5月になると綺麗な花を咲かせるサツキ。刈り込むにしろ自然樹形を保つにしろ、剪定作業はほとんどの場合必要になってきます。剪定は難しいイメージがあり、どうしたら良いのかわからないという方も多いのではないでしょうか。サツキの剪定方法やポイントなどについてご紹介します。


自己流の剪定木が枯れるかも

目次

サツキの剪定の必要性とは?

虫眼鏡とクエスチョンマーク

 サツキを育てるにあたって、そもそも剪定は必要な作業なのでしょうか。自然に育つサツキの木は、当然ながら誰にも剪定されずに生きています。
 どういう意味を持って剪定を行うのか、剪定によりどんな効果があるのか、しっかりチェックしておきましょう。

サツキを剪定しないとどうなる?

 サツキを剪定しないと、理想の状態よりも大きくなってしまう可能性があります。小さく数十cmくらいに保ちたい場合、定期的に剪定する必要があります。
 サツキは、元々渓流沿いの岩場などに自生する樹木です。そのため、水の流れによりしばしば枝がちぎれて流されます。そうした性質もあり、サツキは成長してもそれほど大きくなりません。自然条件では、大きくても1m程度と言われています。
 渓流沿いではない庭で育てた場合はもう少し大きくなる可能性はありますが、5mや10mのように大きくなることはないでしょう。
 そのため、少し剪定しなかったくらいでは大した大きさにはならず、さほど心配する必要はないのですが、庭で育てる理想的な大きさを超えてしまう可能性はあります。
 また、よく街や公園でみかける丸や四角の樹形のサツキは、定期的な刈り込み剪定により整えられたものです。当然ですが剪定しないで放っておいてもこの形にはなりません。大きくなってから刈り込んでも、すぐには小さくできないので綺麗に刈り込めるようになるまで数年かかる場合もあります。目指す樹形があるのであれば、それに合わせて剪定を行うようにしましょう。

健康的なサツキを育てるための剪定の役割

 サツキを剪定する際の役割として、「樹形を整える」「大きさを抑える」「風通しを良くする」などのものが挙げられます。「樹形を整える」「大きさを抑える」については、それぞれ理想的な樹形を目指して剪定を行います。
 「風通しを良くする」というのは、密に伸びている枝を間引いて、カビなどによる病気やアブラムシなどの害虫を発生しづらくするというものです。一律に刈り込みして丸や四角に整えるような場合はわざわざやらないことも多いですが、病害虫を予防するためにそうした間引くような剪定が行われることは自然樹形を目指す木などでは多いです。

サツキの剪定の時期はいつが最適?

カレンダーの日付

 サツキの剪定には、適した時期があります。適した時期を逃すと、花が咲かなくなったりサツキへの負担が大きくなったりします。
 サツキは強剪定にも耐えることが多いですが、花をたくさん咲かせるための剪定時期はややシビアです。目的に応じて適切な時期に剪定を行うようにしましょう。

剪定の適期:花が終わったらすぐ

 サツキの剪定は、主に花が終わってすぐの時期に行うようにしましょう。花が終わってからすぐに、来年の花芽がつくられるためです。
 遅い時期に剪定をすると、来年咲く花芽まで切ってしまい、花がほとんど咲かなくなるということになりかねません。
 時期はややシビアで、花が終わる直後くらいに剪定を行います。サツキは花が次々に咲いていくので、花がまだいくつか残っているような場合にも、思い切って剪定してしまいましょう。
 また、それ以外の時期に剪定を行う場合は、はみ出た枝を整理するくらいの軽微な剪定にとどめておくのがおすすめです。

季節ごとの剪定のポイント

 春はサツキの花芽が膨らんでくる時期なので、基本的に剪定は行いません。5月から6,7月くらいまで花が咲き続けるので、終わりに近づいてきたらサツキの骨格を整えるような剪定を行います。一律に刈り込んで整えるのもこの時期です。
 真夏にはサツキの花芽ができている可能性が高いことと、暑さによりサツキへの負担が大きいため、剪定は基本的に行いません。
 秋から冬にも剪定はなるべくしないほうが無難ですが、伸びてきた枝を整理したり、風通しをよくしたり、病害虫の発生している枝を選んで切ったりと、少しの剪定なら行っても良いでしょう。
 晩秋から春先の間の、厳冬期を避けた時期がサツキへの負担が少ないので、サツキの健康を考えるという意味ではおすすめの時期です。

