8月下旬〜11月上旬の秋ごろに実ができるクリは、剪定や水やりなど管理が楽で、庭木として育てやすい木です。
クリの花・実・葉の特徴や花言葉、育て方、適切な剪定の時期や方法、植え方など、たっぷりと紹介します!
基本データ
- 分類
- 庭木-落葉
- 学名
- Castanea crenata
- 科・属名
- ブナ科クリ属
- 別名
- シバグリ、ヤマグリ
- 草丈・樹高
- 2〜20m
- 栽培可能地域
- 全国
- 花色
- 黄緑、白
- 開花期
- 5月下旬〜6月上旬
- 結実期
- 8月下旬〜11月上旬
- 耐暑性 / 耐寒性
- 強い/強い
クリの花・実・葉の特徴と花言葉、挿し木の仕方
縦に割れ目の入った灰色の幹が、力強く空へ伸び、秋にはトゲの付いたのイガの実がなるクリ(栗)の木。
梅雨の時期には、枝垂れるように咲く白や黄緑の花も咲き、季節感のある庭を演出してくれます。
また、秋の味覚の代表ともいわれるクリの実は種類も豊富で、収穫も楽しめる庭木になります。
梅雨の時期に咲くクリの花と花言葉
雄と雌の花が1つの株で咲く雌雄同株(しゆうどうしゅ)のクリの木は、梅雨の時期の5月下旬〜6月上旬ごろにかけて、黄緑や白色の小さな花を咲かせます。
雄花は独特の香りのある無数の花が集まって垂れ下がるように咲き、雌花は雄花の花茎の付け根に、イガ状の小さな花が咲きます。
クリの花言葉
クリの花言葉は「私を公平にせよ」「贅沢」「満足」です。
クリの実・種・葉の特徴
クリの実と種
8月下旬〜11月上旬ごろに総苞(そうほう)と呼ばれるトゲの付いた果実ができるクリの木。
熟すと自然に皮が裂け、中に食べる部分である種が3つほど入っています。
クリの種の食べ方は、調理する前に40〜45℃ほどのぬるま湯に1時間ほど漬けておくと、皮がやわらかくなり、向きやすいですよ!
クリの葉
クリは、8〜15cm程度の大きさになる楕円形(だえんけい)の濃緑の葉を、枝節から互い違いに展開します。
波打ったような葉の縁はギザギザとしたノコギリ状で、冬になると茶色く変色したまま枝に残り、やがて落葉します。
クリの生長スピード・寿命・樹高・苗木の価格
生長スピードが早いクリは、大きくなると樹高が15mを超える高木になることも。
剪定(せんてい)や病害虫対策など、きちんと手入れされた株であれば、クリの寿命は50年以上もあるといわれています。
個体によっては樹齢100年以上のものもあり、長きにわたって庭木として共に過ごせますね。
苗木の価格は、大きさや品種によって違いますが、樹高60cm(5号鉢)ほどで、1,800円程度から販売しているところが多いようです。
挿木で増やすのが難しいクリの木
クリの木は、切った枝(挿し穂)から根が出るまでの期間が長い遅発性のため、挿し木で増やすのが難しいといわれています。
根が出るまでの日数がかかると、気温や湿度の変化など管理が難しくなり、枯れてしまう場合も。
ただし、一定の温度・湿度が整った小さなグリーンハウスの中で、管理すると発根はしやすいようです。
3つのタイプ!クリの種類
幹が硬く耐久性・防水性が高いため、住宅の建材や箸(はし)木材として昔から親しまれているクリの木。
「桃栗三年柿八年」ということわざがあるように、実が付くまでは最低でも3年ほどかかります。
さらに自家受粉ができないため、1本の木だけでは実もなりません。
実を楽しみたい方は、2本以上の苗木を植えて育てるようにしましょう。
クリの種類
クリは品種によって実の収穫時期が異なり、栽培期間別に区分されています。
実がなる時期が、9月上旬〜9月下旬を早生(わせ)、9月下旬〜10月中旬を中生(なかて)、10月下旬〜11月上旬を晩生(おくて)といいます。
8月下旬〜9上旬までと、早生よりもさらに早く収穫できるものは極早生(ごくわせ)です。
極早生の品種
・森早生:8月末下旬ごろまでには収穫ができ、果肉の質がよく色味やつやが良い森早生。甘みがあり風味が豊かな品種です。
早生の品種
・丹沢:早生ぐりの品種の中でも代表的な丹沢。若木のころから実がなり、植え付けてからも早く実が収穫できます。そのため、手が届きやすい位置で収穫も楽!
