梅の木は花がきれいなだけでなく、梅干しや梅ジュース、梅酒など果実を様々な方法で活用できます。
庭で育てている梅になぜ実がならないのか、どうすれば実がなるのか、一つひとつ解説していきます。
目次
梅の木に実がならない3つの原因とは
庭の梅の木に実がならない場合、大きく3つの原因が考えられます。
いずれの場合も、育て方を変えれば対処できるものばかりです。
もちろん別の原因で実がならない可能性もありますが、まずはこの3つを疑ってみてください。
木が弱っている
梅の木自体に実をつけるほどの元気がない場合、実がならないことがあります。
受粉はしても果実が熟す前に落ちてしまうような場合は、こちらの可能性が疑われます。
葉っぱが小さかったり、数が少なかったり、他にも成長速度が遅く、木が大きくならないなどの場合も木に元気がない可能性が高いです。
また、逆に木が元気すぎても実が落ちてしまう場合もあります。
その場合は窒素肥料を控えめにして様子を見ましょう。
受粉できていない
梅の木は多くの場合、同じ品種では受粉しても実ができません。
たくさん実をつけるためには、受粉用の別品種が必要になります。
花はたくさん咲くし木も元気なのに実がならないという場合はこちらを疑うのが良いかもしれません。
かなりの都市部でも花粉を運ぶ虫は何かしら生息していますが、梅の花は寒い時期に咲くので、受粉用の木を置いても実がならないときは人工授粉も試してみましょう。
花数が少ない・咲いていない
実がなるどころか花があまり咲かないという場合です。
こちらは、花が咲かない原因を別で探る必要があります。
単に木に元気が無くて咲かない可能性もありますが、剪定などの管理方法により咲かない場合もあるので注意しましょう。
剪定方法によるもの
梅の剪定は、花を咲かせ実をつけるために必須とも言って良い管理ですが、そのやり方が間違っていて実がつかないパターンです。
花芽がつきづらい徒長枝を残していたり、あまり剪定せず枝が伸び放題になって花芽がつくられなかったりすると、実がならないことがあります。
土壌の乾燥
冬に乾燥しすぎてつぼみが落ちてしまうというパターンです。
特に鉢植えの場合、冬の間屋内に取り込んだりすると暖房の影響で乾燥し、花が咲かないということがあります。
屋外に出していても、雨が長期間降らない場合などは注意すべきでしょう。
花が咲く時期になったら乾燥度合いをよくチェックするのがオススメです。
梅の木の実らせ方
梅の木になぜ実がならないか原因がわかったら、実がなるような育て方にチャレンジしてみましょう。
「桜切る馬鹿梅切らぬ馬鹿」ということわざもありますが、梅の木は剪定など日々の管理が重要です。
どんな育て方をすれば良いのかチェックしてみましょう。
梅の木の育て方とは
梅の木は、日当たりの良い場所で水はけの良い肥沃な土に植えて育てます。
基本的なところは庭によく植えられる他の種類の木とさほど変わりませんが、たくさん花を咲かせて実をつけたい場合は、剪定など日々の管理が重要です。
農家さんのようにたくさん実をならせるのは一筋縄ではいきませんが、管理方法が間違っているといつまでも実が収穫できないかもしれません。
どんな管理をすれば良いのかしっかり抑えておきましょう。
剪定
梅の木の管理で特に重要なのが花付きを左右する剪定です。
剪定方法には様々なものがありますが、花芽をつける前の夏季と、落葉後の冬季に行うことが多いです。
夏季剪定は7~8月ごろに行い、勢いよく伸びた徒長枝やひこばえを根元から切り、混みあった枝を整理します。
冬期剪定は、落葉後から花芽が膨らんできた頃に行い、こちらは樹形の骨格を整える剪定で、徒長枝を切ったり混みあった枝を切る他に、樹形が一定の大きさを保つように枝先を切り詰めます。
それ以外にも花後に枝を切り詰める剪定や、春に徒長枝になる芽をあらかじめ取る芽かきを行うこともありますが、樹勢や環境などの違いや、それぞれのやり方があるので、やっていくうちに必要と感じたら試してみるようにしましょう。
日々の管理
剪定以外の管理としては、施肥や摘蕾・摘果などがあります。
施肥は冬に鶏糞などの有機質肥料を与える寒肥のほか、花後と果実収穫後に化成肥料などを与えるお礼肥を行うのがオススメです。
また、花芽や果実が多いときには、つぼみや未熟果のうちに摘み取る摘蕾・摘果を行います。
他にも、病害虫の対処に加え、鉢植えの場合は水やりや定期的な植え替えなどを日々の管理として行います。
庭木にあれこれ手をかけすぎるのも良くないですが、梅の木に関しては手をかけるべきところはしっかりかけることが重要です。
梅の木の実がなるまで何年掛かる?
