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イスノキ(育て方・特徴)

イスノキの育て方と特徴

「虫こぶ」といわれるものが葉にできやすいユニークなイスノキ。
材質が硬くて重いため、昔から木材・釉薬・木刀として重宝される優れた庭木です。
生長スピードがゆっくりで大きくなりにくいので初心者でも育てやすいです。

基本5データ

分類
常緑高木
学名
Distylium racemosum
科・属名
マンサク科・イスノキ属
別名
イボノキ、イス、ユスノキ、ユシギ、ユシノキ、ユス、クシノキ、ヒョンノキ 、サルブエ、サルビョウ
草丈・樹高
5〜25m
栽培可能地域
東北南部以南
花色
紅色(葯)
開花期
3〜5月
結実期
9月上旬〜11月
耐暑性 / 耐寒性
強い / やや強い

イスノキに特徴的な虫こぶ

そもそも「虫こぶ」とは何か

「虫こぶ」は、植物の葉や茎、枝にできる異常なこぶ状の組織で、虫えい・五倍子(ふし)とも呼ばれます。特定の昆虫やダニが植物に産卵する際に、植物の組織を刺激することで発生し、イスノキも同様です。虫こぶは昆虫の幼虫が育つための保護場所と食料源を提供します。

どうしてできるのか

虫こぶは、昆虫が産卵する際に植物の組織に化学物質を注入することで形成され、植物の細胞を刺激し異常な生長を引き起こします。昆虫の幼虫が成長するための特別な組織が形成された卵のようです。

特徴

イスノキにできる虫こぶは、通常丸いまたは、だ円形のこぶ状の構造を持ち、色は緑から茶色に変化します。葉の表面や裏面、場合によっては枝や茎にも形成され、こぶの内部には昆虫の幼虫が存在し成長するまで保護されているようです。

発生しやすい時期

虫こぶは、昆虫が活発に活動し始める春から夏にかけて発生しやすいです。特に春先は昆虫の産卵期であり、この時期に多くの虫こぶが見られます。

なぜイスノキに発生しやすいのか

イスノキは、特定の虫こぶ形成昆虫の好む植物です。イスノキの葉や枝は、昆虫にとって適した産卵場所であり、また幼虫にとっても栄養豊富な環境を保持できます。イスノキの特有の化学成分や組織構造が、虫こぶの形成を促進している可能性もあるといわれています。

できるとどうなるのか

  • 植物の健康
    通常、虫こぶ自体が植物全体の健康に重大な影響を与えることはありません。しかし、大量に発生すると、葉や枝の成長を妨げることもあります。
  • 美観
    庭木や観賞用植物としてのイスノキにとって、虫こぶは見た目に影響を与えるため、管理が必要になる場合もあるでしょう。
  • 昆虫の生態
    虫こぶは昆虫の生態系において重要な役割を果たします。昆虫の幼虫は虫こぶの内部で安全に成長し、成虫になると植物から離れて活動を始めます。

対処法

虫こぶの発生を抑えるためには、以下のような対策がおすすめです。

  • 定期的な剪定
    影響を受けた部分を剪定することで、虫こぶの広がりを防ぐことが可能です。
  • 昆虫防除
    昆虫の発生を予防するために、適切な殺虫剤を使用することができます。ただし、環境に配慮し、必要最低限の使用にとどめることが重要です。
  • 健康管理
    植物を健康に保つことで、虫こぶの発生を抑えることができます。適切な栄養管理と水やりが効果的です。

イスノキの虫こぶは、自然の一部として昆虫と植物の関係を理解する上で興味深い現象です。しかし、庭木としての美観を保つためには適切な管理が必要な場合もあります。

木材・釉薬や木刀として使われてきたイスノキ

日本に広く分布する常緑広葉樹のイスノキ。その硬く丈夫な木材は、昔から多様な用途で利用されてきました。以下に、イスノキの特徴とその利用について詳しく説明します。

木材としての特徴

イスノキの木材は非常に硬くて重く、耐久性があります。そのため、歴史的に多くの実用的な用途に使用されてきました。木材は緻密(ちみつ)で木目が細かく、美しい光沢を持ちます。加工しやすく、仕上がりも美しくなるため、高級家具や工芸品にも適しています。

釉薬の材料としての利用

イスノキの樹皮や灰は、釉薬の材料としても利用されてきました。陶器の釉薬に使われる灰は、焼成過程で美しい色合いと光沢を生み出します。また、イスノキの灰は特に高品質とされ、釉薬に使用することで陶器に独特の風合いを与えるといわれることも。伝統的な陶器制作において、イスノキの灰は重要な素材の一つとして評価されています。

木刀の材料としての利用

硬くて丈夫な特性をもつイスノキは、武道用の木刀としても非常に適し材木です。剣道や古武道の練習で使用される木刀は、強度と耐久性が求められます。イスノキの木刀は衝撃に強く、長時間の使用にも耐えるため、信頼性の高い武道具として人気があります。また、イスノキの木刀はその美しい木目と手触りの良さも評価されています。

