かわいらしい花と実を同時期に楽しめるイチゴノキ。できることなら毎年たくさんの花や実をつけてほしいですよね。しかし、イチゴノキは育て方によっては実をつけないことがあります。イチゴノキの実をつけない原因や、その対処法をご紹介します。
目次
イチゴノキに実がならないのはなぜ?
イチゴノキは、育て方によっては花が咲かなかったり実がならなかったりすることがあります。そのような状態になる原因には、様々なものが考えられます。イチゴノキに実がならなくなることについて、ありがちな原因をご紹介します。
庭のイチゴノキの生育環境や育て方を見直してみて、どれが最も当てはまりそうか考えてみましょう。原因は必ずしも一つというわけではなく、複数の要因が混ざっていることもあるので注意が必要です。
イチゴノキの特徴
イチゴノキは、ツツジ科イチゴノキ属の常緑樹です。同じツツジ科のドウダンツツジやアセビによく似た花を房のようにたくさん咲かせ、翌年イチゴを丸くしたような形のかわいらしい実がなります。花と実が同時期に楽しめるのが特徴的で、枝先付近に花が咲き、その少し内側に実がなっているという状態になります。
手入れのやり方に原因がある?
イチゴノキに実がならない原因として、手入れのやり方によって実がならないということが考えられます。イチゴノキに必要な手入れとして剪定や施肥などがありますが、それらのやり方によっては全く実がつかず、花も咲かないような状況になる場合があります。
特に剪定は、やり方一つで大きな影響が出ることがあるので注意が必要です。実がなりづらくなる手入れのやり方をしていないか、見直してみましょう。
剪定をしすぎている
剪定のやり方によって、イチゴノキの実がならなくなることがあります。ドウダンツツジのように全体を刈り込んで丸い樹形を作ろうとすると、花芽を落としてしまうことに繋がります。そうでなくても、まだ若木のうちに強剪定したり、太枝をバッサリ落とすような剪定をしていたりすると、イチゴノキ自体が弱ってしまうこともあるでしょう。
剪定をよくしていて、実がつかないばかりか花も咲かないというような場合は、剪定方法が原因で実がならないのかもしれません。
水のあげ方に問題がある
庭木を植えていると、ついつい水やりをたくさんしたくなってしまいます。しかし、水のやり方によっては、かえってイチゴノキの元気が無くなったり、イチゴノキが弱ったりしてしまう可能性があります。
イチゴノキは乾燥に比較的強いので、たくさんの水やりは必要ないことが多いです。ただし、若木のうちや植え付けたばかりの時期は水やりが必要な場合も無いわけではないです。
水やりをしすぎていないか、逆に土が極端に乾燥していないか、心当たりがあれば見直してみましょう。
土の栄養分が足りていない
土があまりにもやせていると、実がならない可能性があります。イチゴノキはある程度やせた土でも育ちますが、実をつけるほどの栄養分がなければ、実をつけることができません。
肥料のあげすぎが逆にイチゴノキを弱らせてしまうこともありますが、肥料をまったくあげておらずイチゴノキの枝葉もほとんど成長していないような場合は、土の栄養分が原因かもしれません。
イチゴノキが育ちづらい環境になっている?
庭でイチゴノキを育てている環境があまり良くないと、イチゴノキの生育も良くならず実がならないかもしれません。庭の環境を、イチゴノキの生育に適した環境に整えてあげましょう。あまり何度も移植するのは良くありませんが、周囲の環境を変えるなどして改善できる部分があればやってみると、実がなるようになるかもしれません。
日当たりが良くない
イチゴノキは、日当たりが良く風通しの良い場所で育ちます。日当たりの悪い場所やじめじめした場所は好みません。
そのため、周りに他の木の枝葉がうっそうと茂って日が遮られているなどすると、イチゴノキの生育がうまく育たない可能性があります。多少悪い環境でもある程度は耐えられますが、花を咲かせるくらいの余裕はできないかもしれません。
周りの木を剪定するなどして、改善できる部分があれば改善してみましょう。
土の水はけがよくない
イチゴノキは水もちと水はけどちらもある肥沃な土を好みます。また、暑さや乾燥に強い性質をもっています。そのため、雨のあといつまでも水たまりが残る水はけの悪い土や、常に湿っているような土はあまり好きではありません。そうした環境だとイチゴノキがあまり良く育たない可能性があります。
土壌改良などで改善できる可能性もあるので、土の状態はチェックしておきましょう。
病気や害虫が多数発生している
イチゴノキにつく病気や害虫は少ないですが、もし大量についている場合は、それによってイチゴノキの元気が無くなってしまっているかもしれません。
