初夏に甘くて美味しい実をつけるビワの木。育てていると、手入れの方法や育つ環境などによってはなかなか実がならないこともあります。ビワの木に実がならない理由や、手入れの方法などをご紹介します。
目次
ビワの木に実がならないのはなぜ?
ビワの木は、ある程度大きくなると、秋の終わりから冬の始まりごろに白い花を咲かせ、初夏ごろにオレンジ色の実がなります。しかし、手入れのやり方や育つ環境などの影響で、なかなか花が咲かない場合も多いです。
そうした場合、いくつかの原因が考えられます。それらの原因を取り除いたり改善したりすれば、実がなるようになるかもしれません。実がならない原因について、あてはまるものがないかチェックしてみましょう。
お世話のやり方を見直す
ビワの木のお世話の仕方によっては、かえってビワの木に実がなりづらくなってしまう場合があります。お世話のやり方によってビワの木が花芽を失ってしまったり、生育に悪影響を与えてしまったりするためです。
ビワの木に限らず、植物を育てていると何かと手をかけてやりたくなってしまいますが、それが逆効果になってしまうことや、何もしない方がよく育つような場合もあります。お世話の仕方に心当たりがないかチェックしてみましょう。
剪定のやり方に問題がある
剪定のやり方に問題があるかもしれません。ビワの木は、枝先に花を咲かせます。そのため、花芽がすでにできた状態で枝先を切り戻す剪定や、枝葉の量を減らす剪定をしてしまうと、来年の実になる部分を落としてしまっている可能性があります。
また、ビワの木は一枚一枚の葉っぱが大きく分厚いため、剪定により想定していたよりたくさんの枝葉を落としてしまうこともあります。ビワの木は他の植物と同様に光合成を行うことで成長しているので、剪定により光合成するための葉っぱを失いすぎると、なかなか成長することができません。
そのため、多くの枝葉を落とすような剪定を続けていると、光合成する量が足らずに花や実をつけるほどの余裕ができない可能性もあります。
剪定は限られた庭のスペースで作業性を高くしながらビワの木を維持するのに必要なことですが、そのやり方はビワの木になるべく負担がかからないようにしなければいけません。もし剪定のやり方について心当たりがあれば、そこを改善すると実がなるようになる可能性があります。
ビワの木の花芽形成時期
ビワの木は、7月から8月ごろにかけて花芽をつくります。そのため、そこから花が咲くまでの間に剪定してしまうと、せっかくできた花芽を切り落としてしまうかもしれません。そうなってしまうと、ビワの木はとても健康なのに全く花や実がならないという状態になってしまう可能性があります。
そのため、その時期に剪定を行う場合は、花芽がすでにできている、もしくはできつつあることを考慮して、なるべく枝の先端を切り戻す剪定はしないなど花芽を落とさないような剪定をしましょう。時期によってはつぼみのような状態で花芽が出ている場合もあるので、その場合はそれを避けて剪定しましょう。
また、花芽をつくる7〜8月に、ビワの木が花芽をつくれるような状態になっていないと、花芽がつくられない可能性があります。花芽ができていないからといって強剪定してしまうと、花芽を作る時期になってビワの木が強剪定からの回復に精一杯で、花芽をつくれるほどの余力がない、という状態になるかもしれません。
肥料不足
ビワの木に限らず、植物は成長に必要な土の栄養分がどれか一つでも足りていないと、その他の栄養分がいくらあっても成長が止まってしまうという性質があります。そのため、花や実をつけるために必要な栄養分が足りていないと、実がならない可能性があります。
そうした状態は、土を肥えさせるための肥料が適切に与えられていれば改善できることが多いです。土が痩せていて、花や実がつかないだけでなく成長そのものがあまり良くないような場合は、肥料のあげ方を変えることで改善できるかもしれません。
ビワの木が実をつけやすいお世話の仕方
