庭で木を育てていると、なぜかうまく育たない…そんなことありますよね。うまく育たない原因は様々ですが、土が関係していることがあります。どんな土にすると良いのか、どのように土壌改良をすれば良いのか、ご紹介します。
目次
なぜ庭木の土壌改良が必要か
庭の土は、施行時には良い状態だったとしても、日々の暮らしで踏み固められるなどして、時間の経過とともにあまり良いものでは無くなってしまう場合があります。
何もないところに新たに木を植えようとする場合にも、土壌改良が必要になります。落ち葉をゴミとして出している場合などでは、貧栄養な環境になっている場合もあるでしょう。
庭の環境や樹種によってはほとんど土壌改良をしなくても良い場合もありますが、庭木が上手く育たず、土以外に原因が考えられないような場合は土壌改良をしてみると良いでしょう。
庭木がよく育つ土の特徴
庭木がよく育つ土は、樹種によるところが大きいですが、どの樹種にも概ね共通しているのが物理性、つまり土の中に空気や水が適度に通り、保持されることです。「透水性」「保水性」「通気性」などがバランス良く組み合わさっていることが、庭木がよく育つ土の条件の一つとされます。化学性としては土に肥料分が含まれているかと、土に養分を留めておく「保肥性」などが大事です。
酸性かアルカリ性かなども関わってきますが、それらは樹種によるところが大きく、塩梅が難しいものでもあります。また、多くの場合は極端に酸性やアルカリ性になっていなければ、大きな影響はありません。ひとまずは多くの木の健康に共通する「透水性」「保水性」「通気性」がそれぞれ確保されているかどうかをチェックするようにしましょう。
庭木の健康と土壌の関係
土の状態は、庭木の健康に大きく関わっていることが多いです。根っこと枝葉は繋がっているので、根っこに問題があれば枝葉にも影響が出ます。根っこの健康には土の状態が大きく関わっているので、土が悪いと根っこも悪くなり、繋がっている枝葉も悪くなるというわけです。
実際に、土が踏み固められることによって根っこが弱り、それに付随して枝枯れなどが発生しても、木の外観を少し見ただけでは何が原因なのかすぐにはよくわからないということがしばしばあります。
庭の土壌の現状を診断する
土壌改良をするにあたって、庭の土壌がどんな状態なのか診断する必要があります。「庭木がなんとなく弱っていそうだから、きっと土が原因。土壌改良しなくては!」と、土壌改良が目的になってはいけません。庭の土がどんな状態なのか、本当に土が原因なのか調べる必要があります。
とはいえ、正しく土壌を診断するには熟練した技術が必要です。項目として、「土が固まっていないか」「透水性が悪くないか」といったところを調べてみましょう。土が固まって崩れず、ひと塊になっているような状態なら固まりすぎです。それではあまり根っこを伸ばすことができません。
また、庭にホースなどで水をまいてみて、長時間水たまりができていないかチェックしてみましょう。ずっと水たまりが残っているようなら、透水性が悪いのかもしれません。
土壌の酸度の調べ方
土壌が酸性かアルカリ性か調べるために、市販されている土壌酸度計で調べてみましょう。これにより、土壌の酸度を調べることができます。
ただし、家の庭など市街地の土壌は攪乱土壌といって、工事の際に重機などでかき回されて色々な土が混ざりあったような形になっていることが多いです。酸度を測るために採取した土の部分だけアルカリ性に近く、周りは酸性ということも考えられます。測定する場合は複数箇所で測ってみるようにしましょう。
また、酸性かアルカリ性かは、必ずしも庭木が弱る本質的な原因ではない(酸度矯正してもあまり元気にならない場合もある)ということは覚えておきましょう。参考までに、日本の森林土壌はほとんどが酸性~弱酸性なので、日本で育つ樹種はそれくらいの酸度を好むものが多いです。また、海外の乾燥地に育つようなものは、それらよりもアルカリ性に近い酸度を好むものが多いです。
土の団粒構造とは?
