コデマリは真っ白い手毬のような花を咲かせ、春先のお庭を華やかに演出してくれます。
生育旺盛なコデマリを放置し続けたままでは、風通しが悪くなり、病害虫が発生しやすくなります。
やがて、お庭のほかの植物にまで広がってしまうことも。
手遅れになる前に、コデマリの剪定を行うのがおすすめです。
そこで今回は、コデマリ剪定ビギナーの方に向けて、剪定方法やポイント、剪定時期を紹介します。

目次

コデマリは成長スピードが早く、枝が密集しやすいのが難点です。

「どこの枝を切ればいいのだろう?」
「変な場所を切って枯れてしまったらどうしよう?」

混みあった枝と樹勢を目の前にすると、どこをどのように剪定したらよいものか……。
躊躇したまま放置している方も多いかもしれませんね。

来年の春先には、風にそよぐコデマリを楽しめるように自然樹形の剪定方法をマスターしましょう!

コデマリ(小手毬)に剪定が必要な理由

庭に咲いたコデマリ

いっけん難しそうに感じるコデマリの剪定方法ですが、ポイントやコツを掴んでしまえば、初心者でも行えます。まずは、コデマリになぜ剪定が必要なのか。その理由を知ることが大切です。そこから、剪定方法やポイントについて知識を深めていきましょう。

コデマリに剪定が必要な理由は、おもに3つあります。

①樹形を整えるため
②花を咲かせるため
③病害虫を防ぎ健康的に成長させるため

①樹形を整えるため

コデマリは成長スピードが早い樹木です。細い枝が無数に茂り、しなるように成長していきます。そのため、樹勢が暴れやすい特徴があります。

定期的に剪定をすれば、理想の樹形をキープできるでしょう。反対に、剪定しないまま放置すると1~1.5mほどにまでなるため、想像以上に場所をとってしまいます。

剪定するのが難しい状態になる前に、こまめに剪定を行うのがおすすめです。

②花を咲かせるため

コデマリの古くなった枝は、花芽がつきにくくなります。枝のボリュームはあるのに、あまり花が咲かないといったアンバランスな状態になることも。

その状態を回避するために、古い枝や弱っている枝を剪定する作業が欠かせません。とくに、3年以上経っている枝は積極的に剪定しましょう。古い枝を剪定することで、新しい枝の成長を促し、翌年の花つきもよくなります。

③病害虫を防ぎ健康的に成長させるため

枝が密集しやすいコデマリは、剪定を怠ると病害虫が発生しやすくなります。風通しが悪くなり、蒸れてしまうのが原因です。

不要な枝を剪定すれば、風も通りやすくなり、日差しも株元まで届きやすくなるでしょう。新しい枝も成長しやすい環境となるため、健康的に成長してくれるはずです。

コデマリ(小手毬)の剪定方法

剪定ばさみを持って立つ庭師

コデマリの剪定方法の基本は、間引き(透かし)剪定です。間引き(透かし)剪定とは、枯れたり弱ったりしている枝をつけ根から切り落とす方法です。間引き具合によって「大透かし・中透かし・小透かし」に分類されます。

【間引き(透かし)剪定の種類】

種類特徴対象の枝目的
大透かし骨格を作る枝を考えて大きく間引く幹からまっすぐ伸びている主枝など・樹形を変える
・樹勢の回復
中透かし樹冠を作る枝を中心に間引く3~4年ほどの枝・日当たりの確保
・風通しの改善
・樹形の調整
小透かし樹冠の周辺の細い枝を間引く本年枝や前年枝など・微調整
・景観を整える

コデマリ(小手毬)の剪定ポイント

コデマリの花

コデマリの剪定のコツは、目的に合わせて行うことです。上記で紹介した目的を理解して、剪定してみてくださいね。

樹形を大胆に変えたり、樹勢を回復させたりすることが目的なら、地際から思い切って刈り込みましょう。初めて剪定する方は、少し勇気がいるかもしれません。

ただし、この方法は強剪定となるため、コデマリへの負担が大きくなります。剪定時期を間違えないように、後述する「コデマリ(小手毬)の剪定時期」をしっかりと確認してください。

