木といえば、とても長生きなイメージがありますよね。しかし、実際にどれくらい寿命があるのかというのはなかなか根拠のある数字が出てきません。木の寿命はどれくらいなのか、どれくらい長生きなのかご紹介します。

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目次

木に寿命ってあるの?

ハートを持つ手と聴診器

 「老衰により長く生きることの限界が来ること」を寿命だと考えるならば、木には寿命が無いと考えられています。他に木が死に至る要因が全く無い場合、理論上では木は無限に生き続けるというのです。
 ただし、それを実証するのは現実的ではありませんし、そもそも、細胞分裂の過程で突然変異が蓄積するなどして実際には無限ではないかもしれません。
 また、すべてにおいて「理論上は無限」などと言っていても仕方が無いですし、「自然界で、ある種類の木が枯れやすい年齢」は無いとはいえないので、それを実質的な寿命として紹介されることがあります。

実質的な寿命はある

 理論上では永遠に生き続けるかもしれない木ですが、実際に自然界で永遠に生き続けられるかというとそうも行きません。実際には、病気や害虫などの被害によって枯れたり、光を巡る競走で他の木に負けたり、土砂崩れや洪水などの災害により根こそぎ破壊されたり、大きくなりすぎたことで倒れたり、様々な原因により木は死に至ります。
 それを踏まえた上で考えると、「自然界では実質的にこれくらい生きる」という実質的な寿命がわかってきます。運良くもっと長く生きられる個体はいても、通常通り森が成長していくと多くの個体が枯れていくという寸法です。
 たとえば、伐採作業などに伴って、年輪を数えることでどれくらい長く生きたかの調査がされることがあります。それによると、明るくなった場所にいち早く生え始めるシラカバは、50年程度、涼しい地域の成熟した森に生えるミズナラでは625年、ハルニレでは308年という最高齢が示されています。もちろん、伐採されなければもっと長く生きたかもしれないですし、野生下での正確な平均寿命というわけではありません。

寿命がなくても「老化」はある

傷ついた葉と木漏れ日

 ただし、植物に寿命が無かったとしても老化することはあると考えられています。たとえば、高齢の樹木には、生理的な状態が変化することが知られています。具体的に起こることとしては、光合成する葉っぱの量に比べて幹の量が大きくなり、成長が低下したり、葉っぱが小さく丸くなったり、伐採後に芽吹く力が弱くなったりなどです。
 また、地下茎でクローン繁殖を繰り返して生きる植物では、1,000年以上生きるようなものだと細胞分裂の際の突然変異が蓄積し、それにより繁殖能力が低くなることがあります。
 果樹でも、枯れることは無いにせよ、年が経った株は収穫量が減るなどして生産能力が衰えると考えられています。

木の年齢の測り方

 木の年齢を測るには、いくつか方法があります。もっとも有名なのは年輪を数えることでしょうか。中心部が腐ってさえいなければ、年輪を数えることによって年齢をある程度正確に測ることができます。フジのように年輪を実際の歳よりも多くつくる樹種がいたり、木の状態により偽年輪と呼ばれるものが出てきたりすることもありますが、もっとも簡単に正確な年齢を知れるといえるでしょう。
 ただし、年齢を知るためにはその木を伐採しなければいけませんし、成長推などで幹の一部を取る方法でも、天然記念物などの木には許可が取れなければ使えません。
 そのため近年では、木材の炭素を用いて放射性炭素年代測定という手法が使われることがあります。しかしこれも、数十年単位での誤差が出る場合があることに加え、幹の中心部が腐っていると正しく測定することができません。
 地下茎で繁殖する植物の場合、繁殖速度から全体の年齢を測ることがあります。

生と死の境目

 そもそも、木がどうなれば死んだと言えるのでしょうか。木は身体の一部だけが枯れることがある生き物なので、身体の大部分が枯れてしまっても一部の枝が生き残っているということは珍しくありません。伐採しても、切り株から新たな芽が生えてくることもあります。
 また、地下茎で繁殖するような植物なら、一株枯れても地下茎で元々繋がっていたもう一株は生きているようなことは普通です。元の木が枯れてしまっても、挿し木して残った個体が生きていればその木は枯れていないといえるのでしょうか。
 このように、木ひいては植物の生と死の境目を見極めるのはとても難しいことです。そのため、植物の寿命について知りたいときは、どんな状態のものを想定しているのか考えてみるとスッキリしやすいです。

木は何年以上生きる?

木の年輪

 木の寿命やその仕組についてお話してきましたが、実際に木はどれくらい長く生きるのでしょうか。説明したように、木の寿命を正しく測ったり、平均寿命を割り出したりするのはとても難しいです。しかし、実際の事例や、一般的に言われているようなことから、木の年齢についてご紹介していこうと思います。

日本で一番長生きな木は?