梅の木を植えてから実がなるまで、大体3~4年ほどかかるといわれています。
ただ、これは市販されている接ぎ木苗を植えた場合で、種から育てた場合は実がなるまでにもっと時間がかかります。
3~4年というのも生育状況などによって変動することがあるので、あくまで目安として捉えておくようにしましょう。
梅の木の寿命って?
木が枯れる原因には様々なものがあり、複合的な原因となることも多いです。
そのため、確実に寿命(老衰)で枯れたと断言するのは非常に難しく、一概に何年くらいが寿命とはいえません。
梅の場合、伊達政宗が1609年に植えさせたという梅が現存しているため、言い伝えの通りなら梅の木は400年以上は生きうるということになります。
上手に育てられれば、孫の代まで残すことも不可能ではないと覚えておきましょう。
枯れる事はあるの?
梅の木は、管理方法や環境条件などによって枯れることがあります。
小さい苗木の方が比較的枯れやすいですが、大きくなってから枯れることも少なくありません。
慣れるまでは木は枯れるものと思って育てていくのが良いでしょう。
梅の木を育てる上での注意点
梅の木を育てるうえで、剪定などの管理以外にも病害虫に気を付ける必要があります。
病害虫の種類によっては特に目くじら立てて対処しなくても良いものから、木を枯らしかねないものまで様々です。
代表的なものをご紹介するので、しっかり抑えておきましょう。
害虫に注意
梅の木には非常に様々な種類の害虫がつきます。
サクラの害虫とかなり似通っていますが、葉っぱを食べるものではオビカレハやアメリカシロヒトリ、モンクロシャチホコなどの毛虫類が、幹を食べるものではコスカシバやクビアカツヤカミキリなど、汁を吸うものではウメシロカイガラムシなどがあります。
特に気を付けなければいけないのは近年分布を広げている外来種のクビアカツヤカミキリで、幼虫が幹の内部を食い荒らし、場合によっては枯らしてしまうものです。
単体で木を枯らしうるという意味では最も警戒すべきものでしょう。
お住いの地域に発生が見られるか自治体のHPなどでよく確認しておくのがオススメです。
他の虫も大発生すると成長に影響を与え、弱らせることもあるので、対処が必要になります。
数が少ない場合はそのまま捕殺し、数が多い場合は種類に応じた薬剤を使いましょう。
オビカレハなど巣をつくるものは、巣ごと切除して駆除するのが有効です。
病気に注意
梅の木には様々な病気が発生します。
枝葉や果実に斑点ができるかいよう病、葉が縮れたようになる縮葉病などが代表的です。
病気の種類によって対処が異なることが多いので一概には言えませんが、たとえば葉っぱに斑点ができる病気だと、伝染源になる罹病部を切除し焼却処分することや、中間宿主の除去、早めの薬剤散布での抑制などが対処法となります。
病気によっては大した害が無いものもありますが、木の元気が無くなるものや、かいよう病など果実に被害が出るものなどもあるので日ごろから注意して木の異常を観察しておきましょう。
まとめ
梅の木にたくさん実をつけるにはきちんとした管理をしなければならず、完璧に行うには高い技術と経験が必要です。
しかし、少しずつ収穫量を増やしながら徐々に育て方を覚えていくのも、木と共に成長していくようでまた素敵なことではないでしょうか。
一度の失敗であきらめず、試行錯誤しながら育ててみてください。
愛知県稲沢市生まれ。稲沢市が「日本四大植木産地」であることもあり、幼少期から植木に囲まれて成長。
東京農業大学卒業後、名古屋市内の造園会社に就職。公園の整備工事から国交省事業の国道整備工事における土木及び街路樹等の植栽工事に現場代理人として携わる。