出始めるので、秋に出ることが多い他の種より少し早いのもポイントです。
5~6月ごろ街中のコンクリートの隙間で見かけたら、高確率でエノコログサと考えて良いでしょう。
穂がさらに短く、海岸付近によく生えるハマエノコロという変種や、毛が紫色になるムラサキエノコロという品種もみられることがあります。
穂は5~9月ごろまでみられます。
アキノエノコログサ
アキノエノコログサはエノコログサに近い仲間のものです。
秋の、と名前についていますが、実際には夏頃(6月くらい)から穂が出ている様子がみられます。
エノコログサによく似ていますが、穂がエノコログサより長く垂れ下がることと、粒が大きく、よーく拡大して見ると粒を包むカラのようなものがずれて中身がはみ出ていることで見分けられます。
また、生える場所もエノコログサより土があるような場所に多く、公園や空き地などの明るく開けた場所で見られることが多いです。
穂は6月の暑くなってきたころから出始め、11月くらいまでみられます。
キンエノコロ
キンエノコロはエノコログサの仲間で、毛の部分が名前の通り金色になるもの。
アキノエノコログサのように粒が大きめですが、穂の長さはまちまちで垂れ下がらないことが多いです。
河川敷などに多くみられ、場所によっては一面がキンエノコロの金色の穂で埋め尽くされていることも。
穂が出るのは8~9月ごろの夏~秋です。
他にもフシネキンエノコロやアフリカキンエノコロなど、毛が金色でよく似たものが何種類かあり、中でもよく見られるコツブキンエノコロは、毛の部分が紫から金色のグラデーションになっていることなどで見分けられます。
チカラシバ
チカラシバはエノコログサによく似ていますが、イネ科の中でもそれらとは少し違うグループに入ります(ちなみにシバとも違うグループです)。
エノコログサやその仲間に比べると穂がスカスカした感じで、まるで試験管ブラシのような特徴的な姿です。
普通赤紫色の穂をしていますが、穂が白くなったアオチカラシバという品種はペニセタムとも呼ばれ、園芸種として販売されるほどの美しさを持っています。
どれだけ力を込めても引っこ抜けないのが名前の由来で、かなりしっかり根を張っているようです。
穂が出るのは8~10月ごろで、河川敷や公園の原っぱのような、草丈が高すぎず低すぎずの場所によく生えてきます。
タチスズメノヒエ
数あるスズメノヒエの仲間の中でも、タチスズメノヒエは特に背が高く、大きくなるものです。
スズメノヒエの仲間は穂が広い角度で枝分かれするものが多いですが、タチスズメノヒエはあまり穂が広がらず、折りたたまれたままのような姿でいるのがよくみられます。
また、穂や葉に毛があるかどうかがスズメノヒエの仲間の見分けポイントの一つになりますが、穂と葉どちらにもたくさんの毛が生えているのが特徴です。
田んぼや川の近くなどやや湿った環境に生えることが多く、九州から南では最もよく見られるといわれています。
初夏~秋くらいに穂をつけていることが多いです。
シマスズメノヒエ(島雀稗)
シマスズメノヒエは、関東などの道ばたでよく見られるスズメノヒエの仲間です。
タチスズメノヒエと同様に南アメリカ原産の帰化植物で、在来種のスズメノヒエという植物もいますが、スズメノヒエは穂に毛が無く、葉に毛がたくさん生えるのに対し、シマスズメノヒエでは穂に毛が生え、葉などにはほとんど毛が生えないところで見分けられます。
また、スズメノヒエのおしべが黄色なのに対し、シマスズメノヒエは黒色です。
夏から秋ごろに穂を出し、道ばたや公園の原っぱのほか、街中のコンクリートの隙間から生えていることもあります。
メリケンカルカヤ
横に広がらず、一本一本が棒のようなシルエットになるのが特徴です。
比較的最近日本にやってきた帰化植物で、西日本を中心に分布していたのが、最近は東北の方まで生育地を拡大しています。
道路の中央分離帯や空き地など、草刈りや除草があまりされない場所によく生えている印象です。
9~10月ごろの秋から穂をつけ始め、小さな種が風に乗って飛んでいくので、どこからともなく生えてくることがあります。
放置されているような空き地だと、一面がメリケンカルカヤで埋め尽くされているのも珍しくありません。
ススキ
言わずと知れた秋の風物詩です。
風に乗って種が飛んでいくので、近くに大きな公園や河川敷などがあると飛んでくる場合があります。
