庭で植物を育てていると、様々な雑草が生えてきます。抜いても抜いても生えてくる雑草の相手に辟易している方も多いのではないでしょうか。雑草対策の方法の一つとして、熱湯をかけるというものがあります。ここでは、雑草対策としての熱湯の効果についてご紹介していきます。

目次

雑草対策で熱湯をかける除草は効果あり

外に置かれたやかん

 結論から言うと、熱湯を雑草にかけると、枯らす効果があります。雑草に熱湯がかかり、熱が伝わるとその部分は枯れていきます。雑草対策に効果があると言って良いでしょう。
 ただし、実際に雑草対策として運用するにはメリットとデメリットがあるため、それらを精査してから行わなければいけません。
 メリットばかりではないということにも留意して、どんなリスクがあるかということも含めてチェックしておきましょう。

100℃に近い熱湯をかけるのがコツ!

 熱湯をかける場合、なるべく100℃に近い高い温度の熱湯をかけるのがおすすめです。タンパク質は一般に60℃程度で変性するのですが、雑草の根っこや地下茎まで熱を伝えるためには、より高い温度の熱湯をかけた方が確実に熱を伝えることができます。
 そのため、なるべく高い温度の熱湯をかけるようにしましょう。

安全に雑草を枯らす手順とは

オレンジ色のチェックマーク

 熱湯によって安全に雑草を枯らすためには、いくつかの手順があります。熱湯は一歩間違えると人体にも害を与えるので、できるだけ安全に扱わなければいけません。
 どのように扱えば良いのか、しっかりチェックしておきましょう。

ステップ1:熱湯を沸かす

 まずは水を沸かして熱湯をつくります。沸かす場合は家庭用のコンロでも構いませんが、除草する範囲が一定以上であれば、一度になるべく多く沸かした方が効率的です。
 高い温度になるように、しっかり沸騰するまで沸かすようにしましょう。

ステップ2:熱湯を運ぶ

 熱湯を駆除したい雑草の生えている場所まで運びます。熱湯が足にかかるなどすると火傷につながってしまうおそれがあるので、運ぶ際は細心の注意を払うようにしましょう。

 鍋のような容器で運ぶと歩いているうちにこぼれる可能性があるので、しっかり蓋ができる容器に入れるのがおすすめです。
 熱湯を移し替える際は、移動先の容器が耐熱性の容器かどうかよく確認しておきましょう。

ステップ3:雑草に熱湯をかける

 熱湯を運んだら、枯らしたい雑草の生えている場所に熱湯をかけます。地下茎や根っこで増えない雑草であればそのまま地面から上の茎や葉っぱにかければ良いですが(根元に重点的にかけるのがおすすめです)、地下茎や根っこで増える雑草の場合、周囲の土にも浸透するようにかけるようにしましょう。

 地下茎や根っこの深さにもよりますが、土の中まで熱湯の熱が浸透するのにはそれなりの量が必要なので、多めに熱湯をかけるのがおすすめです。
 また、深いところにある地下茎や根っこには熱が届かずに枯らしきれない場合もあります。

ステップ4:経過観察を行う

 熱湯をかけたあとは、効果があったか経過観察を行います。地面から上の茎や葉っぱにかけた場合は、かけたあとすぐに反応があるはずです。
 ただし、葉っぱが萎れて一見効果があったように見えても、茎が生きていれば復活する可能性もあります。

 地下茎や根っこで増える雑草は、効果がないか枯らしきれていなければその後芽吹いてくるので、数週間待って様子を見ましょう。

雑草対策で熱湯除草のメリット

メリットと書かれた積み木

 雑草対策で熱湯を用いる場合、メリットがいくつかあります。雑草対策の方法にはたくさんの方法があるので、以下のメリットが自分の求めるものと異なっている場合、別の方法を選んだほうが良いかもしれません。
 どのようなメリットがあるか、しっかりチェックしておきましょう。

