ガーデニングをしていると、ある特定の植物だけが増えすぎてしまうようなことがありますよね。
放っておいたらその植物が増えすぎて植えたことを後悔したことのある方も多いのではないでしょうか。
庭に植えると増えすぎてしまう可能性のある植物の中でも、宿根草についてご紹介します。

目次

植えてはいけない宿根草を知っておこう!

NGと書かれた紙とペン

 ガーデニングをしていると、ある特定の植物だけが増えすぎてしまうことがあります。
もちろん、それらの植物たちはそれぞれに魅力があり、適切に管理されればとても良いものです。
しかし、こまめに手入れする必要があるものが多く、ガーデニングにあまり手をかけたくない、手をかけられない方にはおすすめできません。

 そうした増えすぎてしまう植物には、宿根草と呼ばれるタイプのものが多いです。
庭に植えたら増えすぎてしまうかもしれない宿根草について、しっかりチェックしておきましょう。

宿根草の特徴とガーデニングへの影響

花壇の手入れをする人

 宿根草とは、冬になると地面から上が枯れて、根っこや地下茎などの姿で冬越しを行う植物の総称です。
本質的には多年草と変わらないのですが、園芸の中では冬でも葉っぱが残るものを多年草と呼んで区別します。
ふつう一年で枯れず、複数年生き続けます。

 宿根草は、庭に植えられる園芸植物の中でも増えすぎてしまうものが多いです。
というのも、宿根草は「栄養繁殖」といって、種だけでなく根茎や鱗茎(球根)などで繁殖することがあるためです。
地下茎を伸ばしてあちこちから芽を出したり、球根が分裂して徐々に生育範囲を広げたりします。

 種での繁殖であれば、種類によってはそもそも結実や発芽しなかったり、発芽しても芽生えたてでは弱くて定着できなかったりと、問題にならない場合も多いのですが(もちろん、種でたくさん繁殖してしまうものもあります)、栄養繁殖はある程度の大きさの子株が親株の育った環境の近くで育つので、定着や生育が容易なところが厄介です。
また、親株がいなくならない限り繁殖を止めることができません。

生育旺盛・繁殖力が強すぎる宿根草のリスク

 宿根草が増えすぎると、いくつかの問題が発生します。
シンプルに、庭で同じ植物が増えすぎると季節を通じて同じような景観になってしまいます。
また、庭のスペースが減るので他の植物を植えることができません。
もともと植えてある繁殖力の弱い植物と競争して、弱らせたり枯らしてしまったりする場合もあります。
あまりに増えすぎてしまった場合は、駆除も検討しないといけなくなるでしょう。

 また、増えすぎた植物が庭の外に勢力を拡大してしまった場合にもリスクがあります。
周辺にある他の家の庭に入ってトラブルになる可能性もありますし、周囲の森や草地などに野生化したら生態系に悪影響を及ぼします。

 生態系には関心のない方もいるかもしれませんが、そうした悪影響が問題視されれば、それらの植物が特定外来生物のように法律で規制され、育てることができなくなるかもしれません。

 実際に、かつては園芸植物として普通だったものが野生化して問題視され、今では育てられなくなってしまったものがいくつもあります。
自分の手で、自分の趣味の幅を狭めたくはありませんよね。

 もちろんそれらは適切にこまめな手入れができていれば問題ないことも多いのですが、庭の手入れに時間をかけたくない、かけられない、上手くできる自信がないという方はこれらのリスクをしっかり把握しておかなければいけません。

庭に植えてはいけない宿根草の種類一覧

オレンジ色のチェックマーク

 こまめな手入れに自信がないなら庭に植えない方が良い、繁殖力の強い宿根草にはたくさんの種類があります。
いずれも苗自体は簡単に手に入るものばかりですが、その中には、すでに野外で野生化して問題視されているものも少なくありません。
繁殖力の強い宿根草をいくつかピックアップしてご紹介します。

 これらはいずれも魅力的な園芸植物ではありますが、管理の仕方を間違えると問題になりうるということを認識しておきましょう。

ヒメイワダレソウ

ヒメイワダレソウ

 ヒメイワダレソウは、リッピアの名前でも販売される宿根草です。
暖かい地域では冬でも地面から上に葉っぱが残っていますが、寒い地域では枯れてなくなります。
また、園芸植物としての分類は宿根草とされることも多いですが、実際には小低木です。

