三香木の一つ。木いっぱいにつくオレンジ色の花は、秋の始まりを告げる風物詩として有名。
基本データ
- 分類
- 庭木-常緑
- 学名
- Osmanthus fragrans Lour. var. aurantiacus Makino
- 科・属名
- モクセイ科モクセイ属
- 草丈・樹高
- 4~5m
- 栽培可能地域
- 東北南部以南
- 花色
- オレンジ
- 開花期
- 9~10月
- 結実期
- 結実しない
- 耐暑性 / 耐寒性
- 耐暑性は普通。耐寒性はやや低い。
キンモクセイってどんな木?
キンモクセイとは
キンモクセイはモクセイ科の常緑小高木です。中国原産であるギンモクセイの変種で、日本に自生はありません。もともと中国から渡ってきたといわれていますが、最近では同じくギンモクセイの変種のウスギモクセイを日本で改良したものではないかという説もあります。庭木としてよく植えられており、たくさん並べて垣根のようにしているのがよく見られます。
三香木の一つ
キンモクセイは、言わずと知れたオレンジ色の花が特徴です。非常にいい香りがするため、ジンチョウゲ、クチナシと並んで三香木の一つに数えられています。その香りは香水に使われることもあり、秋の訪れを感じさせるとても華やかな香りです。
オスの木しか無い
キンモクセイ含むモクセイ属の木は、全てがオスの木とメスの木がある雌雄異株の木です。挿し木によりクローンで増やされているキンモクセイにはメスの木が無く、実をつけることがありません。
似た仲間との見分け方
キンモクセイによく似たものとして、ギンモクセイとウスギモクセイがあります。ギンモクセイは葉っぱがキンモクセイと比べ幅広く、多くの場合ギザギザ(鋸歯)があるのが特徴です。キンモクセイにも鋸歯が出ることがありますが、普通はあまり目立ちません。ギンモクセイの「ギ」はギザギザの「ギ」と覚えると良いでしょう。ウスギモクセイは葉っぱだけだとキンモクセイと見分けることができませんが、花が白く、キンモクセイに比べてまばらなことで見分けられます。
大気汚染に弱い
キンモクセイは大気汚染の影響を受けやすいということでも有名です。葉っぱが落ちるよりも先に、花が咲かなくなります。キンモクセイを植える場所の近くに工場などがある場合は、周りに植わっているキンモクセイの花の様子を見てから植えた方が良いかもしれません。とはいってもその被害がよく見られたのは昭和の都市部や工業地帯での話で、今ではそれも少なくなりました。
キンモクセイの楽しみ方
花木として楽しむ
キンモクセイは花木として楽しむのが最もメジャーな楽しみ方です。秋の始まりに咲く花の香りは、間違いなく周りの人たちの心を癒してくれるでしょう。オレンジ色の花もきれいで、びっしり花が咲いて木全体がオレンジ色に染まっている様子は圧巻です。キンモクセイの花が咲くと秋の訪れを感じることができます。
自家製の香水、お茶、シロップ漬けなど
キンモクセイの花を使って、自家製の香水をつくることができます。作り方は簡単で、咲いている花を摘んでエタノールと一緒に容器に入れ、数か月置いておくだけ。秋の短い間にしか味わえないあの香りをいつでも楽しめるようになります。他にも花と葉っぱを使った桂花茶をつくったり、花をシロップ漬けにしたり、モイストチンキをつくったりと、使い方はいくらでもあります。これらは自分の庭でキンモクセイを育てている人の特権ですね。
たくさん増やして垣根に
キンモクセイは挿し木や取り木で増やすことができます。たくさん増やして並べて植え付けると、立派な垣根の完成です。刈り込みに耐える木なので、ピッシリきれいな壁のように刈り込んでもいいですし、よく花が咲くようにのびのび生やしてみても面白いです。ある程度融通の利く強い木なので、好きなように楽しんでみてください。
冬芽の観察
冬になる頃にはキンモクセイの冬芽が見られます。冬芽には春に芽吹く「主芽」と、その予備の「副芽」が作られることがあるのですが、キンモクセイにはその副芽がかなりたくさん見られます。縦にいくつもの冬芽が並んでいる様子を見たらきっとびっくりしますよ。春になったらどの芽がどんなふうに芽生えているのか、観察してみると楽しいです。
キンモクセイ(金木犀)の育て方・管理方法
植え付け・植え替え
キンモクセイ(金木犀)の植え替えは新芽の芽吹く前か、芽吹いた葉っぱが固まった頃に行います。3月下旬~4月、9月下旬~10月上旬がおすすめです。水はけのいい肥沃な土に植えるとよく育ちます。多湿と乾燥が苦手なので、植え付け場所には気をつけましょう。
肥料
1月下旬~2月頃の寒肥と、花芽をつける前の6月下旬~7月上旬頃の追肥を与えます。どちらも窒素分を控え、リン酸とカリウムを多く含んだ肥料をあげると良いでしょう。
剪定
キンモクセイ(金木犀)の剪定は花が咲き終わった10月~11月頃か、新芽が芽吹く前の2月~4月頃に剪定を行います。
夏に花芽をつくる木なので、その時期に剪定すると花が咲かなくなってしまうので注意が必要です。性質としては強剪定にも耐える強い木で、四角いブロック状に刈り込まれたものをよく見かけます。剪定の適期であれば、ある程度自分の好きなように剪定しても大丈夫でしょう。ただ、剪定が少ない方が木にとって良いのも事実なので、あまりにも剪定しすぎると花付きが悪くなることもあります。
病害虫
病害虫の少ない木です。病気としては葉っぱに斑点ができる褐斑病や、葉っぱの先が枯れる先葉枯病などがまれにあります。どちらも菌の起こす病気で、病気の出ている部分を除去して焼却処分して対処するとよいです。害虫は葉っぱや茎の汁を吸うハダニやカイガラムシ、アブラムシなどと、葉っぱを食べるガの幼虫やテントウノミハムシなどがみられます。ハダニの被害を受けると葉っぱが黄色っぽいくすんだ色になり、美観的にあまりよくないので、被害が出たら薬剤などで対処すると良いでしょう。また、イラガの幼虫が発生することがあります。枝の根元に繭を作っていることがあるので、見つけ次第除去するようにしましょう。
日当たり
地植えの場合、活着してからは特に気を使って水やりするようなこともないですが、乾燥に弱い木なので夏場など雨が少なく乾燥する場合は水をあげるようにしましょう。
水やり
地植えの場合、活着してからは特に気を使って水やりするようなこともないですが、乾燥に弱い木なので夏場など雨が少なく乾燥する場合は水をあげるようにしましょう。
出典(引用元)
「樹木医必携」
矢口行雄著
「樹木医が教える緑化樹木事典 病気・虫害・管理のコツがすぐわかる!」
岩谷美苗著
「散歩が楽しくなる樹の手帳」
村越匡芳監修
「庭に植えたい樹木図鑑」
愛知県稲沢市生まれ。稲沢市が「日本四大植木産地」であることもあり、幼少期から植木に囲まれて成長。
東京農業大学卒業後、名古屋市内の造園会社に就職。公園の整備工事から国交省事業の国道整備工事における土木及び街路樹等の植栽工事に現場代理人として携わる。