5〜6月に、小さいぶどうのような赤紫色の実が付くクワの木(マルベリー)は、生命力が強くて管理が楽なので、初心者でも育てやすい樹木です。
クワの花・実・葉の特徴や花言葉、おすすめの品種、育て方、適切な剪定の時期と方法、植え方などたっぷりと紹介!
基本データ
- 分類
- 庭木-落葉
- 学名
- Morus
- 科・属名
- クワ科クワ属
- 別名
- マルベリー、セイヨウグワ
- 草丈・樹高
- 2〜12m
- 栽培可能地域
- 全国
- 花色
- 黄緑
- 開花期
- 3〜4月
- 結実期
- 5〜6月
- 耐暑性 / 耐寒性
- 強い/強い
クワの花・実・葉の特徴と花言葉、挿し木の仕方
地面から縦に割れ目の入った茶色の幹が、しゅっと空へ高く伸びて、春にはブラシのような黄緑色の花が咲いたあと、梅雨の時期に甘酸っぱい実が付くクワの木(マルベリー)。
冬に一斉に葉を落とす落葉樹で、気候風土もあうため、庭木として育てやすい樹木です。
早春に咲くクワの花と花言葉
雄花と雌花がそれぞれ別の株に付く、雌雄異株(しゆういしゅ)のクワの木。
雄花はクリに似た小さな黄緑色の花が、たくさん集まって垂れ下がるように咲き、雌花は枝や葉の付け根から短く伸びて、花びらを持たない雪の結晶のような黄緑色の花が咲きます。
クワの花言葉
クワの花言葉は「彼女の全てが好き」「ともに死のう」「あなたより生き延びる」です。
クワの実と葉の特徴
クワの実
雄花と雌花が別の樹に付くクワの木は、実は受粉した雌株(めかぶ)のクワのみに付き、雄株(おかぶ)のクワには付きません。
実も収穫したい場合は、雌株と雄株の両方の苗木を購入するようにしましょう。ただし、品種によっては、1本で自家受粉ができて結実するララベリーなどもあるのようです。
クワの葉
枝の節から扇が開くように出るクワの葉は、基本的には縁がギザギザとしていて、しわのあるハート形になります。
しかし、個体によって大きさや形が異なり、葉がカエデのように割けたものや、丸いものなどバリエーションが豊富です。
クワの生長スピード・樹高・苗木の価格
クワは温暖な地域では比較的生長スピードが早く、根付くと幹や枝葉がより早く伸びます。
温暖地でなくても、大きくなると樹高が10mを超える高木になることも。
しかし、剪定を年に2回ほど定期的にすれば、狭い庭でも管理のできる庭木になります。
価格は苗の大きさや樹形によって違いますが、樹高が40cmほどで1,700円程度から販売されていることが多いようです。
挿し木で増やそう!クワの木の増やし方
クワを増やしたいときは、枝の一部を切り取って「挿し木」をつくりましょう!
クワの挿し木づくりに最適な時期
クワの挿し木は剪定で切った枝を使い、6〜7月ごろにつくります。
実が落ちたあとに挿し木を作ると、発根しやすいです。
クワの挿し木の手順
Step1. クワの新しい枝を、先端から数えて4〜6節目でカット。先端のやわらかい部分もカットします(5〜15cmほどの長さ)。これを「挿し穂」といいます。
Step2. 挿し穂の上部に付いた葉を1/3程度(2〜4枚)ほど残し、下部の葉や枝は全て摘取り除きます。
Step3. 小さめのコップや花瓶に入れた水か、水はけの良い土が入ったビニールポットなどに挿して、涼しい日陰で管理しましょう。2〜3カ月で根が出ます。
クワの種類|マルベリーとの違いやおすすめの品種
クワ科クワ属に分類されるクワの木は、世界に1,000種類以上の品種が確認されているようです。
中国や朝鮮半島から日本に伝わり、全国の里山に自生する「ヤマグワ」と呼ばれる品種は、実よりも蚕(かいこ)のエサとなる葉を収穫目的として栽培されていました。
マルベリーとヤマグワとの違い
クワの木の英名は「Mulberry(マルベリー)」と総称して呼ばれています。
日本では、ヤマグワよりも実が大きいクワを「マルベリー(セイヨウグワ)」、マルベリーよりも実が細く毛が生えているクワを「ヤマグワ」と、分類しているようです。
クワの木のおすすめの品種
鉢植えでも手軽に育てられ、収穫も楽しめるクワの木。
基本的には実がなるまで2〜4年程度かかるといわれています。
地植えや鉢植えにかかわらず、実が付くまでは、剪定や肥料を定期的に行うことが大切です。
ここでは1本で実がなるマルベリーと葉が鑑賞できるヤマグワの種類を紹介します!
