杉(スギ)の育て方と特徴

スギ(杉)の育て方と特徴

木材として生産される日本固有の常緑針葉樹。日本各地にスギの植林が存在する。円錐形の樹形と、鎌型の葉がらせん状につく様子が特徴的。花粉症の原因として有名だが、無花粉スギや花粉の少ないスギの開発も進んでいる。

基本データ

分類
庭木-常緑
学名
Cryptomeria japonica (L.f.) D.Don
科・属名
ヒノキ科スギ属
別名
なし
草丈・樹高
10~50m
栽培可能地域
東北以南
花色
茶色(雄花)、緑(雌花)
開花期
3~4月
結実期
10~11月
耐暑性 / 耐寒性
どちらも強い

木材として優秀な、日本にしかない樹木

日本固有の針葉樹

スギはヒノキ科スギ属の常緑針葉樹です。以前はスギ科と分類されていましたが、現在ではヒノキ科に含まれるのが一般的になります。マツやイチョウ、ソテツなどと同じ裸子植物で、被子植物とは離れたグループに含まれます。分布は本州から屋久島までで、地球上で日本にしか自生しない日本固有種です。
大きく2つの品種に分かれており、太平洋側に分布するオモテスギと、本州日本海側の多雪地帯に分布するウラスギ(アシウスギ)の二つに分けられます。ウラスギは枝が垂れ下がり、地面に着いたところから根が出るということが特徴的です。分布域内で木材用に広く栽培され、山に行くとかなりの確立で見かけることができます。その反面、屋久島のスギ林のような天然林と考えられるものは少なく、野外で見かけるものの多くが植林されたものです。

一目でわかる特徴的な姿

スギは他の樹種とは全く違った姿をしていて、日本産ヒノキ科の中でも似たものがいない特徴的な姿をしています。鎌型の葉っぱがらせん状につき、葉っぱの根元は枝を覆うようになるので、枝全体が緑色になります。広葉樹のように落葉せず、葉っぱのついた枝ごと落ちるのも特徴的です。樹形はクリスマスツリーのような三角錐状で、枝葉が丸くまとまる点で見分けがつきます。慣れれば遠目から見ても間違えることはありません。

木材として優秀

そこら中の山に植えられ、季節になるとたくさんの花粉をふりまくスギ。スギ花粉によるアレルギーは20%以上の方が発症しているとされ、大きな社会問題となっています。「どうしてこんなにたくさん植えているのか」と思う方も多いかもしれません。たくさん植えていることにはいくつか理由がありますが、スギは木材としてとても優秀という一面があります。まっすぐ大きく育つ点や加工のしやすさから、建築材などで多く使われてきました。
日本は山が多く、輸送コストなどの問題から、現在では安い海外産の材を使われることが多いですが、今でも日本のスギが木材として使われることも多いです。地域ごとに栽培品種があり、腐りにくく木目が美しい屋久杉など、様々な特徴を持ったものがあるのも魅力的です。近年では無花粉スギや花粉の少ないスギなどの開発も進んできており、普及していくのが期待されます。

観賞用だけじゃない、様々な楽しみ方

まっすぐ伸びるシンボルツリーに

スギの樹形はクリスマスツリーのような円錐形で、非常に整った姿です。大きく育てて、シンボルツリーにすることができます。きれいな円錐形をつくるには上に伸びる枝を切らないことが大事で、幹の途中から切るような強剪定をしてしまうと、円錐形には戻りません。また、大きくなると手入れが難しくなるので、なるべく花粉の少ない品種や無花粉のものを植えるようにしましょう。

野性味あふれる樹形に仕立てる

屋久島の縄文杉を筆頭に、日本各地に大きなスギの名木があります。どれも木材用に育てられた円錐状の樹形とはかけ離れた姿で、枝の曲がった独特の樹形です。まっすぐ育つ姿も魅力的ですが、こうした野性味あふれる姿に仕立ててみても良いでしょう。
元々は木材を採るための形ですが、台杉仕立てにするのも美しいです。スギは挿し木や実生で増やせるので、複数育てて様々な姿のものをつくってみても良いかもしれません。そこまでのスペースが無ければ、盆栽にするのもオススメです。変わったところでは、刈り込んで生垣として育てることもできます。

