栗の実は、そのまま食べることもできるし、スイーツなどの料理に使うこともできます。そんな栗の実が、自分の庭で収穫できたら素敵ですよね。
しかし、栗の木を育てていてもなかなか実がならないことがあります。栗の木に実がならない原因と実がなりやすい育て方についてご紹介します。
目次
栗の木に実がならないのはなぜ?
庭で栗の木を育てていると、木は一見元気なのに全く実がならないということがあります。一体、どうして栗の木に実がならないのでしょうか。
栗の木に実がならない原因にはいくつかあります。お世話のやり方を変えれば解決するものもあれば、環境を整えてあげればよく成長して実をつけるようになるもの、何年か経てば実をつけてくれるものなど、様々です。
栗の木に実をつけるためには、それらの原因を探って、どれが最も直接的な原因なのか推測しなければいけません。栗の木は人間のように言葉を喋らないし、体のつくりも全く異なります。
そうした生き物から実がならない原因を当てるには、推測して試すことを繰り返さなければいけません。庭の栗の木に実がならない原因に当てはまるものが無いか、よくチェックしてみてください。
お世話のやり方を見直す
剪定や肥料などのお世話の仕方を見直してみると、実がなるようになる可能性があります。お世話の仕方によって、栗の木が花や葉をつけるのをかえって邪魔してしまったり、弱らせてしまったりする場合があるためです。
お世話の仕方を変えれば、案外あっさり実がなるようになるかもしれません。お世話はしすぎないのもよくありませんが、しすぎるのもまたよくないです。
庭で木を育てているとついついあれこれ手をかけてあげたくなる気持ちはわかりますが、庭の栗の木をどのように手入れしているか、一度見直してみましょう。
剪定のやり方に問題がある場合
剪定のやり方に問題があるかもしれません。剪定は、多かれ少なかれ木にダメージを与える行為です。まだ実がつかない若木のころからたくさん強剪定していると、なかなか成長ができずにいつまで経っても実がつかない場合があります。
また、強剪定することによって出る徒長枝(上に勢いよく伸びる枝)は花芽があまりつきません。そして、栗の木の花芽がすでにできた状態で多くの枝を剪定してしまうと、花芽ごと落としてしまうことになります。毎年すべての枝を切り詰めるような剪定をしていて、なおかつ花が全く咲かないというような場合は、剪定のやり方が原因で実がならないのかもしれません。
栗の木の花芽ができる時期
栗の木の花芽は、開花する前年の夏ごろには既にできていると言われています。そのため、それ以降の時期に花芽を落とすような剪定をしてしまうと、栗の木が充分成長して環境条件も整っているのにも関わらず、花が咲かず実もならないということになってしまう可能性があります。剪定を行う際には、その点に気をつけておくのがおすすめです。
土の栄養が足りていない
土の栄養が足りずに、栗の木が実をつけられないのかもしれません。栗の木は多少土の栄養が少なくても、他の条件が悪くなければよく育つこともあります。
ただ、毎年実を収穫していると栄養が足りなくなる可能性は充分にあります。鉢植えなどの、根っこを伸ばせる範囲が限られている環境ならなおさらです。肥料を適切に与えて、土の栄養不足を解決してあげると、実をつけるようになるかもしれません。
栗の木の育つ環境を見直す
庭で栗の木を育てている場所の環境はどのようになっていますか?庭の環境が栗の木の生育に適していないと、あまり実がならない場合があります。
栗の木が枯れるほどの環境でなくても、生育が遅れて実をつけるほどに光合成や成熟ができないかもしれません。庭の環境が栗の木の生育に適しているか、見直してみましょう。
当たりがあまり良くない
庭で栗の木を育てている場所の日当たりはどうでしょうか?栗の木は日当たりの良い場所を好むので、暗い場所だとうまく育ちません。栗の木より背の高い木の枝葉や建物などで太陽の光が遮られてしまっているような場合は、日当たりを見直してみると良いかもしれません。
