春になると白く美しい花を咲かせるユキヤナギ。
大きさを適切に保ちつつ、花をたくさん咲かせるためには、剪定による手入れが重要です。
ユキヤナギの剪定時期や剪定のやり方などについてご紹介します。

目次

ユキヤナギの剪定時期~基本を知ろう

ユキヤナギの白い花と緑の葉

 ユキヤナギの花をたくさん咲かせるためには、決まった時期に剪定を行わなければいけません。
また、剪定は多かれ少なかれ木にダメージを与えるものなので、ユキヤナギそのものへの負担を最小限にするために適切な時期に剪定を行う必要があります。

 とはいえ、ユキヤナギは強剪定にもよく耐える植物なので、剪定が原因で枯れてしまうことは少ないです。
あまり厳密に行う必要はないので、気楽に構えながらチェックしておきましょう。

おすすめの剪定時期は?

 ユキヤナギの剪定は、花が咲き終わった後と秋から冬の落葉後に行うのがおすすめです。
それぞれ、花が咲き終わった後は全体の形を決める剪定を、秋から冬の落葉後の剪定は、伸びすぎた枝の剪定や間引きなど、形を少し整える程度の剪定にするのがおすすめです。

 ユキヤナギは、11月ごろにその年新しく伸びた枝に、来年の花芽をつけます。
秋から冬に剪定する際に強く刈り込むなどしてしまうと、多くの花芽を落としてしまいます。
真夏に剪定するのも良いのですが、その時期はユキヤナギへの負担が大きいため、あまりおすすめできません。

 とはいえユキヤナギは環境が悪くなければ強剪定にも耐える強い植物なので、そこまで過敏にならなくても問題ないことが多いです。

季節ごとの剪定タイミング

カレンダーの日付

 季節ごとで剪定を考える場合、それぞれに適切なタイミングがあります。

 春に行う場合、花が咲き終わった後に行います。
ユキヤナギは春の早い時期に咲きますが、冬の時点ですでに花芽がつくられているので、間違っても春に花が咲く前に剪定してはいけません。

 夏に行う場合、真夏の猛暑日に剪定するのはユキヤナギそのものへの負担が大きいため、できるだけ避けましょう。
伸びすぎた枝を切って整える程度なら大した影響がない場合も多いですが、できるなら初夏までに剪定は済ませるようにしておきましょう。

 秋になると、ユキヤナギは来年の花芽をつくります。
冬芽をつくるスイッチは日の長さではなく気温によるもので、10〜15℃くらいが旺盛に花芽をつくるといわれる温度です。
秋のはじめくらいに剪定すれば真夏に剪定するよりはユキヤナギへの負担も少なく、その後伸びた枝に来年の花芽がつきますが、少なくとも11月になってからの強剪定はしないほうが良いでしょう。

 冬になると、すでに来年の花芽がそろっている状態になるので、強剪定はできません。
タイミングは冬ならいつでも良いですが、軽く形を整える程度にしておきましょう。
強いて言えば、氷点下が続くような厳冬期は避けたほうが普段は少ないです。

ユキヤナギの剪定方法と、方法ごとの剪定時期

カレンダーの上に置かれたペン

 ユキヤナギの剪定方法には、様々なものがあります。
いずれの方法も、求められる効果ややり方が異なるものです。
目的に応じて、剪定を行うべき時期も変わってきます。

 剪定は基本的に目的に沿って行うものなので、なんとなく伸びてきた髪の毛を切るイメージで剪定するのは避けましょう。
剪定方法ごとのやり方と、適切な時期をご紹介します。

透かし剪定のやり方と適切な剪定時期について

 透かし剪定は、混んだ枝を透くようなイメージで剪定を行い、樹形を崩さずに風通しを良くし、大きさを抑える方法です。
やり方は、枝を付け根までたどっていって、枝分かれの部分で切ります。
ユキヤナギのたくさんある枝を地道に切っていくのは非常に時間がかかるので、必ずしも必要な剪定方法ではありません。

 ユキヤナギが元気なら大きく刈り込んでもまた再生して樹形がもとに戻るので、通常は刈り込み剪定でも良いでしょう。
透かし剪定は、大きさはそのままで極力変えずに風通しだけ良くしたい場合や、刈り込み剪定をした上で風通しを良くしたい場合、一時的にも樹形を崩したくない場合などに行うのがおすすめです。

 剪定時期は花の後でも秋から冬の落葉後でも問題なく、極端な話よほどユキヤナギが弱ってない限りいつ剪定しても大きな影響はありません。
ただし、秋から冬の落葉後に行う場合、剪定量によっては花の数が少なくなることは承知しておきましょう。

強剪定のやり方と適切な剪定時期、注意点について

虫眼鏡とクエスチョンマーク

 強剪定は、ユキヤナギの場合は根元付近から大きく剪定する方法です。
株自体を大幅に小さくしたい場合に行います。
刈り込みに強いユキヤナギといえど、何度も行うと負担が大きいため、3〜4年に一度くらいのペースで行います。