 ヒメイワダレソウは地面を覆うように茎が成長し、芝生のように成長します。
丈夫で育ちやすいため、グランドカバーとして植えられることが多く、小さく白い花が非常に可愛らしいです。
しかし、育てやすい分繁殖力も強く、どんどん庭の中で広がってしまいます。
庭から外に出て繁殖を続け、野生化してしまっていることも少なくありません。

ガウラ

ガウラ

 ガウラはハクチョウソウまたはヤマモモソウとも呼ばれる宿根草です。
鳥の翼のような花びらで、長く伸びた雄しべが非常に可愛らしい植物です。
栄養繁殖は旺盛ではありませんが、こぼれ種により増えてしまう可能性があります。

 実際に、ガウラが野生化して問題になっている場所は少なくないです。
また、小さな種から繁殖するので、どこからどれだけ芽が出てくるのか予測するのも難しいです。

 新たにつぼみをつけながら次々に花を咲かせて、咲き終わったものから結実していくので、花がらを摘んで結実を避けるのも容易ではありません。

フジバカマ

フジバカマ

 フジバカマは、淡いピンク色の花が特徴的なキク科の宿根草です。
いくつかの種類や園芸品種があり、西洋フジバカマユーパトリウムなどの名前で売られているものもあります。

 フジバカマは育つと地下茎を伸ばして広がります。
良い環境だと旺盛に成長するので、増えすぎてしまう場合も多いです。
また、〇〇フジバカマという名前のものではなく、山野草のジャンルで販売しているフジバカマの場合、地域の在来植物と交雑してしまう場合があります。

 野生のフジバカマは生育環境の悪化などから全国的に数を減らしていて、絶滅危惧種に選定されている都道府県も少なくありません。
そんな貴重な在来のフジバカマとあなたの家のフジバカマが交雑して、古くから引き継がれてきた地域固有の遺伝子が永遠に失われてしまう可能性があります。

 また、野生化してしまった場合、もともといたフジバカマと外見では見分けがつかないことが多いので、ただの園芸植物の野生化なのか、地域の希少な在来植物なのか判別がつかなくなる可能性があります。
そうした場合、地域の方々が大事に守ってきたフジバカマが、実は調べてみるとあなたの家から野生化したフジバカマだった、ということになってしまう可能性もあります。

 もちろん、それらの心配が無い条件で育てればとても育てやすい魅力的な植物なのですが、しっかり管理できるか植える前によく確認しておきましょう。

シュウメイギク

シュウメイギク

 シュウメイギクは、秋に大きな花を咲かせる宿根草です。
名前とは異なり、キク科ではなくキンポウゲ科の植物です。

 シュウメイギクは育てやすいだけでなく大きな花が美しく、花色のバリエーションもあって非常に魅力的な植物です。
しかし、庭に地植えすると地下茎で増えすぎてしまう場合があります。

 野生化することはそう多くないですが、庭の中で繁殖しすぎて困ってしまうということは多いです。
植える場合は、地下茎の伸びる範囲を制御したり、こまめに間引いたりといった作業をするのがおすすめです。

宿根リナリア

宿根リナリア

 宿根リナリアは、オオバコ科(旧ゴマノハグサ科)の宿根草です。
高く伸びた茎に穂のように紫色の花がつくのが特徴です。
花のような一つ一つはひらひらした花びらをしていて非常にかわいらしく、庭などによく植えられます。

 宿根リナリアは、こぼれ種により繁殖して増えすぎてしまうことが多いです。
庭の中で増えすぎてしまうだけでなく、家のすぐ外の道路などに野生化しているような場合もあります。
種で増えるためどこからどれだけ芽が出るか予測しづらく、忘れた頃に出てくる可能性もあります。
植える場合はこまめな管理が必要です。

ヒルザキツキミソウ

ヒルザキツキミソウ

 ヒルザキツキミソウは、アカバナ科の多年草です。
大きな淡いピンク色の花が咲き、十字型のめしべや糸を引く花粉などが非常にかわいらしい植物です。
しかし、ヒルザキツキミソウは地下茎などで増えすぎてしまう場合があります。

