冬ごろにたくさんの実がぶら下がるのが特徴の低木。病害虫が少なく育てやすいので、庭に良く植えられている。
「万両」の名からもわかる通り、縁起の良い木として有名。花言葉も「財産」「徳のある人」「慶祝」など縁起の良いものばかり。
基本データ
- 分類
- 庭木-低木・下草
- 学名
- Ardisia crenata Sims
- 科・属名
- サクラソウ科ヤブコウジ属
- 別名
- ハナタチバナ
- 草丈・樹高
- 0.3~1.0m
- 栽培可能地域
- 関東以南
- 花色
- 白
- 開花期
- 7~8月
- 結実期
- 11月
- 耐暑性 / 耐寒性
- どちらも強いが、耐寒性の方がやや弱い
日本で古くから親しまれてきた低木
マンリョウとは
マンリョウはサクラソウ科ヤブコウジ属に含まれる常緑低木です。
以前はヤブコウジ科に含まれていましたが、DNAによって分類するAPG分類体系ではサクラソウ科に含まれるようになりました。
波打つような葉っぱと、冬ごろに赤い実をたくさんぶら下げるのが特徴です。よく栽培されますが、関東から沖縄にかけて自生もあり、常緑樹林の林床などでよく見られます。
自生のものは栽培品と比べ、背が2mくらいに高くなることがあり、葉がやや平らに見えるものが多いです。また、栽培されていたものがアメリカなどで野生化し、侵略的外来生物として問題になっています。
特殊な方法で養分を確保
マメ科の植物の多くの根っこには根粒菌とよばれるバクテリアが共生しており、根粒菌は空気中の窒素(タンパク質の材料)を、植物は光合成でつくった糖を渡している、というのは有名な話です。
マンリョウは、葉っぱの中で「葉粒菌」とよばれるバクテリアと共生して、自分の栄養を確保しています。マンリョウの葉っぱは立体的に波打った特徴的な形をしていますが、その縁に粒のようなものがあり、その中にバクテリアを住まわせているのです。
縁起の良さが人気
マンリョウ(万両)という名前は、実がたくさん実る様子をお金がたくさん貯まった様子にたとえたことから来ています。そのため縁起の良い植物として古くから親しまれてきました。
他にも同じように縁起の良い植物としてセンリョウ(千両)、カラタチバナ(百両)、ヤブコウジ(十両)、アリドオシ(一両)というものがあります。
バリエーションが豊富
マンリョウには実の色などでたくさんのバリエーションがあります。
実の色が白になるシロミノマンリョウ、黄色になるキミノマンリョウ、オレンジ色になるカバイロマンリョウに加え、大粒の実がなる「宝船」という品種もあります。
どれも育て方は普通のマンリョウと変わらないので、手軽に育てることが可能です。
豪華な見た目で庭を華やかにする
暗い庭が一気に華やかに
マンリョウは薄暗い日陰で育つ植物ですが、真っ赤な実をたくさんつける様子がとても華やかです。
少し庭が寂しくなる冬ごろに実をつけるのもあいまって、ひとたび植えるだけでうっそうとした庭が一気に華やかな印象になります。となりの敷地から大きな木がはみ出してくる、ブロック塀が高くて庭が暗い、そんなときにも植えてみても良いでしょう。
立体的な庭を演出
庭の木が大きく茂ってくると、剪定してもちょっと薄暗くなってしまい、下に植えられる植物の種類が限られてきます。
種類によっては、育ちはするけど花や実はほとんどつけず、余計にうっそうとした印象になってしまうことも。
マンリョウも暗すぎると実をつけなくなることがありますが、多少暗い程度だったら問題無く実をつけます。大きな木とその下でたわわに実をつけるマンリョウとで、庭のスペースを無駄にすることなく立体的な空間を演出できます。
一両~万両まで植えてみる
実のつき方に応じて、一両(アリドオシ)、十両(ヤブコウジ)、百両(カラタチバナ)、千両(センリョウ)と、それぞれ縁起の良い植物があり、どれもマンリョウと似たような環境で育ちます。
