早春に開花する黄色い花がユニークなマンサク。
和風・洋風・和モダンなどさまざま庭にあい、生長スピードがゆっくりで大きくなりにくいので初心者でも育てやすい庭木です。
花言葉や花・実・葉の特徴から、剪定の時期と方法、挿し木の仕方など、マンサクの魅力をたっぷりと紹介します!
基本データ
- 分類
- 庭木-落葉
- 学名
- Hamamelis japonica/Japanese witch hazel
- 科・属名
- マンサク科・マンサク属
- 別名
- ネジリキ、ネジ、ネソ、キンロウバイ、オオバマンサク
マンサクの花・実・葉の特徴と花言葉
まだほかの植物が芽吹く前の春に、しわのある帯状の黄色い花を枝の節々に咲かせるマンサク。
早春に咲く黄色い花は、殺風景になりがちな冬の庭を彩り、温かみのある景色を演出してくれます。生長スピードがゆっくりで、樹形がまとまりやすくて、剪定(せんてい)などの管理が簡単なので庭木におすすめです!
マンサクとは
マンサクは、冬に葉が一斉に落ちる落葉性の低木で、早春に花が咲いて完全に散ったあと新葉が芽吹き、夏に新緑となったあと秋に実が付いて、冬に葉が落ちます。
マンサク科のマンサク属に分類する樹木で、北海道から九州の山林に分布しますが、早春に咲くことから昔から庭木として親しまれています。
枝の節々に数えきれないどたくさんの花芽が付き、踊っているような花が咲くため、昔では豊作を願って占う人がいたといわれることも。
花が満開にたくさん咲くと「豊作」となるため、名前の由来にもなっているようです。
また、どの植物よりも先駆けて花が咲くことから「まず咲く」と呼ばれ、それが転じて「マンサク」となったといわれることもあるようです。
岐阜県の白川村では「ネソ」と呼ばれ、白川郷の合掌造りの「縛り役」として使われています。
釘を使わずにマンサクのしなやかな枝を利用して組み立てられるので、古くから生活になじみ深い植物です。
ほぼ日本の全国に分布しているマンサクは、暑さや寒さにとても強く、氷点下28℃程度(USDA zone 5a)までなら耐えることができます。
筆者がいるカナダでも、日本のマンサクが公園などに植えられていることも多く、氷点下20℃近くになる場所でも、毎年黄色い花を咲かせています。
マンサクの花と花言葉
葉がまだ芽吹く前の2月上旬〜4月下旬ごろにかけて、マンサクは新しく伸びた短い枝の側面から2〜4輪ほど集まって黄色い花が咲きます。
帯状の花びらはシワがあるもの、ねじれるもの、長さが不均一なものとあり、個体によってさまざまです。
花の基部にある赤い部分がガクで、その中心に雌しべと4つの雄しべがつきます。
花からはわずかに甘い香りがしますが、日本のマンサクは弱いです。
中国を原産とするシナマンサクという品種は、上品な甘さのある香りを放ちます。
マンサクの花言葉
マンサクの花言葉は、「直感」「感じやすさ」「ひらめき」「誠実」「神秘」「愛」「呪文」「「魔力」「貞節」です。
マンサクの実と葉の特徴
マンサクの実
夏ごろに産毛の生えたチューリップ型の緑の実を付けるマンサク。
実は9〜10月ごろになると茶色く熟し、乾き切ったような感じになり、自然に2つに裂けます。
中には黒光した種が2つ入っていて、10月に種まきをすると芽が簡単に出ます。
マンサクの葉
マンサクは、4月ごろになると新芽を芽吹き、互い違いに厚みのあるひし形の葉を展開します。
直径5〜10cmほどの葉は、両面に産毛が生え、葉脈が目立ちます。
秋に赤や黄色に紅葉したあと、冬には落葉する姿も美しいです。
マンサクの生長スピード・樹高・苗木の価格
生長スピードがゆっくりなマンサクは、20年ほどの長い年月をかけると、樹高が5mほどになることもあります。
定期的な剪定をすれば、小さい庭でもコンパクトに育てられます。
価格は苗の大きさによって違いますが、樹高90cmほどの苗木で1,650円程度から販売されていることが多いようです。
マンサクの増やし方
種からでも増やすことができるマンサクですが、発芽するまで時間がかかることもあります。
もっと早く増やしたいと思う方は、枝の一部を切り取って「挿し木」をつくりましょう。
マンサクの挿し木づくりに最適な時期
マンサクの挿し木は、3月につくります。
この時期に枝を切っても、暑さで株にストレスを与える心配がありません。
マンサクの挿し木の手順
- Step1. マンサクの新しく伸びた枝を、先端から数えて4〜6節目でカットし、先端のやわらかい部分もカットします(5〜10cmほどの長さ)。これを「挿し穂」といいます。
- Step2. 小さめのコップや花瓶に入れた水か、水はけの良い土が入ったビニールポットなどにマンサクの挿し穂を挿して、涼しい日陰で管理しましょう。2〜3カ月程度で根が出ます。
マンサクの種類|赤い花や香りのある品種
マンサクの種類
シナマンサク(Hamamelis mollis)
中国に自生するシナマンサクは、日本のマンサクよりも大きく生長します。
1月ごろから咲き始める花は、上品で芳しい甘い香りを漂わせます。
マンサクの園芸品種|黄色の花
パリダ(Hamamelis × intermedia ‘Palida’)
シナマンサクの園芸品種であるシナマンサク・パリダ。