 その場合は、花が終わった後の時期に行うか、次の春は花が咲かなくなるのを承知の上で、負担の少ない秋から冬の落葉後に行うのがおすすめです。

刈り込み剪定と適切な剪定時期について

 刈り込み剪定は、剪定ばさみや木鋏ではなく、刈り込みバサミで枝を落とす方法です。
大きさを抑えたり、決まった形に整えたりするときに行います。
生垣のツツジのように丸や四角に刈り込むことも可能です。

 やり方は、刈り込む長さを最初に決めてから、刈り込みバサミでザクザク刈り込みます。
途中で何度か離れて全体を見渡して、バランスよく刈り込めているか確認しながら行うのがおすすめです。

 時期としては、花の咲き終わった後に行うようにしましょう。
他の時期でもユキヤナギが枯れるようなことはあまりないですが、真夏はユキヤナギの負担が大きいことと、秋から冬の落葉時には花芽を落としてしまうのでおすすめできません。

剪定後のユキヤナギの手入れ

Tipsと書かれたノートと電球

 ユキヤナギの剪定が終わった後、これといって行わなければいけない手入れはありません。
庭木の太い枝を切った場合、切り口に切口保護剤を塗ったほうが良い場合もありますが、ユキヤナギの枝はそれほど太くなることもないのであまり気にしなくても良いでしょう。

 枝が飛び出ていると危険な場合があるので、そうした枝は整理してあげる必要があります。

剪定後の肥料のやり方

 ユキヤナギは、剪定後に肥料をあげなくてはいけないということはありません。
また、強剪定したあとの場合はユキヤナギに負担がかかっている状態です。
そんなときに肥料を与えると、かえって負担になってしまう可能性もあります。

 剪定の有無、前後にかかわらず、適切な時期に肥料を与えるのが良いでしょう。
基本的には、2〜3月くらいの落葉期に寒肥として与えるのと、花が咲き終わった後にお礼肥えとして与えることがあります。
いずれの場合も、強く負担がかかる強剪定のあとには与えないか量を少なくするのが無難です。

ユキヤナギの基本情報と特徴~どんな植物?

水車とユキヤナギ

 ユキヤナギは、バラ科シモツケ属の落葉低木です。
アーチのように長い枝を伸ばし、葉の腋から白い花びら5枚の花を咲かせます。
たくさんの花が枝いっぱいに咲いている様子はとても美しいです。

 日本に自生する植物で、本来の生育地は渓流沿いの水がかかるような場所です。
ユキヤナギはとても細長い葉っぱをしていますが、これは渓流の水の流れを受け流すように進化した結果だと考えられています。

ユキヤナギの育て方と注意点

ユキヤナギの花

 ユキヤナギは、日本に自生する植物でもあることや、強剪定にも耐える強健さがあることなどから、比較的育てやすい種類です。
育てる場合は、日当たりの良い場所で、あまり乾燥しすぎない肥沃な土に植えてあげるようにしましょう。

 暗い場所でも生き残りはするものの、花が咲かなくなったり徐々に衰退していったりとあまり良い結果にならないので、日当たりは良いほうが無難です。

夏と冬の過ごし方

 夏は、葉っぱを茂らせて盛んに光合成を行う季節です。
旺盛に枝葉を広げ、成長していきます。
芽吹いてから葉が落ちるまでにつくった栄養により、来年に咲く花の量が変わるので、活発に光合成する夏は大事な季節です。

 ただし、気温が高すぎたり雨がふらずに乾燥したりするとうまく光合成できない場合もあります。
そのため、真夏にはユキヤナギに負担がかかっている場合があり、剪定などさらに負担を与える手入れはなるべく裂けたほうが良いでしょう。

 秋の終わりごろから葉っぱを落とし、冬になると枝と冬芽だけの状態になります。
この時期は、寒い冬を乗り切るための休眠の季節です。
秋までに貯めた栄養も使いながら、寒さを乗り切ります。

 冬の間は眠っているような状態なので、剪定などの手入れを行うにあたり一番ユキヤナギへの負担が少ない季節です。
植え替えなどもこの時期に行うのが良いでしょう。

 ただし、ユキヤナギは11月ごろには来年咲く花芽をつくっているので、この時期に剪定しすぎると花芽が落ちて、花が咲かなくなる可能性があります。
 また、気温が頻繁に氷点下になるような地域だと、剪定後の切り口が凍って壊死する場合があるので、冬に手入れを行う場合も、本格的に寒くなっていないか寒さが和らいできた頃に行うのがおすすめです。