イチゴノキは新芽などにアブラムシやカイガラムシが発生することがあります。多少ついているだけだったり、一時的なものだったりすればそれほど気にすることはありませんが、常にびっしりついているような場合は注意が必要です。その場合、他の原因によってそもそもイチゴノキが弱っていて、そこをアブラムシやカイガラムシに狙われているのかもしれません。
受粉がうまくいっていない
イチゴノキの受粉がうまくいっていないと、実がならない可能性があります。花が咲くけど翌年実がならないというような場合は、これが原因として考えられるかもしれません。
イチゴノキは自分のおしべの花粉が自分のめしべにつく自家受粉でも実をつけることができますが、受粉のためには花粉を運ぶミツバチなどの昆虫が必要です。
花が咲いている時期に屋内など昆虫が入ってきづらい環境で育てているような場合は、うまく受粉できていない可能性があります。
イチゴノキが実をつけるためには
イチゴノキに実がならないことについて考えられる原因をご紹介してきましたが、それではイチゴノキに実がなるようにするためにはどのようにしたら良いのでしょうか。イチゴノキに実がなるようにするための方法について、原因別にご紹介します。原因がわかったら、それに合わせて対策をしてみましょう。
何か一つ手入れの方法や生育環境を改善してみても、効果が無い場合もあります。そうした場合は、実がならないのがその原因ではなかった(もしくは改善できていなかった)ことが考えられるので、別の原因を検討してみて、そちらの改善を図ってみましょう。時間はかかりますが、そうしていくうちにいずれ実がなるようになるはずです。
手入れのやり方
手入れのやり方に問題がありそうな場合、やり方を見直してみましょう。木を育てているとあれこれ手をかけてあげたくなりますが、手をかけすぎて逆効果になってしまうことは多いです。全く手をかけない方がよく育つという場合もあります。
特にイチゴノキはそれほど丁寧な手入れが必要な木ではないので、やりすぎな実感がある場合はそもそも手入れをしないようにしてみるというのも一つの手ではあります。イチゴノキの手入れのやり方についてご紹介します。
剪定のやり方
イチゴノキは、剪定をしなくても自然に樹形がまとまることが多いです。そのため、そもそもたくさん剪定する必要はありません。
そのうえで剪定を行う場合、時期としては果実の収穫直後がおすすめです。イチゴノキは11~12月ごろ、枝先に来年の花芽がつきます。ドウダンツツジのように刈り込みバサミなどで枝先を刈り込んでしまうと、ほとんどの花芽を落としてしまうことにつながり、花が咲かなくなります。そのため、混み合った枝を付け根から切る程度にするのがおすすめです。
他にも、飛び出ている枝や上に勢いよく伸びる徒長枝を枝分かれの付け根から切るなどしても良いですが、今まで剪定しすぎていたという場合は、一度剪定しないで様子を見てみても良いかもしれません。
肥料のあげ方
イチゴノキは多少やせた土でも育ちますが、肥沃な土を好みます。肥料を与える場合、2月ごろに寒肥として堆肥などの有機質肥料を中心に与えるのがおすすめです。また、株の生育が良ければ、9月ごろの初秋に即効性のある肥料を与えてみても良いでしょう。
いずれの場合も、よく育つからといってあげすぎるのは良くありません。肥料を与えすぎると、肥料焼けといって木が枯れてしまう可能性があります。与える肥料のパッケージなどに書かれている量を目安に与えるようにしましょう。
水のあげ方
イチゴノキは乾燥に比較的強いです。庭にイチゴノキを地植えする場合、根付いて新しい枝葉が旺盛に成長し始めるまでは土が乾き次第たっぷり水やりをしますが、根付いてからは基本的に水やりをしなくても問題ありません。
逆に、毎日のように水やりをしてしまうと、土の表面だけ常に湿った状態になり、空気が下まで通らなくなり、根っこが土の表面に集まるようになってしまいます。そうなると、かえって乾燥に弱い性質になってしまい、夏の乾燥などで枯れてしまう可能性が考えられます。
そのため、地植えの場合は基本的に水やりは控えめにしましょう。ただし、あまり根付いていない若木のうちは、真夏に長期間雨が降らないなどの乾燥で枯れてしまう可能性が考えられるので、様子を見て明らかに葉っぱがしおれかけているような場合は水を与えるなどしてみても良いです。
また、鉢植えの場合は別で、鉢植えは根っこを張れる範囲が限られているため、土の表面が乾燥したら鉢底から水が出るくらいまでたっぷり水やりをしましょう。冬は控えめで問題ありません。
人工授粉
イチゴノキが受粉できていなさそうな場合、人工授粉をしてみても良いかもしれません。ただし、イチゴノキは自家受粉ができるため、屋外で育てていれば受粉することはそれほど難しくないです。大都市でもミツバチなどの虫が多少はいるので、それらがイチゴノキの花を見つけてくれれば受粉できます。