よくお店に出回る品種で、比較的安価に手に入りやすいです。長く花を観賞でき、秋には黄色い紅葉が楽しめます。
ウィズリー・スプリーム(Hamamelis mollis ‘Wisley Supreme’)
薄い黄色い花が11月ごろから咲くこともあるウィズリー・スプリーム。
秋には鮮やかな黄色い紅葉が楽しめます。樹高は大きくなっても3mほどと、比較的コンパクトに生長します。
インペリアリス(Hamamelis mollis ‘Imperialis’)
マンサク属の中でも香りが強いといわれるインペリアリス。
開花時期には、淡い黄色の花と上品な甘い香りを同時に楽しめます。
アーノルド・プロミス(Hamamelis x intermedia ‘Arnold Promise’)
ほかのマンサクと比べると、アーノルド・プロミスは、枝葉が多く出て密度のある低木に生長します。その分花数も多く、甘い香りも増します。
マンサクの園芸品種|オレンジの花
ルブラ(Hamamelis japonica ‘Rubra’)
日本のマンサクを品種改良して誕生したルブラは、赤みがかったオレンジの花を咲かせます。
寒さに強く、氷点下34.4℃ほどまで耐えることもあるようです。
バージニアナ(Hamamelis virginiana)
バージニアナは、比較的生長スピードが早く、数年ほどで樹高3mほどまで大きくなります。
ルブラよりも寒さに耐性があり、氷点下40℃まで耐えるといわれています。
エレナ(Hamamelis x intermedia ‘Jelena’)
オレンジの花が咲くマンサクの中で、最も多く栽培されているエレナ。
ほのかに甘い香りがする真鍮(しんちゅう)色の花が美しく、育て方も簡単です。大きくなると樹高が4mになることもあります。
アフロディーテ(Hamamelis x intermedia ‘Aphrodite’)
アフロディーテは、深みのあるオレンジ色の花を枝いっぱいに咲かせます。
秋には丸みのある楕円形(だえんけい)の葉を真っ赤に紅葉させることもあります。
オレンジピール(Hamamelis x intermedia ‘Orange Peel’)
一枚一枚の花びらが短くて幅が広いオレンジピール。
オレンジの小さなボンボンが枝節にたくさん付いたような姿に見え、とてもかわいらしいです。
マンサクの園芸品種|赤色の花
ロバート(Hamamelis x intermedia ‘Robert’)
2,000年ごろに誕生したロバートは、マンサクの中でも新しい品種です。
銅色が混ざった赤い花からは、爽やかで上品な甘い香りがします。
ルービン(Hamamelis x intermedia ‘Rubin’)
12月〜2月下旬ごろにかけて、丸みを帯びた赤い花が枝いっぱいに咲くルービン。
秋には燃えるようなオレンジ色に紅葉し、温かみのある庭を演出します。
リヴィア(Hamamelis x intermedia ‘Livia’)
マンサクの中でも特に真っ赤な花が咲くリヴィア。
12〜3月ごろにかけて花が咲き、スパイシーな香りを放ちます。
ファイアーザウバー(Hamamelis x intermedia ‘Feuerzauber’)
銅色が混ざったオレンジに近い赤い花が咲くファイアーザウバー。
枝葉が横に膨らむように広がって花火のように見えることから「Firecracker(爆竹)」の別名をもちます。
ロンバーツ・ウィーピング(Hamamelis vernalis ‘Lombarts’ Weeping’)
枝垂れるように枝葉が横に広がる珍しい品種であるロンバーツ・ウィーピング。
大きくなっても、樹高は2mほどですが、横幅は4mを超えることも。
3月ごろまで咲く赤い花からは、強いスパイシーな香りがします。
ディアン(Hamamelis x intermedia ‘Diane’)
濃い赤銅色の花が咲くディアンは、赤いマンサクの中でも多く栽培されています。
秋には、葉があずき色から真紅へと変わり、色の変化を楽しめます。
マンサクとトキワマンサクの違い
▲写真はトキワマンサク
見た目が似ていることから、しばしば混同されることが多い「マンサク」と「トキワマンサク」。
どちらも同じマンサク科の樹木ですが、トキワマンサクはトキワマンサク属に分類する樹木で、全くの別物です。
トキワマンサクは帯のような花びらがよく似ているものの、実際には、下の表にまとめたように、花や実の色や形、付き方、開花時期、葉、幹など見た目の特徴がかなり違います。
マンサク | トキワマンサク | |
特性・形態 | 落葉性・低木 | 常緑性・中高木 |
開花時期 | 2月上旬〜4月上旬 | 4〜5月上旬 |
花 | 花びらにしわがある | 花がしゅっとしている |
葉 | 大きくてハート型に近い | 小さくて丸い楕円形 |
ちなみに、トキワマンサク属には、現在1種のみしか確認されていません。
マンサクの3つの魅力
ここでは、マンサクの3つの魅力を紹介します。
マンサクの魅力1|冬でも温かみのある庭に
冬は花や新芽を出す植物が少なく、暗くて寂しい庭になりがちです。
しかし、春が訪れる前に咲くマンサクは黄色くてユニークな花をたくさん咲かせるので、明るい温かみのある庭を演出します!