鉢植えで育てる場合のポイント

 鉢植えでユキヤナギを育てる場合、庭に地植えするのとは少し手入れの仕方が異なります。
鉢植えは庭の地面より土の量が圧倒的に少なく、範囲も限られているので、定期的に水やりを行う必要があります。
土の表面が乾いたら、鉢底から水が出てくるくらいたっぷり水やりをしましょう。

 また、根っこを伸ばせる範囲が限られているので、いずれ鉢植えの中が根っこでパンパンになってしまいます。
そうした場合は、株分けなどしてユキヤナギ自体を小さくするか、鉢を大きくして根っこを伸ばすスペースを広げてあげるのがおすすめです。

 鉢の底から根っこが伸びてきたり、水が土の中に浸透しなくなってきたり、ユキヤナギの成長が遅く、葉っぱの縁だけ枯れたりしてきたら、鉢の中で根っこがパンパンになってきているかもしれません。

植え替えのタイミングと方法

 ユキヤナギを植え替えする場合、10月または冬に葉っぱを落とした後に行うのがおすすめです。
葉っぱを落とした後に行う場合、できれば寒さが和らいできて芽吹く前くらいに行うのが良いです。

 鉢植えから大きな鉢植え、または地植えにする場合は、鉢から取り出した株をそのまま鉢植えか庭に掘った穴に入れて、元肥えとして肥料を混ぜた土で埋め戻します。

 すでに地植えしてあるものを別の場所に移植する場合は、少し難しくなります。
多かれ少なかれ根っこを切って植え替えることになりますが、根っこを切る量が多すぎると十分な水を吸い上げることができず、根付く前に枯れたり弱ったりするかもしれません。

 ユキヤナギは強い木なのでさほど神経質にならなくても大丈夫なことも多いですが、根っこを切った分枝も切って出ていく水の量を少なくしたり、あらかじめ根元周りの根っこを切って根元周りに根っこを出させておき、その後植え替え作業をしたりと、少し手間をかける必要があります。
根元から強剪定して枝葉が少なくなったタイミングで植え替えを行うということも可能です。

ユキヤナギを増やす方法

庭道具

 ユキヤナギは、いくつかの方法で増やすことができます。
花が咲いた後結実したのであれば種を植えて増やすこともできますが、これで成長するには少し時間がかかります。

 種を採らなくても、切った枝を使ったり、株そのものを切って2つに分けたりといった方法で増やすことも可能です。
ユキヤナギの枝を使って増やす方法についてご紹介します。

剪定で得た枝を使った挿し木の方法

 剪定で出た枝を使って、ユキヤナギを増やすこともできます。
やり方はシンプルで、切った枝を土に挿して根っこを出させ、十分に育ったら鉢などに植え替えるというものです。

 ポイントとしては、まだ緑の新しい枝は使わないこと、斜めに切って少しでも水を吸える面積を増やすこと、葉っぱはある程度落とすか切って、蒸散の量を減らすこと(根っこが無く、吸い上げる水の量にも限界があるため)、赤玉土や鹿沼土など無菌の土を使うこと、日当たりの強すぎない半日陰で育てることなどです。

 もともと流れの激しい渓流沿いなどに自生するユキヤナギは、挿し木も比較的よく根づきます。
切った枝の数だけ増やすことが可能なので、たくさん増やしてみましょう。

株分けの手順とポイント

 ユキヤナギは大きくなってきたら、株分けして増やすことができます。
やり方としては、冬の芽吹き前または10月ごろに根元から掘り上げ、這うように伸びている幹を切り離せば完了です。
その後、片方は植え戻してもう片方は別の場所か鉢植えに植え替えます。

 切り離す際は、分けた両方に十分な根っこがついている状態になっているかよく確認しておきましょう。

まとめ

ウグイスとユキヤナギの花

 ユキヤナギは強剪定にも耐えられる育てやすく強い木ですが、剪定するにあたって適したやり方や時期があります。
そこを外したからといって枯れない場合も多いですが、ユキヤナギの健康や花が咲く量に影響する場合があります。

 できることなら、ちょうど良い時期に剪定などの手入れを行うようにしましょう。
また、やり方が不安だったり、やる時間がないという場合は、smileガーデンなどの業者にお願いするのもおすすめです。

氏永 勝之
監修者 smileグループCEO
株式会社ガーデンメーカー 代表取締役
愛知農園植木苗木株式会社 専務取締役
一般社団法人ガーデンビジネス協会 代表理事
氏永 勝之

愛知県稲沢市生まれ。稲沢市が「日本四大植木産地」であることもあり、幼少期から植木に囲まれて成長。
東京農業大学卒業後、名古屋市内の造園会社に就職。公園の整備工事から国交省事業の国道整備工事における土木及び街路樹等の植栽工事に現場代理人として携わる。

執筆者 瀬尾一樹

樹木医です。木も草も大好きで、将来は自分だけの森を持ちたいと思っています。木の美しさや育てる楽しさだけでなく、生きものとしての生態的な面白さも伝えていきたいです!好きな木はケヤキです。