コンクリートの隙間などの雑草対策として便利

 コンクリートの隙間に生えるような雑草を駆除したい場合は、熱湯が有効になる場合があります。庭の土などであればまんべんなく地下深くまで熱湯をかけなければいけません。

 しかし、コンクリートの隙間のような場所であればかけるべき範囲が限られているので、少ない量の熱湯でより確実に雑草を枯らすことができます。コンクリートのひび割れのような場所に生える雑草であれば、熱が地下に届かなくて枯らしきれないということも比較的少ないです。

除草剤と比べて費用が安い

 熱湯は、除草剤と比べて費用が安いです。雑草対策にあまりお金をかけたくないという場合は、熱湯の使用を検討しても良いかもしれません。

 ただし、熱湯を沸かすための水道光熱費や沸かす時間は馬鹿になりませんし、何度もキッチンと庭を往復しなければいけない手間もあります。もし火傷でもしたら、治療費がさらにかさむかもしれません。
 意外とお金も手間もかかるということはしっかり認識しておきましょう。

雑草対策で熱湯除草のデメリット

メリットデメリットと書かれた紙

 熱湯で雑草対策を行うにあたり、デメリットもたくさんあります。この方法に関しては、デメリットの方が多いかもしれません。

 コンクリートの隙間など狭い範囲で行うのならまだしも、庭全体の雑草対策を熱湯で行おうとしている場合、これらのデメリットはしっかり把握しておくようにしましょう。

作業が面倒

 熱湯で雑草対策を行う場合、作業にかなり手間がかかります。数分かけて熱湯を沸かし、こぼさないように気をつけながら庭まで運び、雑草にまんべんなく熱湯をかける。これで1セットです。

 一般家庭にあるやかん一杯分くらいではかけられる範囲はたかが知れているので、何往復もこの行程を繰り返さなければいけません。どれくらいの面積の雑草を熱湯で枯らそうとしているのかにもよりますが、かなり面倒な作業になるということは承知しておきましょう。

 また、それだけやっても雑草を枯らしきれない可能性は十二分にあります。後ほど紹介しますが、別の雑草が新たに生えてくる可能性もあります。効果の割に手間と時間がかかるということはしっかり覚えておきましょう。

火傷などの危険性

 熱湯を扱う以上、火傷の危険性は常につきまといます。運ぶ際には細心の注意を払わなければいけません。雑草対策の費用を抑えるために熱湯を使っていても、火傷をしてしまったら治療費に除草剤よりも高い費用がかかってしまいます。必ず怪我がないように対策するようにしましょう。

 運ぶための容器は大容量で耐熱性があり、かつ熱湯がこぼれないものにする必要があります。熱湯をかける際にも、自分の足などにかからないようにする必要があります。何往復もするうちに、油断して火傷してしまうかもしれません。きちんと除草効果を出すためには、熱湯はなるべく高い温度にする必要があります。
 熱湯で雑草対策を行うのはかなり危険な方法であることをしっかり認識しておきましょう。

広い範囲で行うのは現実的ではない

 手間と時間、危険性などの面から、広範囲の除草を行うのは現実的ではありません。キッチンなどで一度に沸かせる熱湯の量はたかが知れていますし、一度に熱湯をかけられる面積も大したものではありません。地下茎まで枯らそうと地中深くまで熱湯を浸透させるのならなおさらです。

 また、大きめの雑草だと一株枯らすのにもそれなりの量が必要です。広い範囲にびっしり生えた雑草に対して熱湯をかける場合、まんべんなく熱湯をかける必要があります。

 それらの点から、熱湯で雑草対策を行うのはなるべく狭い範囲にする必要があります。庭全体や空き地全体などの雑草対策を熱湯で行うのは、一般家庭にある設備で行うのは現実的ではありません。

植えている他の植物が枯れる可能性

 熱湯をかけることにより、離れた場所に植えた植物が枯れてしまう可能性があります。特に樹木など、長期間生きる植物の根っこは、かなり広い範囲に伸びています。地植えにした庭木であれば、枝葉の先端より長く根っこが伸びていることはごく一般的です。
 さらに、木の根っこが栄養や水分を摂取できるのは、そのように長く伸びた根っこの先端部のみです。
 そのため、一見庭木から離れた場所に熱湯をかけたつもりでも、庭木の根っこの栄養や水分を摂取する先端部分に熱が伝わり、庭木を枯らしてしまったり弱らせてしまったりする可能性があります。

