春の訪れを告げ、透き通るような濃いピンク色の花が、庭を明るく彩ってくれるミツバツツジ。

けれども、毎年きれいに咲かない…と悩む声も少なくありません。
花を咲かせるには、剪定や肥料のタイミング、育てる環境がとても大切です。

今回は、ミツバツツジの花が咲かない原因とその対処法、花を楽しむための育て方や剪定のコツについて紹介します。


自己流の剪定木が枯れるかも

目次

ミツバツツジとは?特徴・基礎知識

Rhododendron dilatatum

まずは、ミツバツツジとはどのような花木なのか、特徴や基礎知識を知っておきましょう。

ミツバツツジの生育サイクルと開花時期

Rhododendron dilatatum

ミツバツツジは、落葉樹でありながら春に葉が出る前に花を咲かせる特徴があります。

開花時期は例年3月下旬〜4月中旬ごろで、日当たりや寒暖差によって前後します。
つぼみの形成は前年の夏頃に始まるため、その時期の環境が翌春の花付きに影響します。

花が咲かないと感じたら、まずは日照や剪定時期、肥料の与え方を見直すことが大切です。

ミツバツツジの仲間や似た品種との花が咲くタイミングの違い

Rhododendron reticulatum

ミツバツツジは、トウゴクミツバツツジやコバノミツバツツジなどの仲間があり、それぞれ花が咲く時期が少しずつ異なります。

地域や気温の違いによっても開花のタイミングは前後するため、ほかのツツジと比べて早すぎたり遅すぎたりしても慌てなくて大丈夫です。

まずは育てているミツバツツジの種類を確認してみると、開花時期の違いがわかるかもしれません。

ミツバツツジの花が咲かない原因と対処法

Rhododendron dilatatum

水やりや肥料やりをしっかりと行っていても、ミツバツツジは花が咲かないこともあります。
ここでは、花が咲かない原因とその対処法について知っておきましょう。

1. 剪定時期の失敗

ミツバツツジは、夏ごろに翌春の花芽をつくるため、その時期に剪定をしてしまうと花芽ごと切り落としてしまうことがあります。
特に7月以降に強く切り戻してしまうと、翌年は花がまったく咲かない場合も。
花が終わったあとすぐの時期を逃してしまうと、次の花付きに影響が出やすくなります。

対処法:花芽がつく前に剪定しない

基本的にミツバツツジの剪定は、花が咲き終わってから初夏までの間に済ませておきます。
遅くても6月中には整枝を終え、夏以降は枝に手を加えないようにしましょう。
見た目にはわかりにくくても夏には枝の中で花芽ができ始めるため、切りすぎには注意が必要です。
花後すぐのタイミングでやさしく剪定することが、来年の花を守るポイントです。

2. 肥料不足・栄養不足による開花障害

ミツバツツジは、やせた土地や栄養の少ない環境では、花芽がうまく育たず開花しにくくなることがあります。
鉢植えや狭い場所に植えている場合、根が栄養を吸い上げにくくなるため注意が必要です。
花よりも枝葉ばかりが伸びているときは、窒素やリン酸のバランスが崩れている可能性も。

栄養が足りていない状態が続くと、翌年以降も花付きが悪くなる原因になります。

対処法:寒肥とお礼肥で年間を通した栄養補給をする

ミツバツツジには、1月〜2月に寒肥を施し、花が終わったあとの5月ごろにお礼肥を与えると、年間を通して安定した栄養補給ができます。
肥料は即効性よりも緩やかに効く有機質のものを選び、株元から少し離した場所にすき込むのがポイント。
鉢植えの場合は、土の表面に置くタイプの肥料を使うと手軽です。

3. 病害虫によるストレス

Rhododendron dilatatum

ミツバツツジは基本的に丈夫な木ですが、風通しが悪く湿気がこもりやすい環境では、病気や害虫の被害を受けることもあります。
葉が黄ばんだり、黒い斑点が出ていたりする場合は、うどんこ病や葉枯れ病の疑いも。
葉の裏や枝先に小さな虫が見られるときは、アブラムシやハダニの被害が進んでいる可能性があります。
こうしたストレスが積み重なると、花芽が育ちにくくなり、開花にも悪影響を及ぼします。