ビワの木の手入れのやり方を変えると、実をつけるようになる可能性があります。やり方のイメージとしては、ビワの木に実がならない原因を推測して、最も大きそうな要因を見つけて改善していき、改善されなければ別の原因を探る、というものです。
では、ビワの木が実をつけるためにはどのような手入れをするのが良いのでしょうか。ビワの木に実をつけるための手入れの方法についてご紹介します。
剪定のやり方
ビワの木は、果実の収穫後に骨格を整える剪定と、9月下旬ごろに花芽を確認しながら混み合った枝などを整理する剪定を行うのがおすすめです。
ビワの木はそのまま成長するととても大きくなります。そのため、放っておくと実がなったとしても位置が高すぎて収穫できないおそれがあります。他の木の枝などが覆いかぶさらないようにするなど日当たりを充分確保したうえで、上に伸びる枝を適宜切っておくようにしましょう。
また、太い枝を切ると病気が入りやすくなるので、太い枝をバッサリ切るのではなく、邪魔な方向に伸びそうな枝などは枝が細いうちに数年後に太くなることを見越して、枝を切るのがおすすめです。葉っぱも花芽も枝先に集まってつくので、枝先から切り戻す剪定はなるべく控えましょう。
9月下旬ごろ行う剪定では、枝先には既に花芽がついている時期なので、花芽を切らないように注意しながら行います。枝の混み合った部分を透いて風通しを良くし、他の枝と反対方向に伸びている枝など、樹形を崩す枝を切って整えます。
いずれの剪定でも、枝葉の大半を失うような強剪定は控えましょう。果実の収穫後に行う剪定でも、強剪定するとそこからの回復に時間がかかり、その後の花芽をつくるほどの余裕ができない可能性があります。
肥料のあげ方
ビワの木に肥料を与える場合は、様々なやり方があります。あくまで一例ですが、開花後の2〜3月ごろにたい肥などの有機質肥料を与え、果実の収穫後の6〜7月にお礼肥えとして化成肥料を与えるという方法があります。
与える量や与える方法は肥料の種類や木の大きさなどによっても変わるので、与える肥料のパッケージに書いてある説明書きを参考にして与えるのがおすすめです。肥料をたくさん与えすぎると、「肥料焼け」といってかえってビワの木が枯れる原因になってしまうので注意しましょう。
水のあげ方
ビワの木は乾燥を嫌います。そのため、雨が長期間降らない場合や、乾燥しやすい環境の場合などは、少し気を使う必要があります。ただし、庭に地植えしている場合、環境が悪くなければ基本的には植え付け時に根付くまでは土が乾き次第たっぷり水を与えますが、それ以降は水を与えなくても大丈夫です。
根付いてからも毎日のように水を少しずつ与えていると、土の表面だけ常に湿った状態になり、根っこが地表に集まることで、かえって乾燥に弱くなってしまうといわれています。日当たりが強すぎるなどの原因で土が乾燥してしまったり、真夏に長期間雨が降らなかったりする場合であれば、様子を見つつ時々水を与えてみると良いでしょう。
鉢植えの場合は、根っこを伸ばせる範囲が限られているため、土の表面が乾き次第鉢底から水が出てくるまでたっぷり水を与えるようにします。
摘果を行う
ビワに実がなるようになったら、つぼみや花、育ちかけの実を摘み取る摘果(または摘蕾、摘花)を行うのがおすすめです。花や実の数を減らすことで、残った実に栄養が集中して大きな実ができるようになります。
いつごろどれくらい摘み取れば良いかは品種や摘み取るもの(つぼみ、花、実)などによっても変わりますが、育ちかけの実を摘み取る摘果の場合、作業は3月下旬〜4月上旬ごろ行い、房ごとに1〜4果くらいにするのがおすすめです。
ビワの木に適した生育環境でない
ビワの木には、周囲の環境によって育ち方が変わる場合があります。ビワの木を植えてから長い年月が経っていても、その年数に見合うだけビワの木が生育できていなければ、実がなりません。ビワの木を育てている庭を、ビワの木が育ちやすい環境に変えてあげることで、ビワの木の生育が良くなって実をつけるようになる可能性があります。