水分量が充分ではない
水分量が適切ではないかもしれません。栗の木は様々な環境で育ちますが、極端な乾燥に強い木では無いです。真夏に雨の降らない日が長期間続いて、葉っぱがしおれたようになったり、枝先から枯れていったりしているような場合は、水をあげるようにしたほうが良いかもしれません。
また、常に湿ったような環境も好きではなく、雨の後に何日も水たまりが消えないような環境だと、うまく育たない場合があります。栗の木が育つのにちょうど良い水分条件になっているか、チェックしてみてください。
病害虫が多数発生している
病気や害虫が多数発生していると、栗の木の生育は遅くなります。病原菌や害虫に栗の木の枝葉が食べられてしまうと、その分光合成できる量が減り、栗の木の成長量や実をつける量が減ってしまうためです。
当たり前ですが、たくさん光合成ができた方が栗の木にも余力ができて、実をつけやすくなります。少し葉っぱがかじられているくらいであれば問題ないことも多いですが、病気や害虫が大発生すると影響が出ることがあります。庭の栗の木に病気が発生していないか、葉っぱや幹が食べられていないか、よくチェックしてみましょう。
栗の木に出る病気
栗の木には、様々な病気が発生することがあります。その多くがカビやキノコなどの菌類の仲間を病原とするものです。
幹や枝には、柔らかく腐ったようになる疫病や、幹の一部が変色して枯れる胴枯病、白点胴枯病、コリネウム枝枯病などが発生します。
葉っぱ(一部果実にも)には、斑紋が出る炭疽病、斑点病、葉枯病、すす葉枯病などが見られることがあります。
葉っぱにつく病気の場合、少し出るくらいなら栗の木の健康に大した影響は無いことが多いですが、大発生すると成長が悪くなる場合もあるので注意が必要です。また、病気の種類によってはせっかくできた実にも病気が出てしまう可能性もあります。また、幹や枝に出る病気の場合は、被害が大きいと枝ごと枯れたり、枯死する原因となる可能性もあります。
いずれの場合も、病気の発生している枝や葉っぱが次の感染源になることが多いので、切除して焼却処分してしまいましょう。葉っぱに斑点が出る病気の場合、落葉で菌が冬越しをすることがあるので、落葉も集めるようにします。
また、風通しを良くして、内部の枝にも風や日光が当たるようにすることも大切です。
栗の木に出る害虫
栗の木は、害虫の種類も様々なものがあります。代表的なものとしては、クスサン、クリオオアブラムシ、クリタマバチなどが挙げられます。
クスサンは、大きなガの幼虫で、シラガタロウとも呼ばれる長い毛が目立つのが特徴です。栗の木の葉っぱをかじって、大発生すると栗の木を丸坊主にしてしまうこともあります。
クリオオアブラムシは、栗の木の新芽などに集まって汁を吸うアブラムシの仲間で、アブラムシの中では比較的大きく、目立つ姿です。たくさん発生すると、アブラムシの出す甘い汁をもとにカビが繁殖するすす病も併発することがあります。
クリタマバチはとても小さなハチで、栗の木の新芽を肥大させて虫こぶをつくる害虫です。虫こぶのできた新芽は枝の伸びが悪くなります。
他にも、幼虫が幹を食べるシロスジカミキリ、幼虫が葉っぱを食べるオオミノガやマイマイガのような様々なガの仲間、枝葉の汁を吸うオオワラジカイガラムシなど、様々な種類の害虫がつきます。
これらの対策としては、見つけ次第捕殺するという方法もありますが、アブラムシ類など小さく繁殖の速いものに対してはキリがない場合もあるので、被害が大きい場合は適用のある薬剤を使うのがおすすめです。
一株だけで育てている
栗の木は、自分の花粉で受粉しても実をつけません。実をつけるためには、違う遺伝子を持った株の出す花粉で受粉する必要があります。
そのため、一株だけしか植えていない、もしくは同じ遺伝子を持つ同じ栽培品種だけを植えているという場合は、たくさん花が咲いても実がならない可能性が高いです。花はたくさん咲くのにほとんど実がならないという場合は、これが原因かもしれません。
まだ充分生育できていない