観賞用以外の楽しみ方

スギには美しく仕立てて鑑賞する以外にも、楽しみ方があります。加工に自信があれば太くなった枝や幹を木材として使ってみても良いでしょう。販売するとなると話が複雑になってきますが、個人で使う分には十分楽しめます。また、スギの精油成分を抽出して、アロマオイルをつくることもできます。実際にスギのアロマオイルは販売されており、リフレッシュできるスッキリした香りはとても人気です。様々な楽しみ方を模索してみると良いでしょう。

スギ(杉)の育て方・管理方法

植え付け・植え替え

暖かくなって新芽が動き出す直前の、3~4月ごろに行います。水はけの良い肥沃な土を選び、日当たりの良い場所に植えましょう。植え替えは比較的成功しやすいです。

肥料

2月~3月ごろに寒肥として有機質肥料などを与えます。

剪定

剪定は新芽が芽吹く前の3~4月ごろに行うのがオススメです。円錐状の自然樹形を残したい場合、剪定は混んだ枝を整理したり枯れ枝を落とすくらいで問題ありません。中心の一番上に伸びる枝を切ってしまうと、横に伸びる枝が立ち上がってきて樹形が崩れます。台杉仕立てにしたい場合は、自然樹形の場合とは逆で上に伸びる枝を切って横に伸びる枝の成長を促すという形になります。台杉仕立ては技術のいるものなので、しばらくは植木屋さんなどにお願いしてみてやり方を覚えていくのが良いでしょう。

病害虫

病気も害虫も種数としては多いです。

病気としては枝にこぶができるこぶ病、枝葉が枯れる赤枯病、フォマ葉枯病、黒点枝枯病などがあります。それぞれ病気の性質や対処法が微妙に異なりますが、基本的に病気が発生している部分や落葉落枝を焼却処分するのがオススメです。こぶ病の場合、こぶの切除は病原菌が成熟する5~6月より前に行いましょう。また、千葉県によく植えられるサンブスギではチャアナタケモドキという菌による非赤枯性溝腐病が発生しやすいです。幹が溝状に腐り、木材として使える部分が減るだけでなく、台風などで倒れやすくなるので注意しましょう。

害虫は、葉っぱを食べるスギドクガ、スギノハダニ、スギマルカイガラムシ、ヒメコガネなどの他、幹を食べるスギカミキリ、スギノアカネトラカミキリ、マスダクロホシタマムシなどが発生することがあります。数が少ないうちは捕殺して対処できることもありますが、数が多い場合は薬剤で対処するか、幹を食べる虫は侵入口になる枯れ枝を切除したり、成虫の発生期間中に粘着剤を幹に巻いたりして対処します。

日当たり

日当たりの良い場所に植えるようにします。

水やり

植え付けてから枝葉が伸びるまで、しばらくの間は土が乾いたら水やりをします。地植えの場合、根付いてからの水やりは基本的に必要ありません。

氏永 勝之
監修者 smileグループCEO
株式会社ガーデンメーカー 代表取締役
愛知農園植木苗木株式会社 専務取締役
一般社団法人ガーデンビジネス協会 代表理事
氏永 勝之

愛知県稲沢市生まれ。稲沢市が「日本四大植木産地」であることもあり、幼少期から植木に囲まれて成長。
東京農業大学卒業後、名古屋市内の造園会社に就職。公園の整備工事から国交省事業の国道整備工事における土木及び街路樹等の植栽工事に現場代理人として携わる。

執筆者 瀬尾一樹

樹木医です。木も草も大好きで、将来は自分だけの森を持ちたいと思っています。木の美しさや育てる楽しさだけでなく、生きものとしての生態的な面白さも伝えていきたいです!好きな木はケヤキです。

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