庭の環境がビワの木の生育に適しているか、見直してみましょう。
日当たりが良すぎて乾燥している
ビワの木は日当たりの良い環境を好みますが、あまりに日当たりが良く、土が常に乾燥しているような環境ではよく育ちません。
庭のビワの木を植えている環境はどのような状態でしょうか。日当たりや水分条件を改善してあげれば、ビワの木がよく育ち、実をつけるようになるかもしれません。
日当たりが悪すぎる
いくら乾燥していなくても、日当たりが悪すぎるとビワの木はよく育ちません。ビワの木はあちこちで野生化している状態が見られますが、それらは森の端っこや街路樹の木陰のような、半日陰くらいの環境に生えていることが多いです。日当たりの良すぎる乾燥した場所にも生えませんが、日当たりの悪い森の中などにも生えません。
庭で育てているビワの木が、薄暗い場所で育っていて、花や実をつけないどころか成長もあまり良くないというような場合は、ビワの木が暗い中でかろうじて生きているだけである可能性があります。ビワの木に日がもっとよく当たるように改善してあげれば、よく育つようになって実をつけるかもしれません。
気温が低い
気温が低いと、ビワの木が悪影響を受ける可能性があります。ビワの木は中国に分布していますが、大分県や山口県など、西日本に自生ではないかと考えられているものが生育しています(諸説あります)。
いずれも暖かい地域のため、ビワの木を植えているのが寒い地域だと、ビワの木の生育によくありません。気温がマイナス3℃以下になる地域だと、寒さの害が出るといわれています。
病害虫が多数発生している
植物に発生する病気や害虫は、寄生した植物から何かしらの方法で養分を奪って成長するものです。そのため、ビワの木にたくさんの病気や害虫が発生していたら、その分成長できる量は減ってしまいます。また、場合によっては実がならないどころか枯れてしまうこともあるでしょう。
ビワの木の葉っぱがかじられていたり、斑点が出ていたりと、見た目の異常が出ている場合などは、病気や害虫が発生しすぎていることが実にならない原因かもしれません。
ビワの木に出る病気
ビワの木につく病気としては、枝や幹などが荒れたようになるビワがんしゅ病や、葉っぱなどに斑点が出る灰斑病や角斑病などがあります。
いずれも、病気の出ている部分を切除して焼却処分することや、適用のある薬剤を散布することなどで対処が可能です。
がんしゅ病については、傷口から病原菌が侵入するので、剪定の際に太い枝をなるべく切らないようにすることや、病気の発生している木を剪定したあとはハサミを消毒することなどが重要です。
ビワの木につく害虫
ビワの木には、いくつかの害虫がつくことがあります。葉っぱをかじるものはあまり多くないですが、ガの仲間であるアメリカシロヒトリやオオミノガなどの幼虫が発生することがあります。
汁を吸うものとしては、ナシマルカイガラムシやイセリアカイガラムシなどが見られることが多いです。幹を食べるものとしては、クワカミキリやシロスジカミキリなどが見られることがあります。
いずれの場合も、見つけたら早いうちに捕殺するか、適用のある薬剤があれば使用するのが良いでしょう。カイガラムシ類は薬剤の種類によっては効かない場合があるので注意が必要です。薬剤を使わない場合はブラシなどでこそぎ落としましょう。
生育環境を変える
庭の生育環境をビワの木が好むものに整えてあげると、ビワの木の生育が良くなり、実をつけるようになる可能性があります。ビワの木が好む生育環境とは、どんなものでしょうか?ビワの木が好む生育環境と、その整え方についてご紹介します。
ビワの木が好む環境は?
ビワの木は、日当たりの良い環境を好みます。しかし、直射日光が常にガンガン当たる場所ではなく、他の木が隣り合っているくらいの場所でよく育つ印象です。
土は、弱酸性の水はけの良い土を好みます。寒さと乾燥が苦手なので、冬になると頻繁に気温が氷点下になる場所や、他に日を遮るものが無く土が常に乾燥しているような場所は好みません。
良い環境に変えるには?
