大きなハイビスカスのような花を次々に咲かせるムクゲは、庭木として非常に魅力的です。
樹形を整えながらたくさん花を咲かせるために、正しいやり方の剪定をしたいですよね。
ムクゲの剪定方法や時期などをご紹介します。
目次
ムクゲの剪定は本当に必要?
極端な話をすると、必ずしもムクゲの剪定は必要ではありません。
多少品種改良などされているにしろ、ムクゲは元々自然の中で生きてきた生き物です。
森の中に生えている木は、ふつうは人によって剪定されることはありませんよね。
剪定によって切り取る枝や葉っぱは、ムクゲが光合成して生きていくための器官なので、むしろ剪定は多かれ少なかれムクゲにダメージを与えるものです。
大きさを抑えるのも美しい樹形を保つのも、基本的には人の都合で行うものです。
そのため、ムクゲが健全に生きていくためには、基本的に剪定は必要ありません。
しかし、人の住む庭にムクゲを植えるにあたって、そのまま野放図にムクゲを大きくするわけにもいきません。
大きくなりすぎないように、あるいは美しく樹形を保つために、多くの場合剪定は必要になってくるでしょう。
小さくまとめるように剪定すると枝が密に芽吹くようになることがあるので、風通しを良くするための剪定も必要になってきます。
いずれにせよ、剪定は必ず何かしらの目的を持って行います。
人が髪や爪を切るように、必ずしも定期的に行わなければいけないという性質のものではありません。
大きさを抑えたいとき、樹形を美しく整えたいとき、風通しが悪く病害虫が発生しているときなど、必要に応じて剪定を行うようにしましょう。
ムクゲの剪定に適した時期とは
ムクゲの剪定は、11月から3月にかけての、葉っぱが落ちている時期に行うのがおすすめです。
春から秋にかけて行う場合は、全体をまんべんなく剪定するようなことはせずに、どうしても気になるところだけの剪定に留めるようにしましょう。
冬に剪定する理由
ムクゲは、5〜8月くらいの間に次々と花を咲かせます。
花をつけるのは、基本的にその年に芽吹いて伸びた新しい枝です。
そのため、開花している時期や春先などに剪定を行うと、せっかくつけた花芽も一緒に剪定してしまう可能性があります。
逆に、花の時期が終わってから次の枝葉が芽吹くまでの間であれば、いくら剪定しても大丈夫です。
特に、葉っぱが落ちて休眠している時期であれば、ムクゲへの負担も少ないまま剪定を行うことができます。
頻繁に気温が氷点下まで下がる地域の場合、できれば本格的な寒さが来る前か寒さが和らいできた春前などに行うと、切り口が凍結して壊死する心配が少ないため、よりおすすめです。
ちょっとだけ気になる部分の剪定をする程度なら他の時期でも構いませんが、ムクゲの骨格を形づくるような剪定を行う場合、冬に行うようにしましょう。
ムクゲの剪定方法と手順
ムクゲの剪定には、やり方があります。
正しく剪定することで、ムクゲになるべく負担をかけず、より美しく樹形を保つことができます。
ムクゲ自体が丈夫な木なので、多少普通とは違うやり方で剪定を行っても、枯れるようなことは少ないです。
しかし、正しいやり方で剪定しておくに越したことはありません。
剪定前に準備する道具
剪定を行う前に、道具を準備しましょう。
まず必要なのは、剪定バサミや木バサミといった枝を切る道具です。
生垣のように決まった形に刈り込みたいのであれば、刈り込みバサミなどがあっても良いでしょう。
手を守るための軍手もあった方が良いです。
自分の手では届かないような高さの場合は、脚立や高枝切バサミなども役立ちます。
枝を掃除するための、ほうきや熊手、ちりとりなどもあると良いでしょう。
もし太枝や幹を切る場合は、切り口保護剤などを用意しておくのも良いです。
ただし、これを塗ったからといってどんな菌の侵入も防げるかというとそんなこともないので、留意しておきましょう。
どの場面でも必要なものとしては、剪定バサミなどの枝を切るハサミ類と軍手くらいのものですが、状況によって様々な道具が必要になります。
ムクゲの剪定手順
ムクゲをどのように剪定するかは、どんな方法を取るかによって変わってきます。
