ハナモモの育て方・特徴

ハナモモの育て方と特徴

「チャーミング」の花言葉をもつハナモモは、春にピンク・赤・白の花が咲き、夏には香りのある実がなり、季節ごとに変化を楽しめる庭木です。花・実・葉の特徴、適切な剪定時期とコツ、植え付け方など、ハナモモの魅力をたっぷりと紹介します!



基本データ

分類
庭木-落葉
学名
Prunus persica/Flowering Peach
科・属名
バラ科・サクラ属
別名
モモ、ケモモ
草丈・樹高
3〜8m
栽培可能地域
全国
花色
白、赤、ピンク、複色
開花期
3月中旬〜4月中旬
結実期
7〜8月
耐暑性 / 耐寒性
強い/強い

ハナモモの花・実・葉の特徴と花言葉

枝葉が空に向かって曲線を描くように伸び、春にピンクや白の花をたくさん咲かせるハナモモ。赤や複色の花、八重咲きの花、枝垂れるような樹形の品種など種類も豊富で、さまざまなテイストの庭にあいます。芽吹く力が強く、花付きも良く、育て方も簡単なので庭木におすすめです!

ハナモモとは|ももとの違い

ハナモモ
ハナモモは、冬に葉を一斉に落とす落葉性小高木。サクラ・ウメ・アンズなどと同じ仲間で、バラ科・サクラ属に分類する樹木です。もともとは中国北部を原産とし、花を観賞するためにモモを改良してできた品種です。「ハナモモ」という名前は、あくまで総称で、果物として食べる「モモ」と分けるために、「ハナモモ」といわれています。

モモとの違いは、花がたくさん咲くか、食用となるような大きな果実ができるかどうかです。厳密には同じ種類で、学名も果物のモモと同じ「Purunus persica」です。

中国で古くから栽培されているハナモモは、日本古事記にも記載があり江戸時代よりはるか昔に渡来しているようです。しかし、最近の調査では縄文時代の地層から核が出土した例もあるといわれています。もしかしたら、日本に野生のモモが存在していたのかもしれないといわれることも。

ハナモモの樹形には、立ち性・ほうき立ち性・枝垂れ性の3つがあり、庭のテイストや植える位置にあわせて品種を選ぶといいです。

ハナモモの花と花言葉

ハナモモ
3月中旬〜4月中旬ごろにかけてハナモモは、ウメのように枝節に花が密集するように咲きます。1枚1枚の花びらは先端がとがり、1節に2つの花が咲くのが特徴です。ウメとは違い枝いっぱいに花が咲くので、華やかさがあり豪華な印象があります。寒さに耐性があるハナモモですが、開花時期に低温にさらしてしまうと、花が落ちて長く観賞ができない場合も。北海道では開花時期に防寒対策が必要になります。

ハナモモの花言葉

ハナモモの花言葉は、「あなたに夢中」「気立の良さ」「愛」「恋の奴隷」「私はあなたの虜」「辛抱」「忍耐」「懐かしい日」「天下無敵」「チャーミング」「比類なき素質」「長命」「愛の幸福」「女性のやわらかさ」「愛嬌(あいきょう)」です。

ハナモモの葉と実の特徴

ハナモモ

ハナモモの実

花を観賞するために改良されたハナモモですが、7〜8月ごろにかけてスモモに似た、直径5〜6cmほどの果実ができます。果実として食べるモモとは違い、果実が小さく果肉も少ないです。さらに、酸味と苦味が強いため食用にはなりません。しかし、モモの爽やかな甘い香りが強いので、料理の香り付けや、果実酒として楽しむことができます。

ハナモモの葉

4月になるとのハナモモは、枝先から新芽出て、8〜12cm程度の大きさの長細い葉に生長します。葉は薄く、縁が粗いノコギリ状で、秋になると赤や黄色に紅葉し、冬になると葉は一斉に落ちます。

ハナモモの生長スピード・樹高・苗木の価格

ハナモモ
庭木の中でも、生長スピードがかなり早いハナモモは、地面に根付くと枝葉が高く伸びることがあります。大きくなると樹高が8mを超えることもあり、毎年の剪定(せんてい)が欠かせません。また、狭い場所へ植えてしまうと根が太くなりやすく、広い場所で育つハナモモよりも生長がさらに早まってしまうので、できるだけ広めの庭に植え付けると安心です。価格は苗木の大きさや樹形によって違いますが、樹高が90cmほどで、1,300円程度から販売されていることが多いようです。