 実際に、各地の道ばたなどでヒルザキツキミソウが野生化して問題になっており、カテゴリとしては園芸植物より雑草に近いかもしれません。
庭に地植えしたら、良い環境であればよく繁殖し、庭を埋めるように広がってしまいます。
植えるのであればしっかり管理できるようにしておく必要があるでしょう。

エリゲロン

エリゲロン

 エリゲロンは、キク科のハルジオンやヒメジョオンなどを含むグループですが、園芸植物としてはペラペラヨメナ(または源平小菊)と呼ばれるものを指す場合が多いです。

 エリゲロンは茎が根元近くで枝分かれして広がり、地面を覆うように育ちます。
石垣やコンクリートの隙間のような場所が好きで、良い環境だとどんどん増えて広がります。
実際に野生化して問題になることも多く、川の護岸を埋め尽くすように広がることも少なくありません。

 環境によってはあまり広がらない場合もありますが、たとえば家の近くのコンクリート擁壁や石垣など、エリゲロンが増えやすい環境が近くにある場合、アクセスのしづらさから一度増え過ぎたら間引くことすら困難になります。

植えてはいけない宿根草の特徴とリスク

困った顔のマークを手に取る人

 植えてはいけない宿根草には、共通する特徴があります。
そして、繁殖しすぎてしまうことによって起こるリスクは様々です。
庭に宿根草を地植えする場合、そうしたリスクを必ず考慮していなければいけません。

 植えてはいけないといわれる宿根草について、共通する特徴やリスクについてご紹介します。

他の植物や庭全体に及ぼす影響

 植えてはいけないといわれる繁殖力の強い宿根草は、環境が良ければ庭全体を覆うほど繁殖してしまう場合があります。
そうなると、庭に植えてある他の植物は競争に負けて弱ったり枯れたりしてしまいます。

 庭全体の見た目や印象が変わってしまうので、そうした景観に与える影響も大きいです。
また、それらの宿根草を一斉に駆除したとしても、全ての地下茎や地中に埋まって休眠している全ての種まで取り去るのは非常に困難です。

 そのため、宿根草が一度広がってしまうと、広がった範囲内で半永久的にその宿根草と戦い続けることになってしまうかもしれません(もちろん、対策の仕方によっては防ぐこともできます)。
目に見える影響から、長期にわたる影響まで、様々な影響があることを認識しておきましょう。

繁殖力が強すぎる宿根草の駆除が難しい理由

 植えてはいけない宿根草に共通する特徴として、「地下茎などでの栄養繁殖が旺盛」または「種をたくさんつくり、容易に定着する」といったものがあります。

 地下茎などの栄養繁殖が旺盛なものは、一度広がったら地下茎や根っこを残らず取り去らないと駆除できず、完全に取り去らない限り(その植物が植えてある限り)、繁殖を止めることができません。

 こぼれ種で繁殖する場合、種類によっては種が何年もの間休眠する場合があり、そうした場合は全ての種が無くなるまで駆除し続けることになります。
種が発芽しないように他の植物で影をつくったり、根っこまで枯らすことのできる除草剤で他の植物もろとも駆除したりするなど、対策の取り方によっては比較的手間は少なくなる場合もあります。

 しかし、どんな状況でもそうした対策が取れるわけではなく、たとえば地面を暗くして発芽や成長を抑えても隙間の部分では防ぐことができなかったり、除草剤を使うことができない場所があったりもします。
条件によって取れる対策が違うため、苦戦を強いられる場合も少なくありません。

宿根草を安全に楽しむ方法

植木鉢の植物と庭道具

 しかし、宿根草には魅力的な種類が非常に多いです。
繁殖力が強いというだけで、園芸を楽しむ幅が狭くなってしまうのは悲しいですよね。

 植えてはいけないといわれる宿根草も、しっかり対策すれば安全に楽しむことができます。
リスクを考えた上で庭で宿根草を楽しむためにとれる方法をご紹介します。

鉢植えでの育成を検討する

 地下茎や根っこなどで栄養繁殖して増える宿根草の場合、鉢植えで育てることで増えすぎるリスクを抑えることができます。
鉢植えなら普通はその中にしか地下茎や根っこを伸ばすことができないので、それ以上広がることがありません。
シンプルで効果的な対策といえるでしょう。

