「庭木の三大木」のうちの一つと言われ、和風の庭によく植えられている。
光沢のある葉っぱや端正な樹形が美しく、植えると庭の雰囲気が趣のあるものとなる。
剪定するのはやや難しいが、環境をあまり選ばず育ち、ゆっくり成長するので比較的扱いやすい木。
基本データ
- 分類
- 庭木-常緑
- 学名
- Ternstroemia gymnanthera (Wight et Arn.) Bedd.
- 科・属名
- モッコク科モッコク属
- 別名
- アカミノキ、イイク
古くから人気がある定番の庭木
モッコクとは
モッコクは、モッコク科モッコク属の常緑高木です。「庭木の王様」とも呼ばれています。
日本では関東地方から沖縄まで分布し、常緑樹林の構成種となります。
分布内であれば、実際に野山で見かけることも少なくありません。
両性花が咲く株と雄花しか咲かない株があり、初夏ごろに花を咲かせ、秋ごろに実をつけます。
モッコクは以前からツバキ科、ペンタフィラクス科など、所属する科がコロコロ変わっていて、図鑑などで調べるとそれらの科として掲載されていることも多いです。
モチノキとの違い
モッコクとよく似ている木の一つとしてモチノキがありますが、モチノキと比べ、葉っぱが分厚く、柄が赤くなり(環境などによって赤くならないこともあります)、枝先に葉っぱが集まってつくことなどで見分けることができます。
モチノキの仲間は若い枝に溝が入るものが多いので、そのあたりも良い識別ポイントです。
ほかにもトベラやシャリンバイと間違われることがありますが、モッコクは葉っぱを裏から見ても葉脈がほとんど見えないことで見分けられます。
ちなみにモッコクモドキというものもありますが、こちらはバラ科のシャリンバイの変種の一つで、モッコク科のモッコクとは他人の空似です。
古くから人気があった庭木
モッコクは古くから庭木として親しまれてきました。
三大庭木(モッコク、モチノキ、モクセイ)と江戸五木(アカマツ、イトヒバ、イヌマキ、カヤ、モッコク)というものがありますが、モッコクはそのどちらにも含まれており、昔から利用されてきたことがうかがえます。
葉っぱや樹形、果実がとても美しいことに加え、成長が比較的遅く、多少放っておいても枝が伸び放題にならないことなども人気の秘密。
庭木としての利用だけでなく、モッコクは材が赤くて美しく、シロアリにもやられにくいということで、沖縄の首里城正殿にも使われています。
美しい見た目で、庭が趣のある雰囲気に
美しい姿を楽しむ
モッコクはその美しい姿が一番の魅力です。
観葉植物のような光沢のある葉はとても美しく、その端正な樹形はどことなく重厚感があり、庭の雰囲気が引き締まるようになります。
古くから日本で親しまれてきたということもあり、花でいっぱいの明るい庭よりも、和風のお屋敷のような家に似合う雰囲気です。
大きく育てて庭のシンボルに
モッコクは中低木のようなイメージが強いですが、実際は大きくなると10~15mくらいに大きくなる木です。
よそで見かけるときは大きくても3mほどの木が、10mにもなって大きく枝を広げていたら言わずもがなかっこいいです。
まさに庭のシンボルとして君臨してくれること間違いありません。
花や実がかわいらしい
モッコクは花や実がとてもかわいらしいです。
初夏にはサザンカを小さくしたような白い花をぶら下げるように咲かせ、秋になると、食用にはなりませんが小さなリンゴのような実をぶら下げます。
アカミノキという別名があることを考えると、きっと昔から果実を含めて親しまれてきたのでしょう。
これらの花や実を楽しむために植えてみるのもおすすめです。
ただし、モッコクは株によって雄花しか咲かせない場合があるので、購入する前にできるだけチェックしておきましょう。
モッコクの育て方と特徴の詳細情報
- 草丈・樹高
- 10~15m
