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唐松(カラマツ)の育て方・特徴

カラマツ(唐松)の育て方と特徴

カラマツは日本の山野に自生する針葉樹です。針葉樹にしては珍しく、落葉するという性質を持っています。木材を採取するために造林されることもある他、秋の黄葉が非常に美しいなど、様々な魅力のある木です。カラマツの特徴や育て方などについてご紹介します。

基本5データ

分類
庭木-落葉
学名
Larix kaempferi (Lamb.) Carrière
科・属名
マツ科カラマツ属
別名
フジマツ、ラクヨウショウ
草丈・樹高
20m
栽培可能地域
中部地方以北
花色
雄花:茶色 雌花:クリーム色
開花期
4月~5月
結実期
10月~11月
耐暑性 / 耐寒性
耐暑性は弱く、耐寒性は強い

カラマツ(唐松)の特徴~どんな木?

 カラマツ(唐松)は、マツ科カラマツ属に属する、本州の宮城県から石川県の間の山地に分布する日本固有の落葉針葉樹です。
落葉松(ラクヨウショウ)とも呼ばれ、針葉樹にしては珍しい落葉性であることが大きな特徴です。

 北海道には本来分布していませんが、防風林や木材用に植林されるため、植えられたものが見られる場合もあります。
明るい場所が好きな陽樹で、自生地では崩壊地や山火事のあとなどにいち早く侵入し、成長します。
そうしてライバルとなる木がいなくなった場所を独占して子孫を残す戦略です。
実際に、山ではそうした場所にカラマツが群生している様子がみられることがあります。

 葉っぱは他のマツ科樹種と同様に細長い針のような形ですが、他の多くのマツ科樹種に比べて短く、二葉松や五葉松のような1つの短い枝に決まった数の葉っぱがつくのではなく、1つの短い枝に20~30本の葉っぱがまとまってつくことが特徴です。

針葉樹としては希少な落葉樹

 カラマツは、冬になると葉っぱが落ちる落葉樹です。
スギやヒノキ、アカマツやクロマツなど、日本に自生する針葉樹はほとんどが常緑で、冬になっても落葉しません。
カラマツは日本産の針葉樹の中では唯一の落葉針葉樹です。

 日本国内でみられる落葉針葉樹では、海外産ですがヒノキ科のメタセコイアやラクウショウが公園などによく植えられます。
また、カラマツと近縁で、カラマツと人工的に交配されることもあるグイマツも落葉性です。

紅葉時期は遅め

 カラマツは、葉っぱが冬に落葉する前に黄色く黄葉します。
一面に生えるカラマツが黄葉する様子はとても見事で、これを目当てに山登りに出かける人もいるほどです。

 カラマツの黄葉時期は他の樹木よりやや遅いため、見に行きたい場合は自生地にあるビジターセンターが出す自然情報やSNSの情報などをしっかりチェックしておくようにしましょう。

カラマツ(唐松)の松ぼっくりは可愛い

 カラマツはマツ科というグループに属しますが、身近な場所でもみられるマツ科のアカマツやクロマツ、ゴヨウマツなどとは少し異なるグループに属しています。
アカマツやクロマツ、ゴヨウマツなどはマツ科マツ属というグループに属していますが、カラマツはカラマツ属というグループです。

 そのため、松ぼっくりの形も少し違った様子になっています。
カラマツの松ぼっくりはアカマツやクロマツの松ぼっくりよりも小さく、短い柄で枝につくようになります。
アカマツやクロマツの松ぼっくりよりも枝にたくさんついていることが多いです。

 種鱗(松ぼっくりのピラピラしているところ)は薄く、少し反り返っているため、まるでバラの花のような見た目になります。
非常にかわいらしいので、インテリア用などで販売されることも少なくありません。

 カラマツの生える森の中を歩くと、カラマツの松ぼっくりがたくさんついた枝を拾えることがよくあります。

カラマツ(唐松)の木材としての価値

 カラマツは、木材として扱われることも多いです。
国産木材としてはスギやヒノキがよく生産されて使われていますが、カラマツも造林されることがあります。
カラマツ材は魅力もありますがくせもあり、木材として使う上でのメリットやデメリットがあります。

 建材として扱われる他、仮設用の足場、家具、パルプ材、大きいものは柱に使われるなど、活用方法は様々です。
カラマツの木材としての特徴をご紹介します。

欠点はあるが上質な木材

 カラマツの木材は、木の仮道管がらせん状に配列している旋回木理というつくりをしています。
そのため、特に細い木では真ん中の心材部分が乾燥によってねじれてしまうことが多いです。
また、釘を打つと割れやすいことがあるなど、ちょっとくせのある木材です。

 しかし、カラマツの木材は重硬で強度が大きく、特に水中での耐久性が強いです。
また、年輪はハッキリしていて美しいなど、くせを上回るような魅力もあります。
天然生のカラマツのことを略して「天カラ」というのですが、長野県産の大径の天カラは高級材として名高いです。