よく植えられるのはマンリョウとセンリョウくらいですが、せっかくなので一両から万両まで全部植えてみて、とても縁起の良い庭にしてみても良いかもしれません。
すぐ近くで鳥が見られる
マンリョウの実は、鳥に食べられてフンと一緒に種を遠くへ運んでもらうという戦略のもとにあります。
なので、冬になるとさまざまな鳥たちがマンリョウの実を食べにやってきます。
他にも鳥が食べる木の実で庭に植えられるものはたくさんありますが、マンリョウは鳥の数が増えて、なおかつ餌に乏しくなる冬に実をつけること、背が低いので間近で鳥を観察できること、そこまで美味しい実ではないので一気に食べられず、数が多いから長い期間鳥が食べにくることなどで、とても野鳥観察に適しています。
窓から見えるところに植えておけば、すぐ近くでかわいらしい野鳥の姿が見られるかもしれません。また、春に庭を確認してみると、鳥が種を運んだおかげでマンリョウの赤ちゃんがあちこちで芽生えていることも。
マンリョウを植えておくだけで、ちょっとした自然の営みが体感できるのです。
マンリョウの育て方と特徴の育て方・管理方法
植え付け・植え替え
4~6月に行います。直射日光、特に西日の当たらない場所を選んで植えるようにしましょう。
土は森の中のような肥沃な土がオススメで、元肥として腐葉土など入れておくのが良いです。
肥料
冬と、花期が終わった初秋ごろに油かすなどの固形肥料を与えます。
先に説明した通り、葉粒菌によってバクテリアから栄養を得ているということもあり、特に肥料が無くても元気に育つこともあります。
剪定
成長が遅く、高さもあまり出ないので基本的には必要ありません。
ただしあまりに茂りすぎた場合や高さを抑えたいときなどは芽吹く前の3~4月ごろに剪定を行い、上から幹を切り詰めるような形にします。
また、地面の中に地下茎を広げてあちこちで芽吹くので、育てる範囲を限定したいときは、出てきた芽を根元から切るか、そこから地下茎まで引き抜いて切ってしまうのがオススメです。
剪定した枝は、葉っぱを半分程度落として鹿沼土などに挿せば挿し木として新しい株にすることもできます。
病害虫
病害であまり目立つものはありません。
害虫もあまりつきませんが、ツバキワタカイガラムシやイヌガヤワタカイガラムシなどのカイガラムシの仲間が発生することがあり、放っておくと葉が落葉したりすす病が発生したりします。
数が少ないうちはついている枝葉の切除や、ブラシで直接こそぎ落とすなどで対処ができますが、数が増えて対処しきれなくなった場合は剪定して風通しをよくしたり、登録された農薬を散布したりして対処すると良いです。
日当たり
植え付けた当初を除けば、基本的には必要ありません。
よっぽど乾燥して元気がない場合は水をあげても良いですが、そこまで乾燥する場所だとそもそも万両(マンリョウ)の木にとって良くない環境である場合があります。
水やり
植え付けた当初を除けば、基本的には必要ありません。
よっぽど乾燥して元気がない場合は水をあげても良いですが、そこまで乾燥する場所だとそもそも万両(マンリョウ)の木にとって良くない環境である場合があります。
出典(引用元)
「樹木医必携」
・山と渓谷社
「樹に咲く花 合弁花・単子葉・裸子植物」
・岩谷美苗著
「散歩が楽しくなる 樹の手帳」
・林将之著
「樹木の葉 実物スキャンで見分ける1100種類」
・成美堂出版
「庭木・花木の手入れとせん定」
・池田書店
「庭に植えたい樹木図鑑」
愛知県稲沢市生まれ。稲沢市が「日本四大植木産地」であることもあり、幼少期から植木に囲まれて成長。
東京農業大学卒業後、名古屋市内の造園会社に就職。公園の整備工事から国交省事業の国道整備工事における土木及び街路樹等の植栽工事に現場代理人として携わる。