ハナモモの園芸品種

ハナモモ
ピンクや白の花が立ち上がるように枝節に咲くハナモモ。古くから親しまれているため、多くの園芸品種が出回っています。ここでは、ハナモモの主な種類を3つ紹介します。

矢口(ヤグチモモ)

ハナモモ
濃いピンクの大輪の花が八重咲きに咲く矢口。ハナモモの中の代表的な存在で、早咲きの品種です。花持ちが良く、昔から切花として親しまれ、3月のひな祭りの飾り付けにも使われます。庭のシンボルツリーとしても人気の品種でおすすめです!

源平

ハナモモ
赤と白の色が混じって八重咲きに咲く源平。紅白が入り乱れて咲く花の姿を、源氏と平家に見立てたことから、この名前が付いたといわれています。

菊桃

ハナモモ
一枚一枚の花びらが細く、キクのような姿で咲く菊桃。ローズピンク色の花はあでやかで、個性を感じる色合いと雰囲気があります。庭のシンボルツリーにもなり、少し変わった庭木を探している方におすすめです。

ハナモモの3つの魅力

ハナモモがなぜ庭木やシンボルツリーにおすすめのなのか、魅力を3つのポイントとしてまとめました!

ハナモモの魅力1|種類を選べば、狭い庭でも植えられるコンパクトな樹形

ハナモモ

立ち性やほうき立ち性の品種のハナモモは、比較的樹形がスリムです。定期的な剪定をすることで、樹高を低くするだけでなく、横幅も狭められるため、スペースが小さい庭でも植えられます。

ハナモモの魅力2|和風・洋風どちらのスタイルにもあう

ハナモモ

ハナモモは、和風の石や岩と相性が良く、組み合わせると上品で静けさのある和風テイストの庭に。レンガやカラーリーフの下草などと組み合わせると、明るい印象のヨーロッパ風な洋風テイストの庭になります。

ハナモモの魅力3|暑さや寒さに強くて管理が楽!

ハナモモ

ほかの庭木と比べると暑さや寒さに強いハナモモは、夏の日除け対策や、冬の防寒対策などする必要がありません。病害虫の被害も少ない強い木です。

ハナモモの育て方・管理方法

植え付け・植え替え

ハナモモ
●排水性・通気性・保水性のある土に植える
生命力がとても強いハナモモは、基本的には用土の質は選ばず、養分の少ないやせた土でも育ちます。ただし、水はけが悪くて乾くと固くなるような粘土質な土では根腐れが起こりやすく、枯れてしまう場合も。植え付ける前には、掘り起こした土に腐葉土と赤玉土を混ぜて、排水性・通気性・保水性を良くしておきましょう。土が乾きやすい場合は、黒土を混ぜてあげると、保水性も良くなるのでおすすめです。

●ハナモモの適切な植え付け時期
落葉樹であるハナモモは、休眠期に入った12〜3月の間に植え付けや植え替えをしましょう。4月を過ぎてしまうと、株がストレスを受けて花が咲きにくくなります。


●直径2〜4mほどのスペースを確保してから
ハナモモは、樹高が高くなるにつれ枝も長く伸び、横に膨らむように広がることもあります。最低でも直径3〜4m程度のスペースを確保してから植え付けましょう。定期的な剪定をすることで、よりコンパクトにすることもできます。スペースが小さ過ぎると、ハナモモの枝葉が建物や周辺の庭木にぶつかって樹形が乱れたり、周りの建造物を傷つけたりする可能性も出るので、苗木は小さくても植え付ける場所はある程度の広さが必要です。


●ハナモモの苗木の植え方
ハナモモを植え付けるときは、植え穴の深さは根鉢の高さよりも3cm低くし、根鉢の周りに片足が入るぐらいの広さをつくりましょう。植える前に一度、ポットから抜いた苗木を穴に入れてみて、穴のサイズを確認し、微調整を行いましょう。手を離しても苗木が直立するように、穴の底に土を加えてから植え付けます。足で踏み固めながら用土を継ぎ足し、しっかりと地面に定着させます。根鉢に麻布が巻かれている場合は、根詰まりが起きないように、植え付ける前に取り除くといいです。