また、剪定後に枯れたり、病気になったりしないようにケアが必要になります。「コデマリ(小手毬)の剪定に必要な道具とは」も、ぜひチェックしてみましょう。

日当たりや風通しのよい環境作りを目的に剪定する場合は、3~4年ほどの古い枝から剪定するのがポイントです。なぜなら、コデマリの古い枝からは、花が咲かなくなるからです。剪定する枝の特徴は下記を参考にしてください。

【剪定する枝の特徴】
・枯れた枝や弱っている枝
・内側に向かって生えている枝
・ほかの枝と交差している枝
・徒長している枝
・込み合った枝

【剪定する枝の場所】
・枯れた枝や弱っている枝は、株元から切り落とす
・枝がわかれている箇所や、節の上で剪定する

コデマリ(小手毬)の剪定時期

カレンダーの日付

コデマリの剪定時期におすすめなのは、5~6月以降です。花が咲き終わったタイミングで剪定するのがよいでしょう。コデマリは、開花後に成長した新しい枝に花芽を作ります。この時期に剪定することで新芽の成長を促し、翌年満開の花を咲かせられるのです。

また、コデマリは翌年の開花に向けて、秋以降から少しずつ花芽を作っていきます。花芽が成長している時期に剪定すると、うっかり切り落としてしまうかもしれません。

その結果、翌年の春の開花が乏しく、寂しいものになってしまうことも。5~6月(遅くても夏ころまで)に剪定を行えば、花芽を切り落としてしまうリスクを避けられます。

とはいえ、成長スピードが早いコデマリの樹勢をおさえたい方もいるでしょう。適期以外に剪定するときには、小透かし剪定で微調整する程度に留めておくのが無難です。

コデマリの剪定適期:開花後5~6月が適期(遅くても夏ころまで)

コデマリ(小手毬)のNGな剪定方法とは

虫眼鏡とクエスチョンマーク

コデマリの剪定に失敗すると、翌年の開花に大きく影響します。ここからは、コデマリの剪定で失敗しがちな方法を紹介するので、ぜひチェックしてみてくださいね。

失敗する剪定方法

・適期以外に剪定する
・今年伸びた枝を剪定する
・古い枝を剪定しない
・枝の間引き方があまい
・立ち枝を作ってしまう
・刈り込みすぎる

適期以外に剪定する

コデマリの剪定適期は、開花後の5~6月がベストです。この時期なら、剪定ビギナーでも花芽を切り落としてしまう心配はありません。

9月以降、冬にかけての剪定は要注意。落葉した枝は剪定しやすいものの、成長途中のコデマリの花芽まで切り落とすリスクがあるからです。

翌年に満開のコデマリの開花を楽しみたい方は、適期に剪定するのがおすすめです。

今年伸びた枝を剪定する

コデマリは、今年伸びた新しい枝に花を咲かせます。そのため、間違えて剪定してしまうと、来年の花数が少なくなるので注意しましょう。

古い枝を剪定しない

コデマリの古い枝は開花しません。剪定せずに放置していると、枝が混み入っていく一方です。風通しも悪くなり、病害虫の発生原因ともなるので、3年以上経った枝は株元から切り落としましょう。思い切って剪定すれば、新しい枝も成長しやすくなり、株を元気にできます。

枝の間引き方があまい

コデマリの枝は混雑しがちです。剪定に慣れていないと枝の間引き方があまく、風の通り道を作れません。日差しが届きにくく蒸れやすい環境下では、カビも生えやすくなります。やがて病害虫が発生し、株も弱くなっていきます。適度な間引き剪定を覚えておくのがよいでしょう。

立ち枝を作ってしまう

枝先に立ち枝を作らない剪定方法をマスターしましょう。不要な立ち枝や徒長枝は、養分を消耗するだけでなく、見た目のバランスも崩してしまいます。なるべく、枝先を切らずに、内側の枝から剪定するように心がけてくださいね。

刈り込みすぎる

コデマリは、垂れ下がる枝ぶりが魅力的な樹木です。大胆に刈り込みすぎると、本来のよさが損なわれてしまいます。自然樹形を楽しむために、刈り込みは避けて剪定しましょう。