・ぽろたん:森早生と丹沢を交配させてできたぽたんは、早生の中でも大粒の種が収穫できます。食べ応えのあるサイズで、皮も薄くてむきやすいです。
中生の品種
・筑波:10月上旬ごろにたくさんの実をつける筑波。実の付きが良く、中の種は果肉がたっぷりです。土質や気温・湿度の変化でも枯れにくく、初心者でも育てやすいのも魅力的!
・利平:利平は9月下旬ごろから実が収穫できます。中の種も大きくてしっとりとした甘さが特徴。クリの中でも上品な風味が楽しめます。
極早生の品種
・石鎚(いしづち):ねっとりとした食感と控えめな甘さが特徴の石鎚。芳醇な香りがし、甘煮として食べるのがおすすめです。
クリ(栗)の育て方・管理方法
植え付け・植え替え
排水性・保水性のある土に
生育旺盛で生命力の強いクリは、基本的には用土の質は選ばず、粘土質の土でも育ちます。
ただし、水はけが悪くて硬い土では、根腐れが起こりやすく、枯れてしまうことも。
植え付ける前には、掘り起こした土に腐葉土、赤玉土、黒土を混ぜて、排水性・保水性を良くしておきましょう。
クリの適切な植え付け・植え替え時期
クリの植え付けや植え替えの時期は、12〜2月ごろのから葉が落ちる冬の間にします。
ただし、氷点下を下回るような極寒日に植え付けをしてしまうと、株が枯れてしまうこともあるので、できるだけ気温が緩やかな日を選びましょう。
鉢植えの場合は、2年に1回ほどのペースで植え替えをします。
根詰まりを起こしやすく、根鉢がパンパンになってしまうと枯れてしまうこともあります。
直径3〜5mほどのスペースを確保してから
幹が大きくなるにつれ枝葉も長く伸び、四方八方と広がるクリ。
直径3〜5m程度と広めのスペースを確保してから植え付けましょう。
スペースが十分でないと、クリの枝葉が周辺の草花に覆いかぶさってしまったり、周りの建造物を傷つけたりする可能性も出るので、苗木が小さくても、植え付ける場所はある程度の広さを確保してくださいね!
クリの苗木の植え方
植え穴の深さは根鉢の高さよりも3cm低くし、根鉢の表面が少し地面から出るように植え付け、足で踏んで固定します。
最後に苗木の横に支柱を立て、強風によって木が倒れないようにしましょう。
肥料
秋にたくさんの実がなるクリには、定期的に肥料を与えた方がよく育つので、年に3回程度肥料を与えます。
小さな実を付け始める6月下旬〜7月下旬ごろに追肥を、実が落ちて収穫後の9〜11月中旬にお礼肥を、新緑や花の準備期間となる2月に寒肥を与えましょう。
花芽や実の付きが良くなるように、窒素(N)・リン酸(P)・カリウム(K)のバランスが取れた緩効性化成肥料を与えるのがおすすめ!
