庭に生垣を設けたいけれど、手間をかけずに美しい緑を楽しみたい、そう考えている方は多いのではないでしょうか。
生垣のお手入れは水やり、剪定、病害虫対策など、意外と手間がかかるもの。しかし、適切な樹種を選ぶことで、生垣のお手入れはぐっと楽になるんです。

この記事では、手間をかけずに美しい庭を作れるおすすめの樹種を庭のお手入れのプロが厳選。初心者の方でも育てやすい10品種をご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。


生垣トラブルは防げる…smileガーデンに相談する

目次

生垣で手間がかからないようにするには?

ブロック塀やフェンスと違い、生きた植物でできた垣根のことを生垣といいます。生垣は庭の景観を良くするだけでなく、隣家との境界に設置したり、プライバシーを守るための目隠しにしたり、強風を防いだりといったさまざまな目的でつくられています。

手間のかかるポイントを解消する生垣選び

生垣について、「たくさんの手間と時間をかけて管理しなければ、景観を維持できない」というイメージはありませんか?確かに生垣にお手入れは必須なのですが、選ぶ樹種によって、その負担を軽減することは可能です。

手間のかかるポイントは、主に以下のようなものがあります。

  • 成長が早い
  • 害虫に弱い
  • 乾燥や寒さに弱い

生垣を植えてから後悔しないために、この3つのポイントが当てはまる樹種は選ばないようにしましょう。

水やり、剪定、病害虫対策の軽減が鍵

手間がかからない生垣をつくるためには、水やり・剪定・病害虫対策の3つの手間を軽減することも鍵になります。

基本的に地植えされた庭木は水やりがいらない場合が多いですが、7~8月の暑い日は暑さで地面の水分が奪われ、地植えの生垣であっても水やりが必要になることがあります。忙しい毎日に、広範囲の生垣に水やりをするのはなかなか大変なので、できれば避けたいところです。

剪定については、成長速度が早いほど作業頻度が上がります。成長が旺盛な庭木だと、数ヶ月放置しただけで原型をとどめないほどに暴れてしてしまうことも。どの程度の頻度で剪定しなければいけないかを確認し、無理なく行えるものを選びましょう。

病害虫対策については、病害虫に強い品種を選ぶことが基本です。しかし、どんなに丈夫な樹種でも、全く病害虫がつかないわけではありません。定期的に生垣を観察し、異常を発見したら早めの対処を心がけましょう。生垣の風通しをよくするための剪定も必要です。

なお、生垣に使う庭木の種類としては、落葉樹ではなく常緑樹を選ぶのがおすすめです。常緑樹とは、落葉せずに1年中葉を茂らせている樹種です。メリットは、落葉樹のように大量の落ち葉が発生することがないので、落ち葉掃除の手間を省けること。敷地の外に落ち葉が広がってトラブルになるということもありません。

冬でも見た目が変わらず、1年を通して生垣の目隠し効果が続くのもうれしいポイントです。落葉樹は秋から冬にかけて葉を落とし、目隠しや防犯、防風としての効果は下がってしまいます。しかし、常緑樹は冬でも青々とした葉が茂っているので、寒い季節でも目隠しなどの効果を持続することができます。

手間がかからない生垣の特徴

剪定したイヌツゲの枝

手間がかからない生垣の3つのポイントを詳しく解説します。

成長が遅い樹種の選定

植物が伸びるスピードは、当然ですが一律ではありません。植物がぐんぐん伸びるのは喜ばしいことですが、生垣においては剪定を行う回数が増えたり、形を保つのが大変になったりといったデメリットにもなってしまいます。

樹高が高くなるにつれて切る枝の量は増え、切る場所も高くなっていくので、剪定はどんどん難易度が上がっていきます。こまめにお手入れして生垣を楽しみたい!という方には成長が旺盛な樹種がおすすめですが、そうでなければ、なるべく成長速度が遅いものを選びましょう。

樹種で迷ったときには、それぞれの剪定の時期や方法について調べてから検討するのが良いです。たとえば、ラカンマキやツゲ、ヒイラギなどの樹種は成長がゆっくりです。このような成長が遅い樹種を選ぶか、生垣の形をあまり気にしない方は、刈り込みせずに自然な成長を楽しむのもおすすめです。