●ハナモモの鉢植えの植替え
生協スピードが早いハナモモは、2〜3年に1回のペースで鉢の植え替えをします。たくさんの細い根を地中に浅く張る樹木なので、樹高が1m程度なら直径20〜30cm、深さ15〜20cm程度のマチの広い鉢に植え付けましょう。鉢が小さいと根詰まりを起こして、生長不良や枯れる原因にもなります。

肥料

ハナモモ
春に花がたくさん咲くハナモモには、12月〜2月上旬ごろに肥料を与えましょう。寒肥を与えることで花付きが良くなり、満開の姿を楽しめます。ただし、肥料の与え過ぎは、生長の流れを早くさせるので、剪定などの管理が大変になったり、病害虫の被害にあったりする場合も。寒肥は1回だけ与えて、あとは様子を見てから、再度与えるようにしましょう。また、肥料は窒素(N)・リン酸(P)・カリウム(K)のバランスの取れたものか、リン酸の多い花木・庭木用の肥料がおすすめです。

剪定

ハナモモ
生長スピードが早いハナモモは、年1回のペースで剪定を行いましょう。樹高が大きくなり過ぎたときや、葉が混みあっているときも剪定をすると、樹形が整い、花芽や実の付きが多くなります。


●ハナモモの適切な剪定時期|2月上旬 〜4月下旬
落葉樹であるハナモモは、休眠期に入った11〜6月ごろまでなら剪定ができます。しかし、剪定最適期は、花が咲く直前の2月上旬〜4月下旬ごろです。多くの花を観賞したい場合は、4月下旬に行うのがベストです!

ただし、花芽は夏ごろに伸びた新しい枝にできるので、6月以降に剪定をしてしまうと翌年に花が咲かなくなる場合も。また、夏では暑さによって切り口から水分が過剰に抜けて枯れてしまうこともあるので、新芽が伸びる前までに行いましょう。


●ハナモモの剪定の手順
ハナモモは放任すると、上に強く長く伸びる徒長枝がでやすいです。樹形を見出し、花芽の付きも悪くさせるので、根元から切り落とします。


Step1. ハナモモの理想の高さ・幅のラインを決める
伸びた枝葉をなんとなくで切っていくと、切り詰め過ぎたり、透かし過ぎたりして、ハナモモの樹形が思うように整わなかったり、花芽を余計に落としてしまうこともあります。まずは、ハナモモの理想の高さと幅のラインを決めてから切るようにすると、失敗するリスクが減り、春や夏に花と実が観賞できる美しい庭木になります。


Step2. ラインに沿って枝葉を剪定する
Step1で決めたラインの外側に出ている枝を、枝が分かれているところや節目で全て切り詰めます。できるだけ、短く伸びた枝を残しながら切ると、翌年に花芽が付きやすく、枝いっぱいに咲いた満開のハナモモが観賞できます。ただし、節と節の間で切ってしまうと、新しい枝葉が無数に出て、ハナモモの樹形が不自然になりやすいので注意しましょう!ある程度剪定ができたら何度か遠くからも見て、木全体のバランス、周りの植物や物との間隔を調整します。


Step3. 枯れ枝、不要な枝を透かし剪定する
大きくなると、比較的枝葉が横に広がるように伸びるハナモモは、枝葉外側に出る外芽を残しながら、内芽を切り落とすといいです。また、下記の不要な枝は生えている根元から、全て取り除き、日当たりと風通しを良くしましょう。

徒長枝:株から強く飛び出すように、太く長く伸びる枝
立ち枝:横に伸びている太い枝に対して、直立したように上に強く伸びる枝
内向枝:株の内側に向かって伸びる枝
交差枝:枝同士が十字に交差する枝
絡み枝:太い枝に絡みつくように伸びる枝
平行枝:近い位置で平行に同じ方向へ伸びる枝
逆さ枝:地面に向かって伸びる枝


Step5. 木の全体のバランスを見ながら、樹形を整える
最後に、仕上げとしてStep1で決めたライン付近の枝葉を整えます。残した短い枝と同じように、ほかの枝も短く切り詰めてあげると、より自然的で美しい仕上がりになりますよ!

