アオダモは野球のバットの材として使われる。
涼しげな樹形が人気で、シンボルツリーとして植えられることが多い。
シンボルツリーとしてのアオダモ
基本データ
- 分類
- 庭木-落葉
- 学名
- Fraxinus lanuginosa Koidz. f. serrata (Nakai) Murata
- 科・属名
- モクセイ科トネリコ属
- 別名
- コバノトネリコ、アオタゴ、コバノトネリコ、アオタゴ、コバノトネリコ、アオタゴ、コバノトネリコ、アオタゴ
- 草丈・樹高
- 10~15m
- 栽培可能地域
- 全国
- 花色
- 白色
- 開花期
- 4~5月
- 結実期
- 10月
- 耐暑性 / 耐寒性
- どちらも強く、北海道から九州まで植えられる。
アオダモの基本データ
アオダモの花
アオダモは4月~5月にかけて、白いフワフワとした綿毛のような花を咲かせます。
1つ約6ミリ程の小さな花が穂のように円錐状に集まって咲きます。
満開になると綿毛のような花が木全体を覆うように咲き誇り、庭木として人気を集めています。
ただ、このアオダモは5年に一度しか咲かないと言われています。
アオダモは、雄しべ2本を持つ雄性花(雄性株)と、雄性株と雄しべ2本と雌しべ1本を持つ両性花(両性株)が混在しており、このような植物は極めて少ないのです。
解明されていない部分も多く、数年に一度しか咲かない木もあれば毎年咲く木もあります。
「雄性株は数年に一度しか咲かない」、「両性株は毎年咲く」など所説あるのですが、その理由はよくわかっていません。
しかし、アオダモは5~7年の間隔で「マスティング現象」が起こることが確認されています。
マスティングとは樹木の種や実が広い範囲で数年おきに豊作になることです。
これが「5年に一度しか咲かない花」と言われている所以でしょう。
アオダモの名前の由来
所説ありますが、アオダモの枝を切って水につけておくと青い蛍光色を発します。
また、アオダモはモクセイ科トネリコ属の広葉樹で、このトネリコ属の広葉樹の総称を「タモ」と呼ぶことからアオダモと呼ばれるようになったようです。
アオダモの花言葉
アオダモの花言葉は、「未来への憧れ」・「幸福な日々」です。
春に白い小花が木全体に咲き、その後は青々とした葉が生い茂る姿から、穏やかな日々や未来への希望が託されたのかもしれません。
アオダモとは
木製バットの材料にもなるアオダモ
アオダモは木製バットの素材として、古くから「バット材の王様」と称され多くのプロ野球選手に愛用されてきました。
その材質は緻密で均一な繊維構造を持ち、軽量でありながら堅くて丈夫かつ粘性と弾力性があります。
木製バットに求められる要素に「軽さ・強度・耐久力」「反発力・弾力性」」などがあげられます。
アオダモはこういった幾つかの条件を満たす木材だといえるのです。
アオダモは日本やアジアの一部地域に自生する樹木で、中国産のアオダモを材料としたバットが多く出回っていますが、プロ選手に品質の高い国産のアオダモが選ばれています。
日米野球両方の殿堂入りを果たしたイチロー選手や、巨人・ヤンキースで活躍した松井秀喜選手、三度の三冠王に輝いた落合博満選手など、数々の記録を打ち立てた名選手もアオダモバットの愛用者として知られています。
上質なバッドの材料として人気のアオダモですが、実は植林はほとんど行われておらず、主に天然林に頼ってきました。
アオダモがパッドの材料となるまでには約70年がかかると言われています。
そのため天然のアオダモは需要に反して不足しているのです。
現在は日本野球機構をはじめ、アオダモ育成の会などが植樹に力を入れ、アオダモを増やす取り組みが行われています。
庭木として人気
アオダモは、まっすぐ伸びる爽やかな樹形が特徴です。
シンボルツリーとして人気があり、株立ち仕立てされたものが玄関先など、目立つところによく植えられます。
アオダモ含むトネリコ属の木はたくさんの種類があり、日本には10種類ほど自生していますが、庭木で植えられるのは多くの場合アオダモかシマトネリコです。
シマトネリコとの違い
シマトネリコと違い冬になると葉っぱが落ちる落葉樹で、関東より北に植えられないシマトネリコと比べ、寒さにはめっぽう強いです。
花や実はシマトネリコとよく似た形で、春に小さな白い花が集まった泡のような花を円錐状に咲かせ、秋になると翼果(よくか)と呼ばれる薄い実をつけます。
シマトネリコは少し黄色みがかった花なのですが、アオダモは真っ白な花で、きめ細やかな花はまるでメレンゲのよう。
より爽やかな印象を与えます。
アオダモの種類・仲間
ミヤマアオダモ