対処法:定期的な薬剤散布と剪定で被害を予防

春から秋にかけて風通しをよく保ち、湿気がたまりにくいように枝葉を整理しましょう。
込み入った枝を剪定して空気が流れるようにすれば、ミツバツツジに病害虫が発生することも少なくなります。
葉の色や形に異変が出たときは、早めに殺虫剤や殺菌剤を散布し、広がる前に対処しましょう。
薬剤は予防の意味もあるので、発生が見られなくても春先と夏前のタイミングで定期的に散布するのがおすすめです。

4. 日当たりや風通しなどの環境条件が悪い

Rhododendron dilatatum

ミツバツツジは、比較的半日陰でも育ちますが、日照時間が短すぎたり風通しが悪かったりすると、花が咲かなくなる場合も。
建物の北側や高い木の陰になっている場所では、日差しが届かず生育が鈍りがちです。
湿気がたまりやすい場所では根の呼吸も妨げられ、株全体が弱ってしまうこともあります。
花を咲かせる力が不足してしまい、翌年以降の開花にも影響を与えやすくなります。

対処法:半日陰〜日向で風通しのよい場所に植える

午前中にやわらかい光が当たる半日陰や、一日を通して明るい場所にミツバツツジを植えると元気に育ちます。
ただし、建物の影になる場所や風がまったく通らないような密閉された空間は避けましょう。
枝が混み合ってきた場合は、適度に間引いて風が抜けるようにしておくと環境が整いやすくなります。
鉢植えの場合も季節に応じて置き場所を変えることで、花芽が育ちやすい環境をつくることができます。

5. 若木や移植後の株で花が咲かない

Rhododendron dilatatum

ミツバツツジは、植え付けから年数が浅い若木や、移植して間もない株では、根がまだ十分に張っておらず、花を咲かせるための力が足りないことがあります。
植え替え後は環境に慣れるまでに時間がかかり、見た目が元気そうでも開花が遅れることもあります。
枝葉の生長ばかりが目立つ場合も、まだ株が充実していないサインです。

対処法:落ち着くまで数年待つのも育て方のひとつ

根がしっかりと張り落ち着くまでに時間がかかるため、花が咲かなくてもあわてずに見守ることが大切です。
若木や移植したばかりの株は、まず体力を回復させることを優先している状態です。
水やりや施肥などの管理を整え、無理に剪定をせず自然な生長を待ちましょう。

ミツバツツジの花を咲かせるための育て方のコツ

Rhododendron dilatatum

ここでは、ミツバツツジの花を咲かせるための育て方のコツを紹介します。

①花芽形成期の環境を守る

Rhododendron dilatatum

ミツバツツジの花芽は、夏ごろに静かに枝の中でつくられ始めます。
見た目の変化が少ないため忘れがちですが、日当たりや風通し、水分管理に気をつけて育てましょう。

強い剪定や移動、肥料のやりすぎも避け、株に余計なストレスをかけないようにします。
夏の環境を穏やかに保つことが、翌春の開花につながります。

②春と秋に緩効性肥料を施す

春先と秋には、ミツバツツジにゆっくり効く緩効性肥料を与えることで、健やかな生育をサポートできます。
急激に効く肥料は枝葉ばかりが伸びやすく、花付きに影響することもあるため控えめにします。
肥料は株元から少し離した場所にまんべんなく施し、根を傷めないよう浅くすき込むのがポイントです。

鉢植えの場合は、置き肥タイプのものを使うと手軽に管理できますよ!

③根元にマルチングで保湿と保温

mulch

ミツバツツジの根元には、バークチップや腐葉土などを使ってマルチングをすると、土の乾燥を防ぎながら地温も安定させることができます。

夏の強い日差しや冬の冷え込みが気になる場所では、根を守るための大切なひと手間です。マルチ材は厚く敷きすぎず、5cm前後を目安にふんわりと広げるのがコツです。

水分が保たれることで根が元気になり、株全体の状態も整いやすくなります。

④若木は定植後2〜3年は花より根の生長を優先

ミツバツツジの若木は、植え付け直後からすぐに花を咲かせるわけではなく、まず根がしっかり張るまでの期間が必要です。
定植してから2〜3年は、株を充実させる時期と考え、花よりも根の生長を優先しましょう。