ヤニがしみ出ないよう処理する必要がある

 カラマツの材には樹脂(ヤニ)が非常に豊富で、そのままにしておくと樹脂が斑点状にしみ出してきて、見た目が悪くなります。
そのため、材として使うにはヤニを抜く脱脂処理をしなければいけません。

 脱脂処理はいくつかの方法がありますが、きちんとすれば問題なく使用できます。
もし自身で育てられた材を使うようなことがあれば、忘れないようにしましょう。

木材用に造林されることもある

 北海道や東北、関東や中部などでは、カラマツの人工林がつくられることがあります。
スギやヒノキのように林業として木材採取のための造林です。
山に行って見られた見事なカラマツ林が、よく調べたら木材採取のための人工林だったというようなこともあります。

 今は昭和のころよりは造林されることは少なくなっているようですが、今でも時々植えられているのを見かけることは少なくありません。

 また、北海道では千島、樺太、シベリアにかけて分布する同属のグイマツとカラマツを掛け合わせてできたものが植えられることもあります。
それらの交配種はカラマツよりもすぐれた性質をもつだけでなく、野ネズミに食べられにくいという性質があり、重宝されています。

カラマツ(唐松)と松の違いは?見分け方について

 いわゆる「松」と呼ばれるものは、アカマツやクロマツ、ゴヨウマツなどを指すことが多いです。
これらはカラマツと同じマツ科というグループに含まれますが、その中でもマツ属というグループです。
カラマツは、マツ科の中でもカラマツ属というグループに含まれます。

 そのため、マツ属とカラマツ属では同じマツの仲間でも見た目が少し違っています。
マツ属の仲間は、たとえばアカマツやクロマツなら葉っぱが短い枝に二本ずつまとまってつき、二葉松と呼ばれます。
ゴヨウマツやチョウセンゴヨウなどは短い枝に葉っぱが五本ずつまとまってつき、こちらは五葉松です。
他にも海外のリギダマツなど三本の葉っぱがまとまってつく三葉松のように、種類ごとに決まった本数の葉っぱがまとまってつく形になります。

 対してカラマツは、短い枝に葉っぱがまとまってつくことには変わりありませんが、一つの枝に20〜30本くらいの葉っぱがまとまってつくのが特徴です。
その点で、マツ属の仲間と見分けることができます。

 他にも、アカマツやクロマツなどのマツ属は常緑樹であるのに対し、カラマツは落葉樹であることや、松ぼっくりの形がマツ属よりもカラマツの方が小さいことなどでも見分けが可能です。

日本におけるカラマツ(唐松)の分布と歴史

 カラマツは地球上で日本にしか分布していない日本固有種で、その分布も本州の宮城県から石川県の間の山地とごく狭いです。
栃木県の日光や長野県の八ヶ岳などの天然生林が有名ですが、自生はどこでも見られるというものではありません。

 昭和には関東、中部、東北、北海道などで造林が行われるようになり、戦後の復興の際に杭や建築現場の足場などとして多用され、日本の発展を陰で支えました。
しかし、昭和後期には代わりの材料が普及するようになり、だんだんと使われることは少なくなってきました。

 今でも活用されていないわけではありませんが、当時ほど使われているわけではありません。
しかし、木目が美しく頑丈なカラマツの材を好む人も多く、今でも愛されている木です。

カラマツ(唐松)の育て方と特徴の育て方・管理方法

植え付け・植え替え

 冬から春までの芽吹きの時期に行うのがおすすめです。
水はけの良い土で、日当たりの良い場所を選び植え付けを行います。
乾燥や潮風には比較的強いですが、植え付け時に風の強い場所や他の植物などに覆われて暗くなっている場所などを選ぶと、うまく育たないことが多いです。

肥料

 特に気にしなくても大丈夫です。
根っこに共生する菌根菌と呼ばれる菌がうまく感染していると上手に育つので、もし山から苗木や種を持ってきて育てる場合、採取地の土や親木の根端を一緒に埋めておくと菌根菌に感染してよく育つ可能性はあります。
それが難しかったり、どうしても気になるような場合は、冬の間に化成肥料などを与えるようにします。

剪定

 剪定時期は、新芽が動き出す前の3月ごろに行うのがおすすめです。
剪定の仕方はどういう樹形に育てたいかにもよって異なりますが、自然樹形はクリスマスツリーのようなきれいな円錐形になります。
基本はこの形を維持したまま、もし必要であれば切り戻し剪定や枝をすくような剪定をするのが良いでしょう。

 大きくしても良いのであれば、剪定しなくても問題ない場合もあります。
主幹を切るような剪定をすると、大きく樹形が崩れるので注意が必要です。

 枝や葉っぱは木にとって光合成するための器官なので、切りすぎると当然弱ってしまいます。
ただ枝が混んできたから剪定するのではなく、何のために行う剪定なのか目的をはっきりさせるのがおすすめです。