生息エリア | 関東地方~四国 |
---|---|
開花時期 | 5月 |
特徴 | 頂芽の鱗片が開出するのがミヤマアオダモの特徴。 葉の縁には鋭い鋸歯を持つ。 |
ケアオダモ
生息エリア | 北海道~九州 |
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開花時期 | 5月 |
特徴 | 葉の縁の鋸歯がはっきりしており、先端は尾状に伸びて尖ってる。 名前の由来となったように葉に細かな毛が生えている。 |
ヤマトアオダモ
生息エリア | 本州~九州 |
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開花時期 | 4~5月 |
特徴 | 日本の固有種で他のアオダモの仲間と比べて葉が大きく幅広い。 葉っぱの先が長くとがっているのも特徴。 |
アラゲアオダモ
アラゲアオダモは「荒毛アオダモ」と表記されることもあるようです。上記のケアオダモの別名です。
マルバアオダモ
生息エリア | 北海道~九州 |
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開花時期 | 4~5月 |
特徴 | 葉の縁の鋸歯がないことからマルバアオダモと名がついたと言われている。 |
アオダモの楽しみ方・利用方法
樹形を楽しむ
爽やかな樹形がアオダモの一番の魅力です。時期が終わったら散ってしまう花木と違って、樹形は一年中楽しむことができます。
羽状複葉の葉っぱが少し垂れ下がる様子は、遠くから見るとまるでたくさんの鳥が羽ばたいているよう。
植えると庭の雰囲気がガラッと変わりますよ。
紅葉を楽しむ
アオダモの木は、秋になるときれいに紅葉します。
モミジのように目の覚めるような真っ赤な色ではなく、少しピンクやオレンジがかった風情のある色になるのが特徴です。
春の芽吹きから落葉まで一年中変化を楽しむことができて、飽きがこないのがアオダモの木。
玄関先に植えておけば、毎日変化に気づくことができますよ。
光る樹液
アオダモを含むトネリコ属の樹液は蛍光物質を含んでおり、ブラックライトを当てると光る性質があります。
アオダモという名前自体も樹液が青く光ることから名づけられており、トネリコ属の中でもアオダモの樹液は特にその成分が多いです。
天気の良い日に枝を水に浸けると、ブラックライトを当てなくても太陽の紫外線により青く光るのが観察できます。
トネリコ属以外にもアジサイやトチノキ、アカメガシワなどでも樹液が光るのを観察することができますが、アオダモはそれらの中でもダントツでよく光ります。
枝の切り口を紙にあてて、光るペンのような使い方もできるほどです。
小さいお子様のいるご家庭なら、夏休みの自由研究などで実験してみると楽しいですよ。
ブラックライトを当てずに日光のみで観察するときは、明るい日陰で見ると光っているのがわかりやすいです。
で、そのアオダモの木の枝の樹皮を剥いでな、水に漬けてブラックライトを当てるんよ。そしたら…
じゃじゃーん、青色に光るのです! pic.twitter.com/N0AnBM73Vq— ぐるぐる@4日目-西け04b@C98 (@guruguruuzumaki) March 24, 2017
アオダモの杖をつくる
少し特殊な楽しみ方として、アオダモの木で杖を作るというのがあります。
アオダモのまっすぐ伸びる枝を利用して杖をつくるのですが、アオダモの木を斜めに植えると、幹の途中からどんどん発芽して(胴吹きという現象ですね)、上に向かってまっすぐ伸びていきます。
元の幹を持ち手の部分として、T字型に切り取ったら杖の完成です。
最高級バットに使われる素材なので、そのままでかなり丈夫です。
子どもと一緒につくって、おじいちゃんやおばあちゃんにプレゼントしたらきっと喜びますよ。杖でなくても、まっすぐ伸びる性質を活かしてDIYなどの材料にしてみるのもいいですね。
シンボルツリー
シンボルツリーとして人気の理由は、白樺のような白いまだら模様入る樹皮やがまっすぐ伸びる樹形、綿毛のような白い花から多くの人に爽やかなイメージを持たれるからでしょう。
お庭のイメージを形作るのにピッタリですね!
特に自然に樹形が整うことから、自然な雰囲気のお庭(ナチュラルガーデン)を望む方々に人気があります。
もちろん、それだけではありません。
病害虫に強く育てやすいこと、ゆっくり成長するため管理しやすいこともあります。
シンボルとなるような木ですから、長く元気に育てたいものです。
アオダモでよくある質問
アオダモの木の特徴は?