刈り込み剪定を行う場合、まず刈り込む枝の長さを決めてから、それに沿って刈り込みバサミなどでザクザク刈り込みます。
ずっと作業していると、刈り込み量にムラが出ているのに気づかず作業を進めてしまうので、時々少し離れて全体の形を見て、バランスが取れているか確認しながら作業を行うようにしましょう。
また、四角く刈り込む場合など、日がよく当たる上側のほうが成長が良くなることがあるので、上側をやや強めに刈り込んで台形のような形にしておくとバランスが崩れにくいです。
自然樹形を保ちたい場合、「枝抜き」「切り戻し」「切り詰め」の順で行うのがおすすめです。
刈り込み剪定と同様にまずは全体の形を見て、どのように仕上げたいか考えます。
その後、混んでいる枝やバランスの悪い枝などを付け根から抜き取るように剪定します。
その後、短くしたい枝に対して、枝分かれの付け根から切る切り戻しを行います。
これにより、樹形を保ったまま枝を短くすることが可能です。
最後の切り詰め剪定は、枝を途中から切って短くする剪定なのですが、こちらはやる必要がなければやらなくても構いません。
枝が突き出た形で残って危ないことと、見た目もあまり良くないためです。
切り詰め剪定は、切り戻し剪定がどうしてもできない枝などに対して行います。
これらの工程も、刈り込み剪定と同じく時々離れて全体を見て、バランスが崩れていないか見ながら行います。
枝の選び方と剪定のポイント
自然樹形を目指す場合、最初に枝抜きを行う枝は、枝が密に茂っていて風通しの悪くなっている場所や、他の枝と反対側に伸びるなどして樹形を崩す枝などをまず最初に選んで切るようにします。
枝抜きでも切り戻しでも、切るときは枝分かれの付け根から切るのがおすすめです。
そうすることで、傷が比較的素早くふさがり、見た目が悪くなくなるだけでなく、病原菌などの侵入も防ぎやすくなります。
枝を中途半端に残して切ってしまうと、そこが枯れたままいつまでも残り、病害虫の侵入口として残ってしまうので良くありません。
逆に幹をえぐるように切ってしまうのも、幹に病原菌が入ってしまって危険です。
枝の付け根がわずかに膨らんでいる場合、そこは幹の組織の一部である可能性がある(ブランチカラー)ので、残したほうが傷がふさがりやすくなります。
剪定後の手入れ方法
剪定したあとは、もし親指より太いくらいの太枝を切った場合、ペースト状の切り口保護剤を塗っておくと良いでしょう。
これにより、病原菌などの侵入をふせぎやすくなるとともに、ものによっては切り口をムクゲ自身がより早く修復するようになります。
ただし、これらは菌の侵入を必ずしも防げるわけではないことに注意しておきましょう。
また、腕より太いような幹や枝を切った場合は、切り口保護剤を塗っても気休めにしかなりません。
太枝自体をなるべく切らないようにするのが無難です。
また、強剪定して多くの枝葉を失った場合、新たな芽吹きにムクゲが大きなエネルギーを使って弱ってしまいます。
そうしたタイミングで肥料などを与えるとかえって弱ってしまうことがあるので、肥料を与えないか与えるにしてもいつもより控えめにするなどしておいたほうが良いでしょう。
直射日光が長時間当たる場所などでは、新たな枝葉が育つまで寒冷紗などで日の光をやわらげておくのもおすすめです。
通常の細枝だけを切る剪定の場合、剪定後になにかしておくようなことはありません。
ムクゲの剪定で失敗しないポイント
ムクゲの剪定を行う場合、何のために剪定を行うのか考えてから行うと失敗しづらいです。
木は元々自然の中で生きていた生き物なので、必ずしも人による剪定が必須というわけではありません。
人の生活空間に木を植える以上しっかりとした管理をしなくてはいけないのですが、枝を短くするのも樹形を美しくするのも、基本的には人間の都合によるものです。
人が髪や爪を切るような感覚で時期が来たから剪定を行うのではなく、大きさを抑えるためなのか、風通しを良くするためなのか、樹形を美しくするためなのか、自分の中で目的をはっきりさせておいた方が失敗しづらいです。
目的がはっきりしていれば、どんな枝をどれくらい切れば良いのか、何も決めていない時に比べれば自ずとわかってくるはずです。