成長が遅い樹種は根張りが浅いものが多く、移植も比較的簡単に行えるというメリットもありますよ。

病害虫に強い植物

手間がかからない生垣をつくる際は、病害虫に強い樹種を選ぶことも重要です。
病害虫に強い樹種は、病害虫から自分を守るための抵抗力を備えています。そのため、葉や枝が弱ったり枯れたりするリスクが低く、薬剤散布や剪定、駆除といった手間も大幅に減らすことができます。

たとえば、シラカシやトキワマンサク、マートルなどは病害虫に強いことで知られています。これらの植物を植えることで、青々とした美しい生垣を、ほとんど手間をかけずに楽しむことができるでしょう。

さらに病害虫に強い樹種は健康な状態を保ちやすく、長寿であることが多いです。

乾燥や寒さに強い樹木の選び方

植物にはそれぞれ、乾燥に強かったり、暑さや寒さに強かったりといった性質があります。性質を考えずにお住まいの地域に合わない樹種を植えてしまうと、乾燥や寒さ、暑さで弱ってしまったり、最悪の場合は急激に枯れてしまうこともあります。

たとえば、乾燥に弱い樹種を1日中日が当たる場所に植えると、真夏に毎日水やりが必要になる可能性があります。また、寒さに弱い樹種を寒い地域で生垣にすれば、冬越しのための寒さ対策をしなくてはいけません。

そういった手間を減らしつつ、状態の良い生垣を長く楽しむためには、植えたい場所の最低気温や最高気温、土質、風の当たり具合などをしっかり考慮して生垣を選びましょう。
おすすめは乾燥に強い常緑樹や、根が深く水を蓄えることができる樹種。これらの樹種は一度根付いてしまえばそれほど頻繁な水やりは必要ありません

おすすめ!手間がかからない生垣の樹種一覧

ここからは、手間がかからない生垣になる樹種を、安く買える樹種、洋風の庭に合う樹種和風の庭に合う樹種、シンプルモダンに合う樹種に分けてご紹介します。ぜひ、お好みの生垣探しの参考にしてみてください。

【安く買える】手間がかからない生垣向き樹種

レッドロビン(セイヨウベニカナメモチ)

レッドロビンの苗木

レッドロビンはその名のとおり、鮮やかな赤色の新葉が特徴的。バラ科カナメモチ属の常緑低木で、カナメモチとオオカナメモチを交配した品種です。

比較的安価で丈夫なので、個人の庭先だけでなく公園や公共施設などでも植えられています。密生した葉は赤と緑のコントラストが美しく、非常に魅力的な生垣に仕上がりますよ。

成長が早いので、小さい苗木から育てても短期間で目隠し効果が期待できる点も大きな魅力です。ただし、成長が早いというメリットの裏返しとして、こまめな剪定が必要になるというデメリットも存在します。きれいな形を保つためには定期的な剪定が欠かせないので、最低でも年に一度は刈り込んで形を整えましょう。

シラカシ

どんぐりが実ったシラカシ

シラカシは、どんぐりのなる常緑高木です。庭や敷地を緑豊かに彩る生垣として、日本では古くから親しまれてきました。成長が早く横へも広がるので、数本の木を植えるだけで広範囲を緑で覆うことができます。比較的安価で丈夫なので、非常にコスパに優れた庭木といえるでしょう。

一度根付けば特別なお手入れをしなくても自然と大きく育ちます。放任でも美しい樹形を保つことができるため、忙しい方や、園芸初心者の方でも安心して育てられますよ。

一方で、シラカシは大きくなる木なので、庭の広さや周囲の環境とのバランスを考慮する必要があります。根も深く広く張ることから、建物の近くに植える場合は、基礎などに影響を与えないよう注意が必要です。落ちたどんぐりを放置しておくと次々と目が出てしまうので、不要であれば小さいうちに抜いておきましょう。

【和風】手間がかからない生垣向き樹種

キンモクセイ(金木犀)

オレンジ色のキンモクセイの花が咲いている

キンモクセイは、秋になると香りの良い小さな花を咲かせる常緑樹です。その上品な香りや美しいオレンジ色の花は、和風庭園に奥ゆかしい雰囲気を添え、秋の訪れを感じさせてくれます。