剪定
地面に植え付けられたクリは生長スピードが早いので、放置すると見た目が悪くなるだけでなく、大きくなり過ぎて、実の付きも悪くなってしまうことも。
また、病害虫の被害などにもあいやすくなって木が弱ったりするので、最低でも1年に1回は剪定をしましょう。
クリの適切な剪定時期|12〜2月
クリの剪定は、葉が落ちた12〜2月が最適です。
梅雨の時期や夏の時期だと、花芽切り落としてしまい、実がならない場合も。
また、病害虫や水切れを起こして枯れてしまうこともあるので、できるだけその時期の剪定は避けるようにしましょう。
クリの剪定の手順
クリは新しく伸びた枝先に花芽を付け、実がなります。
たくさんの枝葉が伸びていると、実に栄養が行かず、小さいものばかりが採れるような木になってしまうので、株の内側に向かって伸びるような不要な枝を切りとすことが大事です。
Step1. 樹高が高くなり過ぎている場合は、中心の幹を切り落とす(芯止め)
クリの樹高が高くなって、コンパクトにしたい場合は、中心の太い幹を枝分かれした箇所で切り落とす「芯止め」をします。
太い幹を切った後は、トップジンなどの癒合剤を塗って、木が枯れないように保護しましょう。
Step2. 古い枝や枯れた枝を間引く
花が咲き終わって古くなると花芽を付けなくなるので、枝分かれした箇所から切り落とします。このとき、枯れてしまった枝葉も間引くように切り落としましょう。
Step3. 枝先の不要な枝葉を間引き整える
1本の太い枝からは、複数の枝葉が伸びます。
葉が展開したときに、株の内側に日陰をつくってしまうような枝、下部の内側へ向かって伸びる枝など不要な枝を切り落としましょう。
枝葉が重なって過密になりそうな箇所は、枝分かれした箇所で全て切り落とします。
病害虫
病気
・胴枯病
クリの木は、比較的暖かい時期に病原菌が幹や枝の内部に寄生し、「胴枯病」という病気を発症させることもあります。
幹や枝の傷や切り口から感染し、症状が悪化すると株が枯死する場合も。被害にあわないようにジメジメとした場所を避けて植え付けたり、剪定をしたら切り口を治癒する癒合剤を塗りましょう。
剪定ばさみ、ノコギリなどはしっかりと殺菌消毒をしてから作業をしてくださいね!
害虫
・アブラムシ
・カイガラムシ
・クリミガの幼虫
・イラガの幼虫(毛虫)
枝葉が混み合って風通しが悪くなると、温度と湿度が上がり、クリの木にカイガラムシやイラガ(毛虫)の幼虫が付くことも。
定期的な剪定はもちろんですが、消毒をして予防したり、ピンセットや歯ブラシを使って駆除したりしましょう。
日当たり
生命力の強いクリは、基本的には自然に降る雨だけの水分で大丈夫です。
ただし、植え付け直後と、苗木が地面にしっかりと根付くまでの1年間は、土が乾燥しないように定期的に水やりをしましょう。
水やり
生命力の強いクリは、基本的には自然に降る雨だけの水分で大丈夫です。
ただし、植え付け直後と、苗木が地面にしっかりと根付くまでの1年間は、土が乾燥しないように定期的に水やりをしましょう。
愛知県稲沢市生まれ。稲沢市が「日本四大植木産地」であることもあり、幼少期から植木に囲まれて成長。
東京農業大学卒業後、名古屋市内の造園会社に就職。公園の整備工事から国交省事業の国道整備工事における土木及び街路樹等の植栽工事に現場代理人として携わる。
リゾートガーデンスタイル専属の庭師×Webコンテンツクリエイター。 カナダのトロントで造園士を、その後日本で花屋のバイヤー・鉢物の管理・アドバイザーを経験した後、ヤシの木を主体とするリゾート・ドライガーデンの造園士に。 現在は、リゾートガーデンスタイルの社会福祉施設・DOG CAFEの専属庭師に加え、畑の開拓・管理、SNSも兼務。 植物を専門とするWebコンテンツクリエイター、ガーデニング商品の監修者としても活躍中。