秋になると美味しい実をつけるりんごの木。
しかし花は咲くのに実がならない…と悩むこともあると思います。
比較的受粉樹の不足や環境の影響で、実がつきにくくなっているかもしれません。
元気な果実を収穫するために、原因を見極めて対策を講じましょう。
今回は、りんごの木が実をつけない理由と、確実に実らせる育て方のコツを紹介します。
目次
りんごの木が実をつけない原因と対処法
市場に出回る多くのりんごは一本では実をつけず、別の品種が必要です。
しかし、育てる環境によっては、実をつけないことも。
まずは、りんごの木に実がならない原因とその対処法について知っておきましょう。
1. りんごの木の自家不和合性
りんごの木は、自家不和合性(じかふわごうせい)という性質を持つため、1本だけでは実がつきにくい果樹。
自分の花粉では受粉できず、異なる品種の花粉が必要になるためです。
春に花が咲いても受粉がうまくいかなければ、実がならずに終わってしまうこともあります。
特に、近くに受粉を助ける別の品種がない場合や、開花時期が合わないと、実がならない原因になります。
対処法:受粉樹を植えることで実をつけるようにする
りんごの木に実をつけさせるには、近くに別の品種の受粉樹を植えることがポイント。
自家不和合性のあるりんごは、自分の花粉では受粉できないため、開花時期が合う品種を選ぶと、受粉が成功しやすくなります。
たとえば、「ふじ」には「つがる」や「王林」、「紅玉」には「ゴールデンデリシャス」など、相性の良い組み合わせを選びましょう。
1本だけでは実がならなくても、受粉樹があればしっかり結実します。
2. 訪花昆虫が少ないことが影響する
花が咲いているのに実がならない場合は、昆虫の少なさが原因かもしれません。
りんごの木は、ミツバチやハナアブなどの昆虫が花粉を運ぶことで受粉が進み、実をつける果樹です。
しかし昆虫が少ないと花粉が運ばれず、結実しにくくなります。
特に春先の天候が悪く、雨や低温が続くと昆虫の活動が鈍くなり、受粉がうまくいかないことも。
農薬の影響でミツバチの数が減ると、さらに受粉率が下がります。
対処法:受粉を助ける昆虫を増やす環境を整える
りんごの木に実をつけさせるには、昆虫が集まりやすい環境をつくることが大切。
庭や畑の近くに、ミツバチやハナアブが好む花を植えると、受粉を助ける昆虫が増えやすくなります。
ラベンダーやカモミールなどのハーブ、菜の花やクローバーもおすすめ。
農薬の使用を控え、昆虫が安心して活動できる環境を整えることもポイントです。
3. 土壌環境や水分不足による影響
りんごの木は根がしっかりと張れる土壌と適度な水分がないと、健康に育ちにくくなります。
水はけが悪く根腐れしやすい土や、逆に乾燥しやすい砂質の土では養分や水分を十分に吸収できず、花や実がつかないことも。
生長期の春から夏にかけて水分が不足すると、花が咲いても落ちてしまう原因にもなります。
さらに、土が固く締まっていると根が広がりにくくなり、木が弱ってしまいます。
対処法:適切な水やりと土壌改良を行う
りんごの木が健やかに育つためには、水やりと土壌の管理が大切です。
水はけが悪い場合は、腐葉土や赤玉土を混ぜて通気性を良くし、根がしっかり張れる環境を整えましょう。
乾燥しやすい土なら、水持ちを良くするためにバーク堆肥やピートモスを混ぜるのがおすすめです。
水やりは生長期の春から夏にかけて、朝か夕方にたっぷりと与えてくださいね!