栗の木がまだ若木で、実をつけるほど生育できていない可能性もあります。成長の速い栗の木は実をつけるようになるのも比較的速いですが、それでも庭に植えてすぐには花が咲かないことも多いです。種から育てているような場合だと、なおさら時間がかかります。
また、生育環境が悪くてあまり成長できていないと、実をつけるようになると言われる年数を大幅に過ぎても実をつけないこともあります。栗の木が元気で、特にお世話の仕方や環境に問題が見当たらず、なおかつ栗の木がそれほど大きくない場合は、その可能性を考えてみても良いかもしれません。
栗の木に実をつけるために
栗の木が実をつけない原因がわかったら、その原因を取り除くことで実をつけるようになるか試してみましょう。考えられる原因を一つずつ潰していくのが、栗の木に実をつけるための一番の近道です。原因ごとの対処方法をご紹介するので、参考にしてみてください。
剪定のやり方を見直す
剪定には様々なやり方がありますが、栗の木の場合、メインになる枝を3~5本ほど決めて、それを育てていくような仕立て方がおすすめです。
剪定時期は葉っぱが落ちている12~3月ごろに行います。メインの枝は軽く切り戻し、毎年混みあった枝は間引いて風通しを良くします。毎年大きくなっていくものなので、あまり強く切り詰めすぎないようにしましょう。
肥料のあげ方を見直す
肥料は、12月ごろに元肥として堆肥などを与え、その後開花期~開花後くらいと、多少は実がつくなら収穫後に少しずつ肥料を与えるのがおすすめです。12月ごろに与える元肥の量を一番多くします。
ただし、あまりに多く頻繁に与えたり、栗の木が弱っているときに与えたりすると、かえって栗の木が弱ってしまう場合があります。肥料のパッケージにある与え方をよく読んで、与えるようにしてみてください。
水のあげ方を見直す
栗の木は水はけの悪い環境をあまり好まないので、常に土が水で湿っているような状態は避けましょう。庭に地植えしている場合は、植え付けてから根付くまでの期間を除き、基本的に水やりは必要ありません。
夏場に長期間雨が降らず、葉っぱがしおれてきているような場合はあげても良いですが、そうでない状態で毎日のように水やりをしていると、かえって栗の木が弱ったり、乾燥に弱くなったりしてしまう可能性があります。
ただし、鉢植えの場合は根っこを伸ばせる範囲が限られるので、土が乾いたら定期的に水やりをするようにしましょう。
生育環境を改善する
栗の木がよく育つように、生育環境を改善してみましょう。栗の木がよく育つように庭の環境を整えてあげることで、栗の木が実をつけるようになるかもしれません。栗の木が好む生育環境と、その作り方についてご紹介します。
また、特に日当たりなどの生育環境は急に変えると木が一時的にダメージを受ける場合があります。環境を変えるときは、時間をかけて少しずつ慣らすように変えていくのがおすすめです。
よく育つ生育環境
栗の木は、日当たりが良く、風通しの良い場所を好みます。他の木の枝葉や建物などで日陰になっている場合や、苗を密に植えてしまっている場合、すぐ近くに他の木があるなどしてジメジメしている場合は、変えられるところを改善してあげると良いかもしれません。
また、土は水はけが良く、なおかつ水もちが良いものを好みます。砂が多く、すぐに乾燥してしまう場所や、雨が降ったあと、いつまで経っても水たまりがなくならないような場所や、踏み固められて空気の入る隙間が無いような場所では、土壌改良をしてみた方が良いかもしれません。
環境改善のやり方
日当たりや風通しを良くしたい場合は、他の木の枝や、栗の木の混み合っている枝を剪定することで改善できることがあります。
土に関しては、水はけが良すぎて乾燥するような場合は赤玉土などを混ぜて水もちを良くしてみても良いでしょう。水はけが悪い場合も同じように排水性の高い素材を混ぜることで改善できる場合もありますが、踏み固められた土などの場合、縦に割った竹の節を壊してからまた一つに縛り、土の中に埋めるという方法もあります(割竹挿入法)。
菌根菌はついている?