- 栽培可能地域
- 東北南部以南
- 花色
- 白
- 開花期
- 6~7月
- 結実期
- 10~11月
- 耐暑性 / 耐寒性
- どちらも強いが、耐寒性は比較的弱い
モッコクの育て方と特徴の育て方・管理方法
- 植え付け・植え替え
- 時期は新芽が動き出す前の3~4月がおすすめですが、6~7月上旬や10月上旬でもできます。
あまり環境を選ばない木ではありますが、横に広がる樹形が美しいので、壁の近くはなるべく避けて大きく枝を伸ばせるように植えるのがおすすめです。 - 肥料
- 1~3月ごろに堆肥や鶏糞などの有機質肥料を寒肥として与えます。
- 剪定
- 剪定はやや難しいです。
葉っぱが少なくなるとあちこちから芽が出て補おうとするので、針葉樹のように剪定しすぎて枯れるということはあまりないのですが、芽がたくさん出るとせっかくの美しい樹形が崩れてしまいます。
また、元々の成長が他の木に比べてあまり早くないので、失敗すると修復に時間がかかり、あまりごまかしが効きません。
切り戻して全体に小さくしたい場合などは、植木屋さんに依頼するのが無難です。
基本的には枝を短く切り詰めるのではなく、枝の密度を減らすように根元から切る「透かし剪定」を行います。
枝の密度が高くなりがちなので、中から出ている徒長枝や、同じ場所から何本も出る車枝などを優占して切るようにしましょう。
剪定時期は花が終わった6~7月がおすすめです。
休眠に入る前の10月や、芽が動き出す3~4月にも剪定できますが、花芽まで切ってしまう場合があるので切りすぎには注意しましょう。
花が咲かないという場合は、剪定の際に花芽まで切ってしまっていることがあるかもしれません。 - 病害虫
- 病害虫は比較的少なく、単体で木を枯らすようなものはありません。
病害としてはすす病や白藻病などがあります。
すす病はアブラムシやカイガラムシの出す甘い蜜を栄養源に菌が繁殖し、葉が黒い菌に覆われてしまう病気で、発生すると美観を損ねます。
アブラムシやカイガラムシを除去しないことには防除にならないので、そちらを対処するのが有効です。
白藻病はまれにみられる病気で、葉の表面に斑点のように白い藻が発生します。白藻病は暗くて湿度が高い環境で起こる病気なので、日当たりを良くして剪定により風通しを良くすることで対処が可能です。
害虫では、モッコクハマキがよく目立ちます。
小さなガの幼虫が葉を食べるというものなのですが、葉っぱを糸で綴り合せてその中で暮らすという生態をしているため、遠目から見ても被害がわかり、美観を損ねます。幼虫のいる葉を除去するか、葉に浸透するタイプの薬剤を使用するなどの対処が必要です。
他にはカイガラムシやアオバハゴロモなど、汁を吸うタイプの害虫も複数つきます。カイガラムシなどはすす病のもとになる場合が多いので、発生初期に対処するようにしましょう。 - 日当たり
- 地植えの場合、植え付けてからしばらくは水をあげて様子をみますが、それ以降は特に必要ありません。
夏場に乾燥が激しく、落葉し始めているような場合は水をあげます。 - 水やり
- 地植えの場合、植え付けてからしばらくは水をあげて様子をみますが、それ以降は特に必要ありません。
夏場に乾燥が激しく、落葉し始めているような場合は水をあげます。
出典(引用元)
「樹木医必携」
矢口行雄監修
「樹木医が教える 緑化樹木辞典」
山と渓谷社
「山渓ハンディ図鑑3 樹に咲く花 離弁花②」
村越匡芳監修
「庭に植えたい樹木図鑑」
岩谷美苗著
「散歩が楽しくなる木の手帳」
愛知県稲沢市生まれ。稲沢市が「日本四大植木産地」であることもあり、幼少期から植木に囲まれて成長。
東京農業大学卒業後、名古屋市内の造園会社に就職。公園の整備工事から国交省事業の国道整備工事における土木及び街路樹等の植栽工事に現場代理人として携わる。