4. 剪定の失敗
りんごの木は、剪定の仕方を間違えると花芽がつかず、実がならなくなることもあります。
特に、冬の剪定で花芽をつける枝まで切ってしまうと、翌年の開花が減ってしまう原因になります。
反対に剪定をしないまま放置すると、枝が混み合いすぎて日当たりや風通しが悪くなり、花芽のつきが悪くなることも。
さらに、樹勢が強すぎると枝葉ばかり伸びてしまい、花を咲かせる力が弱まることもあります。
対処法:適切な剪定時期・方法を守る
りんごの木の実つきを良くするには、剪定の時期と方法を守りましょう。
剪定は、冬の休眠期(12月~2月)と、春の芽吹き前(3月)が適期です。
前年に伸びた枝には花芽がついているため、不要な枝だけを間引き、実をつける枝は残すのがポイント。
勢いの強い徒長枝は根元から切り、風通しを良くします。
ただし、剪定しすぎると花芽が減り、逆に放置すると枝が混み合い、実つきが悪くなるため、適度な剪定を心がけましょう。
5. 摘果を行わないことが実の生長を妨げる
花が咲いた後にたくさんの実をつけるりんごの木ですが、そのまま放置すると養分が分散し、実が小さいままで終わってしまうこともあります。
特に、1つの枝に多くの実がつきすぎると、栄養が行き渡らず、甘みが薄くなったり、未熟なうちに落ちてしまったりする原因になる場合も。
摘果をしないと、翌年の花芽がつきにくくなることもあるため、毎年実の数が減っていくこともあります。
対処法:適切な摘果で栄養を分散させないようにする
開花後、りんごの木に小さな実がつき始めたら1カ所に1~2個だけ残し、余分な実を取り除きましょう。形が悪いものや傷がついた実は、早めに摘果すると残った実に栄養が集中し、甘くて大きなりんごに育ちます。
摘果の適期は、結実後の5月~6月ごろ。
摘果をせずに実を残しすぎると翌年の花芽が減り、収穫量が落ちる原因になるため、毎年しっかり調整することが大切です!
りんごの木が実をつけるために知っておきたいこと
実をつけさせるためには、りんごの木の生態について知っておくと、失敗することも少なくなるでしょう。
りんごの木が実をつけるまでにかかる年数
りんごの木は、植え付けてすぐに実がなるわけではなく、収穫までに時間がかかる果樹です。
一般的に、苗木を植えてから実をつけるまでの年数は3〜5年ほど。
品種や育てる環境によって違いはあるものの、早くても3年目から開花し、実がつき始めます。
接ぎ木苗は比較的早く実がなりますが、種から育てた場合は10年以上かかることも。
しっかりと管理しながら、長い目で育てることが大切です。
若木の育て方と管理方法
りんごの木を植え付けた後の数年間は、しっかりと根を張るために、強風や乾燥から守りましょう。
支柱を立てて幹が倒れないようにし、乾燥しすぎないように適度な水やりを行います。
肥料は春と秋に与えて生長を促します。
枝が混み合わないように不要な枝は剪定し、風通しの良い状態を保ちましょう。
りんごの木の植え付け方法
りんごの木の植え付けは、落葉期の11〜3月ごろが適期です。
日当たりと風通しの良い場所を選び、根が広がりやすいように深さ50cm、直径60cmほどの穴を掘ります。
掘り上げた土に腐葉土や堆肥を混ぜ、排水性を良くするのがポイント。
植え付け後はたっぷりと水を与え、支柱を立てて幹が安定するように固定しましょう。
天候対策と防寒・防暑の工夫
冬の寒さが厳しい地域では、りんごの木の根元にワラやバークチップを敷いて防寒対策を行います。
寒風が強い場合は、不織布を巻いて幹を保護するのもおすすめです。
夏の暑さが厳しいときは、強い直射日光を避けるために寒冷紗をかけ、根元の乾燥を防ぎましょう。
特に若木は寒暖差の影響を受けやすいため、季節ごとの管理をしっかりと行うことで、健やかに生長してくれますよ。
りんごの木を実らせるための育て方のコツ
より確実に実をつけさせるためには、品種をよく選び、りんごの木の生育に適した場所をしっかりと選んで整えておきましょう。
ここでは、りんごの木を実らせるための育て方のコツを紹介します。
①適切な品種選びをする
りんごの木を実らせるには、育てる環境に合った品種を選ぶことが大切です。
寒冷地向きの品種と温暖地向きの品種があり、地域の気候に適したものを選ぶことで、健康に育ちやすくなります。
