新しく葉っぱが出てきたのちに古い葉っぱが落ちることから、世継ぎがつつがなく進む象徴とされ、縁起の良い木といわれている。
正月飾りとして扱われることも多い。大きな葉っぱが美しく、庭木のほかに公園樹などに利用されることも。
基本5データ
- 分類
- 庭木-常緑
- 学名
- Daphniphyllum macropodum Miq. subsp. macropodum
- 科・属名
- ユズリハ科ユズリハ属
- 別名
- ウスバユズリハ、ユズルハ
- 草丈・樹高
- 5~10m
- 栽培可能地域
- 東北南部以南
- 花色
- 紫
- 開花期
- 5~6月
- 結実期
- 11~12月
- 耐暑性 / 耐寒性
- どちらも強い
古い葉っぱが新しい葉っぱに場所をゆずる、縁起の良い木
ユズリハとは
ユズリハはユズリハ科ユズリハ属の常緑高木です。
日本では東北地方の南部から沖縄にかけて分布し、自生のものは西日本で比較的多くみられます。
北海道や本州の多雪地帯には低木で這うように育つ変種のエゾユズリハが生育するほか、葉っぱの軸の部分が赤くならず緑のものをアオジクユズリハという品種として区別することも。
大きな細長い葉っぱが垂れ下がるようにつくのが特徴で、通常赤くなる軸と合わせて遠目からでも見分けることができます。
似た仲間のヒメユズリハは、葉っぱがユズリハより小さく先がとがることや、ユズリハに比べ垂れ下がらないことなどで区別できます。
縁起の良い木として有名
ユズリハは、新芽が出てきて葉っぱが大きくなった後に古い葉っぱが落葉するという特徴があります。
まるで子どもの成長を見届けてからその場所を譲り渡すようで、それが世代交代がうまくいき家が長く続くことに例えられ、縁起の良い木として扱われています。
その縁起の良さから、正月飾りの一部として使われたり、鏡餅の下に敷かれたりすることも多く、昔から人々に親しまれてきた木です。
庭木や公園樹にも
ユズリハは正月飾りだけではなく、庭や公園にもよく植えられています。
葉っぱが垂れ下がり、新芽が上を向く姿が独特で、少し大きな公園に行けば、他の木々に混じって植えられているのを見ることができます。
また、分厚い葉っぱは潮風に当たっても枯れることがないため、近縁種のヒメユズリハと一緒に海沿いの公園に植えられることが多いです。
葉っぱや果実に毒性がありますが、口にしなければ問題無い毒なので、心配することはありません。
縁起だけじゃない、魅力的な木
庭のシンボルとして
ユズリハの独特の見た目と縁起の良さは、庭のシンボルツリーとしても活用できます。
葉っぱが大きいからか存在感があり、どこか重厚な感じがするので家の雰囲気を多少選びますが、庭の真ん中でどっしり構えて見守ってくれるはずです。
観葉植物的な楽しみ方
大きな葉っぱが垂れ下がるのが美しいユズリハは、観葉植物的な楽しみ方もできます。
屋内で育てるにはあまり向きませんが、春に新芽とともに花のつぼみがでている姿も美しく、赤みがかった葉っぱの軸と合わせて様々な色のコントラストを楽しむために植えてみても良いでしょう。
意外とかわいい花
ユズリハの花は目立たないのであまり取り沙汰されませんが、よくみると意外とかわいい花をしています。
雄花が咲くオスの株と雌花が咲くメスの株に分かれていて、雄花は花びらもがくもなく、赤紫色のおしべだけがまるでキャッチャーミットのように並んでいます。
雌花は青白い子房に赤いグミのようなめしべが乗っかり、まるでお菓子のような姿。
果実をつけるのはメスの株だけですが、どちらの花も独特でかわいらしい姿をしていて魅力的です。
枝に笑顔がついている
ユズリハの若い枝をよく観察すると、笑った顔のようなものがいくつもあるのがわかります。
「葉痕」とよばれる葉っぱが落ちた痕で、養分や水分を通す維管束の痕がまるで笑顔のような形をしています。
新しい葉っぱにその場を譲ったあとには、笑顔が残るなんて素敵ですね。
そんな小さな楽しみ方ができるのも、ユズリハの魅力の一つです。
ユズリハの育て方と特徴の育て方・管理方法
植え付け・植え替え
新芽が動き出す3~4月か、新しく出た葉っぱが固まる6~7月ごろに行います。土はやや砂質のものがおすすめです。
潮風に強いので、海からの風が当たる庭でも問題なく植えることができます。
植え替えは少し失敗しやすいので、根回しなどの処理をきちんと行うようにしましょう。
肥料
1~2月ごろに寒肥として有機質の肥料を与えます。
剪定
ユズリハは枝の先に葉っぱが集まってつく特徴をしているので、剪定に少しコツがいります。
刈り込むような形でザクザク切ってしまうと葉っぱが無くなってしまうので、枝の密度を減らすイメージで根元から切ったり、枝分かれしている根元から切り戻すような形で剪定するのがおすすめです。
時期は新芽が動き出す前の3~4月ごろが良いですが、花や実を楽しみたい・残したい場合は花が終わった初夏ごろに剪定を行うようにしましょう。
病害虫
病害虫はあまり発生しません。
病害としては枝などにこぶができるこぶ病、葉っぱに斑点がつく裏すす病や褐斑病などがあります。
いずれも病気の発生した部分を切除して焼却処分することで対処します。
裏すす病はほかの多くのすす病と違ってアブラムシやカイガラムシが発生源とならないことに注意が必要で、害虫駆除は直接の対策に繋がりませんが、剪定により風通しを良くすることで対策が可能です。
褐斑病は毎年発生する場合は発生時期に薬剤を散布することで蔓延を防止します。
こぶ病や裏すす病などは発病株が移動することにより感染拡大している可能性があるので、植え付けの際によく見ておくようにしましょう。
害虫はコカクモンハマキやカイガラムシ類が発生することがあります。
コカクモンハマキは幼虫が葉を糸でつづって食害するので、それらを除去することで対処が可能です。
カイガラムシは発生初期にブラシなどでこすり落とすか、大発生した場合はカイガラムシに効く薬剤で対処しましょう。
日当たり
地植えの場合、植え付けてすぐはしばらく水をあげますが、それ以降は夏の乾燥が厳しい場合を除いて気にする必要はありません。
水やり
地植えの場合、植え付けてすぐはしばらく水をあげますが、それ以降は夏の乾燥が厳しい場合を除いて気にする必要はありません。
出典(引用元)
「樹木医必携」
矢口行雄監修
「樹木医が教える 緑化樹木辞典」
山と渓谷社
「山渓ハンディ図鑑3 樹に咲く花 離弁花②」
岩谷美苗著
「散歩が楽しくなる木の手帳」
愛知県稲沢市生まれ。稲沢市が「日本四大植木産地」であることもあり、幼少期から植木に囲まれて成長。
東京農業大学卒業後、名古屋市内の造園会社に就職。公園の整備工事から国交省事業の国道整備工事における土木及び街路樹等の植栽工事に現場代理人として携わる。