過度な剪定や肥料のやりすぎは控え、自然に任せて育てるのが安心です。
根が広がり安定してくると、枝葉も元気に伸び始め、花芽も付きやすくなります。

⑤鉢植えは根詰まりに注意し、2年に1回は植え替えを

鉢植えのミツバツツジは、根のまわりがかたくなりやすく、放っておくと水や栄養がうまく吸収できなくなることがあります。

鉢の底から根が見えていたり、水はけが悪くなってきたと感じたら、植え替えのサインです。
2年に1回を目安に、一回り大きな鉢に替えるか、根を軽く整理して同じ鉢に戻しましょう。
植え替えの際は古い土を落とし、新しい用土を使うと根が呼吸しやすくなり、根腐れもしにくくなります。

ミツバツツジの花を咲かせる剪定のコツ

Rhododendron dilatatum

ここでは、ミツバツツジの花を咲かせるための剪定のコツを紹介します。

Point1. 花後すぐの5月中旬〜6月中旬に剪定する

ミツバツツジの剪定は、花が終わった直後の5月中旬〜6月中旬に行うのがベスト。
花芽は夏ごろから枝の内部でつくられ始めるため、それ以降の剪定は来年の花付きに影響します。

枝を切るときは、混み合った部分や飛び出した枝を中心に、樹形を整えるように意識します。
ただし、強く切りすぎると花芽が付きにくくなるので、軽めの剪定をします。
作業は晴れた日の午前中に行い、切り口が乾きやすい状態で仕上げるのが良いです。

Point2. 徒長枝は基部から切除する

勢いよく上に伸びた徒長枝があると枝葉ばかりに栄養が偏り、花芽がつきにくくなります。
見つけたら枝分かれしている根元部分から切り取って、ミツバツツジ全体のバランスを整えましょう。

ただし、途中で切るとわき芽が増えて枝数が多くなり、かえって樹形が乱れやすくなります。
日当たりや風通しも悪くなるため、思いきって根元から枝葉を切りましょう。

Point3. 枯れ枝・交差枝・混み合う枝は整理して風通しを確保する

枝が混み合ってくると風通しが悪くなり、湿気がこもって病害虫の原因になりやすいミツバツツジ。
枯れ枝や交差してこすれ合う枝は、早めに取り除いてすっきりと整えましょう。

枝葉の間に風が抜けるように意識して剪定すると、花芽にも光が届きやすくなります。
重なり合った枝を放置すると、日陰ができて花つきも悪くなりがちです。
全体のバランスを見ながら、間引くように剪定するといいです。

Point4. 内向き枝や平行枝は間引き剪定する

ミツバツツジの枝が内側に向かって伸びたり、平行に並んで重なっていたりすると、株の中心に光が届きにくくなります。
不要な枝は思いきって根元から切り取る「間引き剪定」で整理しましょう。

外側へ向かって伸びる枝を優先的に残すことで、見た目もすっきりと整い、花芽にも日差しがしっかり届くようになります。

Point5. 切り戻し剪定は枝先を2〜3芽残して軽く整える程度に

ミツバツツジの剪定で枝先を整えるときは、2〜3芽を目安に軽く切り戻す程度にとどめましょう。
深く切りすぎると、花芽がなくなったり、樹形が乱れたりする原因になります。
枝先にある芽は翌年の花を咲かせる力を持っているため、残しながらバランスよく整えることがポイントです。

切る位置は、外向きの芽の上で行うと自然な樹形に仕上がります。
全体を見ながら少しずつ調整し、やさしく形を整える剪定を心がけましょう。

ミツバツツジの花を咲かせるために必要な条件

Rhododendron dilatatum

適切な育て方や剪定方法だけでなく、ミツバツツジの花を咲かせるには、ほかの必要な条件があります。
どんなことが必要なのかを、ここでは3つを詳しく紹介します。

①花芽形成に適した気候と気温のリズム

ミツバツツジがしっかりと花芽をつけるには、昼夜の寒暖差がある程度はっきりした気候が向いています。
特に夏から秋にかけての気温のリズムが安定していると、枝の中で花芽が育ちやすくなります。