病害虫

ハナモモ
品種改良されて誕生したバラ科のハナモモは、細菌による病気が出やすいです。葉に黒い斑点模様が出たり、縮れたりするだけでなく、株が枯れてしまうこともあります。日頃の予防やケアがとても大切です。


●病気
・縮葉病(しゅくようびょう):3〜5月下旬ごろの気温が低く雨がよく降るころに、菌によって葉がちぢれたり、はれたように膨れ上がったりします。まれに新芽や花にも発生する場合も。発症した葉は次第に黒く変色し、落葉するため生長の阻害となります。すぐに発病した葉は取り除き、殺菌剤をまきましょう。特にモモをはじめ、ウメやアンズなどにも発生しやすい傾向にあるようです。

・灰星病(はいぼしびょう):5〜6月ごろに、雨や風に伝搬された菌によって、花や果実に灰色のカビのようなものが現れます。症状がひどくなると発症した部分は腐食し、別の箇所に感染する場合も。菌は地面に落ちた葉・枝・果実に付いて冬を越して感染するので、株周りの枯れ葉や枯れ枝などのゴミを取り除くことが大事です。また、風通しを良くし、できるだけ株に水滴が付着しないようにしましょう。

・せん孔細菌病(せんこうさいきんびょう):花が落ちるころの4〜7月にかけて、雨や風に伝搬された菌によって、葉・枝・果実に褐色の斑点模様が現れます。症状がひどくなると、木の生長の勢いを弱め、落葉し、枝枯れする場合も。菌は地面に落ちた枝葉の芽に感染して冬を越すので、株周りの枯れ葉や枯れ枝などのゴミを取り除くことが大事です。

・すす病:春から秋にかけて、葉の表面が黒い汚れ(すす)に覆われ、カビが生えます。放置すると株全体に広がり、落葉の原因となります。カイガラムシの排泄物によって発病するので、害虫対策が大切です。


●害虫
・ハダニ:1年を通して、葉の表裏に発生しやすいです。風通しがなく、乾燥した枝葉に現れ、放置をするとコロニーを形成し大量に繁殖する場合も。葉の養分を吸汁するため、落葉の原因になります。定期的な剪定をしますが、大量に発生した場合は薬剤で対処するといいです。

・カイガラムシ:1年を通して、枝や幹に発生しやすく、養分を吸汁します。成虫になると甲羅が硬質化し、薬が効きにくくなります。できるだけ薬の効く幼虫のうちから、薬剤散布を行うといいです。成虫は歯ブラシや軍手を使って擦るようにして補殺します。

日当たり

ハナモモ
枝節にたくさんの花を咲かせるハナモモは、日当たりと風通し良い場所で育てるのがベスト!花芽や実の付きが良くなり、毎年満開の花の姿を観賞できます。日当たりが悪い場所では、枝が長く徒長しやすく、花芽や実の付きが悪くなるので、できだけ午前中に日が当たって、午後は日陰となる半日陰に植えましょう。

水やり

ハナモモ
ハナモモは、基本的には自然に降る雨だけの水分で育ちますが、極端に地面を表面が乾いたときは、水やりをするといいです。また、植え付け直後や、苗木が地面にしっかりと根付くまでの1年間は、土が乾燥しないように定期的に水やりをしましょう。



氏永 勝之
監修者 smileグループCEO
株式会社ガーデンメーカー 代表取締役
愛知農園植木苗木株式会社 専務取締役
一般社団法人ガーデンビジネス協会 代表理事
氏永 勝之

愛知県稲沢市生まれ。稲沢市が「日本四大植木産地」であることもあり、幼少期から植木に囲まれて成長。
東京農業大学卒業後、名古屋市内の造園会社に就職。公園の整備工事から国交省事業の国道整備工事における土木及び街路樹等の植栽工事に現場代理人として携わる。

執筆者 柴﨑光一

リゾートガーデンスタイル専属の庭師×Webコンテンツクリエイター。 カナダのトロントで造園士を、その後日本で花屋のバイヤー・鉢物の管理・アドバイザーを経験した後、ヤシの木を主体とするリゾート・ドライガーデンの造園士に。 現在は、リゾートガーデンスタイルの社会福祉施設・DOG CAFEの専属庭師に加え、畑の開拓・管理、SNSも兼務。 植物を専門とするWebコンテンツクリエイター、ガーデニング商品の監修者としても活躍中。

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