お庭で植物を育てていると、つる植物のヤブガラシが繁茂することがあります。繁殖力が強く、抜いても抜いても生えてくるヤブガラシに困っている方は多いのではないでしょうか。ヤブガラシの駆除方法についてご紹介します。
目次
ヤブガラシを駆除する方法
ヤブガラシを駆除するためには、いくつかの方法があります。基本的には、いずれもヤブガラシの生態を考慮した上で、なるべく弱点を突けるような方法になっています。お庭の環境や状況によって使える・効果のある方法は変わってくるので、自分の庭に合ったものを選んでみましょう。
根まで枯らす除草剤を使う
除草剤は雑草を枯らすために開発されたものなので、やはり最も手っ取り早いです。環境や人体への悪影響が懸念されることがありますが、基本的には用法用量を守って正しく使えば、影響は極力無くなるようにつくられています。特に制限がなければ、積極的に活用していくべきでしょう。
除草剤を使う場合、ヤブガラシの茎や葉をいくら枯らしても、根っこまで枯らさない限りあまり効果はありません。除草剤を選ぶ際は、多年生雑草であるヤブガラシに効果があり、根っこまで枯らすことのできるものを選ぶようにしましょう。ヤブガラシの茎や葉に散布することで、根っこまで移行するタイプのものがおすすめです。
ただし、除草剤は周りの植物にかかると、そちらにも影響を与えるおそれがあるので、枯らしたくない植物が近くにあり、そちらにも効果のある除草剤を使用する場合は、枯らしたくない植物にかからないよう慎重に散布するか、難しければ使用を控えた方が良いです。土壌に残留しない、庭木の根元にかかっても問題ないタイプのものもあるので、場合によってはそれらも活用できます。
いずれにせよ、用法用量を間違えなければとても便利なものなので、有効活用していきましょう。
熱湯や重曹の効果は?
除草剤の代わりに雑草を枯らす方法として、熱湯や重曹が挙げられることがあります。どちらも効果がないわけではありません。
しかし、熱湯は枯らすまでにかなりの量の熱湯が必要になることや、周囲の植物や環境への悪影響が考えられるためあまりおすすめできません。
重曹は、ヤブガラシに浸透させるためにあらかじめ茎葉に傷をつけなければいけない点と、除草効果は除草剤に劣るという点で、あまりおすすめはできません。
根をできる限り抜き取る
ヤブガラシの生えている土が柔らかければ、根っこを掘り起こして駆除するという方法があります。ヤブガラシの太い根っこは土の浅い層に伸びていることが多いので、引っ張って抜き取ることができます。
しかし、この方法だと少しは根っこが残ってしまうので、数や密度を減らすことができても、根絶することは難しいです。また、他の植物の根っこと絡み合って生えているような場合は、そもそも抜き取るのが難しい場合もあります。
そのため、この方法はあくまで補助的なものと考えて、他の方法と併用しながら駆除をするか、根絶を諦めてヤブガラシを低密度のまま抑える方針にする場合などにおすすめの方法です。
また、この方法を使う場合、隣の敷地などからヤブガラシの根っこが伸びていないかよくチェックしましょう。そちらのヤブガラシが放置されている場合、栄養が際限なく供給されて駆除するのが難しくなります。隣の敷地からヤブガラシが伸びているような場合は、根っこが伸びてこないように土の中に仕切りをつくるなどして侵入されないようにする工夫が必要です。
芽吹きも徹底的に抜く
根っこをできる限り抜く場合、取り残した根っこから生えてくる芽吹きも徹底的に駆除しましょう。そのまま成長させてしまうと、どんどん光合成して再び栄養を貯めた根っこを伸ばしてしまいます。
また、ヤブガラシがいくら抜いても抜いても生えてくるといっても、根っこに貯蔵した栄養が無くなればそれ以上生えてきません。芽吹きの抜き取りだけで栄養を使い切らせるのは難しいですが、取り切れなかった小さい根っこなら、何度か芽吹きを摘み取れば枯らすことができる可能性があります。
防草シートなどで覆う
防草シートなどで土を覆い、ヤブガラシを光合成させずに枯らす方法です。東日本に多い種をつけないタイプのヤブガラシであれば、一度枯らしてしまえば土の中で眠る種から再び復活するようなこともありません。
しかし、この方法は他の植物も生えられなくなってしまうことと、見た目があまり良くないことがデメリットになります。果樹園のような、見た目より雑草防除が優先される場所や、いったんその場所をリセットしたい場合などに使うことができます。