こうしたサイトや本などで紹介されている剪定の仕方はあくまで一例で、あなたの庭の環境やこうしたいという理想、ムクゲの状態に合った剪定の仕方があるということに留意しておきましょう。
不要な枝の見分け方
自然樹形を目指す場合、あまり良くないとされる枝を優先して切ると樹形が整いやすいです。
不要とされる枝には様々なものがありますが、他の枝とは反対方向に伸びているもの、他の枝と同じ方向に伸びているが近い位置に重なって伸びているもの、まっすぐ上に伸びているものなどが樹形を崩す枝として挙げられます。
共通することは、「他の多くの枝とは違った方向に伸びているもの」「高い密度で伸びているもの」といったことなどです。
こうした枝を優先して切るようにしましょう。
剪定時の安全対策
剪定を行う際には、安全対策を行う必要があります。
剪定作業は刃物を扱う性質上、危険がつきものだからです。
基本的なところとしては、必ず軍手をして作業を行うというところで、これにより自分の手を誤って切ってしまうケガを減らすだけでなく、飛び出た枝などによるケガも防ぐことができます。
高い位置の枝を切る際に、脚立を使うことがありますが、脚立は非常に危険な道具です。
転落による死亡事故なども起こっています。
一番上の段には立たない、可能であれば二人以上で作業するなど、気をつけて扱うようにしましょう。
また、長い枝を途中で切り詰めると、剪定後に枝が外に突き出た状態になって危険です。
切り詰め剪定自体を極力避けて枝分かれの付け根から切るようにすることと、剪定後に一度全体を見て、危険な枝を切るようにするのがおすすめです。
ムクゲを庭木として育てる場合
ムクゲは庭木として地植えされることが多いです。
大きく育てる場合もあれば、手の届く高さで抑えておくこともあります。
形も、丁寧に剪定して自然樹形を残すこともあれば、一律に刈り込んで決まって形に仕立てる場合もあります。
庭木としてのムクゲの楽しみ方は様々です。
庭木としてムクゲを育てる場合の注意点についてご紹介します。
庭木に適した高さと形
庭木として育てる場合、手の届く2mくらいの高さまでに押さえておくのがおすすめです。
それ以上の高さになると、剪定するのに脚立や高枝切りバサミが必要になり、剪定に危険が伴う上に作業もしづらいです。
もし、もともと2m以上の高さになっているという場合は、思い切ってちょうど良い高さで幹を切ってしまうというのも一つの手です。
一時的に樹形が崩れるかもしれませんが、樹高はある程度までは年々高くなりますし、毎年大変な思いをしながら枝を切ると考えると、どこかのタイミングで切ってしまったほうが長い目で見て良いかもしれません。
木の種類によっては幹ごと切る強剪定で枯れてしまう可能性もありますが、ムクゲはよほど負担のかかる時期に切るか、弱っているときに切るかしなければいずれ樹勢は復活することが多いです。
強剪定によって入る木材腐朽菌も、多くは樹勢には影響を与えないので、そこまで心配しなくても良いでしょう。
とはいえ全くリスクがないわけでは無いので、時期や切る高さなどは慎重に決めましょう。
形に関しては、自然樹形か決まった形に刈り込むかといったところになりますが、これは自分の好みに合わせておけば問題ありません。
一律に刈り込む方が楽ではありますが、庭の雰囲気や自分の好みにあった仕立て方をするのが良いでしょう。
ムクゲを鉢植えで育てる場合
ムクゲは、鉢植えとして育てることもできます。
庭に地植えして育てる場合と比べて、メリットやデメリットなど様々です。
鉢植えにした方が良いことがある場合もあります。
鉢植えでムクゲを育てる場合の注意点などについてご紹介します。
鉢植えのメリットとデメリット
ムクゲを鉢植えとして育てる場合、メリットとデメリットがそれぞれあります。
メリットとしては、大きさを抑えやすいこと、移動がしやすいことなどが挙げられるでしょう。
庭に地植えすると根っこがどこまでも伸びるので、鉢植えで育てるよりも大きくなりやすいです。
また、鉢植えで育てる場合は、引っ越しなどで移動が必要になったとき遥かに対応しやすいです。
