秋になると赤い実をたくさんつけるモチノキ科の常緑樹。街路樹や公園樹などでよく植えられており、扱いやすさや果実の美しさが人気。
名前に「金持ち」と入っていることから、縁起の良い木としても知られている。
基本データ
- 分類
- 庭木-常緑
- 学名
- Ilex rotunda Thunb.
- 科・属名
- モチノキ科モチノキ属
- 別名
- 無し
- 草丈・樹高
- 5~20m
- 栽培可能地域
- 関東以南
- 花色
- 白~淡紫
- 開花期
- 6月
- 結実期
- 11月~12月
- 耐暑性 / 耐寒性
- 耐暑性は強く、耐寒性はやや弱い
扱いやすく縁起の良い、人気の木
クロガネモチとは
クロガネモチはモチノキ科モチノキ属の常緑高木で、西日本から沖縄、朝鮮半島や中国にも自生しています。
楕円形の分厚い葉っぱが互生で付くのが特徴で、他にも似たものがいるので見分けが難しいですが、秋から冬にかけて枝いっぱいに赤い実をつけることで見分けられます。
近縁種のモチノキもよく似た姿をしていますが、クロガネモチの方が葉っぱが薄くて幅広く、若枝が紫がかるところなどが違いです。
また、クロガネモチの方が実が小さくたくさん付きます。
ちなみに花はあまり目立たず、小さな花を6月ごろにたくさん咲かせます。
花言葉は「魅力」「寛容」などです。
縁起の良い木とされていることから「福が来る」と当て字して命名された別名、『ふくら(福来)』と呼ばれることもあるとか。
赤い実をたくさんつける
クロガネモチは秋になると枝いっぱいに赤い実をたくさんつけるのが大きな特徴です。
枝いっぱいに実をつける様子や名前に「金持ち」と入っているところから、縁起の良い木としても扱われています。
雄株と雌株のある木で、雄株だと実がならないため、一般に流通しているのは基本的に雌株を接ぎ木したものです。
街中などでは雌株ばかりがみられますが、それでも毎年どういうわけか実がなります。
花粉がどこからか運ばれてくるのか、なにか別の秘密があるのでしょう。
そのため、「クロガネモチを育てたけどいつまでたっても実がならない!」という場合は、庭に生えてきた実生から育てたなどで、雄株を育ててしまっている場合が多いです。
扱いやすさが人気
クロガネモチは日本に自生する木ということもあって、性質が日本の風土にあっていて育てやすい木です。
多少強剪定をしても大丈夫だし、病害虫が少なく、日向でも日陰でも育ちます。
潮風にも耐えるので植える場所をあまり選びません。
北日本には分布しないので寒さには弱いですが、そこを除けばかなり扱いやすい木といえるでしょう。
ただ、近頃は落葉樹のように葉っぱが落ちてしまっているクロガネモチをよく見かけます。
原因ははっきりしませんが、環境ストレスなどによって葉っぱの寿命が縮まってしまっているようです。
扱いやすさを過信しすぎるのも良くないかもしれません。
どんな庭でも植えられる万能な木
どんな庭にも合わせられる
クロガネモチは和風の庭でもモダンな庭でも、どんな庭にも合わせられる雰囲気を持っています。
赤い実がたくさんなっているのは洋風な感じもするし、マンリョウやセンリョウを思わせるような縁起の良い和風な感じもします。
いろいろなタイプの庭に合わせられるので、迷ったら植えてみるのも良いかもしれません。
また、黄色い実がなるキミノクロガネモチというものもあるので、場合によってはそちらを選んでみても良いです。
植木管理の入門に
クロガネモチはかなり扱いやすい木でもあるので、始めて植木を育てるという方にもおすすめです。
剪定方法や育ちやすい場所、日々の管理などを通して実際に木に触れていくことで、植木への理解が深まっていきます。
多少失敗してもなんとかなる懐が深い木なので、うまく管理できるか不安という場合はまずはクロガネモチから育ててみると良いかもしれません。
他の縁起の良い木と合わせる
クロガネモチのほかにも、センリョウ、マンリョウ、ヤブコウジなどの秋ごろ赤い実のなる植物がいくつかあります。
クロガネモチは高木、センリョウやマンリョウなどは低木なので、取り合わせも良く無駄のない空間が出来上がります。
秋ごろに一斉に赤い実がいろづく様子はきっと圧巻です。
また、赤い実をたくさんつける木は鳥が冬の間少しずつ食べていく傾向があり、秋から冬の長い間庭で野鳥の観察を楽しむこともできます。
クロガネモチの育て方と特徴の育て方・管理方法
植え付け・植え替え
4月~5月、または9月中旬~10月上旬に行います。土もあまり選ばないですが、湿りすぎず乾燥しすぎない、肥沃な土に植えるのがおすすめです。日当たりの良い場所が好きですが、半日陰のような場所でもよく育ちます。きちんと根巻きして枝葉を整理すれば、大木の移植も成功しやすいです。
肥料
1月~2月ごろ寒肥としてリンやカリウムを含んだ肥料を与えます。
剪定
剪定は3月~4月の芽吹き前や、6月、9月ごろに行います。
混んだ枝をすかしたり、伸びすぎた枝を切り戻したりして形を整えます。
カイガラムシやすす病が発生している場合は、風通しを良くするために混んだ枝の処理を念入りに行うのがおすすめです。
また、大きくなると10m~20mにもなる木なので、高さを抑えたい場合はこまめに切り戻すように行いましょう。
多少強い刈り込みにも耐える木なので、失敗してもなんとかなる場合が多いです。
病害虫
病害虫は少ないですが、枝の風通しが悪いなどの環境によって発生する場合があります。
病害としては黒紋病や星型すす病などの葉に斑点が出る病気が発生する場合があります。
これらは病気が出ている部分を切除して焼却処分したり、枝を整理して風通しを良くすることで対処できます。
害虫はカイガラムシの仲間がつくことがあり、こちらは薬剤散布や枝の風通しをよくすることで対処が可能です。
また、病害虫とは違いますが、もし冬までに落葉して葉っぱが無くなってしまう場合、環境ストレスが高い可能性があるので、周囲の環境を見て改善できるところを考えてみましょう。
日当たり
植え付け直後しばらくは水やりしますが、枝葉が伸びて活着したあとは特に行う必要はありません。
水やり
植え付け直後しばらくは水やりしますが、枝葉が伸びて活着したあとは特に行う必要はありません。
出典(引用元)
「樹木医必携」
村越匡芳監修
「庭に植えたい樹木図鑑」
山と渓谷社
「山渓ハンディ図鑑 木に咲く花 離弁花1」
岩谷美苗著
「散歩が楽しくなる樹の手帳」
矢口行雄監修
「樹木医が教える緑化樹木辞典」
愛知県稲沢市生まれ。稲沢市が「日本四大植木産地」であることもあり、幼少期から植木に囲まれて成長。
東京農業大学卒業後、名古屋市内の造園会社に就職。公園の整備工事から国交省事業の国道整備工事における土木及び街路樹等の植栽工事に現場代理人として携わる。