そのほかの利用

イスノキの木材は、その他にもさまざまな用途で利用されています。

  • 建築材
    その強度と耐久性から、建築材として使用されることがあります。特に土台や梁など、構造的に重要な部分に使用されます。
  • 楽器
    木材の音響特性を活かして楽器の部品にも使用されます。特に打楽器のバチや弦楽器のパーツとして適した素材です。
  • 装飾品
    美しい木目と光沢を活かして、装飾品やアクセサリーの素材としても利用されます。

環境への影響と保護

イスノキは日本の森林生態系において重要な役割を果たしています。自然環境において、イスノキは多くの動植物にとって重要な生息場所や食料源です。そのため、イスノキの伐採や利用に際しては、持続可能な方法を採用し、環境保護に配慮することが大切です。

またイスノキの多様な利用は、その優れた木材特性によるものであり、日本の伝統文化や工芸に深く根付いています。現代においても、その価値は変わらず、さまざまな分野で重宝されています。

イスノキの育て方と特徴の育て方・管理方法

植え付け・植え替え

イスノキは水はけと水もちの良い土で育てる


早春にたくさんの小さな花を咲かせるには、水はけと水もちの良い土で育てましょう。
すぐに乾燥してしまう土では、水切れを起こして枯れてしまうこともあります。
夏場でも完全に乾きにくく、湿度を保ちやすいイスノキ用の土づくりをするのがポイント!

地面に植え付ける前に、完熟の腐葉土か堆肥と、赤玉土を掘り起こした土に混ぜて、排水性・保水性を良くしておきます。
土が乾きやすい場合は、黒土やピートモスを混ぜるのも良いです。

イスノキの適切な植え付け時期|4月下旬〜7月


イスノキは、4月下旬〜7月ごろに植え付けができます。
ただし、氷点下になるような気温下では、株がストレスを受けてしまうこともあるので、できるだけ暖かい日を選びましょう。

直径3〜5mほどのスペースを確保してから


地面からまっすぐと太い一本の幹が伸びて単幹樹形になるイスノキ。
枝葉が手を広げるかのように横へ伸びるので直径3〜5m程度のスペースを確保して植え付けましょう。

イスノキの苗木の植え方


イスノキの苗木を植え付けるときは、あらかじめ深く耕しておくと、植え付け後でも根の張りが良くなります。
植え穴の深さは、根鉢の高さよりも3cmほど低くし、根鉢の周りに片足が入るぐらいの広さをつくりましょう。

植える前に一度、ポットから抜いた苗木を穴に入れてみて、深さ・横幅を確認するといいです。
手を離しても苗木が直立するように、穴の底に土を加えて植え付けます。
足で踏み固めながら用土を継ぎ足し、しっかりと地面に定着させましょう。

イスノキの鉢植えの植替え


鉢植えでのイスノキは、3〜4年に1回のペースで植え替えをします。
比較的生長スピードがゆっくりですが根が太くなりやすく、放置していると根詰まりを起こして枯れてしまう場合も。
ある程度の時期を過ぎたら植え替えをして、根が回りやすい状態をつくりましょう。
水が土に浸透しにくくなったときや、鉢底から根が出ているときにも植え替えをしましょう。

肥料

生命力が強く、肥料成分の少ない場所でも育つイスノキは、肥料を与えなくても問題があまりありません。
ただし葉が黄色く変色したときは、肥料を与えるといいかもしれません。
株元から1m程度離れた場所に、(N)・リン酸(P)・カリウム(K)のバランスの取れたものか、リン酸の多い花木・庭木用の有機肥料がおすすめです。

剪定

生長スピードがゆっくりなイスノキは、2年に1回のペースで剪定しましょう。
背丈が高くなり過ぎたときや、イスノキの枝葉やひこばえ(地面から生える幹)が混み合ったりしたときにも剪定するといいです。
ただし、切り詰め過ぎると不要な枝がたくさん出て樹形が暴れることもあるのでm枯れ枝や不要な枝を切り落とす程度にしましょう。

イスノキの適切な剪定時期|5月・9月


イスノキの剪定は、花が咲き終わるころの5月か、気温が落ち着いた9月に行うのがベスト。
暖かい時期なら強い剪定にも耐え、樹形をコンパクトにすることもできます。

イスノキの剪定の手順


樹高が大きくなり過ぎるとイスノキの生長に勢いが付き過ぎてしまうこともあるので、ある程度枝葉を伸ばしたら数年後にはバッサリと剪定するのもいいです。

Step1. イスノキの理想の高さ・幅のラインを決める


伸び過ぎた枝葉を何となくで切ってしまうと、イスノキの樹形が思うように整いません。
切り詰め過ぎたり透かし過ぎたりして、花芽を余計に落として剪定が失敗してしまうことも。
まずはイスノキの理想の高さと幅のラインを決めてから切りましょう。