また、ヤブガラシを防げるのは防草シートを敷いている間、敷いている範囲内に限られるので、周りにヤブガラシが生えていれば、防草シートを外した後にそこから再び侵入される場合もあるので注意しておきましょう。
他のつる植物を育てる
ヤブガラシと同じような場所を好むつる植物を育てて、ヤブガラシを抑える方法です。ヤブガラシのような明るい場所を好むつる植物は多くの種類があり、園芸植物として販売されているものも少なくありません。それ単体ではヤブガラシに勝てないかもしれませんが、抜き取りなどの他の駆除方法と併用すれば徐々にヤブガラシの居場所を奪うことができます。
アサガオ類やパッションフルーツなどは、よく販売されていて繁殖力も強く、ヤブガラシを差し置いて繁茂しているようなこともあるのでおすすめです。ただし、ヤブガラシが駆除できても、代わりに植えたつる植物が増えすぎて困ってしまう場合もあります。アサガオ類などは一年で種を大量に残して枯れるものが多いので、大量に繁殖してしまう場合があります。
種をつけない、つけづらいものを選ぶか、生やす範囲を限定するなどしてしっかり管理しましょう。
お庭の大敵!ヤブガラシの特徴
ヤブガラシは、お庭にはびこる雑草として悪名高いです。いくら駆除しても退治しきれずに、現在進行系で大変な思いをしている方も多いのではないかと思います。ヤブガラシの特徴について代表的なものをご紹介します。
植木に絡みついて繁茂する
つる植物であるヤブガラシは、茎から巻きひげを出して他のものに絡みつきながら成長します。庭木に絡みついて上に登ることもあり、育てている植物を覆うように成長します。成長スピードも速く、あっという間に庭を埋め尽くしてしまうほどの繁殖力です。
他の植物を枯らしてしまうことも
ヤブガラシは漢字だと「藪枯らし」と書きますが、藪を覆って枯らしてしまうほど繁茂するというところからその名前が来ています。その名前の通り、繁茂しすぎると庭木に覆い被さって育ち、日陰にして枯らしてしまうことも少なくありません。
庭木など育てている植物に絡みついているのを見かけたら、すぐに引っこ抜いて対処する必要があります。
抜いても抜いても生えてくる
ヤブガラシがただ成長スピードが速いだけのつる植物なら良かったのですが、ヤブガラシの恐ろしさはそれだけではありません。ヤブガラシの最も厄介な特徴が、根っこに栄養を貯めるという点です。
地中に太い紐のような根っこを縦横無尽に張り巡らせ、あちこちから芽を出します。その根っこの長さは、成長すると10mを超えることもあるほどです。
この根っこがあるために、地上のつるをいくら引っこ抜いても、再び根っこから新しい芽がでてきて再生します。根っこを掘り出しても、根っこの欠片が少し残っているとそこから再生するため、駆除も困難です。
花にはスズメバチなどがやってくる
ヤブガラシは、初夏ごろからあまり目立たない花を咲かせます。この花は甘い蜜をたくさん出すので、ミツバチやチョウなどの様々な虫たちが集まります。その中で、スズメバチがやってくることが多いのが厄介な点の一つです。
スズメバチはお庭の害虫を減らしてくれる虫ではありますが、庭のお手入れをする際などに近くにいたら誤って触れた時に刺される可能性があり、少し危険です。
ヤブガラシはどんな植物?
ヤブガラシを駆除する際に、ヤブガラシがどんな植物なのか特徴や生態を知っておくと、役に立ちます。性質を知ることで効果のない方法を取らずに済み、工夫次第では弱点をつくこともできるためです。ヤブガラシの基本的な情報をご紹介します。
ヤブガラシの基本情報
ヤブガラシは北海道から沖縄まで分布するブドウ科ヤブガラシ属の多年草です。つる性になり、葉っぱや花序(花の集まり)の付け根からコイル状に巻きひげを出し、他のものに絡みつきながら成長します。
葉っぱは鳥足状複葉と呼ばれる、小さな葉っぱが5枚集まってできるつくりの葉っぱです。鳥足状複葉を持つ植物はあまり多くないので、見分けに困ることは多くありません。同じつる性で鳥足状複葉を持つアマチャヅルは、葉っぱがヤブガラシに比べてやや小さめで、表面に毛が生えることなどで見分けられます。また、南西諸島にはヒイラギヤブカラシというよく似た種類がみられますが、小葉の形が丸いことなどで見分けられます。
花は初夏から夏にかけて咲き、花には様々な虫が集まっていることが多いです。地下に横方向に伸びる根っこを広げ、繁殖します。他の植物では地下茎と呼ばれる茎を地中に広げるものが多いですが、ヤブガラシは地下茎ではなく根っこです。ちなみに、標準的な和名は「ヤブガラシ」ではなく「ヤブカラシ」が用いられるようです。
東日本には実をつけないものが多い