 日本では、屋久島に生育するスギのうち大王杉と呼ばれる個体が、放射性炭素年代測定によりおよそ3,000年ほど生きているとされています。有名な縄文杉は、かつて樹齢7,000年ほどといわれたこともあったようですが、放射性炭素年代測定によるとおよそ2,170年だという結果です(それぞれ、誤差が出るので必ずしも正確な年齢とはいえません。また、放射性炭素年代測定に用いた材が幹の完全な中心部ではない場合もあります)。
 また、知られていないだけでもっと高齢の木があるかもしれないし、年輪や放射性炭素年代測定ができないだけで、地下茎などでクローン繁殖を繰り返す植物ではもっと高齢のものがあるかもしれません。今のところ、比較的明快な結果が出ているものとしてはこれくらい、という数字です。

世界で一番長生きな木は?

 では、世界ではどれくらい長生きな木が存在するのでしょうか。年輪を数えることによってわかった最高齢は、アメリカのカルフォルニア州で見つかったネバダイガゴヨウマツという木でおよそ4,900年という結果が出ています。他にも、ギガントセコイアなどで3,000年を超える年輪を持つ木が見つかっています。
 年輪を用いないで推測した例でかなり高齢なのが、アメリカのオレゴン州に存在するパンドと呼ばれるアメリカヤマナラシ(ポプラの仲間)です。根っこを広げて、その途中から芽を出し続ける(根萌芽)ことを繰り返して成長するアメリカヤマナラシは、なんと43haもの範囲に同一クローンが広がっています。
 これらを根っこの成長速度から推定すると、およそ8万年以上生き続けている可能性があるというのです。もちろん、同じように地下茎や根萌芽などでクローン繁殖を繰り返す植物の中には、知られていないだけでそれに匹敵するかそれ以上の年齢を持っているものがいる可能性もあります。

果樹としての寿命

みかんの木

 木には動物と同じような寿命が無い(かもしれない)が、老木になると生理現象が変わる老化という現象があるという説明をしました。果実の生産に使われる果樹では、木が老化して生産力が落ちることを経済的な寿命として扱うことがあります。
 木が枯れたわけではなくても、果実の収量が落ちるため新しい木に更新するというものです。実際には環境条件や品種による違いもあるかとは思いますが、おおよそどれくらい経済的な寿命があるのかご紹介します。

ミカンなど柑橘類

 温州みかんの場合、およそ50年くらいで経済的には植え替えの時期といわれています。ただし、種類も品種も膨大な量がある柑橘類においては、どの品種も同じくらいとは言い切れません。数十年単位の年月が経過した木では収穫量が減ることがある、くらいに考えておくのが良いでしょう。

カキ

 カキノキの経済的な寿命は、およそ30年ほどといわれています。ただ、もっと長い期間経済的に十分な量収穫できる場合もあり、一概にはいえないのかもしれません。
 こちらも品種が膨大な量あり、環境や育て方によっても変わると思われるので、おおよそこれくらいといったように覚えておきましょう。

ブドウ

 ブドウの経済的な寿命は、およそ20~30年ほどといわれています。ただし、育て方によってはもっと長く収穫し続けられることもあるようで、数字は参考程度にしておくのがよいかもしれません。
 他の果樹も同様、あくまで経済的な寿命なので、育てて多少なりとも収穫するくらいならもっと長く楽しむことができます。

モモ

 モモの経済的な寿命は、およそ20年前後といわれています。成長が早く、実をつけ始めるのも比較的早いですが、その分収穫のピークも早いようです。
 とはいえ20年でもかなり長い年数ですし、その後枯れるわけではないので、お庭で楽しむ程度ならもっと長く楽しむこともできます。

桜のソメイヨシノの寿命は?

ソメイヨシノ

 全国各地にたくさん植えられているソメイヨシノは、寿命がおよそ60年といわれています。こちらは経済的な寿命ではなく、60年ほどで枯れてしまうという文脈です。しかし、場所によっては樹齢が100年をゆうに超えるソメイヨシノも存在します。実際に60年を超えて生き続けているものは決して少なくありません。
 たしかに、60年ほど経ったソメイヨシノは衰退して花つきが悪くなるといわれています。また、街路樹のような木にとって良くない環境に植えられているソメイヨシノは、60年ほどで枯れてしまったり、伐採されてしまったりすることもあるでしょう。
 そうしたことが重なって、そのような言説が流れてしまったのではないかと思います。実際には、環境が良ければ衰退はしても枯れはせず、もっと長く生き続けます。

木は何が原因で枯れる?

