庭によく植えられるクレマチス。無数に園芸品種があり、それぞれ違った時期、色形の花を楽しめることが魅力的です。クレマチスの花をたくさん咲かせるための剪定方法についてご紹介します。
目次
クレマチスとはどんな植物?
クレマチスの剪定をする前に、そもそもクレマチスがどんな植物だったかおさらいしておきましょう。
クレマチスと一言に言っても、様々な色や形のものがあります。
クレマチスの剪定をしっかり行うためにも、クレマチスの特徴はしっかり抑えておきましょう。
クレマチスの特徴と種類
クレマチスとは、キンポウゲ科センニンソウ属に含まれる植物の総称です。
センニンソウ属の学名Clematisをカタカナ読みしてクレマチスと呼びます。
国内では、樹林地などにセンニンソウやボタンヅル、ハンショウヅル、稀にカザグルマなどの種類を見ることができます。
同じセンニンソウ属の中でも花の見た目が大きく異なることが特徴で、センニンソウのように上に開く白い花を咲かせるものもあれば、ハンショウヅルのように紫色の花を下向きに咲かせるものもあれば、カザグルマのように大きな花を咲かせるものもあります。
こうした多様な特徴を持つ野生種たちから様々な園芸品種がつくられており、花の形だけでなく色や咲き方なども多種多様です。
クレマチスを育てるメリット
クレマチスの姿は園芸品種によって様々ですが、どの園芸品種も魅力的で、うまく花を咲かせることができれば庭を美しく彩ることができます。
無数の園芸品種の中から自分の好みのものを探して植えるのも楽しいです。
また、つる植物であるため、フェンスに這わせたり、アーチをつくったりと、自由自在に形を変えて楽しむことができるのも魅力的です。
クレマチスに剪定は必要?
クレマチスを育てるにあたって、本当に剪定は必要なのでしょうか?
元気に成長しているクレマチスを剪定して小さくしてしまうのは、なんだか勿体ない気もしますよね。
クレマチスの剪定を行う目的や、剪定を行わないとどうなるのかなどについてご紹介します。
剪定をする目的
クレマチスを剪定する場合、いくつかの目的があります。
基本的には、クレマチスは花をたくさん咲かせるために剪定を行います。
適切に剪定を行うことで、より花が咲きやすい枝の芽吹きが促され、たくさんの花を咲かせることに繋がります。
もう一つは、大きさや生育範囲の調整です。
つる植物であるクレマチスは、旺盛に成長すると広範囲に広がってしまうことがあります。
剪定を行うことにより、クレマチスを小さいまま維持することが可能です。
また、好きな場所に花を咲かせるために調整することもできるでしょう。
ただし、大きさの調整は花を咲かせるための剪定を行った際に同時に達成できてしまうことも多いです。
剪定しない場合のリスク
クレマチスを剪定しないでほったらかしにしておくと、いくつかのリスクが考えられます。
ひとつは、花があまり咲かなくなるという点です。
一度花が咲いてその年はおしまい、ということになるかもしれません(ただし、もともと春にしか花が咲かない一季咲きの品種では、剪定のやり方に関係なく春しか花が咲きません)。
剪定を行わないことで花が咲く枝が伸びづらくなるということもあります。
また、つる植物であるクレマチスは、生育環境が良ければ庭の内外で成長し繁茂します。
庭に植えている他の植物に絡みついて成長してしまったり、近隣の家の敷地に侵入して問題になったりする可能性があります。
きちんと庭の中で制御するという点でも、定期的に剪定は行った方が良いでしょう。
クレマチスの剪定時期
クレマチスは、剪定の目的ごとに適した時期が異なります。
クレマチスになるべく負担をかけず、かつ剪定の目的をきちんと達成するためには、適切な時期に剪定を行わなければいけません。
クレマチスの剪定時期についてご紹介します。
花が終わった後の剪定時期
クレマチスの花が終わった後の剪定時期は、クレマチスの品種ごとの特性によって異なります。
春に1回しか花が咲かない一季咲き性品種の場合、花が終わったらつるを短く切り戻し、秋までにたくさんつるを伸ばすようにしておきましょう。
四季咲き性品種の場合、花が終わり次第つるの先を切り戻し、また次の花が終わったら切り戻し、という作業を行います。