最大の特徴は綿毛のような白い花でしょう。
また樹皮には白樺のような白いまだら模様が入り、まっすぐ伸びる樹形も魅力的です。
雄しべ2本を持つ雄性花(雄性株)と、雄性株と雄しべ2本と雌しべ1本を持つ両性花(両性株)が混在している点もアオダモならではの特徴で、植物の中でもこのような特徴を持つ種はほとんどありません。
また、木材としては非常に堅く粘りのあるため、古くから野球のバット材としても活用されてきました。北海道のアオダモ天然林がバッド材の優良産地として有名です。
アオダモの樹高は?
アオダモの樹高は5~15mです。
ゆっくりと成長する木で1年に約10~20㎝程度だと言われています。
庭木の場合は剪定などの手間もかかりません。
アオダモに似た木は何ですか?
見た目が良く似ているといわれているのが「シマトネリコ」です。
どちらも「モクセイ科トネリコ属」でナチュラルな樹形がパッと見だと同じような印象かもしれません。
ただし、葉や花など細かくみていくと違いがあります。
シマトネリコの葉は艶があり丸みがあります。
アオダモは葉のふちに鋸歯があります。
また「アオハダ」も名前が似ていることから、よく間違えられることがあるようです。
アオハダは「モチノキ科モチノキ属」で、赤い実をつけます。
アオダモはなぜ人気があるのですか?
白いまだら模様のある幹・涼やかなライトグリーンの葉・白くフワフワとした花など、木全体の印象が爽やかなことが人気の一つでしょう。
また、ゆっくり成長するため管理しやすく病害虫にも強いため、初心者にも育てやすい木だと言われています。
アオダモをどこに植えると良いですか?
日なたから半日陰を好みます。
風通しのよい場所に植えましょう。
西日を嫌うため夏の強い西日が当たるような場所は避けましょう。
アオダモの育て方・管理方法
植え付け・植え替え
11月~12月、2月~3月の、葉っぱが落ちてから新芽が芽吹く前までの厳冬期を避けた時期に行いましょう。
水はけのよい肥沃な土に植えるのがよいです。
肥料
1~2月に、寒肥として有機質の肥料をあげるとよいです。
剪定
11月~3月の、葉っぱが落ちている時期に行いましょう。
自然樹形が涼しげで美しい木なので、樹形を崩すような強剪定はせずに、混みあった枝をすくような感じで剪定するとよいです。
左右と真ん中から規則正しく枝が出てくるので、全体を見ながら不自然にならないように剪定しましょう。
高さを抑えたい場合は、芯止めをするか、株立ち樹形のものなら時期をずらしながら幹を伐採していくことで対応ができます。
いろいろな太さや高さの幹が混じっていると、野生で生えるアオダモのような自然な感じに仕上がります。
病害虫
基本的に病虫害の少ない木ですが、まれに病気にかかったり、虫がついたりすることがあります。
病気では葉に褐色の斑点ができる褐斑病、葉が白く粉を拭いたようになるうどんこ病、幹に凹みやコブができるがんしゅ病などがあります。
いずれも菌が起こす病気で、病気にかかった部分を取り除いて処分するようにしましょう。
虫害はあまりありませんが、まれにガの幼虫やカイガラムシなどが発生します。
ガの幼虫は直接取り除くか殺虫剤で、カイガラムシはブラシなどでこそぎ落とすか、薬剤などで対処するようにしましょう。
日当たり
日当たりのよいところが好きな木です。
日陰になる場所には植えないようにしましょう。
玄関先や庭の真ん中などの明るい場所によく植えられています。
水やり
乾燥にそこまで強い木ではないので、鉢植えの場合や植え付けしてすぐは、少し多めに水をあげるようにしましょう。
地植えで定着した場合はそこまで気を使う必要はありませんが、夏場など特に乾燥する場合は水をあげるとよいです。
出典(引用元)
「樹木医必携」
・山と渓谷社
「樹に咲く花 合弁花・単子葉・裸子植物」
・ブティック社
「増補改訂版 実用庭木図鑑」
・堀大才・岩谷美奈絵著
「図解 樹木の診断と手当て」
愛知県稲沢市生まれ。稲沢市が「日本四大植木産地」であることもあり、幼少期から植木に囲まれて成長。
東京農業大学卒業後、名古屋市内の造園会社に就職。公園の整備工事から国交省事業の国道整備工事における土木及び街路樹等の植栽工事に現場代理人として携わる。