剪定に強いので自由に形を整えることができ、さまざまなデザインの庭に合わせやすいのもポイントです。日陰でもよく育つので、日当たりの悪い場所の生垣としてもおすすめ。病害虫に強く丈夫なのもうれしいですね。

ただし、成長が早い反面、生垣としての形を保つためには定期的な剪定が必要です。2~4月、または花が終わった10~11月頃に、伸びた枝を切り戻しましょう。

イヌツゲ

黒い実が実っているイヌツゲの生垣

イヌツゲは、その緻密な葉と生垣としての使いやすさから、古くから日本庭園で愛されてきた常緑樹です。密生した小さな葉を刈り込むと、まるで緑の壁のような美しい生垣に。和風の庭によく合い、落ち着いた雰囲気を与えてくれます。

イヌツゲは刈り込みに強いので、圧迫感のない低めの樹高を維持したい方に大変おすすめです。トピアリーや樹形を活かした植栽など、さまざまな用途に利用できますよ。病害虫にも比較的強く丈夫です。剪定は、3~10月の間に行いましょう。

【洋風】手間がかからない生垣向き樹種

プリペット

プリペットは、洋風の庭の生垣として広く利用されている低木です。特に白い斑入りの「シルバープリペット」や、明るい黄色の斑が入る「レモンライム」というカラーリーフ品種が人気を集めています。

寒さや暑さ、乾燥や湿気に強く、さらに潮風にも耐えることができます。寒冷地では冬に葉が一部落ちる場合もありますが、根付いてくると次第に落葉が少なくなります。さまざまな環境で生育が可能であり、日本の気候に非常に適応しやすい樹木といえるでしょう。葉が密生し高い目隠し効果が期待できるので、プライバシーを守りたい場所にも最適ですよ。

剪定は年間通していつでも行えますが、真冬と真夏は避けると安心です。花つきを良くしたい場合は6~7月、強剪定は4~7月を目安に行いましょう。

トキワマンサク

トキワマンサクの白花種の生垣

存在感のある花と葉が楽しめる生垣として、近年人気が高まっているトキワマンサク。落葉樹であるマンサクの名前がついていますが、トキワマンサクは常緑樹であり、一年を通して赤や緑の葉を茂らせます。原産地は日本、中国、インドなど。日本では自生しているものは少なく、多くは植栽されたものです。

春には細長いリボン状の可愛らしい花を枝いっぱいに咲かせます。白花種は純白の花が緑の葉とのコントラストを際立たせ、紅花種は鮮やかな赤色が庭を華やかに彩ります。花は小さく、ひとつひとつは控えめですが、群がって咲く様子は圧巻ですよ。

剪定に適しているのは、6月頃。開花期が終わって、翌年の花芽を付ける前に行いましょう。

【シンプルモダンに合う】手間がかからない生垣向き樹種

アベリア

アベリアの生垣

アベリアは、長い期間花を咲かせるのが特徴の常緑樹です。5~10月頃まで可憐な花を楽しめるだけでなく、花後にはプロペラのような形のがく片が残るユニークな姿も魅力の一つ。放っておくと樹形が乱れやすいので、一年に1回は剪定を行いましょう。

近年では、花だけでなく葉も楽しめる斑入り葉のアベリアも人気を集めています。「コンフェッティ」などの白い斑入りの品種は涼しげな印象を与え、「カレイドスコープ」のような黄色やオレンジの斑入りの品種は、庭に明るいアクセントを加えてくれます。花色も白やピンクなどのさまざまな品種があり、庭の雰囲気に合わせて選べる楽しさがあります

マサキ

マサキの生垣

マサキは、その丈夫さと成長の早さから、古くから生垣として親しまれてきた常緑樹です。従来のマサキは濃い緑色の葉が特徴で、和風住宅のイメージが強いかもしれませんが、近年では洋風の庭にも合わせやすいカラーリーフの品種も人気を集めています。

たとえば、新芽が鮮やかな黄色の「オウゴンマサキ」や、黄色と緑のコントラストが美しい「キンマサキ」などは庭に明るいアクセントを加えてくれます。これらの品種はシンプルモダンな庭によく合い、耐陰性もあるので、日陰に植える生垣としてもおすすめですよ。