冬になってからは、一季咲き、四季咲き共に、前年の枝に花芽がつく旧枝咲き性の品種では、枯れたように見えるつるにも翌年の花芽がついているので残しておき、枯れたつるや混んだつるの整理をする程度にとどめておきましょう。
新しく伸びた枝に花芽がつく新枝咲き性の品種では、冬には地上部のつるが枯れるので2月ごろ枯れたつるの整理を行います。
前年の枝と新たに伸びた枝両方に花芽がつく新旧枝咲き性の品種では、明らかに枯れているつるを切りつつ、残ったつるを枝の節を残しながら剪定します。
それらの手順とは別に、伸びすぎたつるや混んでいる部分は適宜剪定を行うようにしましょう。
季節ごとの剪定スケジュール
春になるとクレマチスの新芽が伸びてきて、花を咲かせます。
花が終わったら、つるを切り戻しましょう。
その後、四季咲き性の品種であればまた新たな花を咲かせるので、その花も終わったらまた切り戻します。
冬になると、前年の枝に花芽がつく旧枝咲きの品種の場合は、混んだ部分や枯れたつるを整理する程度にとどめておきます。
春に新たに伸びた枝に花芽がつく新枝咲きの品種の場合、枯れたつるを2月ごろ切り戻しましょう。
前年の枝と春に新たに伸びた枝両方に花芽がつく新旧枝咲きの品種の場合、枯れた部分を取り除きつつ、つるの節を残しながら切り戻します。
クレマチスの剪定方法
クレマチスの剪定は、どのように行えば良いのでしょうか。
クレマチスの剪定のやり方は、品種ごとの特性などによっても異なります。
クレマチスを適切に剪定するために、どのような方法で剪定すれば良いのかしっかりチェックしておきましょう。
新枝咲きクレマチスの剪定方法
新枝咲きタイプのクレマチスは、春に新しく伸びた枝に今年の花芽をつけるものです。
このタイプは、冬に根元の枝2〜3節ほどを残して剪定してしまうのがおすすめです。
その後、伸びてきた枝が花を咲かせ、花が終わった後、枝を半分くらい残して切ってしまいます。
四季咲き性の品種であれば、これによりまた新たな花が咲く可能性があります。
また、夏の花が終わったら、根元の数節を残して切ってしまいましょう。
冬になったら、枯れ枝を切って整理します。
また、四季咲き性品種のクレマチスの場合は花が終わった後切り戻すことで多くの花を咲かせることができますが、一季咲き性品種のクレマチスの場合、元々の性質の問題で春にしか花が咲かないのでご注意ください。
旧枝咲きクレマチスの剪定方法
旧枝咲きタイプのクレマチスは、前年に伸びた枝が冬に休眠し、その後春になってから新しく伸びた枝に花を咲かせるタイプのものです。
このタイプのクレマチスは、花が終わり次第少しずつ切り戻していくことでより多くの花を咲かせることができます。
春になると新しく枝が伸びてきて、花が咲きます。
最初の花が終わったころに、花から1〜2節ほど切り戻しましょう。
そうすると、新たに伸びてきた枝に次の花が咲きやすくなります。
次の花が終わったらまた同じくらい切り戻して、と繰り返していくことで、たくさん花を咲かせられるはずです。
伸びすぎた枝や混んでいる枝は、冬に少し整理しておきましょう。
ただし、冬に大きく切り戻してしまうと、翌年の花芽を切ってしまう可能性があるので注意が必要です。
冬の剪定はあくまで形を整える程度の整理と考えておきましょう。
また、四季咲き性品種のクレマチスの場合は花が終わった後に切り戻すことで多くの花を咲かせることができますが、一季咲き性品種のクレマチスの場合、元々の性質の問題で春にしか花が咲かないのでご注意ください。
新旧両枝咲きタイプの剪定方法
新旧両枝咲きタイプのクレマチスは、前年の枝から伸びた枝に花芽をつけて、新しく伸びた枝にも花芽をつけるタイプです。
こちらも、花が終わったら1~2節ほど残して切り戻し、新たな花が終わったらまた切り戻し、という作業を行います。
冬になったら、大きく切り戻しても切り戻さなくても良いですが、いずれの場合も枯れたように見える枝の節は翌年の花芽が準備されている可能性があるので、残しておくようにしましょう。
ただし、旧枝咲き品種よりも冬に大きく枝が枯れることが多いので、明らかに枯れているものは切ってしまいます。
また、四季咲き性品種のクレマチスの場合は花が終わった後に切り戻すことで多くの花を咲かせることができますが、一季咲き性品種のクレマチスの場合、元々の性質の問題で春にしか花が咲かないのでご注意ください。
剪定のポイントと注意点