品種を選べば、冬の間は、甘くて上品な香りも楽しめます。
マンサクの魅力2|早春の美しいシンボルツリーに
マンサクは生長すると幹がまるまると太くなるので、庭のシンボルツリーとしてもおすすめです。
花が満開を迎える3月ごろは、特に印象的!地面から伸びる幹の数を奇数でそろえてあげるとたたずまいが良くなり、日本の原風景のような趣きのある美しいシンボルツリーになります。
マンサクの魅力3|暑さや寒さに強くて管理が楽!
ほかの樹木と比べると暑さや寒さに耐性があるマンサクは、夏の日除け対策や、冬の防寒対策などする必要があまりありません。
また、病害虫の被害も比較的少なく、生命力の強い木です。
マンサク(万作)の詳細情報
- 草丈・樹高
- 2〜5m
- 栽培可能地域
- 全国
- 花色
- 黄、赤、オレンジ、茶
- 開花期
- 2月上旬〜4月上旬
- 結実期
- 9〜10月
- 耐暑性 / 耐寒性
- 強い/強い
マンサク(万作)の育て方・管理方法
- 植え付け・植え替え
マンサクは、有機質がたくさん入った水はけと水もちの良い土で育てる
早春にたくさんの花を咲かせるマンサクは、有機質がたっぷりと入った水はけと水もちの良い土で育てましょう!
乾燥した場所が苦手なので、夏でも完全に乾きにくく、湿度を保ちやすい土づくりをするのがポイントです。
地面に植え付ける前に、完熟の腐葉土か堆肥と、赤玉土を掘り起こした土に混ぜて、排水性・保水性を良くしておきます。
土が乾きやすい場合は、黒土を混ぜるのもおすすめです。
マンサクの適切な植え付け時期|11〜3月
落葉樹であるマンサクは、比較的休眠期入った11〜3月ごろであれば植え付けができます。
ただし、氷点下になるような気温下では、株がストレスを受けてしまうこともあるので、できるだけ暖かい日を選びましょう。
直径2〜4mほどのスペースを確保してから
地面から複数の幹が伸びて株立ち樹形になるマンサク。
枝葉が空へしゅっと真っ直ぐ伸びやすく、生長スピードもゆっくりなので、直径2〜4m程度のスペースを確保して植え付けるといいです。
マンサクの苗木の植え方
マンサクの苗木を植え付けるときは、あらかじめ深く耕しておくと、植え付け後でも根の張りが良くなります。
植え穴の深さは、根鉢の高さよりも3cmほど低くし、根鉢の周りに片足が入るぐらいの広さをつくりましょう。
植える前に一度、ポットから抜いた苗木を穴に入れてみて、深さ・横幅を確認するといいです。
手を離しても苗木が直立するように、穴の底に土を加えてから植え付けます。足で踏み固めながら用土を継ぎ足し、しっかりと地面に定着させましょう。
マンサクの鉢植えの植替え
鉢植えでのマンサクは、2〜3年に1回のペースで植え替えをします。
生長スピードはゆっくりですが根が太くなりやすく、放置していると根詰まりを起こして枯れてしまうことも。
定期的に植え替えをして、根が回りやすい状態をつくりましょう。
水が土に浸透しにくくなったときや、鉢底から根が出ているときにも植え替えをするといいです。- 肥料
冬に葉を落とし、早春に枝いっぱいに黄色い花を咲かせるマンサクは、5月と12〜2月に肥料を与えます。
花が咲き終わった5月に追肥を与えると、生長の流れが鈍くなりにくく、12〜2月に月に1回程度で寒肥を与えると、春に花芽と新芽をたくさん芽吹くようになります。
肥料は窒素(N)・リン酸(P)・カリウム(K)のバランスの取れたものか、リン酸の多い花木・庭木用の有機肥料がおすすめです。- 剪定
生長スピードがゆっくりで、樹高があまり大きくなりにくいマンサクは、2年に1回のペースで剪定しましょう。
背丈が高くなり過ぎたときや、枝葉やひこばえ(地面から生える幹)が混み合ったりしたときにも剪定するといいですが、切り過ぎると枝がたくさん出て樹形が暴れることも。
枯れ枝や不要な枝を切り落とす程度にしましょう。
マンサクの適切な剪定時期|11〜2月
マンサクの剪定は、休眠期に入った11〜2月に行うのがベスト。
