垂れた枝に、たくさんの花を咲かせるのが魅力的なしだれ梅。満開のしだれ梅は、まるで花のシャワーのようでとても美しいです。より多くの花を咲かせるためには、適切な剪定を行う必要があります。しだれ梅の剪定方法、時期などについてご紹介します。


自己流の剪定木が枯れるかも

目次

しだれ梅の剪定が必要な理由

しだれ梅と空

 しだれ梅を維持するためには、定期的な剪定が必要になります。剪定を行うことで、美しく花をたくさん咲かせるしだれ梅を育てることができます。
 どうして剪定が必要なのか、しっかりチェックしておきましょう。

美しい樹形を保つため

 しだれ梅は、長い枝が弓なりに垂れる樹形がとても魅力的です。美しい樹形を維持するためには、定期的な剪定で樹形を整えなければいけません。
 樹形を崩す枝を切るだけでなく、やわらかくよく垂れる枝を長く出すためにも剪定が大事です。

花付きを改善するため

 「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」ということわざがありますが、梅の花をたくさん咲かせるためには、自然樹形を維持するような木に比べて少し強めに剪定を行うことが必要です。
 適切な時期に適切な剪定をすることによって、たくさんの美しい花を咲かせることができます

剪定をしないとどうなる?

 剪定をしないで放置した場合、梅自体は多くの場合特に健康を損なわずに育つでしょう。しかし、樹形は野性味あふれる姿になり、花付きは剪定したものに比べて芳しくなくなります。
 梅の健康としてはその方が良いのだろうと思いますが、せっかく花を楽しむために植えているのにそれでは台無しですよね。美しい姿を楽しむためには定期的な剪定はしっかり行わなければいけません

しだれ梅の剪定に最適な時期

カレンダーの上に置かれたペン

 しだれ梅の剪定には、適切な時期があります。適切な時期はその剪定の目的によっても変わりますが、不適切な時期に剪定を行っても、良い効果が得られなかったり、逆効果だったりする可能性があります。どの時期に剪定を行うのが良いのか、しっかりチェックしておきましょう。

地植えの場合の剪定時期

 地植えでしだれ梅を育てる場合、基本的な剪定は2~4月ごろの、花が終わった後の剪定がおすすめです。
 それとは別に、12月~2月ごろのしだれ梅が落葉している間に、伸びすぎた枝を整理する剪定を行う場合もあります。また、夏の間にたくさん増えすぎた徒長枝を整理して内部に光や風を当てる剪定を行う場合もあります。
 それぞれの剪定の目的をしっかり理解したうえで、適切な時期に剪定を行うようにしましょう

鉢植えの場合の剪定時期

 鉢植えでしだれ梅を育てる場合も、行う剪定の時期は基本的に同じです。2~4月の花が終わった後に剪定を行い、12~2月に葉っぱが落葉している間に、徒長枝などを整理する剪定を行い、必要に応じて夏の間に徒長枝を剪定して内部に光や風を当てる剪定を行う、といった形です。

花後に剪定する理由

 しだれ梅に限らず梅の花芽は、夏から秋の間につくられるとされています。そのため、花が終わった後に剪定するのが、最も花芽を落とさず樹形を整えることができるチャンスだというわけです。

 また、梅は冬の間に花が咲くものが少なくないので、芽吹く前の木に最も負担がかからない時期に剪定ができます。仮に晩秋や冬に花後の剪定のような骨格を作るような剪定を行ってしまった場合、多くの花芽が落ちてしまい、ほとんど花が咲かなくなるでしょう。

夏に剪定を行う場合

 基本的に、真夏は木の貯蔵養分などにあまり余裕が無く、剪定に適さないと言われる時期です。しかし、しだれ梅は春の花が終わったあとに剪定を行う関係で、勢いの良い徒長枝がたくさん伸びます。
 梅の花芽がつくのは枝の途中から伸びた短い枝で、これらの徒長枝には基本的に花芽がつきません。そのため、勢いの良い徒長枝にばかり光が当たり、肝心の花芽をつける短い枝にはろくに光が当たらず、風通しも悪いというようなことが起こりうるのです。