クレマチスの剪定を行うにあたって、気をつけなければいけないポイントがいくつかあります。
剪定は、一度失敗すると元に戻るのにかなり時間がかかる場合もある、不可逆的な手入れです。
もちろん、取り返しのつく場合も多いので、失敗して覚えることも大事ですが、なるべく失敗しないようにあらかじめ剪定時に注意すべきポイントを抑えておきましょう。
初心者が気を付けるべきポイント
クレマチスの剪定に慣れていない場合、たくさん切るのが怖くなったり、逆に加減がわからず切りすぎてしまったりする可能性があります。
そのため、どこを、なんのために、どれくらい切るのかということは剪定作業を行う前にしっかり把握しておきましょう。
また、クレマチスに限りませんが、剪定を行う時期がずれると、剪定による効果を充分に得られないことや、逆効果になってしまうことも多いです。
そのため、剪定の時期は必ず逃さないように気をつけましょう。
剪定でよくある失敗とその対策
クレマチスに限らずですが、剪定時によくある失敗として、枝を切っているうちに段々楽しくなってきてしまい、最初に想定していたよりも切りすぎてしまうことがあります。
そうなると、場合によっては株が弱ってしまったり、小さくなりすぎてしまったりする可能性が考えられます。
そうした失敗を防ぐため、剪定作業中は時々離れて全体を見るクセをつけるようにしましょう。
まず最初に全体を見て、どこをどう切るべきか考えたあと、剪定をしつつ時々全体を見てみるのがおすすめです。
そうすることで、切りすぎを防ぐだけでなく、バランスの整った形に仕立てることが可能です。
剪定後のクレマチスの管理方法
クレマチスの剪定が終わった後は、どのように管理をすれば良いでしょうか。
一度剪定してクレマチスに負担を与えたら、なにか手入れをしてあげたくなりますよね。
クレマチスの剪定後の管理などについてご紹介します。
剪定した枝の利用方法(挿し木で増やす)
クレマチスは、剪定した枝を挿し木で増やすこともできます。
挿し木とは、切った枝を土に挿しておくことで根っこを出させ、新たな苗をつくる技術です。
挿し木を行う際には、今年伸びた新しい枝ではなく、去年以前の比較的しっかりした枝を使います。
水を吸える面積を少しでも増やすために斜めにカットし、一時間ほど水につけて吸わせます。
その後、赤玉土や鹿沼土などの無菌の土に挿し、半日陰に置いておけば完了です。
水を絶やさないようにしておけば、うまくいけば数週間〜2カ月ほどで発根します。
土は腐葉土などの有機物が入っている土を選ぶと菌が繁殖し、うまくいきません。
必ず赤玉土や鹿沼土を使うようにしましょう。湿度は高めにしておくのがおすすめです。
また、発根促進剤というものも市販されているのでぜひ利用してみてください。
製品によって粉状のものと液体のものなどがあるので、使用方法に則って使うようにしましょう。
剪定後の水やりと肥料管理
剪定が終わった後には、基本的にいつもと同じように他の手入れをしてしまって構いません。
強いて言うなら、鉢植えで水はけの悪い土で育てているような場合は、剪定後の水やりは控えめにしても良いかもしれません。
剪定により枝葉が失われることで、クレマチスが水を吸い上げる量が少なくなるので、水が滞留してしまう可能性があるためです。
また、真夏に強剪定するなど、クレマチスに負担のかかる剪定を行ったあとは、肥料は控えめにしても良いかもしれません。
クレマチス自体が衰弱している場合、大量の肥料を与えることでかえって負担になってしまう可能性があるためです。
クレマチスの育て方|剪定と併せて知っておきたい基本
クレマチスは、剪定方法以外にも育て方として気をつけるべき点がいくつかあります。
どれだけ剪定が上手にできても、それ以外の部分が伴っていなければ、クレマチスはうまく育ちません。
クレマチスの育て方についてご紹介します。
置き場所の選び方
クレマチスは日当たりが良く、風通しの良い場所で育てるのがおすすめです。
日当たりが悪いと、成長や花つきが悪くなる場合があります。
ただし、真夏に直射日光が当たりすぎると弱ってしまう場合があるので、半日陰に移動するか寒冷紗をかけるなどして対処するのがおすすめです。
病害虫の予防と対策
病害虫を予防するためにはいくつかの方法がありますが、風通しの良い状態にしておくと病害虫がつきづらいです。