ララベリー
マルベリーの中でも実がたくさん収穫できるララベリー。
甘さが控えめなので、果実酒やサラダなど食べ方は工夫次第でおいしくいただけます。
ポップペリー
ポップベリーは実が大きくて、食べ応えのあるサイズが魅力的!
ジャムなど1瓶つくるのにおすすめのマルベリーです。
カタネオ
6月を過ぎたころに実が付く晩生種(おくてしゅ)のカタネオは、イタリアを原産としたマルベリー。
実の付きが良く、栽培も簡単なので初心者におすすめの品種です。
ホワイトベリー
真っ白でふっくらとした実を付けるホワイトベリー。
糖度が高く、そのまま食べると爽やかな香りのある甘さが、口の中に広がります。
フイリヤマグワ
トマトのような切れ込みの入った葉に、2〜3色の斑が入るフイリヤマグワ。
実よりも葉を鑑賞目的とし、和モダンや洋風の庭によくなじむヤマグワです。
実も楽しみたい場合は、2本以上の苗木を購入しましょう。
クワ(マルベリー)の育て方・管理方法
植え付け・植え替え
有機質たっぷりで排水性・通気性・保水性のある土に
生育旺盛でなクワは、基本的には用土の質は選びませんが、実を収穫するなら有機質がたっぷりと入った土づくりが大切。ただし、水はけが悪くて硬い土では根腐れが起こりやすくなり、枯れてしまうことも。植え付ける前には、掘り起こした土に腐葉土、赤玉土、ピートモスを混ぜて、排水性・排水性・保水性を良くしておきましょう。用土の混合率は、腐葉土:赤玉土:ピートモスが6:2:2になるようにして、ダマにならないようしっかりと混ぜ合わせてくださいね!
クワの適切な植え付け・植え替え時期
クワの植え付けや植え替えの時期は、気温が暖かくなる3〜4月ごろがベスト!比較的寒さに強い樹木なので、葉が落葉する10〜11月ごろからでも大丈夫です。ただし、氷点下を下回るような極寒日に植え付けをしてしまうと、株が枯れてしまうこともあるので、できるだけ極端な気温日は避けましょう。
鉢植えの場合は、2年に1回ほどのペースで植え替えをします。根詰まりを起こしやすく、根鉢がパンパンになってしまうと、根が呼吸できずに枯れてしまうこともあります。
直径4〜6mほどのスペースを確保してから、クワの木を植え付ける
一本の太い幹から傘が開くように枝葉が伸びるクワは、広めのスペースを確保してから植え付けるのがいいです。
直径4〜6m程度のスペースがあれば、枝葉が周辺の草花に覆いかぶさってしまったり、周りの建造物を傷つけたりする可能性も少なくなります。
苗木が小さくても植え付ける場所は、大きくなったときを想定して、広めの場所に植え付けましょう。
クワの苗木の選び方と植え方
地植えで育てるクワの苗木は、40〜60cm程度のものが丈夫で枯れる心配があまりありません。
植え穴の深さは根鉢の高さよりも3cm低くし、根鉢の表面が少し地面から出るように植え付け、足で踏んで固定します。
最後に苗木の横に支柱を立て、強風によって木が倒れないようにしましょう。
肥料
初夏にたくさんのクワの実を収穫する場合は、定期的に肥料を与えた方がよく育つので、植え付け時と年2回の肥料を与えましょう。
植え付けるときに元肥を、開花前の2月下旬〜3月中旬に追肥を、実が落ちるころの6月中旬にお礼肥をを与えます。
花芽や実の付きが良くなるように、リン酸(P)が多めに入った緩行性化成肥料か、窒素(N)・リン酸(P)・カリウム(K)のバランスが取れた緩効性化成肥料かを与えるのがおすすめ!