コデマリ(小手毬)の剪定に必要な道具とは

庭道具

コデマリを剪定する前に、必要な道具をそろえておきましょう。以下のリストを参考にしてみてくださいね。

  • 剪定バサミ
  • 太枝切りバサミ(刈り込みバサミ)
  • 消毒液
  • 軍手
  • ゴミ袋
  • 癒合剤

剪定バサミは手に馴染む使いやすいタイプを用意しましょう。太枝切りバサミ(刈り込みバサミ)は、剪定バサミでは切りにくい太い枝を切る際に便利です。

なお、剪定前にハサミを消毒液で殺菌しておくことを忘れないでくださいね。剪定バサミが原因で、切り口からウイルスや細菌が入り、コデマリが病気で枯れてしまうリスクを避けるためです。

さらに、太い枝を剪定した後は、切り口に癒合剤を塗っておきましょう。ウイルスや細菌の侵入を防げます。軍手をして作業すれば、枝で手を傷つけにくくなるので安心ですね。

コデマリ(小手毬)の剪定ステップ

123と書かれた積み木

コデマリ剪定ビギナーは、次の3ステップを参考に行いましょう。

【ステップ①】剪定の目的を決める

まずは、剪定する目的を決めましょう。「風通しをよくしたい・病害虫の被害から回復させたい・樹形を変えたい」など、剪定の目的もさまざまです。目的を明確にできたら、剪定方法や切る枝に迷いにくくなります。

【ステップ②】剪定の目的に合わせて切る枝を決める

具体的な剪定の目的を決めたら、どのような剪定方法(大透かし・中透かし・小透かし)で、どの枝を切るか決めていきます。主枝・枯れた枝・内向きに伸びた枝・交差している枝など、目的に応じてどの枝を剪定するか選びます。

【ステップ③】バランスを見ながら剪定する

全体の樹形やバランスを確認しながら、適度に枝を切り落としていきます。とくに、長く伸びた枝や、混み入っている部分を中心に剪定を行います。

コデマリ(小手毬)のかかりやすい病気とは

ハートを持つ手と聴診器

丈夫で育てやすいコデマリですが、気をつけたい病気があります。コデマリがかかりやすい病気の特徴を知って、発症前に対策をとりましょう。

うどんこ病

コデマリの葉や茎に、白い粉を見つけたら「うどんこ病」かもしれません。その白い粉はカビです。枝が混み入り、風通しが悪くなると発症しやすくなります。

初期症状は、小さな白い斑点状なので見落としがちです。気づかないうちに広範囲に広がり、葉の表面を覆いつくしてしまうので要注意。

光合成できなくなったコデマリは、生育不良となり「花が咲かない・枝がねじれる・葉が黄色くなる」など、見た目も変化してしまいます。

対処方法
・発症しないように、間引き剪定で風通しを良くする。
・発症した枝は切り落とし、焼却またはゴミ袋に入れて処分する。その後、薬剤を散布する。

害虫対策|コデマリ(小手毬)で要注意の害虫

虫眼鏡で見る葉

大切に育てているコデマリに、害虫を見つけたらショックは大きいですよね。コデマリにとくに発生しやすい害虫は、以下の2種類です。特徴や対処法をチェックしておきましょう。

アブラムシ

アブラムシはどんな植物にも寄生する、やっかいな害虫の代表です。春先から秋にかけて、ほとんどの季節に発生し、繁殖力も旺盛です。気がつくと、新芽や葉裏にびっしりと増えています。

集団で吸汁するため、コデマリの発育を妨げる原因になるでしょう。また、アブラムシがやっかいなのは、排泄物がカビの原因となり「すす病」が発症しやすくなること。さらに、ウィルス病を媒介するところです。

アブラムシは、直接的な被害と間接的な二次被害を引き起こすため、繁殖する前に対策する必要があります。

【対処方法】
・発生させないように、間引き剪定で日当たりと風通しをよくする
・窒素分が多い肥料を控える
・数が少ないうちは、牛乳や酢を薄めたスプレーをしたり、水で洗い流したりする
・増殖した場合は枝を切り落とし、焼却またはゴミ袋に入れて処分する。その後、薬剤を散布する。

カイガラムシ

コデマリに白くベタベタしたものがつき始めたら、カイガラムシの発生を疑いましょう。アブラムシと同様に、増殖してコデマリを吸汁し、排泄物がすす病を発症させてしまいます。