栗の木に限らず多くの植物には、「菌根菌」と呼ばれる菌(カビやキノコの仲間)と根っこで共生しています。菌から出た菌糸が土の中を伸びて栄養や水分を取ってきて、その代わりに植物は光合成でできた栄養を渡す、というものです。
菌根菌が無くても多くの植物は育ちますが、菌根菌がついているといないとでは成長量に大きな差があります。栗の木には、「外生菌根」というタイプの菌根菌がつきます。周囲にも栗の木やどんぐりの木がよく生えている環境であれば、土の中にも菌根菌がいるかもしれません。
しかし、周りに栗の木やどんぐりの木が生えていなかったり、鉢植えなどの隔離された環境で育てていたりすると、菌根菌が根っこについていない可能性があります。栗の木につく外生菌根はついていれば肉眼でも確認できるので、根っこの先端に少し分厚いカバーのようなもの(菌鞘)がついているか確認してみましょう。
病害虫対策のやり方
病害虫が多く発生している場合、あらかじめ病害虫が発生しづらい環境にしておくことで対処できる場合があります。病害虫は風通しの良い場所を苦手とするものがあるので、混み合っている枝をすいてみたり、すぐ近くに植えてある苗を間引いてみたりすると、風通しが良くなります。
また、病害虫は被害が大きくなると対処しきれなくなる場合があるので、なるべく早めに対処するのが良いでしょう。あまり神経質になりすぎなくても良いですが、明らかに葉っぱを食べている害虫がいる場合や、葉っぱに斑点が出始めた場合などは見つけ次第対処してしまうのがおすすめです。
そのためには、栗の木の変化になるべく早く気付けるように、日ごろからよく観察するようにしましょう。
栗の木に実がなるまで
栗の木は、植え付けてすぐに花や実をつけ始めるわけではありません。「桃栗三年柿八年」ということわざがありますが、苗木を植え付けてからおよそ3年くらい経ってから実をつけるようになるといわれています。
それまでは、栗の木をよく成長させたり樹形をつくったりすることなどに注力する時期です。また、ことわざでは3年ほど経ってから実がなりはじめるといわれていますが、実際には苗の大きさや生育環境の違いなどにより、実がなり始めるまでの年数が前後する場合もあります。
環境が悪かったり生育環境が良くなかったりすると、実がなり始めるまでにさらに年数がかかる可能性があるので注意しましょう。また、種から育てるとさらに長い年数がかかる可能性があります。
まとめ
栗の木に実がなるためには、手入れの仕方や庭の環境のつくり方などを工夫する必要があります。なぜ実がならないのか原因を推測してみて、その原因を一つずつ潰していくようなイメージで取り組んでみましょう。
ただ、「自分でやるのは自信がないから、一度プロの技を見てみたい」「やるべきことはわかったけど、それをやる時間がない」「何が原因で栗の木に実がならないのかさっぱりわからない」といったような場合には、smileガーデンのような業者にお願いしてみるのも一つの方法です。
多少お金はかかりますが、手探りで自信のない中手入れなどをするより最初にプロの技を見せてもらったほうが、長い目で見ると結果的に得をすることになるかもしれません。ぜひ依頼してみてください。
愛知県稲沢市生まれ。稲沢市が「日本四大植木産地」であることもあり、幼少期から植木に囲まれて成長。
東京農業大学卒業後、名古屋市内の造園会社に就職。公園の整備工事から国交省事業の国道整備工事における土木及び街路樹等の植栽工事に現場代理人として携わる。