剪定
枝葉を伸ばす力が強く、生長すると四方八方へと広く伸ばすクワの木。
剪定をしなくてもクワの実はたくさん収穫できます。
ただし剪定をしないと栄養が分散し過ぎてしまい、実が大きくならなかったり、甘くなかったり、さらには病害虫の被害にあいやすくなったりする場合も。
基本的には年に2回のペースで剪定しますが、背丈が高くなり過ぎたときや、枝葉混み合ったときなどにもしましょう。
クワの適切な剪定時期|6月中旬〜7月中旬と、12〜2月
クワの剪定は、実を収穫したあとの6月中旬〜7月中旬と、葉が落ちた12〜2月にします。
8月の真夏は切り口から水分が抜けやすく、枝葉が枯れてしまうこともあるので、できるだけその時期の剪定は避けてくださいね!
クワの剪定の手順
クワの木の樹高が高過ぎてしまうと、実を収穫するときに脚立を使わないと背が届かなくなってしまうので、できるだけ2m前後に収まるように剪定するのがポイントです。
Step1.クワの樹高が高くなり過ぎてしまった場合は、中心の太い幹を枝分かれした箇所で切り落とす「芯止め」をします。好みの高さの位置にある節目から、数ミリ上を切り戻しましょう。
Step2.幹の胴回りに生える枝葉を切り落とす
幹の根元付近や胴回りから生える枝葉は、実が付いても地面と近過ぎるため、雨で跳ね返った水滴によって不衛生になりやすいです。できるだけ地面と枝葉が、30〜50cm程度間隔があくように、枝葉を付け根から全て切り落としましょう。
Step3.新芽を付け根から6〜8節目の箇所で切り落とす
クワの実は、春に伸びた新芽(枝葉)の付け根付近に5〜7個程度付きます。実が大きくなるように、新芽の付け根から6〜8節目の箇所で枝葉を切り落としましょう。新芽を根元から剪定をしてしまうと、翌年以降の実も取れなくなってしまいます。枝葉をさらにコンパクトにしたい場合は、前年または前々年に伸びた太い古い枝を切り落とすようにしましょう。
病害虫
病気
・実菌核病(クワ菌核病)
クワの花に付着した菌によって「実菌核病(クワ菌核病)」といわれる病気にかかる場合があります。収穫時期には実が白く変色して食べれなくなってしまい、さらには翌年以降にも発症させることも。胞子が飛散しないようにクワの株周りの表土、落ちた実などは全て焼却処分をし、消毒剤を散布するようにしましょう。
害虫
・アブラムシ
・コナカイガラムシ
・クワキジラミ
・クワノメイガ
比較的梅雨の時期から夏の時期にかけて、クワの木に付く特有の害虫が発生しやすいです。
葉の裏に、白い糸状のカビ胞子のようなロウを出すクワキジラミの幼虫とその成虫が発生します。
葉の溶液を吸うため落葉する場合もありますが、クワの木にとっては致命的なダメージになりにくいです。
ただし、クワノメイガの幼虫が大量に発生してしてしまうと、葉を食害され生育が悪くなる場合も。
実を早めに収穫したあとは、薬剤を散布して防虫するといいです。
日当たり
日陰に強いクワの木ですが、日当たりと風通しが良い場所で育てると、葉の色味も鮮やかで元気に生長します。
日陰過ぎる場所だと幹や枝葉が間延びしやすく、生長が早まって、さらに高木になってしまう場合も。
春から夏の間にしっかり陽が当たるような、暖かい場所に植え付けるのがおすすめです。
水やり
生命力の強いクワは、基本的には自然に降る雨だけの水分で大丈夫です。
ただし、植え付け直後と、苗木が地面にしっかりと根付くまでの1年間は、土が乾燥しないように定期的に水やりをしましょう。
愛知県稲沢市生まれ。稲沢市が「日本四大植木産地」であることもあり、幼少期から植木に囲まれて成長。
東京農業大学卒業後、名古屋市内の造園会社に就職。公園の整備工事から国交省事業の国道整備工事における土木及び街路樹等の植栽工事に現場代理人として携わる。
リゾートガーデンスタイル専属の庭師×Webコンテンツクリエイター。 カナダのトロントで造園士を、その後日本で花屋のバイヤー・鉢物の管理・アドバイザーを経験した後、ヤシの木を主体とするリゾート・ドライガーデンの造園士に。 現在は、リゾートガーデンスタイルの社会福祉施設・DOG CAFEの専属庭師に加え、畑の開拓・管理、SNSも兼務。 植物を専門とするWebコンテンツクリエイター、ガーデニング商品の監修者としても活躍中。