たとえば室内で植物を育てていると、途端にアブラムシやカイガラムシが発生するようなことがあります。
剪定時に混んだ枝を整理することなども含めて、風通しの良さは維持しておくのが良いでしょう。
また、クレマチスが健康な状態を維持しているのであれば、かかる病気や害虫の数も少なくなります。
日ごろからクレマチスの様子を観察して、異常があればなるべく早めに対処するなどして、クレマチスの健康を保てるようにしておきましょう。
剪定に必要な道具と準備
剪定を行うためには、いくつかの道具などが必要になります。
それぞれの道具に、役割やクレマチスの剪定への適不適などがあります。
剪定を行う前に、それらの準備をしなければいけません。
剪定を行う前に必要な準備についてご紹介します。
剪定バサミや必要なアイテム
クレマチスの剪定を行うためには、まず切るための剪定バサミがないといけません。
クレマチスの剪定ではあまり太い枝を切らないので、太枝を切れない代わりに細かいところまで届く木バサミを使ってみても良いかもしれません。
いずれにせよ、自分の手の大きさや力に合ったものを一つ用意しておきましょう。
その他には、手を守る軍手と、大量に剪定するなら剪定枝を集める熊手やバケツなどがあると便利です。
剪定枝を挿し木などに利用するのであれば、とりあえず水を吸わせておくための容器や、赤玉土と発根促進剤なども用意しておくと良いでしょう。
道具のメンテナンス方法
剪定バサミや木バサミなどの道具は、使っていくうちに劣化していきます。
逆に、定期的にメンテナンスしておけば、数十年以上使い続けられるこだわりの道具にすることも可能です。
剪定バサミや木バサミの切れ味が悪くなった場合、砥石を使って研ぎ、切れ味を戻します。
刃の部分(剪定バサミなら片方)に沿わせて斜めに研いであげることで、何度でも切れ味を復活させることができます。
剪定に自信がない場合はプロに依頼しよう
クレマチスの剪定のやり方について、「色々調べてみたけど自信がない…。」と思う方も多いかと思います。
そうした場合は、プロの業者に依頼してみるのも一つの手です。
また、「剪定はやってみたいけど時間がない。」「一度プロに教わりたい。」という場合もおすすめです。
剪定業者に依頼する場合の、ポイントや方法などについてご紹介します。
庭師や専門業者に依頼するポイント
剪定を行う庭師や業者を探す際には、色々なポイントに気をつけつつ、慎重に探さなければいけません。
剪定ができる業者の中でも、剪定の腕はピンキリなためです。
安くて腕の良い業者もいますが、安さばかり、あるいは安くもないのに腕が伴っていない業者もいます。
業者を探す際には、見て分かる実績が多くあるか、安さや速さばかりをアピールしていないか、クレマチスの場合は花を観賞する植物の剪定を行えるか、といったところをチェックしながら探すのがおすすめです。
費用の目安と依頼方法
業者に依頼する場合の費用は、業者それぞれで設定している料金体系に準ずることになります。
費用の設定の仕方は業者によって大きく2つに分かれ、ひとつは「職人さん一人一日いくら」というもの、もうひとつは「剪定する木一本につきいくら」というものです。
木一本につきいくらという方式の場合、木の大きさにより料金が変わります。
これらの料金に加え、クレーン車のような道具や枝葉処分費などが加わり、一定割合の諸経費が足されるといったイメージです。
職人さん一人いくらの方式の場合、クレマチス一株だけであれば、半日あるいはもっと短い計算で見積もってくれることもあるでしょう。
相場としては職人さん一人一日15000〜30000円くらいなので、その計算だと数千円で済むこともあるかもしれません。
木一本いくらの方式の場合も、クレマチスの大きさによっては数千円で済むことも考えられます。
とはいえ、花を咲かせるための専門的な剪定の場合は少し料金が高くなったり、受け付けていなかったりすることも考えられるので、切ってほしいクレマチスの大きさだけでなく、剪定の目的もしっかり伝えるようにしましょう。
愛知県稲沢市生まれ。稲沢市が「日本四大植木産地」であることもあり、幼少期から植木に囲まれて成長。
東京農業大学卒業後、名古屋市内の造園会社に就職。公園の整備工事から国交省事業の国道整備工事における土木及び街路樹等の植栽工事に現場代理人として携わる。