紅葉を楽しむため、古くから親しまれてきた。もみじ狩りなど、「もみじ」というと多くの場合この種を指す。
基本5データ
- 分類
- 庭木-落葉
- 学名
- Acer palmatum Thunb.
- 科・属名
- ムクロジ科カエデ属
- 別名
- イロハカエデ、タカオモミジ、チョウセンヤマモミジ
- 草丈・樹高
- 10~15m
- 栽培可能地域
- 全国
- 花色
- 赤色
- 開花期
- 4~5月
- 結実期
- 7~9月
- 耐暑性 / 耐寒性
- どちらも比較的強いが、極端に強い訳ではない。北海道に自生はないが、低地に植栽されることがある。。
日本人に長年親しまれてきた「イロハモミジ」
イロハモミジとは
イロハモミジは、本州から九州、朝鮮半島、中国、台湾に自生する落葉高木です。言わずと知れた真っ赤な紅葉が人気で、万葉集や源氏物語などに登場するほど、日本では古くから親しまれてきました。
春に花が咲き、秋に実がなる
イロハモミジは春に花が咲きます。葉っぱの下に小さな赤い花を垂れ下がるように咲かせ、花はとても小さいですがよく見るととてもかわいらしいです。
実は紅葉の少し前に熟し、プロペラのような翼(よく)のある実をつけます。風で遠くに飛べるよう設計された葉で、回りながら落ちていくのが特徴です。
オオモミジやヤマモミジとの違い
イロハモミジを含むカエデの仲間は、日本に26種(諸説あり)が自生しており、どれもよく似ています。中でも特に似ているのがオオモミジとヤマモミジです。実のつき方や葉の形などで見分けられますが、これがなかなか難しく、見慣れていても個体によっては迷うことがあります。
実のつき方としては、イロハモミジは多くの場合葉から飛び出るように上向きにつくのに対し、ヤマモミジとオオモミジは葉っぱに隠れるように下向きにつきます。
葉っぱの形では、葉っぱの裂片(指のような部分)の先をつなげていくと、イロハモミジは先が飛び出たスペードのような形に、ヤマモミジやオオモミジは円形になることが多いです。また、鋸歯(葉のギザギザ)にも違いがあり、オオモミジは細かい鋸歯で、ヤマモミジは欠刻状といって葉のフチが欠けたような深い鋸歯になります。
メープルシロップの木
カエデの仲間の樹液はメープルシロップの原料になります。葉っぱが芽吹く前の時期に大量に水を吸い上げるのですが、この樹液に糖分が多く含まれているのです。これは冬の休眠から目覚めるときに細胞内の糖分を導管に溶かし、その浸透圧により水を一気に吸い上げることにより起きる現象です。
市販されているものの多くは、カナダ国旗にも使われるサトウカエデという種類から採ったもので、日本にある種類でも味は落ちますがシロップを採ることができます。日本産の種類だと、イタヤカエデやウリハダカエデなどがおいしいとされています。
イロハモミジの楽しみ方
紅葉を楽しむ
紅葉はイロハモミジの生理現象なので、手間をかけず自然に楽しむことができます。きれいに紅葉するには日照時間や気温などが影響していると言われていて、
①西日が当たらず日当たりのよい場所に植える
②肥料をあげすぎず、秋には肥料がきれるようにする
③夏は乾燥しないよう水をあげて、秋はやや乾燥気味にする
といったところに気を使うとよいです。
紅葉以外も楽しむ
イロハモミジは、花や実も楽しむことができます。春先に咲く赤い花はとても小さいですが、新緑の色と赤い色が対照的で、大きさに反してよく目立ちます。葉っぱと一緒に小さな花を見つけると、春が来た!とワクワクした気持ちになること間違いなし。夏~秋になる実も、高いところから落とすと竹とんぼのようにクルクル回って楽しいです。たくさん拾い集めて落としてみると圧巻の光景で、小さなお子様がいる家庭では絶対に盛り上がりますよ。
色々な品種を植えてみる