 そうした事態を防ぐために、徒長枝がたくさん出ている場合、夏に剪定して内部の枝に光や風を当てる剪定を行う場合があります。
 枝が垂れてしまうしだれ梅の性質上、状態がわかりづらいかもしれませが、勢いの良い徒長枝に木が覆われているような状態の場合は、それらの枝を一度切ってあげてみてもよいかもしれません。特に夏の間は来年の花芽をつくる大事な時期なので、しっかり花芽のつく枝を育てる必要があります。

しだれ梅の剪定方法とコツ

並んだ剪定ハサミ

 しだれ梅の花を咲かせるためには、適切な方法で剪定を行う必要があります。多少失敗しても問題ないことが多いですが、しっかり花を咲かせるためにどんな方法で剪定を行なえば良いのか、チェックしておきましょう。

基本的な剪定の手順

 剪定の手順としては、まず全体を見てどの枝をどこまで切るのか決め、その後、時々いったん引いて全体を見ながら、バランスが崩れないように剪定を行う、その後必要に応じて切り口保護材の塗布などを行い、最後に切った枝葉などの片付けというものになります。
 手順自体は複雑なものではなく、どこをどう切るかというところに技術の差が出てくるのですが、いきなり枝を切り始めるとバランスが悪くなってしまうので、最初に全体を見るという工程は意外と大事です。

地植えの場合の剪定のポイント

 庭に地植えしてあるしだれ梅を剪定する場合、花が終わった後の剪定は、徒長した枝を途中の、芽のすぐ上の箇所で切り詰めます。
 そうすることにより、その後花芽をつける短い枝がたくさん出て、多くの花を咲かせるようになります。ただし、枝を付け根から切ると再び徒長枝が出るだけになるので注意が必要です。

 その後、夏に剪定する場合は、短い枝の上を覆っている勢いの良い徒長枝を切って、中の枝に光や風を当てるようにしましょう。冬に剪定する場合も、夏の間に伸びた徒長枝を整理したり、混んだ枝を付け根から切ることで、樹形を整えます。

 また、地植えしている場合は、木がかなりの高さになる場合もあります。そうした場合は、脚立や高枝切りばさみなどを使って剪定を行うことになりますが、特に脚立を使う作業はとても危険なので、二人以上で行うか決して無理をしないように気を付けましょう。不安があれば、木に登って作業ができるプロの業者に依頼するのがおすすめです。

鉢植えの場合の剪定のポイント

 鉢植えの場合も、地植えの剪定と基本的にやり方は変わりません。強いて言うなら、木を大きくしすぎると根っこが鉢の中でギチギチに伸びて成長が悪くなる可能性があるため、鉢の大きさに合った大きさに、剪定によって調整するのが大事です。
 それ以外は地植えの場合と変わらず、花が終わった後に徒長した枝を途中で切り詰め、夏に必要に応じて徒長枝を切って内部の枝葉に光や風を当て、冬に混んだ枝や徒長枝の整理を行うといった形です。

樹形を美しく整えるコツ

 しだれ梅は長い枝がシャワーのように弓なりになるのが魅力的です。美しい樹形を維持するためには、混んだ枝や他の枝と逆方向に伸びているような枝などを優先的に切って、樹形が崩れないようにします。
 また、花が終わった後に枝を切り詰める際や、冬に枝を整理する際など、枝の途中の芽が外側を向いている位置で切るようにしましょう。そこから枝が伸びて、外側に枝が伸びる美しい樹形になります。

剪定に必要な道具

 剪定に使う道具には、様々なものがあります。それぞれ色々な種類が販売されており、性能もピンキリです。しだれ梅の剪定にはどんな道具が必要なのか、ご紹介します。

剪定バサミ

 剪定ばさみは、しだれ梅の剪定を行うにあたって必須の道具です。梅の剪定は太めの枝を切ることが多いので、太い枝を切りやすい、刃がカーブしたものを選ぶと良いでしょう。
 木ばさみと呼ばれる、持ち手が大きくて刃がまっすぐで小さいものもありますが、こちらは細かい枝を剪定するのに向いているので、梅の剪定なら剪定ばさみがおすすめです。基本的には、これを使って枝を切っていくことになります。