サツキの剪定の基本方法を解説

キレイに剪定されたサツキ

 サツキの剪定方法や手順をご紹介します。剪定のやり方は基本的に剪定の目的や理想とする樹形や大きさなどによって異なるのですが、ここではよく行われるサツキの剪定方法についてご紹介します。剪定を行う目的などと照らし合わせながらチェックしてみましょう。

刈り込み剪定で樹形を整える

 サツキは丸や四角に刈り込んだ樹形にされることが多いです。そうした場合は、刈り込みバサミで同じ位置で刈り込みます。ずっと集中して刈り込んでいると、部分的に刈り込みすぎてしまうなどムラができてしまうことが多いです。
 そのため、最初に全体を見てどれくらいの大きさ、形に刈り込みたいか決めた後、刈り込みながら時々一歩離れて見て、バランスが崩れていないか確認しながら行うようにしましょう。

透かし剪定で風通しを良くする

 自然樹形にしたい場合などには、混んだ枝を間引いて風通しを良くするということを行う場合があります。枝の密度が高い場所を選んで、間引くように枝を枝分かれの付け根から切っていきます。
 刈り込み剪定の場合は、元々枝葉を密に伸ばして樹形をつくるものなので、わざわざ透かし剪定までやらないことも多いです。もし病害虫の数があまりにも多い場合などは行っても良いかもしれません。

不要な枝を間引き剪定する手順

123と書かれた積み木

 サツキを間引き剪定して風通しを良くする場合、自然樹形なら、他の枝と違う方向に伸びている枝や、まっすぐ上に伸びている枝、同じ場所からたくさん出ている枝などを選んで剪定します。
 剪定する枝は、枝分かれの付け根から切るようにしましょう。枝が飛び出ていると危ないですし、剪定の傷がいつまでも塞がらず、病害虫の侵入口として残ってしまいます。刈り込み剪定した樹形の場合は、既に枝が密に伸びている前提ですが、枝を数本の塊ごと付け根から切ってしまうくらいでも良いでしょう。
 盆栽でもない限り一本一本丁寧に切っていくのは現実的では無いですし、またすぐに再生して密になります。まんべんなく枝の密度を下げるように、かつ密度を下げすぎないように注意して行いましょう。
 自然樹形の場合も刈り込みで整えた樹形の場合も、どこまで密度を下げるべき、という正解はありません。しかし、ある程度枝と枝との間に隙間ができるくらいの密度にすれば問題ないかと思います。
 また、サツキは強剪定にも耐えるのであまり問題にならないことも多いですが、枝葉は光合成をするために必要な器官なので、剪定により失いすぎると元気がなくなることは往々にしてあります。切るのに夢中になって、枝葉がスカスカにならないように注意しておきましょう。

サツキの剪定に必要な道具と準備

芝生の上に置かれた剪定ばさみ

 サツキの剪定を行う際には、いくつかの道具が必要になります。剪定を行うためには、それらの道具をそろえなければいけません。道具の用意し忘れが無いようにチェックしておきましょう。

剪定バサミ、刈り込みバサミの使い分け

 サツキの剪定に必要な道具は、剪定バサミまたは木バサミ、刈り込みバサミ、軍手などです。とりあえずこれらの道具があれば困ることは無いでしょう。剪定バサミや木バサミは、枝を一本一本選んで切る道具です。そして刈り込みバサミは、枝を何本もまとめてザクザク刈り込む道具です。
 これらの道具は、それぞれ用途に応じて使い分ける必要があります。剪定バサミや木バサミは、自然樹形に整える場合や混んだ枝を間引く場合などに使用します。
 刈り込みバサミは、サツキを丸や四角にザクザク刈り込む場合に使います。慣れてくれば刈り込みバサミで一本一本枝を切ることもできますが、基本的には刈り込みバサミは刈り込み以外に使わないほうが良いでしょう。

便利な道具と準備のチェックリスト

 剪定バサミや刈り込みバサミの他にも、あると便利な道具はいくつかあります。たとえば、熊手やバケツなどを用意しておくと、刈り込んだ枝を集めて運ぶのに便利です。
 刈り込みの高さをしっかりそろえたい場合、糸を水平に張って高さがわかるようにすることもできます。
 また、道具の忘れ物、作業のし忘れが無いように、チェックリストをつくっても良いかもしれません。項目としては道具(刈り込みバサミ、剪定バサミ、軍手、熊手など)、剪定作業、枝の片付け、危険箇所の確認、などが挙げられます。それぞれ、自分が作業しやすいように工夫してみましょう。