ヤブガラシには、2倍体という普通に果実をつけるタイプと、3倍体という果実をつけないタイプが存在します。果実をつける2倍体は西日本で見られることが多く、小さなブドウのような果実をつけます。
東日本でみられるものはほとんどが3倍体で、花が終わっても実をつけません。2倍体は、芽吹いたばかりのつるは、3枚の小葉が集まったものをつけることが多いのが特徴です。
地中に根を張り成長する
ヤブガラシは、太い紐のような根っこを地中に伸ばして成長します。根っこに栄養を貯め、あちこちから芽吹いて新しいつるを伸ばします。冬の間は、地面から上の茎や葉っぱを枯らし、根っこに貯めた栄養で冬を越します。
生き残るための様々な仕掛け
ヤブガラシは繁殖力が強い植物ですが、それ以外にも、厳しい自然界を生き抜く上での工夫をたくさん持っています。ヤブガラシが厄介な雑草として扱われる背景には、厳しい自然を生き抜くためのいくつもの仕掛けがあります。それらの特徴もより良く知ることで、より効果的な対策ができるはずです。
自分の葉には巻き付かない
ヤブガラシが葉っぱや花序の付け根から出す巻きひげは、他の植物の枝葉などに絡みつきますが、根っこで繋がった自分の葉っぱには巻き付かないといわれています。葉っぱに巻きひげが絡みつくとグシャグシャになってしまい、うまく光合成ができなくなるため、それを防ぐのに役立っているのだと考えられます。
ハダニを避けて育つ
ヤブガラシが出す巻きひげは、ハダニのいる植物には巻き付かないといわれています。つる植物の巻きひげは、旋回しながら巻き付くものを探していますが、ハダニを感知すると離れます。
ハダニのいる葉に巻き付かないようにすることで、ハダニが自分の巻きひげを伝って自分の葉っぱを食べに来ることができないようにしているというわけです。
太いパイプで水を運ぶ
他のつる植物でも持っている特徴ですが、ヤブガラシの持つ導管(水を運ぶ管)は、他の多くのつる性ではない植物に比べて一本一本が太いです。ヤブガラシは他の植物に絡みついて育つので、茎を丈夫にする必要がありません。実際にヤブガラシのつるは、太いものでも力を込めるとすぐに折れたり潰れたりします。
茎を丈夫にする必要が無い分、代わりに導管を太く大きくして大量の水を運び、速く成長できるようにしているということでしょう。
ヤブガラシを駆除するのが難しい理由
ヤブガラシは様々な特徴を持っていますが、特に駆除を難しくしている性質がいくつかあります。その点を抑えておけば、対処すべき方法が見えてきて駆除がしやすくなります。ヤブガラシの性質の中で、特に駆除を難しくしている点を2つご紹介します。
繁殖力が強い
ヤブガラシは非常に成長スピードが速く、どんどんつるを伸ばして成長します。他の植物などに絡みつきながら上に登る性質があるために、自身の身体を丈夫にする必要が無く、少ない資源で茎を伸ばし、いち早く光合成できるためです。
芽吹く際には、根っこに貯めた栄養を使って成長するため、春に種から芽生える植物より速くスタートダッシュを切ることができます。ヤブガラシを放っておくとあっという間に成長し、他の植物を全て覆い尽くしてしまいます。
根が地中を這ってあちこちから芽が出る
ヤブガラシは、光合成によって作った栄養を地下の根っこに貯め、新たに芽吹いたり茎を伸ばしたりするのに使います。駆除しても根っこの欠片から再生してしまうだけではなく、植木の根鉢の土の中などにヤブガラシの根っこが紛れていたら、そこから別の場所にも移動してしまいます。
そのため、庭に今までいなかったヤブガラシがいきなり出現した場合、発生源を特定し、なるべく早く集中的に駆除しなければいけません。
根絶するのは難しい
お庭からヤブガラシを根絶するのは、非常に難しいです。根っこの欠片から再生するため、少しでも根っこの取り残しや生き残りがあると再び生えてきます。しかし、効果的な方法で継続的に駆除していけば、ヤブガラシをあまり邪魔にならない低い密度のまま保つことも可能です。庭の環境やヤブガラシの繁茂状況によっては、根絶することもできるかもしれません。
大事なのは、継続的に駆除することです。気を抜いて放置するとあっという間に増えてしまうので、根気強くやっていきましょう。
困ったらプロに相談!
いくらやっても駆除しきれない、駆除のやり方に自信がない、駆除に使える時間がないという方は、smileガーデンなどのプロにお願いすることも検討してみてください。自分でやり方を模索してみるのも良いですが、一度プロの技を見てみるのも良いかと思います。ぜひ相談してみてください。