マサキは丈夫な庭木ですが、マサキの葉を食い荒らす毛虫「ミノウスバ」や、葉裏に大量発生しやすい「カイガラムシ」などの害虫には注意が必要です。気づかないうちに被害が拡大していることがあるので、日頃から観察し、見つけたら殺虫剤を使って駆除しましょう。

剪定は6~7月または、9~11月頃に行いましょう。発育旺盛なので、年に2回は刈り込み、蒸れを防ぎましょう。

アルミフェンスなどの代替案との比較

生垣とフェンスはどちらも敷地を区切ったり、プライバシーを確保したりする役割を果たしますが、素材や特徴、そして与える印象は大きく異なります。

生垣とフェンスの違い

生垣は、庭の境界線や目隠しを目的として、生きた植物を植えて作り上げる垣根のことです。自然の温もりと緑豊かな景観が魅力で、葉の色が変化したり、花が咲いたりといった季節ごとの変化を楽しめます。また、防塵効果や防音効果も期待でき、地域に溶け込む自然な仕切りとして機能します。

ただし、生垣は剪定や水やりなどの定期的なお手入れが必要であり、病害虫が発生する可能性は常にあります。忙しくてお手入れの時間を確保できない方や、体力的に継続的なお手入れが難しい方、虫が苦手という方は、フェンスを選択するか、庭の専門業者に依頼しましょう。

一方でフェンスはアルミや木、鉄などの素材で作られた人工的な仕切りです。デザインも多種多様で、モダンな住宅から和風住宅まで、さまざまな住宅スタイルに合わせて選べるのが魅力。耐久性が高く長寿命であるため、コストパフォーマンスの面でも優れているといえるでしょう。

ただし、フェンスでは生垣のような自然な景観は得られません。また、素材によっては熱を吸収しやすく、夏場の暑さを感じることがあります

維持費や手間を考慮した選び方

生垣は初期費用は比較的安価ですが、長期的に見ると土や肥料、殺虫剤などの維持費がかかります。また、生きている植物なので剪定や施肥、虫の駆除といった継続的なお手入れも欠かせません。

一方で、フェンスは初期費用が高額になる場合がありますが、寿命が長いので維持費はほとんどかかりません。ただし、生垣のように季節ごとの表情を楽しむことができないのはデメリットといえるでしょう。

どちらを選ぶかは庭の広さや予算、デザインの好み、そして、どれくらいの時間と手間を庭にかけられるかによって決まります。ご自身のライフスタイルや庭の環境に合わせて、どちらを選ぶか慎重に検討しましょう

手間のかからない生垣はプロに相談しよう

生垣を剪定する職人

生垣のお手入れは、思っている以上に手間がかかるものです。種類や植え方、剪定方法など専門的な知識が必要となり、初心者にとってはハードルが高いと感じられるかもしれません。

「それでも、庭に生垣を造りたい」
「美しい生垣を長く楽しみたいけれど、自分でお手入れするのは不安…」

そんな風に思っている方は、ぜひプロの造園業者に相談してみましょう。プロの造園業者は、あなたの庭の環境や好みに合わせて最適な樹種を選定し、適切な植え方や剪定方法を提案してくれます。

たとえば、smileガーデンでは、お客様のご要望に合わせた最適なプランをご提案し、美しい庭づくりをサポートいたします。
手間のかからない生垣づくりは、まずはsmileガーデンにご相談ください。相談やお見積りは無料です。


生垣トラブルは防げる…smileガーデンに相談する

氏永 勝之
監修者 smileグループCEO
株式会社ガーデンメーカー 代表取締役
愛知農園植木苗木株式会社 専務取締役
一般社団法人ガーデンビジネス協会 代表理事
氏永 勝之

愛知県稲沢市生まれ。稲沢市が「日本四大植木産地」であることもあり、幼少期から植木に囲まれて成長。
東京農業大学卒業後、名古屋市内の造園会社に就職。公園の整備工事から国交省事業の国道整備工事における土木及び街路樹等の植栽工事に現場代理人として携わる。

執筆者 大村はなこ

植物とコーヒーを愛するWebライター。園芸好きの一家に生まれ、幼いころから花と緑に囲まれて育ちました。現在の住まいでは、ナチュラルな雑木の庭を目指して試行錯誤中です。 趣味はガーデニング、家庭菜園、メディカルハーブ。子どもと一緒に植物のある暮らしを楽しんでいます。

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