  • 剪定バサミ(刈込バサミ)
  • 軍手
  • 熊手

大きくなりすぎたサツキの強剪定のコツ

Tipsと書かれたノートと電球

 サツキが大きくなりすぎてしまった場合、強剪定を行って無理やり小さくするという方法があります。しかし、この方法は基本的にやるべきではありません。
 やるべきではない理由や、それでも強剪定せざるを得ない場合のやり方などについてご紹介します。

強剪定を避けるべき理由

 サツキの枝葉は、光合成して栄養をつくりだすための大切な器官です。そのため、剪定により枝葉を落とすことは基本的に多かれ少なかれサツキにダメージを与えることです。
 サツキは剪定に強い木なので、強剪定しても耐えることが多いですが、それでも負担はかかります。元気のない木であれば弱ったり枯れたりする可能性がありますし、樹形も大きく崩れてしまいます。元の樹形に戻るために何年かかかってしまう場合もあるでしょう。
 そのため、基本的に強剪定はなるべく避けたほうが良いです。

どうしても強剪定が必要な場合の対処法

 しかし、複数年サツキを放置してしまった場合や、剪定をあまりせずに数年経ってしまった場合など、サツキが大きくなりすぎてしまい、強剪定せざるを得ない場面もあるでしょう。
 そうした場合は、強剪定しないと小さくすることは難しいです。毎年の刈り込みや剪定で少しずつ小さくすることもできますが、サツキの成長量をある程度把握していなければいけない上、小さくするまでに長い年月がかかります。すぐにサツキを小さくするためには、強剪定をしなければいけません。
 そうした場合、強剪定を行うのはサツキに負担が大きい真夏や、寒冷地なら厳冬期を避けて行いましょう。また、切口保護剤を塗っておくと傷の塞がりが速かったり病害虫の侵入を防いだりする効果があります。
 ただし、主幹を途中から切るような剪定の場合はあまり効果が無い場合もあるので、過信は禁物です。

サツキの剪定後の管理と注意点

オレンジ色のチェックマーク

 サツキの剪定をし終わった後は、何か手入れの方法を変えなければいけない気がして不安ですよね。サツキを手入れする場合、剪定の他には定期的な施肥、鉢植えなら定期的な水やりなどが必要です。剪定後のサツキの手入れについてご紹介します。

剪定後の水やりと肥料の与え方

 剪定後の水やりは、特に気にする必要はありません。いつも行っているのと同じくらいのペースで同じくらいの量あげれば大丈夫です。
 剪定により枝葉が少なくなると水を吸う量は少なくなりますが、元々渓流で暮らしていたサツキは多少土の水分が多くなっても大した影響はありません。
 肥料に関しても、特に気にする必要はありません。
 強いて言えば、負担の大きい強剪定を行った場合は、肥料を与えすぎるとかえって枯れる原因になる可能性があるので、強剪定を行ったあとは肥料を少なくするか、あげないようにするのが良いでしょう。

病害虫対策でサツキを健康に保つ

虫眼鏡で見る葉

 サツキにはいくつかの病気や害虫が発生します。それらの被害を最小限に抑えることができれば、サツキをより健康に保つことができます。
 葉に斑点ができたり葉の形が変わったりする病気が発生した場合、病気の出ている葉っぱを切って焼却処分または土深くに埋めると防げることが多いです。木につく病気の多くはカビのような菌類によるもので、斑点が出たり変形したりした部分から胞子などを飛ばし、新たな感染源になるというものが多いため、それらを処分すれば新たな感染を防げるためです。
 病気の発生時期に、殺菌剤などを撒いて被害を抑えられる場合もあります。ただし、それらの薬剤は基本的に予防や被害の拡大を防ぐことに役立つもので、既に病気にかかっている葉っぱを治療するものではないことに注意しておきましょう。
 また、細菌やウイルスによる病気は基本的に一度かかると治療できません。剪定バサミなどを通じて感染する場合があるので、剪定作業前や剪定する木を変える際などにしっかり消毒するのがおすすめです。
 害虫は、見つけ次第直接捕殺するか、害虫の種類に適した薬剤を散布することで対処が可能です。カイガラムシなど、効果のある薬剤が限られている害虫もいるので注意しましょう。害虫のついている枝ごと切除してしまうのも良いです。
 いずれの場合も、対処を始めるタイミングは早いほど楽です。一つ一つの虫に目くじらを立ててもきりがありませんが、怪しい病気や害虫を見かけたら早めに対処するようにしましょう。

サツキの剪定が難しいときはプロに依頼を

電話をかける女性

 サツキの剪定ができない、自信がない、やる時間がない、といった場合には、プロの剪定業者にお願いするのもおすすめです。
 お金がかかってしまうのがネックですが、結果的に、長い目で見て安く済む場合もあります。業者にお願いする際の注意点などについてご紹介します。