ただし気温が高すぎたり、夜も暑い状態が続くと花芽形成がうまく進まないことがあります。
風通しの良い場所で管理し、株がストレスを感じにくい環境を整えることが大切です。

②成熟した株であること

ミツバツツジの株が若いうちは、根の生長に力を使うため花が咲きにくいことがあります。
ある程度年数をかけて株元がしっかりと太り、枝ぶりが落ち着いてくると、自然と花芽もつきやすくなります。

植え付けから数年は、花が咲かなくても慌てずに見守りましょう。
葉の色や枝の伸び方に勢いがあれば、順調に育っている証拠です。

③ストレスの少ない育成環境

Rhododendron dilatatum

環境の変化によるストレスをできるだけ減らすことで、ミツバツツジを元気に育てられます。

過度な剪定や肥料の与えすぎ、強風や直射日光にさらされる状況は、株に負担をかけてしまいます。
日当たりと風通しのバランスがよく、適度な湿度を保てる場所で育てると安心です。

植え替えや剪定の時期を守ることも、株を落ち着かせるのもポイント。
日々の手入れをやさしく丁寧に続けることが、花を咲かせるコツです。

ミツバツツジの花が咲かないことに関するよくある質問

Rhododendron dilatatum

最後に、ミツバツツジの花が咲かないことに関するよくある質問をまとめました。

毎年咲かせるにはどうすればいい?

ミツバツツジを毎年咲かせるには、花芽ができる時期にストレスをかけず、自然なリズムで育てることが大切です。

花後すぐの剪定で枝を整え、夏以降は枝を切らずに静かに過ごさせましょう。
春と秋の緩効性肥料で栄養を補いながら、風通しのよい環境を保つこともポイントです。

枝が混み合ってきたら間引くように剪定し、光が株全体に届くようにします。
毎年同じ管理を丁寧に繰り返すことが、安定した花つきにつながります。

ほかのツツジと同じ育て方で大丈夫?

ミツバツツジはほかのツツジ類と似ている点もありますが、落葉性であることや花芽のつくタイミングが違うため、育て方に少し注意が必要です。

常緑のツツジと同じ感覚で夏以降に剪定してしまうと、花芽を切ってしまう恐れがあります。
肥料の時期や量、日当たりの管理などもそれぞれの性質に合わせて調整しましょう。
見た目が似ていても、それぞれに合った育て方を意識することで、花をしっかり咲かせることができますよ。

ミツバツツジの花を咲かせる剪定はsmileガーデンへ

Rhododendron dilatatum

ミツバツツジの花を毎年咲かせるには、時期や方法を間違えずに剪定することが何より大切です。

そんなとき頼りになるのが、全国展開で実績豊富なsmileガーデン。
庭木1本から気軽に頼めて、電話一本で土日も対応してもらえる便利さがあります。
見積もりは無料で、完全自社施工だから料金も安心です。
経験豊富なプロが希望に合わせて仕上げてくれるので、花を楽しむための剪定も安心しておまかせできます。
剪定の依頼はぜひsmileガーデンへ。


自己流の剪定木が枯れるかも

氏永 勝之
監修者 smileグループCEO
株式会社ガーデンメーカー 代表取締役
愛知農園植木苗木株式会社 専務取締役
一般社団法人ガーデンビジネス協会 代表理事
氏永 勝之

愛知県稲沢市生まれ。稲沢市が「日本四大植木産地」であることもあり、幼少期から植木に囲まれて成長。
東京農業大学卒業後、名古屋市内の造園会社に就職。公園の整備工事から国交省事業の国道整備工事における土木及び街路樹等の植栽工事に現場代理人として携わる。

執筆者 柴﨑光一

リゾートガーデンスタイル専属の庭師×Webコンテンツクリエイター。 カナダのトロントで造園士を、その後日本で花屋のバイヤー・鉢物の管理・アドバイザーを経験した後、ヤシの木を主体とするリゾート・ドライガーデンの造園士に。 現在は、リゾートガーデンスタイルの社会福祉施設・DOG CAFEの専属庭師に加え、畑の開拓・管理、SNSも兼務。 植物を専門とするWebコンテンツクリエイター、ガーデニング商品の監修者としても活躍中。

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