余計な雑草の種を芽生えさせてしまう

 熱湯により熱が加わり、休眠していた雑草の種が芽生えてしまう可能性があります。植物の種の中には、自分にとって良い環境になるまで、あえて種を発芽させずに長い間休眠するものが少なくありません。

 休眠を解除する方法はいくつかありますが、その中に「温度や乾湿の差によって種の皮が破れることで休眠が解除される」というものがあります。実際に、そうした方法で休眠している種を人工的に発芽させるため、熱湯が用いられることもあります。熱湯を使用することにより、それがきっかけで、かえって厄介な雑草の種を芽生えさせてしまう可能性があるのです。

土壌の微生物も殺してしまう

 熱湯により、土の中で暮らしている庭にとって良い働きをする微生物を殺してしまう可能性があります。
 土の中には、落ち葉や枯れ枝などを分解する小さな生物たちが無数に暮らしています。それらの生物のはたらきによって、落ち葉や枯れ枝が植物の養分として利用できる形に変わり、良い土がつくられ、再び植物の栄養となるのです。

 また、大多数の植物は根っこを通じて土の中にいる「菌根菌」と呼ばれる菌と共生しています。これらの菌の菌糸が根っこでは届かないような細かい場所に張り巡らされ、栄養や水分をとってきて植物に提供することで、植物の生育を助けているのです。植物はそれらの菌に光合成でつくった栄養を渡して、菌根菌の生育を助けています。種類によっても異なりますが、菌根菌があるとないとでは生育にかなり差が出ます。

 このように土の中には、植物にとって良いはたらきをする無数の微生物たちがくらしていますが、熱湯を土にかけることにより、これらの微生物たちがいなくなってしまうかもしれません。もちろん、時間が経てば微生物たちはいずれ戻ってきますが、それなりに時間がかかりますし、戻ってくるのは違う種類の微生物である可能性もあります。

 コンクリートの隙間の雑草駆除などでは大きな影響は無いと思われますが、少なくとも他の植物を植えているような場所などで広範囲に熱湯を使うことは控えたほうが良いでしょう。

雑草対策で熱湯を使用する際の注意点とよくある質問

クエスチョンマーク

Q.熱湯が効きづらい種類の雑草は?
A.熱湯をどれくらいかけるかにもよりますが、スギナやワルナスビなど、根っこや地下茎を土中深くまで伸ばして成長するタイプの雑草にはあまり効果がないと思われます

Q.熱湯をどれくらいかければ枯れる?
A.雑草の種類、深さなどによっても異なりますが、十分な熱が植物の体内にも伝われば、多くの場合枯らすことができます。

Q.効果はどれくらい持続する?
A.熱が冷めたら効果はなくなります。

まとめ

机の上のやかん

 熱湯により雑草を駆除する方法は、効果があるシチュエーションもありますが、デメリットの方が多いです。安く済ませたいからと一見手軽に見えるこの方法を選んでしまいたくなりますが、どんなデメリットがあるのかということはしっかり把握しておきましょう。

 うまく使えば有効な場合もありますので、しっかり特性を把握しておくのが大事です。
 もし雑草を駆除したいけどうまくいかない、やり方に自信がない、時間がないという場合は、smileガーデンに相談してみるのも良いでしょう。プロの技を間近で見ることで、これからの雑草対策に活かせるし、アドバイスをもらえるかもしれません。ぜひご検討ください。

瀬尾 一樹
監修者 樹木医 瀬尾 一樹

樹木医です。木も草も大好きで、将来は自分だけの森を持ちたいと思っています。木の美しさや育てる楽しさだけでなく、生きものとしての生態的な面白さも伝えていきたいです!好きな木はケヤキです。

執筆者 瀬尾一樹

樹木医です。木も草も大好きで、将来は自分だけの森を持ちたいと思っています。木の美しさや育てる楽しさだけでなく、生きものとしての生態的な面白さも伝えていきたいです!好きな木はケヤキです。