カイガラムシは、幼虫のうちに駆除したい害虫です。なぜなら、成虫になると硬い殻に覆われ、薬剤を散布しても効かなくなってしまうからです。

風通しが悪く、密になった状態や湿度の高い環境を好むため、こまめにコデマリを確認する習慣を持ちましょう。

【対処方法】
・発生させないように、間引き剪定で日当たりと風通しをよくする
・幼虫のうちに、牛乳や酢を薄めたスプレーをしたり、水で洗い流したりする
・幼虫のうちに薬剤を散布する
・成虫になってしまたら、歯ブラシなどを使ってこすり落とす

コデマリ(小手毬)の上手な育て方

庭に置かれたガーデニング用品

コデマリを上手に育てるには、いくつかのポイントがあります。コデマリを健康に保ちながら、自然な美しさを引き出すための育て方を詳しく解説します。

剪定方法

コデマリを上手に育てるコツは、適切な時期に、適度な剪定をすることです。また、剪定するメリットを理解しておくことも大切です。

剪定時期は、開花後の5~6月を目安に行います。剪定のポイントは、中心部の古い枝や太い枝を選んで間引き(透かし)剪定することです。このときに、上向きに伸びている枝や、徒長している枝も剪定しましょう。

コデマリは、枝が垂れるような自然樹形が理想的。コンパクトに育てたいときは、開花後に切り詰めます。ご自身の理想の形をイメージしながら剪定してみてくださいね。

剪定を行えば、枝が密集することもなくなり、風通しの悪さや日照不足も改善されるでしょう。適度な剪定は、病害虫の発生を予防するメリットがあります。

日常のお手入れ

コデマリに病害虫などの異変が起きていないか、こまめにチェックすることを習慣化しましょう。うどんこ病・アブラムシ・カイガラムシなどの病害虫は、早期に発見できれば被害も拡大しません。悪化する前に対策を施します。

また、必要に応じて剪定の適期以外でも軽く行い、コデマリの成長をコントロールしましょう。

剪定後のケア

コデマリを剪定した後のケアも大切です。強剪定をしたときには癒合剤を塗り、切り口から細菌が入らないように予防しましょう。

開花後や休眠期には寒肥やお礼肥料をあたえ、コデマリの栄養状態を回復させてあげてくださいね。

まとめ

春の青空とコデマリ

コデマリ(小手毬)の剪定は、健やかな成長と美しい樹形を保つために欠かせません。剪定を行わないままでいると、樹形が乱れ、風通しが悪くなる一方です。枝が密集したコデマリは、病害虫が発生しやすい環境となります。

ところが、いざコデマリの剪定を行おうとした際に「どの枝から切ればいいのだろう」と、悩んでしまう方も多いものです。コデマリの剪定には、いくつかの注意点があり、剪定時期や剪定箇所を間違えると、次の年の花芽を切り落としてしまうリスクもあります。新しい枝には花が咲き、古い枝には咲かないといった特徴があるため、その見極めが難しいかもしれません。

そのため、コデマリの剪定は専門業者に依頼するのがおすすめです。経験豊富なプロに任せれば、理想的な樹形を保ちつつ花芽も守れるでしょう。

「また利用したいと思うお庭の手入れ業者」第1位を取得しているsmileガーデンは、心を込めてコデマリの剪定をいたします。満開で咲くコデマリとともに、お客様が幸せなひとときを過ごせるようお手伝いしていきます。

氏永 勝之
監修者 smileグループCEO
株式会社ガーデンメーカー 代表取締役
愛知農園植木苗木株式会社 専務取締役
一般社団法人ガーデンビジネス協会 代表理事
氏永 勝之

愛知県稲沢市生まれ。稲沢市が「日本四大植木産地」であることもあり、幼少期から植木に囲まれて成長。
東京農業大学卒業後、名古屋市内の造園会社に就職。公園の整備工事から国交省事業の国道整備工事における土木及び街路樹等の植栽工事に現場代理人として携わる。

執筆者 藤原勇魚

植物・自然Webライター・kindle作家 「自然を感じる暮らしがしたい!」からスタートした庭づくり。気づけば小さな森のような庭になっていた。「自然の豊かさ=心の豊かさ」を体感し、シンプルで大切な気づきをkindle本で出版する日々。自然から得られる視点や生きる勇気を届けたいと思っている。