枯れた木

 木の寿命についてお話してきましたが、自然界に生える木でも植栽された木でも、長生きせずに枯れてしまう木は決して少なくありません。
 特に、森の中においては発芽した木のほとんどが良い場所にたどり着けず、1年以内に枯れてしまうと考えられます。
 それでは、木はどのような要因によって枯れてしまうのでしょうか。森林環境と、街路樹のような植栽された木でそれぞれ分けてご紹介します。

森林環境での木の死因

 森林環境に生きる木は、常に植物同士での競争や外敵からの脅威に晒されています。そのため、枯れてしまう原因は様々です。たとえば、森林環境が移り変わることによって枯れてしまいます。
 普通、なにもないところに草が生え始め、その後明るい場所が好きな木が入ってきて、その後暗い場所でも生きられる木がそれらを追い越して成長することで成熟した森林が成立します。その中で、草地に入ってきた明るい場所を好む木は、暗い場所でも生きられる木が自分の上まで背を伸ばしてきて日陰になったら枯れるしかありません。そのように、森の様子が移り変わることによって枯れることは多いです。
 他にも、幹の内部が腐って倒れたり、それに巻き込まれたり、土砂崩れや火事などの災害に巻き込まれたりといった要因もあります。また、害虫や病気によって枯れてしまうこともあります。環境条件や外敵など、厳しい自然の中で木が枯れてしまう原因は様々です。

街路樹など植栽木の死因

道路標識とクロガネモチの枝

 街路樹などの街中に植えられる植栽木では、枯れる要因は少し違ってきます。基本的にコンクリートで覆われた街中は多くの木の生育に適していません。ヒートアイランド現象により街中は暑くなりますし、雨水の染み込むところが少なくて乾燥しがちです。
 また、土の栄養になる落ち葉は掃除され、土は踏み固められます。根っこを伸ばせる範囲も多くの場合狭いです。また、剪定が雑だと木へのダメージが大きくなります。
 そして、街中は生態系が単純化しますし、同じ種類の木が並んで植えられることが多いので、特定の病害虫だけがたくさん繁殖するということがよく起こります。
 それらの要因が重なり合うことで、街中の木は枯れてしまうのです。森林環境のように他の木との競争は起こりにくいですが、それ以外に街中ならではの厳しい環境、人為的なダメージなどが枯れる原因になりえます。
 逆に、丁寧に管理されていれば本来は数十年で他の木に覆われて枯れてしまうような木が、植栽木や盆栽などの形で長く生きているようなこともあります。

木が長生きするのに大切な要素

 木が長生きするためには、その木にとってダメージになる要素が少なく、その木の好む要素が多いことが重要です。
 当たり前のことのように思えますが、多くの場合木は緑陰の創出や景観の整備など何かしらの目的をもって植えられるので、木一本一本の健康は二の次になってしまうことがあります。庭に植える木に関しても、その木にとって良い環境がつくられていれば、より長生きします。

木の寿命を実際に推定するのは難しい

手の中の苗木

 木がどれくらい生きるかを実際に予測するのはとても難しいです。人が育てる植物の場合、経済性はさておき枯れるか枯れないかというのはその人の栽培技術に大きく左右されるためです。
 100円ショップで買った小さな観葉植物が、100年以上生きることだってありえます。樹種によって差はあるし、1年草などではまた別ですが、上手に育てられればその分長生きするものは多いです。

木を長生きさせるための秘訣

 木が長生きするためには、何がその木のダメージになるのか、その木はどんなものを好むのかというのを把握していることが大事です。踏み固められた土には根っこを伸ばせない、光合成する器官である葉っぱを取ってしまう剪定は多少なりとも木を傷つけるなど、ダメージになりうるものはある程度共通していますが、どんなものを好むかというのは種類などによって変わってきます。
 野生で生えている姿や元気に育っている植栽の姿を見て、それらを再現するつもりで環境を整えてあげるのも良いでしょう。寄り添いすぎるのもよくありませんが、木の気持ちになって考えてみるのがおすすめです。

その木の好きな環境を考える

 育てたい木の好きな環境はどんなものでしょうか。マイナーな植物でなければ、検索により植えてある植物園や公園などの情報、日本産の植物なら自生環境の様子なども調べられます。
 実際にどんな環境か見てみたり、育てている人に話を聞いてみるとその種類を長生きさせるための秘訣がわかるかもしれません。

まとめ

切株と芽吹き

 老衰というものが存在しないかもしれない木について、寿命がどれくらいかというのを話すのはとても難しいです。栽培が目的なら、何が何年くらい生きるというのはそもそも本質的な情報ではないかもしれません。
 それを踏まえた上で、様々な環境によって決まる実質的な(生態的な)寿命や、利益の出やすい経済的な寿命というものが推定されています。また、それらの情報も、正確に測定するのは非常に難しいです。もしかしたら、新たな知見がまた見つかることがあるかもしれません。
 木の寿命というのは、まだわからないことも多く、環境などによって大きく変わる可能性があるということをよく抑えておきましょう。

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瀬尾 一樹
監修者 樹木医 瀬尾 一樹

樹木医です。木も草も大好きで、将来は自分だけの森を持ちたいと思っています。木の美しさや育てる楽しさだけでなく、生きものとしての生態的な面白さも伝えていきたいです!好きな木はケヤキです。

執筆者 瀬尾一樹

樹木医です。木も草も大好きで、将来は自分だけの森を持ちたいと思っています。木の美しさや育てる楽しさだけでなく、生きものとしての生態的な面白さも伝えていきたいです!好きな木はケヤキです。