花が咲くけど実がならないという状況で、他に実がならない原因が考えられないような場合は、綿棒などで人工的に受粉してみても良いかもしれません。
生育環境を変える
イチゴノキの生育環境を変えてみましょう。庭の環境をイチゴノキが育ちやすいものに変えてあげれば、イチゴノキの生育も良くなり、いずれ花を咲かせて実をつけるようになります。イチゴノキの好む生育環境や、その改善の仕方などについてご紹介します。
イチゴノキが好む生育環境
イチゴノキは、日当たりが良く、風通しも良い環境を好みます。逆に、他の木や建物などによって日光が遮られていたり、周りに木の枝葉がうっそうと茂っていて風通しが悪く、じめじめしているような環境は好みません。
ただし、イチゴノキが生育できる環境の幅は比較的広いので、多少良くない環境でも育って実をつける可能性もあります。
寒さにはそれほど弱くない
イチゴノキは寒さに比較的強いです。マイナス10℃くらいの環境でも耐えられるといわれています。暖かい環境が好きなものが多い常緑樹の中では、かなり寒さに強い方です。そのため、熱帯の樹木のように、冬になったら屋内に取り込むようなことはしなくても問題ありません。
ただし、若木のうちは少し耐寒性が弱くなるので、頻繁にマイナス10℃以下になるような寒冷地では、イチゴノキが大きくなるまでの間は、鉢植えで育てて冬は屋内に取り込むなどの対策を行った方が良いかもしれません。
イチゴノキが好む土
イチゴノキは、水はけがよく、なおかつ水もちも良い土を好みます。そのため、水はけが悪く常に土が湿っているような状態だと、うまく育たない可能性があります。
また、ブルーベリーなどをはじめとするツツジ科の樹木には酸性土壌を好むものが多いですが、イチゴノキはその中では比較的土質を選ばす育つのが特徴的です。
他のツツジ科樹木を育てる場合には、土を酸性に傾けるピートモスなどを施用する場合もありますが、イチゴノキの場合はしなくても育ちます。
環境改善のやり方
生育環境が実のならない原因だと推測できたら、環境の改善を行いましょう。基本的には、どの部分を改善するかによって改善の方法も異なります。
日当たりや風通しを良くしたい場合には、周りの木の枝を剪定するなどして、日や風を遮るものを取り除きます。鉢植えなら、場所を移動してみるのも良いでしょう。急に日当たりが良くなると葉焼けなどが起こる可能性があるので、様子を見ながら徐々に環境を変えていくのがおすすめです。
土を改善する場合は、こちらも土に何を改善したいかによって方法は異なりますが、水はけを良くしたい場合、縦に2つに割った1m程度の竹の節を破壊し、筒状になったら1つに束ね直し、バーク堆肥などと共に土に埋める「割竹挿入法」が使えます。1mほどの縦穴を掘る労力はかかりますが、デメリットが少なく、効果も高いのでおすすめです。埋める際は木の大きさにもよりますが複数箇所埋めるようにしましょう。
その他にも、イチゴノキの周りの土に穴を掘って、堆肥や水はけの良い土などと混ぜ合わせた土で埋め戻す方法もあります。こちらは、根元に近すぎたり遠すぎたりすると良くないことや、どんな資材をどれくらいの割合で混ぜるのかなどが少し難しいので、業者にお願いした方が良いかもしれません。
病害虫対策のやり方
イチゴノキに病気や害虫がつくことは少ないですが、風通しを良くすることで、さらに病害虫の被害を少なくすることができます。混んでいる枝を間引いたり、周りの環境を改善したりすることで、病害虫がつきづらくなる可能性はあります。
ただし、元々病害虫がついていないのであれば、特に対策しないというのも選択肢の一つです。また、病気や害虫は発生したら早めに対処した方が良いので、日ごろからイチゴノキをよく観察しておくことで、被害に気が付きやすくなります。
まとめ
イチゴノキに実をつけるためには、実がならない原因を推測し、影響の大きそうなものから優先して改善していくことが重要です。イチゴノキや周りの環境をよく観察し、仮説を立てながら一つずつ試していきましょう。
それでも改善が見られない場合や、どうやれば良いのか自信がないという場合などは、smileガーデンなどの業者にお願いしてみるのも一つの手です。プロの技を間近で見ることで勉強になることもあるでしょう。お金はかかってしまいますが、下手に対処して枯らしてしまうよりは良いという場合もあります。ぜひご検討ください。
愛知県稲沢市生まれ。稲沢市が「日本四大植木産地」であることもあり、幼少期から植木に囲まれて成長。
東京農業大学卒業後、名古屋市内の造園会社に就職。公園の整備工事から国交省事業の国道整備工事における土木及び街路樹等の植栽工事に現場代理人として携わる。