寒い時期なら強い剪定にも耐え、樹形をコンパクトにすることもできます。
マンサクの剪定の手順
樹高が大きくなり過ぎると花が見えにくくなってしまうので、ある程度枝葉を伸ばしたら数年後にはバッサリと剪定するのもいいです。
Step1. マンサクの理想の高さ・幅のラインを決める
伸び過ぎた枝葉を何となくで切ってしまうと、マンサクの樹形が思うように整いません。
切り詰め過ぎたり透かし過ぎたりして、花芽を余計に落として失敗してしまうことも。
まずはマンサクの木の理想の高さと幅のラインを決めてから切りましょう。
Step2. Step1で決めたラインに沿ってマンサクの枝葉を切り詰める
生長すると枝分かれが多くなり、細かい枝葉が出やすいマンサク。
Step1で決めたラインの外側に出ている枝を、枝分かれしているところまで切り戻して短くしましょう。
ただし、節と節の間で切ってしまうと新しい枝葉が無数に出て、マンサクの樹形が不自然になる場合も。
ある程度剪定ができたら何度か遠くからも見て、木全体のバランス、周りの植物や物との間隔を調整します。
Step3. 枯れ枝と不要な枝を剪定する
最後に、マンサクの枝葉から外側に出た外芽を残しながら内側に伸びる内芽を切り落とします。
太い枝から強く伸びる枝葉は花芽が付きにくいので、枝分かれした箇所まで切り詰めましょう。
また、下記の不要な枝は生えている付け根から全て取り除き、株の内側の日当たりと風通しを良くします。このとき、枯れた枝も取り除きます。
- 徒長枝:株から強く飛び出すように、太く長く伸びる枝
- 立ち枝:横に伸びている太い枝に対して、直立したように上に強く伸びる枝
- 内向枝:株の内側に向かって伸びる枝
- 交差枝:枝同士が十字に交差する枝
- 絡み枝:太い枝に絡みつくように伸びる枝
- 平行枝:近い位置で平行に同じ方向へ伸びる枝
- 逆さ枝:地面に向かって伸びる枝
- 病害虫
ほかの庭木と比べると病害虫の被害が少ないといわれているマンサクですが、近年では春に新葉が突然枯れてしまい放置すると数年後には株が枯れる病気が広がっているようです。
原因は不明とされていますが、調査の結果ではヒノキ科の植物に発生しやすい「Phyllosticta(フィロスティクタ)属」の菌によって広がっている可能性があるようです。
病気
春先に葉の下部が枯れ始め、葉全体が茶色く枯れ落ちます。
株全体に広がりやすく、数年後にはマンサクの木自体が枯れることもあるようです。
一度発生したものは新葉が出てもまたすぐに枯れ、それを繰り返すことで木が衰弱するとされています。
害虫
特になし- 日当たり
マンサクは基本的には自然に降る雨だけの水分で育ちますが、極端に地面が乾燥すると水切れを起こしたり生長不良を起こしたりすることもあります。
夏は地面を乾かさないように、水をたっぷりと与えるといいです。
また、植え付け直後や苗木が地面にしっかりと根付くまでの1年間は、土が乾燥しないように定期的に水やりをしましょう。- 水やり
マンサクは基本的には自然に降る雨だけの水分で育ちますが、極端に地面が乾燥すると水切れを起こしたり生長不良を起こしたりすることもあります。
夏は地面を乾かさないように、水をたっぷりと与えるといいです。
また、植え付け直後や苗木が地面にしっかりと根付くまでの1年間は、土が乾燥しないように定期的に水やりをしましょう。
建築・インテリア学科卒の造園士×Webコンテンツクリエイター。 東京で建築、カナダのトロントで造園、その後カナダのハリファックスの大自然で植物と戯れながら、植物・庭・ガーデニングのWebコンテンツクリエイターを開始。 現在はヤシの木を主体とするドライガーデンの造園士とWebコンテンツ・ガーデニング商品の監修者としても活動中。日本での建築とカナダでの造園の経験に加え、趣味の植物やコケの収集、植物アート作りを生かして、 みなさんに植物や庭の魅力をお届けします。