庭に地植えする場合、植え替えるとなったらただ掘り上げれば良いだけではなく、根回しや調整の剪定など大変な作業が必要になります。
また、掘り上げる作業自体も非常に大変です。
ムクゲを鉢植えで育てる場合のデメリットとしては、大きくなりづらいこと、鉢増しや水やりなど、定期的に行わなければいけない手入れの量が増えることなどが挙げられます。
大きくしたくないなら鉢植えで育てたほうが良いですが、逆に大きくしたい場合は地植えしたほうが良いです。
鉢植えだと根っこを伸ばせる範囲が限られていて、必然的に養分の量も限られるので、地植えする場合と比べてなかなか大きくなりません。
同じ理由で、根っこを伸ばせる範囲が限られているため、地植えする場合のように雨水だけでは水の量が足りずにしおれて枯れてしまう場合があります。
また、育てていくうちに鉢の中が根っこでパンパンになってしまい、定期的に大きい鉢に植え替えなければいけません。
そうした定期的な水やりや植え替えなどの手間が増えることはデメリットと言える場合もあるでしょう。
植え替え手順と注意点
鉢植えで育てる場合、定期的に植え替えが必要になります。
根っこが鉢の中でパンパンになって、これ以上根っこが伸ばせなくなるためです。
植え替えが必要になるサインとしては、鉢に水が浸透しづらくなる、鉢の底から根っこが出る、ほとんど成長しなくなる、葉の縁だけ小さく枯れてくる、などがあります。
そうしたサインが見られるようになってきたら、少し大きい鉢に植え替えるか、地植えして育てる方法に切り替えるかするのがおすすめです。
手順としては、鉢から株を取り出し、混み合った根っこを少しほどいたり切ったりします。
その後、少し大きな鉢に土と元肥としてのたい肥などを混ぜたものを入れ、そこに取り出した株を入れ、隙間の無いように土を詰め、水をあげたら完了です。
地植えして育てる方法に切り替える場合は、鉢ではなく庭に穴を掘り、元肥としてのたい肥などを入れた土で埋め戻します。
その後、ホースなどで勢いよく水を根の周りにかけると、根っこに土が密着して根付きやすくなります。
もともと地植えしていたものを別の場所に植え替える場合は、根回しなどの手順が必要になり、失敗する可能性も高くなるので、専門の業者にお願いしたほうが良いでしょう。
ムクゲの花が咲く育て方
ムクゲは、次々に大きな花が咲くことが魅力の一つです。
しかし、育てているとなぜか花が咲かないという場合もあります。
ムクゲが花をなかなか咲かせない理由や、たくさん花を咲かせるための育て方についてご紹介します。
花が咲かない原因と対策
ムクゲは、育て方によってはなかなか花が咲かないことがあります。
原因として考えられるのが、まだ花を咲かせられるほど成長していないということと、できた花芽を切ってしまっているということです。
花を咲かせるほどの元気がないということも考えられます。
ムクゲが花を咲かせるまでにはある程度の大きさまで成長しなければいけないので、小さすぎる苗では花が咲きません。
大きくなるまでは剪定をなるべく控えて、大きくなるまで持つようにしましょう。
かなり大きくなっているのに花を咲かせないという場合は、花芽を切ってしまっている可能性が考えられます。
ムクゲの花芽は、その年伸びた新しい枝に付けるので、春から夏にかけて剪定を行うと、せっかくできた花芽ごと枝を切ってしまい、花が咲かなくなるかもしれません。
剪定は秋から冬の葉っぱが落ちている間に行うようにしましょう。
美しい花が咲く手入れのコツ
美しい花を咲かせるためには、ムクゲ自身が元気でなければいけません。
剪定はしすぎず、病害虫に適切に対処し、ムクゲがよく育つ日当たりや豊富な養水分など、ムクゲの育ちやすい環境にしてあげることが大事です。
また、肥料を与える場合、窒素肥料が多いと花が咲きづらくなる場合があるので注意しましょう。
愛知県稲沢市生まれ。稲沢市が「日本四大植木産地」であることもあり、幼少期から植木に囲まれて成長。
東京農業大学卒業後、名古屋市内の造園会社に就職。公園の整備工事から国交省事業の国道整備工事における土木及び街路樹等の植栽工事に現場代理人として携わる。