病害虫

 病気としては、夏から秋にかけてその年伸びた枝がカビに侵される先枯病や、初夏ごろに葉っぱに斑点ができる落葉病などがあります。
先枯病は、その年に伸びた新しい枝が枯れる病気です。
病気にかかった部分と健全な部分との間には白く樹脂が出てくるのが特徴です。
風の強い場所でよく発生するといわれています。

 病原菌は病気によって枯れた枝で冬を越し、新たな感染源となります。
見かけたら早いうちに対処し、病気の発生した枝を切除し焼却処分しましょう。
また、病気が確認されたらなるべく早く登録された殺菌剤を散布してこれ以上広がるのを防ぐという方法でも対策が可能です。

 落葉病は、初夏ごろに葉っぱの表面にできた小さな斑点がやがて拡大し、全体が赤茶色になり、早い時期から落葉する病気です。
前の年に激しい被害を受けると、葉っぱが黄緑色で小さくなってしまいます。
病気が発生したら、落葉した葉っぱを集めて焼却処分する方法で対処が可能です。
また、広葉樹を下に生えるようにすると被害が少なくなるともいわれています。

 他にも、幹にこぶのようなものができるがんしゅ病や、根っこにキノコの菌糸がとりつくならたけ病などの病気が発生します。

 害虫の種類も様々です。
 カラマツハラアカハバチは針を持たないハチの仲間ですが、幼虫が葉っぱを食害します。
初夏から夏にかけて発生した成虫はカラマツのその年伸びた枝に卵を産みます。
産まれた幼虫は集団で葉っぱを食害し、その後成長すると地表に降り、繭をつくり冬を越すという生態です。
大発生した場合は、幼虫を直接捕殺することで対処を行います。

 カラマツキハラハバチも針を持たないハチの仲間です。
春から初夏にかけて成虫が発生し、葉っぱの付け根に卵を産みます。
産まれた幼虫は短い枝についた葉っぱ(まとまってついている葉っぱ)はあまり食べず、長い枝についた葉っぱを食べて育ちます。
やがて成長した幼虫は、カラマツハラアカハバチと同様に繭の中で冬を越すという生態です。
こちらも、発生が多ければ幼虫を直接捕殺して対処します。

 他にも、ときに大発生するマイマイガや、コガネムシの仲間のオオスジコガネやヒメコガネ、幼虫が新芽を綴り合せて食べるガの仲間のマツアトキハマキなど、様々な虫が発生します。

日当たり

 庭に地植えする場合、植え付けてから暖かい時期で一週間から一か月ほどは、土が乾いたら定期的にたっぷり水やりをするようにしましょう。
ジョウロで少しかけた程度だと地中まで浸透していない場合が多いです。
心配なら少し土を掘るなどして確かめながら、たっぷり水をやるようにしましょう。
庭の土に根付いて旺盛に成長するようになってからは、基本的に水やりの必要はありません。
雨水だけで充分です。

 元々明るいところを好む性質もあって、乾燥には比較的強いです。
ただし、山の標高が高いところに分布する木なので、暖かい低地などで育てる場合、真夏の長期間雨が降らない時期など、明らかに葉先から枯れているような場合は一時的に水をやっても良いでしょう。

水やり

 庭に地植えする場合、植え付けてから暖かい時期で一週間から一か月ほどは、土が乾いたら定期的にたっぷり水やりをするようにしましょう。
ジョウロで少しかけた程度だと地中まで浸透していない場合が多いです。
心配なら少し土を掘るなどして確かめながら、たっぷり水をやるようにしましょう。
庭の土に根付いて旺盛に成長するようになってからは、基本的に水やりの必要はありません。
雨水だけで充分です。

 元々明るいところを好む性質もあって、乾燥には比較的強いです。
ただし、山の標高が高いところに分布する木なので、暖かい低地などで育てる場合、真夏の長期間雨が降らない時期など、明らかに葉先から枯れているような場合は一時的に水をやっても良いでしょう。

氏永 勝之
監修者 smileグループCEO
株式会社ガーデンメーカー 代表取締役
愛知農園植木苗木株式会社 専務取締役
一般社団法人ガーデンビジネス協会 代表理事
氏永 勝之

愛知県稲沢市生まれ。稲沢市が「日本四大植木産地」であることもあり、幼少期から植木に囲まれて成長。
東京農業大学卒業後、名古屋市内の造園会社に就職。公園の整備工事から国交省事業の国道整備工事における土木及び街路樹等の植栽工事に現場代理人として携わる。

執筆者 瀬尾一樹

樹木医です。木も草も大好きで、将来は自分だけの森を持ちたいと思っています。木の美しさや育てる楽しさだけでなく、生きものとしての生態的な面白さも伝えていきたいです!好きな木はケヤキです。

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