たとえば、「ふじ」や「つがる」は寒さに強く、寒冷地でもしっかりと実をつける品種。
「王林」や「ゴールデンデリシャス」は比較的温暖な地域でも育てやすいです。
受粉樹が必要な品種もあるため、組み合わせを考えて選ぶことがポイント。
②風通しの良い環境で育てる
枝が混み合っていると湿気がこもりやすく、りんごの木は病害虫の被害を受けやすくなります。
特に梅雨時期や夏場は、蒸れによって葉が傷みやすくなるため注意が必要です。
剪定をして枝の間隔を開け、日当たりと風通しを確保しましょう。
周囲に高い建物や壁がある場合は、風が抜ける向きに植えると効果的です。
③冬の低温要求時間を確保する
りんごの木がしっかりと実をつけるためには、冬の間に一定時間の低温にさらされることが必要です。
これを「低温要求時間」といい、多くの品種は7℃以下の寒さに800~1,000時間ほど当たることで、春に芽吹きやすくなります。
冬の気温が高すぎる地域では休眠が十分にとれず、花芽がつきにくくなることも。
特に温暖地では低温不足が原因で開花しないこともあるため、寒さがしっかりと訪れる地域で育てることが重要です。
④開花時期に雨よけをする
花が咲く春先に長雨が続くと、花粉が流されて受粉がうまくいかず、りんごの木に実がつかないこともあります。
強い雨が降ると花自体が傷み、花粉を運ぶミツバチの活動も減るため、受粉のチャンスが少なくなることも。
開花時期に雨が多い地域では、ビニールや簡易的な屋根を使って雨よけをするのがおすすめです。
⑤根元の雑草を管理する
雑草が生い茂ると、土の中の水分や養分が奪われ、りんごの木に十分な栄養が届かなくなることもあります。
夏場は雑草の生長スピードが早く、放置すると根元の風通しが悪くなり、病害虫が発生しやすくなります。こまめに草取りをして、根元をスッキリさせることが大切です。
バークチップやワラを敷いて雑草の発生を抑えるのも効果的でおすすめです。
りんごの木を実らせる剪定のポイント
ここでは、りんごに実をつけるための剪定のコツを紹介します。
Point1. 主枝とほかの幹・枝のバランスを整える
りんごの木を実らせるには、主枝とほかの枝のバランスを整えることが大切です。
幹から伸びる主枝がしっかりと発育していないと、花芽のつく枝が育ちにくくなり、実の数も減ってしまうことも。
枝が込み合いすぎると、日当たりや風通しが悪くなり、花芽の形成にも影響します。
主枝を中心にバランスよく枝が広がっている状態が理想的な樹形です。
伸びすぎた枝や不要な徒長枝を間引き、全体の形を整えることで、実つきをよくする剪定ができます。
Point2. 結果枝を適切に管理する
結果枝とは、花芽がつき、果実が育つ枝のこと。
古くなった結果枝は実をつけにくくなるため、適度に新しい枝と入れ替えることが大切です。
長すぎる枝や勢いが強すぎる枝は、花芽がつきにくくなる原因になることもあります。
冬の剪定では前年に実をつけた枝を整理し、若い結果枝を残すことがポイント。
適切な管理をすることで、毎年しっかりと実をつける健康な木に育ちます。
Point3. 剪定のタイミングを見極める
りんごの木の適切な剪定時期は、休眠期の冬と生長が落ち着く夏の2回です。
冬の剪定(12月〜2月)は不要な枝を整理し、花芽のつく枝を残しながら切りましょう。
夏の剪定(7月〜8月)は、勢いよく伸びた徒長枝を間引き、日当たりと風通しを確保します。
ただし、剪定の時期を間違えると花芽を落としてしまい、翌年の実つきに影響することも。適切なタイミングで剪定し、健全な生長を促します。
Point4. 混み合った枝を間引いて風通しを良くする
りんごの木が元気に育つためには、枝の混み合いを防ぐことが大切です。
枝が密集すると、日当たりが悪くなり、花芽の形成や果実の生長に影響が出ることも。
風通しが悪いと湿気がこもりやすく、病害虫の発生リスクが高まります。
絡み合った枝や内向きに伸びる枝を間引き、光と風がしっかり通るように剪定しましょう。
適度に透かすことで、健康な枝が育ち、実つきも良くなります。
りんごの木に実がならないことに関するよくある質問
最後に、りんごの木の実がならないことに関するよくある質問をまとめました。
りんごの木を植えて何年で実がなるの?