剪定業者に依頼するメリット

 剪定業者に依頼すると、お金こそかかるものの、素人がやるよりきれいに的確に剪定をしてもらえます。また、大量に剪定する木が多い際にも、プロの方が早く効率的に作業をしてくれます。
 剪定のやり方に自信がない場合などは、プロの技を間近で見させてもらって勉強することも可能です。簡単な内容なら相談に乗ってくれる場合もあるかもしれません。
 自己流でやって失敗する前に一度見学してみるもいうのも一つの手です。

業者選びのポイントと料金相場

植物と貯めたお金

 剪定業者を選ぶ際には、技術の伴わない業者を選ばないよう精査する必要があります。まずは、きちんとした実績があるかどうか確認しましょう。実際の剪定事例の写真がたくさんあればまずは安心です。とはいえ、ホームページには当然良い事例の写真を載せるでしょうから、鵜吞みにしすぎないように、といったところです。
 また、値段が安すぎると、安さばかりを売りにして技術が伴っていない可能性があります。もちろん安くて技術のある業者もいるにはいますが、よくない業者がまぎれている可能性もあるので注意が必要です。
 料金は業者やお願いする作業によって大きく変わりますが、相場としてはサツキくらいの低木なら一本1,500~5,000円といったところでしょう。横に大きいなど作業量が多いとその分高い料金がかかる可能性もあります。
 また、職人さん一人一日いくらという方法で料金を出している場合もあり、その場合は一人一日2~3万円程度であることが多いです。それらの料金に、サツキであれば枝葉処分費などの経費を加え、諸経費として10~20%上乗せされた金額が最終的に出されます。

サツキの剪定のよくある質問

ピンクの背景とクエスチョンマークの吹き出し

 サツキの剪定をしていると、わからないことや気になることがいくつも出てくるかと思います。いつでも質問に答えてくれるプロの方がいるわけではありません。
 そうした疑問を解消するために、サツキの剪定についてよくある質問をまとめました。サツキの剪定をしていて疑問に思う所があれば、チェックしてみましょう。

剪定時期を逃したらどうすればいい?

 サツキの剪定タイミングはそれなりにシビアです。花が終わってすぐのタイミングでもう来年の花芽を用意してしまいます。そのため、剪定時期以外に剪定をすると、せっかくつけた花芽を落としてしまうことになるのです。
 そのため、剪定時期を逃したら基本的に剪定はしないほうが良いです。ただし、花芽がつきづらい徒長枝や、少量の剪定であれば来年の花数に大した影響が無い場合も多いです。いずれにせよ、一年では大して成長しないことも多いので、あまりナーバスにならなくても良いかと思います。
 また、来年は花が咲かないことを覚悟で思い切って剪定してしまうという手もあります。

サツキとツツジの剪定方法の違いは?

 サツキとツツジの剪定方法にはほとんど違いがありません。それぞれ目的に合わせた刈り込み剪定や透かし剪定などを行うようにしましょう。ツツジは、ツツジの仲間をまとめた総称で、サツキもその中に入ります。
 ただし、他のツツジはサツキより大きくなるものも多いので、そうしたツツジを剪定する場合は大きさのコントロールを意識したほうが良いでしょう。

まとめ|正しい剪定でサツキの美しさを保とう

青空と満開のサツキ

 サツキは、適切な時期ややり方を守れば、ある程度の強剪定にも耐え、毎年花を咲かせてくれます。適切な剪定方法で、サツキの手入れを行うようにしましょう。
 また、自分で剪定する自信が無いという場合は、プロの業者にお願いしてみるのも良いでしょう。ぜひお気軽にご相談ください。


自己流の剪定木が枯れるかも

氏永 勝之
監修者 smileグループCEO
株式会社ガーデンメーカー 代表取締役
愛知農園植木苗木株式会社 専務取締役
一般社団法人ガーデンビジネス協会 代表理事
氏永 勝之

愛知県稲沢市生まれ。稲沢市が「日本四大植木産地」であることもあり、幼少期から植木に囲まれて成長。
東京農業大学卒業後、名古屋市内の造園会社に就職。公園の整備工事から国交省事業の国道整備工事における土木及び街路樹等の植栽工事に現場代理人として携わる。

執筆者 瀬尾一樹

樹木医です。木も草も大好きで、将来は自分だけの森を持ちたいと思っています。木の美しさや育てる楽しさだけでなく、生きものとしての生態的な面白さも伝えていきたいです!好きな木はケヤキです。

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