土壌の団粒構造とは、土が小さな粒状になったものが集まってパンくずのようになった構造のことです。この構造ができれば、先ほど紹介した土壌の物理性の、「透水性」「保水性」「通気性」がバランスよく保たれ、庭木にとって良い土になります。
他にも土壌の構造には粒状構造や塊状構造などいくつかのものがありますが、団粒構造が最も物理性のバランスが良いといわれています。庭木の土もこのような構造になっているのが理想的ですが、団粒構造は小さな土壌生物たちが落ち葉などを分解する過程でできるものです。落ち葉が土に積もり、様々な土壌生物たちが活発に活動している必要があります。よく踏み固められる庭の土では、なかなかできない構造かもしれません。
土壌改良の基本ステップ
土壌改良をするためには、大まかに①まず土壌の状態を調べ、②土壌改良する部分の土を掘り起こし、③改良した土を埋め戻す、というステップを踏みます。どんな土を使うか、どのように土を掘るかなどは庭木の状態や樹種などによるところが大きいので、細かい部分はケースバイケースとなります。
土を入れ替えるのは多かれ少なかれ木に負担を与える作業になるので、木が弱っている場合は小さな縦穴を掘って通気性を確保したり、肥料分の少ないバーク堆肥を用いるなど、ダメージが少ない方法で改良を行うのがおすすめです。
土を耕す:土の準備の重要性
何もない庭に最初に木を植えるために土壌改良をする場合、まずは土を耕す必要があります。何も植えていない庭の土は工事などで踏み固められていることが多いので、まずは土壌改良が行える状態にしましょう。耕したあとは、堆肥のような有機肥料などを混ぜ込んだら完了です。
ただし、既に庭木が植わっている土を土壌改良する場合、土をやたらと耕すと根っこを傷めてしまう可能性があります。庭木を元気にさせるために満遍なく土を耕したら、そのまま木が枯れてしまったという話もあるほどです。
一度植えた木の土壌改良を行う場合は、一面を耕すようなことはせず、スポット的に穴を掘るなどして行うようにしましょう。
使用すべき基本用土の種類
土壌改良は、用土に堆肥などの肥料を混ぜ合わせて行う方法があります。その基本となる用土にも種類があり、透水性、保水性などの性質にそれぞれ違いがあります。どんなものを使うのが良いかチェックしておきましょう。
黒土の特徴と利点
黒土は、黒ボク土とも呼ばれる名前の通り黒い土です。火山灰がもとになってできていることが多く、関東ローム層などからよく採取され、利用されています。性質としては水はけ(透水性)が良い割に水もち(保水性)も良く、栄養を保持する保肥性も持っている土です。
養分が含まれているかどうかは、どこからやってきた火山灰かによって違っていて、玄武岩など塩基性の火山灰の場合はカルシウムやマグネシウムなどが多く弱酸性で、安山岩などの火山灰ではそれらがあまり含まれておらず、酸性になります。
欠点としては、中に含まれているアルミニウムが植物の成長に必須の成分であるリン酸と強く結びつき、植物が利用できない形にしてしまうことが挙げられます。リン酸肥料と一緒に使うなど、工夫して使うようにしましょう。また、施用する際にこねくり回すと透水性が悪くなる場合があるので注意が必要です。
赤玉土の特徴と利点
赤玉土は、関東ローム層などから採取された赤土を乾燥させたものです。大粒、中粒、小粒、細粒など粒の大きさごとに分けて売られていることが多く、硬質赤玉土と呼ばれる焼いて固めたものもあります。
水はけ(透水性)、水もち(保水性)、通気性にすぐれ、養分を保持しておく保肥性も良く、使いやすい用土です。肥料分は基本的に含んでいないので、堆肥などの肥料と混ぜ合わせて使う必要があります。
鹿沼土の特徴と利点
鹿沼土は、名前の通り栃木県鹿沼市で採取された軽石です。粒に細かい穴が空いているので、水もち(保水性)や通気性が良いのが特徴です。水はけ(透水性)も良く、物理的な性質に優れています。
赤玉土同様に大粒、中粒、小粒、細粒のように粒の大きさごとに分けて売られていることが多いです。肥料分は基本的に無いので、堆肥などの肥料と混ぜ合わせて使います。
土壌改良に役立つアイテム
土壌改良には、通常の剣スコップを使って穴を掘る場合もありますが、土壌改良ならではのアイテムもいくつかあります。ダブルスコップと呼ばれる細長いスコップを2つ組み合わせた道具は、深い縦穴を掘るのに適しています。広範囲の土壌改良をせず、スポット的に行いたい場合などに使われることが多いです。
ダブルスコップと一緒に使えるのがブレスパイプと呼ばれる器具。縦穴に先端部分を残して入れて埋めることで、通気性の悪い土壌の空気穴となります。
ブレスパイプを使わなくても、竹を縦に割って節を取り、繋げあわせて1つのパイプのようにすることで、似たような効果を発揮することも可能です。動力噴霧器を使って土壌に細い穴を何本も開けることで通気口を確保する方法もあります。