ノコギリ

 ノコギリは、樹高を一気に低くしたい場合や、剪定ばさみではどうしても切れない太枝を切る場合に使用します。
 しかし、ノコギリではないと切れないような太い枝を切る場合、間違いなく木に負担がかかるし、切り口保護材を塗ったところで病害虫の侵入は防げないので、基本的には使わないのがおすすめです。

 梅は剪定する機会が多く、幹を腐らせる菌が入る機会が多いので、木が健康でも幹はボロボロ、という状態はよくあることですが、ノコギリを使うことでその状態がさらに悪化することが考えられます。基本的には太い枝を切ること自体あまりしない方が無難です。
 また、剪定ばさみでも、刃の進むのと同じ方向に枝を曲げながら切れば、ノコギリを使わずともかなりの太さの枝まで切ることができます。

脚立

 高いところの枝を切りたいときは、脚立も必要になります。脚立に乗りながら、剪定ばさみで枝を切るイメージです。高枝切りばさみでも、ある程度代用することができます。
 脚立は、死亡例もたくさんある意外と危険な道具です。脚立に乗っていて作業する際に脚立が倒れ、その先に何か物があると、大惨事になる可能性があります。
 脚立を使う場合は、可能であれば二人以上で作業を行うようにしましょう。また、仕方なく一人で使用する場合も、最上段には立たないなどの配慮をするのがおすすめです。

しだれ梅の花を咲かせるための剪定方法

枝垂れ梅の花 ピンク

 しだれ梅は、剪定によりたくさんの花を咲かせるようになります。特に花が終わった後に行う剪定が大事で、ここでの剪定のやり方次第で、花付きは大きく変わります
 どのように剪定をすれば花付きがよくなるのか、しっかりチェックしておきましょう。

花が咲かない原因とその対策

 しだれ梅の花が咲かなくなることには、いくつかの原因が考えられます。一つは、勢いが良い徒長枝ばかりになってしまっていること。
 梅の場合、基本的に徒長枝には花芽がつきません。枝の途中から短く伸びた枝に花芽がつきます。徒長枝が出るのは、強剪定や、窒素肥料のあげすぎなどが原因であることが多いです。短い枝を残さず、徒長枝ばかり育てていると、ほとんど花が咲かなくなってしまいます。

 もう一つ考えられるのは、枝を切りすぎという原因です。梅は剪定により花付きが良くなるというものの、当然花芽を落としてしまえば花は咲きません。夏から秋に翌年の花芽ができた後、花が咲くまでに強剪定してしまうと、花芽が落ちてしまいます。

 これらの対策として、剪定の時期を正しく把握し、花芽をたくさんつけさせるための剪定は花が終わった後だけにとどめることと、枝を切り詰める場合は徒長枝がなるべく出ないように枝を根元から切らないようにすることと、夏から秋に翌年の花芽がつくられる際に、徒長枝が木を覆っている形になっていたら、それらを切って花芽がつく枝に光や風を当てることが大事です。

花付きが良くなる枝の切り方

 しだれ梅の花付きを良くするためには、枝の切り方に気を付けることが大切です。花が終わった後には、長く伸びた枝を途中まで切り詰めます。それにより、花芽のつく短い枝が出て、翌年たくさん花が咲きます。
 このときに枝の付け根から切ってしまうと、そこから再び徒長枝が伸びるだけになってしまうので注意しましょう。
 また、翌年の花芽ができる夏から秋の間には、木の外側を覆うように生える徒長枝を切ってあげると、内部の花芽がつく短い枝に光や風があたり、たくさん光合成をして花芽を増やすことができます

花を増やすための特別なケア

 剪定方法以外に花を増やすための方法としては、適切に肥料を与えることや、木が元気に育つような環境づくりなどがあります。
 それぞれ後述しますが、適切に肥料を与えることで花付きが良くなるし、木が健康に育っていればそれだけ光合成ができて、花芽をつけることができるので、花芽がたくさんつきます。