秋に銀色の穂をつけるのはそれはそれできれいなものですが、スペースをとるし、葉っぱで手を切ってしまう場合もあるので、生えてくる場所によっては邪魔になってしまうことも多いです。
よく似たオギやヨシと比べて一面に広がったりせず、株立ちのまま年々少しずつ広がっていくという特徴があります。
若いうちに刈り取ってしまえれば良いですが、放置して大きくなってしまったものは根元から掘り取るのがオススメです。
メヒシバ
夏~秋にかけて細長い穂を何本かつけるのが特徴で、道ばたや公園などを中心に、とてもよく生えています。
最も身近なイネ科雑草の一つといっても良いでしょう。
地面を横に這いながら広がっていき、コンクリートの隙間や植込みを埋め尽くすように生えていることが多いです。
よく似た仲間がいくつかいて、芝生などによく生えてきて、メヒシバよりちょっと遅く穂を出すアキメヒシバや、関東から西でよくみられる、ちょっと小ぶりなコメヒシバなどがあります。
カモガヤ
もともとは「オーチャードグラス」という名前で輸入され、牧草として育てられていたもので、今では日本のほとんど全国に分布しています。
初夏~夏ごろにかけて立体的なモコモコした穂をつけるのが特徴で、公園や牧草地などでよくみられるものです。
イネ科の花粉症は初夏ごろに多いですが、このカモガヤもイネ科花粉症の原因の一つとされているもの。
毎年初夏になると花粉症がひどいという方は、庭に生えてきたら対策した方が良いかもしれません。
アレルギーが出ると厄介
イネ科の植物には、その花粉を原因とする花粉症があります。
ただし全てのイネ科植物がイネ科花粉症の主な原因となるわけではなく、カモガヤ、オニウシノケグサ、ネズミムギ、オオアワガエリなどの元々外来牧草として輸入されたものが主な原因とされることが多いです。
いずれも初夏~夏ごろにかけて穂を出して花を咲かせるもので、イネ科花粉症もその時期に出るものが多いです。
また、河川敷や牧草地、公園などから大量に花粉が飛んできている場合があるので、庭に生えてきたものを駆除したからといって花粉症が軽くなるとは限らないことや、イネ科植物が生えてきたから必ずイネ科花粉症にかかるとも限らないことにも注意しておきましょう。
ただし、すでに重めのイネ科花粉症にかかっている場合や、花粉症が心配で精神衛生上よくないという場合は、積極的に駆除すべきです。
イネ科の駆除方法
イネ科の雑草が庭を圧迫していたり、見栄えが悪いという場合は、駆除が必要です。
イネ科植物によく効く除草剤なども開発されていますが、面積が広くて手が回らないなどでなければ、地道に抜き取っていくのも一つの手です。
スズメノテッポウのように数年間種が休眠するものや、チガヤのように地下茎でよく増えるものだと少し大変ですが、種類や庭の面積によってはそれであっさり片付いてしまうこともあります。
まずは庭に生える葉っぱの細長い雑草がイネ科植物なのかどうかから確かめて対処してみるようにしましょう。
効果的な農薬・除草剤
イネ科の雑草は水田や畑などにもよく出てきて問題になるため、それ専用の除草剤なども開発されています。
トリフルラリンやフルアジホップpなどを有効成分としたもので、かなりの種類があります。
それぞれ特性や使用時期などが違っているので、用法用量も含めて薬剤の注意書きに従って使用してください。
また、同じ薬剤を何度も使っているとそのうちその薬剤に耐性をもったものが現れる場合があるので、複数の除草剤を使って対処するのがオススメです。
パンパスグラスやウラハグサなど、庭で育てているイネ科植物がいないかなどにも注意しましょう。
トウモロコシやタケ、ササ類もイネ科植物です。
防草シートの対策
広い面積を一気に処理したいという場合は、防草シートで覆ってしまうという方法もあります。
ただしこれはイネ科雑草というより雑草全体の対策となるもので、見栄えとしては無骨な感じであまり良いものではないということに注意しましょう。
田んぼなどではあぜ道が防草シートで覆われていることもあります。
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愛知県稲沢市生まれ。稲沢市が「日本四大植木産地」であることもあり、幼少期から植木に囲まれて成長。
東京農業大学卒業後、名古屋市内の造園会社に就職。公園の整備工事から国交省事業の国道整備工事における土木及び街路樹等の植栽工事に現場代理人として携わる。