生育環境の悪さがビワの木に実がならない原因だと推測できたら、その原因になっている環境を改善してみましょう。
日当たりの悪さが原因と考えられる場合、周りの木の枝など、日を遮っているものを取り除いて対処します。日当たりが良すぎるという場合は、寒冷紗で覆うなどして日当たりを和らげる方法がとれます。
土壌環境の場合は、周りの土を掘りだして、堆肥などの土壌改良資材と一緒に埋め戻すという方法がありますが、これは掘る場所や土壌改良資材の種類や量などの知識や経験が必要なので、自信が無ければ業者にお願いしても良いかもしれません。
病害虫が出ないようにするには?
屋外で植物を育てる以上、病害虫がつくのはある程度仕方のないことではありますが、病害虫がつきづらくする方法はいくつかあります。
第一に、ビワの木を健康に育てるということで、すべての病害虫の対策になるわけではありませんが、弱った木につく病害虫は防ぐことができます。
風通しが悪ければ、混み合った枝を整理して、風が通るようにしましょう。ジメジメした環境を好む病害虫を予防することができます。剪定を行う際には、太い枝をなるべく切らずに、今後太くなることを見越して細いうちから切るようにします。一定以上太い枝は切口保護剤を塗ったところで病原菌の侵入を完全には防ぐことができず、侵入口となってしまいます。
切るのに使った剪定バサミなどの道具に菌がついていることがあるので、他の木を切った後に同じハサミで剪定を行う場合、しっかり消毒するのも重要です。
また、日頃からビワの木をよく観察しておくようにしましょう。病害虫の対応はなるべく早く行うと楽に片付きます。日頃からビワの木をよく観察していると、変化に気づくのも早くなり、楽に対処できるようになります。
植え付けから時間が経っていない
苗を庭に植え付けてから、ある程度の年月が経たないと実はならない場合が多いです。木が花や実をつけるためには、多くの場合ある程度体を大きくして、成熟していなければいけないためです。
近くに野生化したビワが生えていたり、近くの庭でビワを育てていると、ビワの木の種がどこからか運ばれてきて芽生えることがありますが、そうした実生個体の場合はある程度成長してから出荷される苗に比べてなおさら時間が必要です。
まだビワの苗が小さい場合は、そもそもまだ実をつけられるほどに成長していないのが原因かもしれません。
ビワの木が芽生えてから結実するまで
ビワの木を苗木から育てた場合は、苗のサイズにもよるとは思いますが2〜3年ほどで実がなるといわれています。種から育てた場合は、10年ほど見ておいたほうが良いようです。
ただし、これは順調に生育した場合なので、生育環境が悪かったり剪定しすぎていたりすると、さらに時間がかかる場合があります。この数字にとらわれすぎないようにしておくのが良いでしょう。
まとめ
ビワの木が実をつけるためには、ビワの木の性質を考えて、剪定などの手入れや生育環境の改善を行うことが大事です。ビワの木をよく観察しながら、よく育つように育て方を改善していきましょう。
もし難しいと感じる場合や、そこまでする時間の余裕が無いという場合などは、一度smileガーデンなどの業者に頼んでみるのもおすすめです。もちろん多少お金はかかりますが、手探りで色々試して枯らしてしまったり何年も時間がかかってしまったりするよりは、プロに一度やってもらった方が良い場合もあります。
どのようにすれば良いのか相談しながら、プロの技を見て学ぶ良い機会にもなるはずです。ぜひご検討ください。
愛知県稲沢市生まれ。稲沢市が「日本四大植木産地」であることもあり、幼少期から植木に囲まれて成長。
東京農業大学卒業後、名古屋市内の造園会社に就職。公園の整備工事から国交省事業の国道整備工事における土木及び街路樹等の植栽工事に現場代理人として携わる。