りんごの木は、植えてからすぐに実がなるわけではなく、結実までに時間がかかります。
一般的に、苗木を植えてから実をつけるまでの目安は3〜5年ほど。
接ぎ木された苗は比較的早く実をつけますが、種から育てた場合は10年以上かかることもあります。
品種や育てる環境によっても違いがあり、日当たりや剪定の管理が重要です。
1本だけで育てても実はなるの?
りんごの木は、基本的に1本だけでは実がなりにくい果樹です。
多くの品種は自家不結実性があり、自分の花粉では受粉できないため、異なる品種の花粉が必要になります。
近くに受粉樹がないと、花が咲いても実がつかないことがほとんどです。
自家結実性のある品種もありますが、受粉樹を一緒に植えたほうが実つきが良くなります。
しっかりと収穫を楽しみたい場合は、開花時期の合う品種を組み合わせるのがおすすめです。
りんごの木の剪定は初心者でもできる?
りんごの木の剪定は、基本的なポイントを押さえれば初心者でもできます。
剪定の目的は、日当たりと風通しを良くし、花芽のつく枝をしっかり残すこと。
冬の剪定では、不要な枝や混み合った枝を間引き、樹形を整えるのがポイントです。
夏の剪定では、徒長枝を切って養分の無駄な消費を防ぎましょう。
最初は迷うこともありますが、少しずつコツをつかめば大丈夫です。
枝を切ることで新しい生長を促し、実つきを良くする剪定ができますよ。
剪定を間違えると実がつかなくなる?
剪定の仕方を間違えると、りんごの木に実がつかなくなることがあります。
特に注意が必要なのが、花芽を誤って切り落としてしまうこと。
りんごの花芽は前年に伸びた枝につくため、剪定で花芽を減らしすぎると、翌年の結実が少なくなります。
枝を切りすぎると木が樹勢を回復させようと徒長枝を多く出し、花芽がつきにくくなることもあります。
花芽のついた枝を見極めながら剪定してくださいね。
受粉樹の相性が悪いと実がつかない?
自家不和合性のあるりんごの木は、受粉樹の相性が悪いと実がつかないことがあります。
受粉に適した組み合わせがあり、相性の合わない品種では花粉がついても受精しにくくなることも。
開花時期がずれていると受粉がうまくいかず、結実率が下がる原因にもなります。
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リゾートガーデンスタイル専属の庭師×Webコンテンツクリエイター。 カナダのトロントで造園士を、その後日本で花屋のバイヤー・鉢物の管理・アドバイザーを経験した後、ヤシの木を主体とするリゾート・ドライガーデンの造園士に。 現在は、リゾートガーデンスタイルの社会福祉施設・DOG CAFEの専属庭師に加え、畑の開拓・管理、SNSも兼務。 植物を専門とするWebコンテンツクリエイター、ガーデニング商品の監修者としても活躍中。