肥料の選び方と使用法
肥料は、鶏糞や堆肥など市販されている有機肥料を土に混ぜて使えばOKです。肥料分が多いと肥料焼けという現象を起こしてしまい、かえって庭木が弱ってしまう場合があるので、少なめを意識して使うと良いでしょう。
肥料分の少ない堆肥として樹皮を発酵させたバーク堆肥というものもあります。バーク堆肥は、分解されにくく土壌改良の効果が長続きするという利点もあるのが特徴です。庭木の状態や用途に合わせて選んでみてください。
石灰を用いた酸度調整の方法
土壌が酸性に傾きすぎて育てたい庭木の生育環境に合わないという場合、苦土石灰などの石灰を使って酸度を矯正するという方法もあります。基本的には、袋に書いてある分量を土に混ぜてあげればOKです。なんとなく酸度を矯正しても意味がないので、酸度計などを使って土壌がどれくらい酸性に傾いているか調べてから行うようにしましょう。
酸性土壌で育つ木などでは、アルカリ性に傾きすぎるとかえって成長が悪くなる場合もあります。逆にアルカリ性から酸性に傾けたいという場合は、ピートモスなどを使って酸性に傾けます。こちらも土壌の状態を見てから行うべきであるのと、日本は雨が多いので放っておいても土壌は酸性に傾く場合が多いということを意識しておきましょう。
土壌改良の実践
実際に土壌改良をする場合、どの木をどのような方法で土壌改良して元気にしたいのか、きちんと決めて行うようにしましょう。場当たり的にとりあえずで土壌改良をすると効果があまり無かったり、場合によっては庭木が弱ったり枯れてしまったりすることもあります。
庭木の根っこをなるべく傷つけないように意識しながら土を掘り、肥料やパイプ等と一緒に埋め戻します。その後も、庭木が元気になったか特に変化がなかったか、もしくは弱ってしまったかきちんと観察することが大事です。
地植えの土壌改良テクニック
地植えの庭木を土壌改良する場合、周囲の土を掘り起こして堆肥などと混ぜた新しい土と入れ替えるような形で土壌改良を行います。
庭木をグルッと一周して行う必要はなく、スポット的に穴を空けるような形で土壌改良を行うのでも問題ありません。むしろ、一周してしまうと根っこをまんべんなく傷つけてしまい、木が弱ってしまう場合もあります。根っこの伸びる範囲内であれば、養水分のある場所に根っこは勝手に伸びていくので、やりすぎないように注意しましょう。
また、庭木のすぐ根元には養水分を吸収する細根が少ないので、幹から少し離れた場所で行うのがおすすめです。目安として、枝が伸びている先の真下あたりで行うと効果が出やすいです(実際は、ほとんどの場合もっと遠くまで根っこが伸びています)。
高木を植える際のポイント
高木になる木を植える場合、肥料分も多めに入れたほうが良いのでは…と思うかもしれませんが、基本的には他の庭木と同じで、都度都度必要な分だけ土壌改良をすれば大丈夫です。
木の根っこはふつう枝葉の伸びる範囲より遠くまで伸びるので、大きくなった木はかなりの広範囲から養水分を集めていることがあります。そのため、手塩にかけて育てなくても、思ったよりどんどん成長していくという場合も多いです。
少しずつ弱ってきた場合や、広い範囲が踏み固められてグラウンドのようになっている場合などは、根っこの通っているであろう部分の物理性をスポット的に改良するのがおすすめです。
花壇の土壌改良方法
花壇は普通踏まれることがないので、通気性などの物理性が問題になることはほとんどありません。問題になるのは肥料分の不足ですが、こちらは鉢植えのように置肥や液肥などを用いることで対応できます。また、花壇の植物を入れ替える際に土も入れ替えるのでも大丈夫です。
芝生の土壌改良と張り方
芝生は、張る前に土を耕さず平らにならしてから張るようにします。芝が生育し始める3月ごろに行うのがおすすめです。
その後の土壌改良は、基本的に肥料を与える施肥という形で行います。粒の小さい芝生用の肥料を、芝の茎葉の隙間に入り込むようにまんべんなく撒いてから、水を与えるようにします。
9月以降には、芝の生育の邪魔になる冬雑草が発芽してくるので、肥料を与えないのがおすすめです。
プロに依頼するメリット
土壌改良はケースバイケースのことが多く、方法によってはかえって庭木を弱らせたり、枯らしたりしてしまうことがあります。気をつけていれば大きく失敗することはありませんが、不安な場合はプロに依頼してやってもらうのが良いでしょう。
経験値の高いプロなら、その場に応じた方法で土壌改良をしてくれるはずです。調べたけどよくわからない、枯らしてしまうのが不安という方はお願いしてみてください。
愛知県稲沢市生まれ。稲沢市が「日本四大植木産地」であることもあり、幼少期から植木に囲まれて成長。
東京農業大学卒業後、名古屋市内の造園会社に就職。公園の整備工事から国交省事業の国道整備工事における土木及び街路樹等の植栽工事に現場代理人として携わる。