 ただし、鉢植えだと地植えする場合より頻繁に水やりをしなければならず、大きさに合わせて鉢増しなどをしなければいけないので、若干手間はかかります。
また、鉢の底から地下茎や根っこを伸ばす可能性があるので、鉢の底皿は必須です。

 こぼれ種での繁殖が旺盛でなかったとしても、多少なりとも種での繁殖を行う種類の場合、鉢から外で繁殖してしまう可能性もあります。
気づいたら外に逃げ出して増えすぎていたということになりかねません。

 また、こぼれ種での繁殖が旺盛なものは鉢植えだと対策になりません。
鉢植えを使ったからといって安心しきって良いものではないことには注意しておきましょう。

庭での成長をコントロールするテクニック

庭道具

 庭での成長をコントロールすることができれば、地植えしても増えさせずに抑えることができます。
一つは生育させる範囲をあらかじめ決めておいて、その範囲からはみ出したものは徹底的に間引くという方法です。
シンプルではありますが徹底できれば強い方法です。

 しかし、思ったより遠くで芽を出したり、遠くに種が飛んだりする場合もあるので、植える植物に対する理解は欠かせません。

 地下茎や根っこを伸ばして繁殖する宿根草の場合、地中に板などを設置してそれ以上広がらないようにすることもできます。
しかし、板に隙間が空いていたり、板が腐ったり、板の下をくぐって地下茎が伸びたりする可能性があります。
こちらも、植える植物に対する理解と、徹底的な対策がかかせません。

 こぼれ種で繁殖する種類の場合、花が咲いて種をつける前に花を摘んでしまうこともできます。
ただし、一つ一つ花を摘み取るのは大変な場合がありますし、花のまとまりごと取り去る場合、本来より短い期間しか花が楽しめない可能性もあります。

管理しやすい宿根草の代替品

 植えてはいけないといわれる宿根草は管理しきれなさそうだという場合、代わりの選択肢として挙げられるものがいくつかあります。
たとえば、地下茎や根っこなどで広がらず、その場所で少しずつ大きくなるだけの種類などはおすすめです。
こぼれ種で繁殖しないかという点だけ、しっかり確認しておきましょう。

 また、全てではありませんが、耐陰性が強く森の中でひっそり生きるような種類では、繁殖スピードが遅いものも少なくないです。
こぼれ種で増えすぎてしまうものについては、八重咲き品種であれば種はできないか、少なくとも頻繁にはできません。
八重咲きでなくても、不稔(芽生える種をつくらない)の品種がつくられているようなものもあります。
そうしたものでは、地下茎や根っこで繁殖しないかよく確認しておきましょう。

まとめ:植えてはいけない宿根草と正しい選び方

描かれた電球のイラスト

 植えてはいけない宿根草は、共通して「地下茎や根っこで旺盛に繁殖する」または「こぼれ種で旺盛に繁殖する」といった特徴があります。
こうしたものを庭に植えたい場合、徹底的な対策をする必要があります。

 無責任に植えて増やしすぎて野生化でもしようものなら、回り回ってその種類が法律で規制され、自分の趣味の幅を狭めることになりかねません。
適切に管理する自信がない中で、繁殖力の強い宿根草を植えることはしないほうが良いでしょう。

 管理に自信がない場合や、一度増えすぎてしまった宿根草を駆除したい場合、どんな植物を植えれば良いのかわからない場合など、smileガーデンのようなプロの業者に相談してみるのもおすすめです。
ぜひ一度依頼してみましょう。

氏永 勝之
監修者 smileグループCEO
株式会社ガーデンメーカー 代表取締役
愛知農園植木苗木株式会社 専務取締役
一般社団法人ガーデンビジネス協会 代表理事
氏永 勝之

愛知県稲沢市生まれ。稲沢市が「日本四大植木産地」であることもあり、幼少期から植木に囲まれて成長。
東京農業大学卒業後、名古屋市内の造園会社に就職。公園の整備工事から国交省事業の国道整備工事における土木及び街路樹等の植栽工事に現場代理人として携わる。

執筆者 瀬尾一樹

樹木医です。木も草も大好きで、将来は自分だけの森を持ちたいと思っています。木の美しさや育てる楽しさだけでなく、生きものとしての生態的な面白さも伝えていきたいです!好きな木はケヤキです。