 「プロだけが知っている魔法の薬や、特別な手入れの仕方」なんて都合の良いものは基本的に無いと思って良いです。コツくらいならあるでしょうが、そうしたものは剪定を通じて色々なことを理解したうえで行うもので、まずは基本的なことを欠かさないのが大切です。

しだれ梅のお手入れ方法と育成ポイント

木と聴診器

 しだれ梅を育てるためには、剪定以外にもいくつか手入れの作業があります。
 いずれも、しだれ梅を健康に育てることだけでなく、花付きを良くすることにも関わってきます。どんな手入れをすれば良いのか、しっかりチェックしておきましょう。

適切な水やりと肥料の与え方

 水やりを行うのは、基本的に鉢植えの場合です。地植えで育てる場合は、基本的に水やりを行う必要はありません。
 ただし、植え付けや植え替えをした直後は庭の土にしっかり根がついていないので、暖かい時期で1週間~1か月ほど、土の表面が乾いたらたっぷり水やりを行います。それ以外の時期は、真夏によほど雨が降らずに乾燥し、葉っぱが明らかに垂れているような場合でなければ基本的に必要ありません。

 鉢植えの場合だと、根っこを伸ばせる範囲に限界があるので、土の表面が乾いたら鉢の底から水が流れ出るくらいたっぷり水やりをするようにしましょう。
 肥料については、夏の間に追い肥としてリン、カリ主体の肥料を与えます。その後、冬に寒肥として鶏糞や堆肥などの有機質肥料を与えるのがおすすめです。窒素肥料を与えすぎると、徒長枝が増えて花があまり咲かなくなる場合があるので注意しましょう。

日当たりや風通しの重要性

 梅は、明るい場所が好きな木です。そのため、健康に育つには日当たりの良い場所に植える必要があります。他の木や建物などで日陰になってしまうと、成長が悪くなるだけでなく花付きが悪くなる場合もあるので注意しましょう。
 また、枝が垂れるしだれ梅の特性上、たくさん徒長枝が伸びると、木の外側に徒長枝が覆いかぶさっているような状態になります。

 徒長枝に覆われている内側の枝には、日も当たらないし風通しが悪く蒸れてしまう状態になり、健康に育ちません。花芽がつかないどころか、内側の枝が枯れてしまう可能性もあるでしょう。
 そのため、花芽がつく短い枝にはしっかり日や風が当たり、たくさん光合成できるようにしておくのがおすすめです。

害虫被害を防ぐための対策

 しだれ梅の生育には、病害虫の被害を防ぐことも重要です。剪定により風通しを良くするなどの対策がまず取れると思いますが、それ以外にも、毎日よく様子を見ておくことも重要です。
 変化にいち早く気づければ、病害虫による被害も最小限で済ませることができます。放っておくと取り返しがつかないくらい繁殖する害虫もいるので、できるだけ早く対処することが、被害も手間もお金も少なく済む方法です。

難しい剪定は業者に依頼するのも一つの選択肢

剪定作業をする職人

 しだれ梅の花をたくさん咲かせるためには、適切な時期に適切な剪定を行う必要があります。実際にやってみて慣れるまでは、難しいと感じる方が多いのではないかと思います。
 剪定するのが不安だという場合は、一度プロの剪定業者に依頼してみるのもおすすめです。一度プロの技を見て、色々質問などしてみることで、自分でもやってみる気になるかもしれません。ぜひお気軽にご相談ください。


自己流の剪定木が枯れるかも

氏永 勝之
監修者 smileグループCEO
株式会社ガーデンメーカー 代表取締役
愛知農園植木苗木株式会社 専務取締役
一般社団法人ガーデンビジネス協会 代表理事
氏永 勝之

愛知県稲沢市生まれ。稲沢市が「日本四大植木産地」であることもあり、幼少期から植木に囲まれて成長。
東京農業大学卒業後、名古屋市内の造園会社に就職。公園の整備工事から国交省事業の国道整備工事における土木及び街路樹等の植栽工事に現場代理人として携わる。

執筆者 瀬尾一樹

樹木医です。木も草も大好きで、将来は自分だけの森を持ちたいと思っています。木の美しさや育てる楽しさだけでなく、生きものとしての生態的な面白さも伝えていきたいです!好きな木はケヤキです。

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