Step2. Step1で決めたラインに沿ってイスノキの枝葉を切り詰める


生長すると枝分かれが多くなり、細かい枝葉が出ることもあるイスノキ。
Step1で決めたラインの外側に出ている枝を、枝分かれしているところまで切り戻して短くしましょう。

ただし、節と節の間で切ってしまうと新しい枝葉が無数に出て、イスノキの樹形が不自然になる場合も。
ある程度剪定ができたら何度か遠くからも見て、木全体のバランス、周りの植物や物との間隔を調整します。

Step3. 枯れ枝と不要な枝を剪定する


最後に、イスノキの枝葉から外側に出た外芽を残しながら内側に伸びる内芽を切り落とします。
太い枝から強く伸びる枝葉は花芽が付きにくいので、枝分かれした箇所まで切り詰めましょう。

また、下記の不要な枝は生えている付け根から全て取り除き、株の内側の日当たりと風通しを良くします。
このとき、枯れた枝も取り除きます。

  • 徒長枝:株から強く飛び出すように、太く長く伸びる枝

  • 立ち枝:横に伸びている太い枝に対して、直立したように上に強く伸びる枝

  • 内向枝:株の内側に向かって伸びる枝

  • 交差枝:枝同士が十字に交差する枝

  • 絡み枝:太い枝に絡みつくように伸びる枝

  • 平行枝:近い位置で平行に同じ方向へ伸びる枝

  • 逆さ枝:地面に向かって伸びる枝

病害虫

ほかの庭木と比べると病気の心配がすくないイスノキですが、アブラムシ・ハダニ・カイガラムシといった典型的な害虫が葉や幹に現れることも。
株の内側の枝葉が混み合わないように、定期的に剪定を行いましょう。

病気


特になし

害虫


・アブラムシ
3〜10月にかけて、イスノキの新芽・やわらかい枝葉・蕾に発生し、養分を吸汁します。
窒素成分が多く入った肥料を与え過ぎたりすると、特に発生しやすいです。
また、日当たりや風通しが悪くて枝葉が徒長すると、アブラムシが吸汁しやすいので、植え付け・置き場所にも注意します。
発生した場合は指で取り除いたり、水で洗い流したりしましょう。
大量に発生した場合は、殺虫剤を散布します。

・ハダニ
1年を通して、イスノキの葉の表裏に発生しやすいです。
風通しがなく、乾燥した枝葉に現れ、放置をするとコロニーを形成し大量に繁殖する場合も。
葉の養分を吸汁するため、落葉の原因になります。
定期的な剪定をしますが、大量に発生した場合は薬剤で対処するといいです。

・カイガラムシ
1年を通して、イスノキの枝や幹に発生しやすく、養分を吸汁します。
成虫になると甲羅が硬質化し、薬が効きにくくなります。
できるだけ薬の効く幼虫のうちから、薬剤散布を行うといいです。成虫は歯ブラシや軍手を使って擦るようにして補殺します。

日当たり

イスノキは基本的には自然に降る雨だけの水分で育ちますが、極端に地面が乾燥すると水切れを起こしたり生長不良を起こしたりすることもあります。
夏は地面を乾かさないように、水をたっぷりと与えるといいです。

また、植え付け直後や苗木が地面にしっかりと根付くまでの1年間は、土が乾燥しないように定期的に水やりをしましょう。

水やり

イスノキは基本的には自然に降る雨だけの水分で育ちますが、極端に地面が乾燥すると水切れを起こしたり生長不良を起こしたりすることもあります。
夏は地面を乾かさないように、水をたっぷりと与えるといいです。

また、植え付け直後や苗木が地面にしっかりと根付くまでの1年間は、土が乾燥しないように定期的に水やりをしましょう。

氏永 勝之
監修者 smileグループCEO
株式会社ガーデンメーカー 代表取締役
愛知農園植木苗木株式会社 専務取締役
一般社団法人ガーデンビジネス協会 代表理事
氏永 勝之

愛知県稲沢市生まれ。稲沢市が「日本四大植木産地」であることもあり、幼少期から植木に囲まれて成長。
東京農業大学卒業後、名古屋市内の造園会社に就職。公園の整備工事から国交省事業の国道整備工事における土木及び街路樹等の植栽工事に現場代理人として携わる。

執筆者 柴﨑光一

リゾートガーデンスタイル専属の庭師×Webコンテンツクリエイター。 カナダのトロントで造園士を、その後日本で花屋のバイヤー・鉢物の管理・アドバイザーを経験した後、ヤシの木を主体とするリゾート・ドライガーデンの造園士に。 現在は、リゾートガーデンスタイルの社会福祉施設・DOG CAFEの専属庭師に加え、畑の開拓・管理、SNSも兼務。 植物を専門とするWebコンテンツクリエイター、ガーデニング商品の監修者としても活躍中。

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