モミジやカエデの仲間は、古くから親しまれてきただけあってかなり多くの品種があり、明治時代ですでに200種類以上の品種が記録されています。葉っぱが細く切れ込むものに、春から紅葉しているもの、枝が赤くてきれいなものなど、かなりのバリエーションがあるので、好みのものを選んで植え比べてみるのもよいでしょう。
自家製メープルシロップ
市販のものには劣りますが、イロハモミジでもメープルシロップをつくることができます。芽吹く前の1~2月頃、幹に少し穴をあけて、ホースをつなげて樹液を採取し、煮詰めてつくります。多くの品種が植えてあるなら、それぞれ味を比べてみるのも楽しいですね。
イロハモミジの育て方と特徴の育て方・管理方法
植え付け・植え替え
比較的植え替えしやすい木です。紅葉が終わり落葉した11月頃から、芽吹く前の3月中旬頃までに行いましょう。細かい根をなるべく残しながら、水はけのよい土に植えるとよいです。
肥料
1~2月に寒肥と、6月頃に追肥を行います。6月の追肥が紅葉に影響し、このときに窒素質の肥料を多く与えるときれいに紅葉しないことがあります。秋までに肥料がきれるよう、少なめにあげるとよいでしょう。1~2月の寒肥は油かすや有機肥料を与えます。
剪定
放っておいても横に広がる美しい樹形となるので、あまり強剪定はせず、自然樹形を保つようにしましょう。内側の混みあった枝や徒長枝などを切るとよいです。大きさを抑えたい場合は、枝が細いうちにこまめに剪定しておきます。
また、剪定の時期も重要で、落葉期から1月中までには切っておくようにしましょう。モミジやカエデの仲間は冬の休眠があけるのが早く、2月頃には樹液が動き始めています。その時期に剪定してしまうと、傷口から大量に樹液が流れ出して美観を損ねてしまいます。
病害虫
病害虫は比較的多く、園芸品種の種類によって耐性が大きく異なります。病害虫の種類は多いですが適切に管理されていれば問題がないことが多いので、大きな剪定は時期を守って行う、風通しをよくするなどの対策をしっかりするようにしましょう。
虫害で特に問題となるのはゴマダラカミキリで、根元に幼虫が穿入し、大量に穿入されると枯れることもあります。ほかにもアブラムシ類、カイガラムシ類、イラガ類などが発生することがあります。
基本的には薬剤での対応になりますが、カミキリムシ類は根元から木屑が出ていないか、アブラムシ類なら新芽がしおれていないかなどをよく確認するのが大事です。アブラムシ類は新芽に集まるので、手の届くうちは枝先の剪定で対処できることもあります。ただ、カイガラムシ類の成虫は種類によっては堅い貝殻を持っており、その場合よく使われる有機リン系やネオニコチノイドなどの殺虫剤の効果がありません。マシン油剤を散布するか、直接ブラシなどでこそぎ落とすようにしましょう。
菌による病害では、葉に出るうどんこ病・黒紋病・小黒紋病、枝や幹に出る胴枯れ病、がんしゅ病などがあります。基本的には症状の出ている部分を除去して処分するといった対処で大丈夫です。再感染のもとになるので、除去した部分は必ず焼却処分するようにしてください。薬剤での対処法もありますが、治療というより予防になるので、罹病部の除去のあとに散布する補助的なものと考えましょう。木が弱ると病気の発生が多くなるので、あまりに病気や害虫が多い場合は周りの環境をよくみて、木が弱る原因がないか考えてみてください。
日当たり
乾燥や湿気にはそれぞれ比較的強く、地植えの場合は植え付け後活着するまでは水やりをして、それ以降は水やりの必要はありません。ただ、夏場に乾燥して葉焼けしてしまうと紅葉に影響がでることがあるので、あまり乾燥するようだったら少し水をあげるとよいです。
水やり
乾燥や湿気にはそれぞれ比較的強く、地植えの場合は植え付け後活着するまでは水やりをして、それ以降は水やりの必要はありません。ただ、夏場に乾燥して葉焼けしてしまうと紅葉に影響がでることがあるので、あまり乾燥するようだったら少し水をあげるとよいです。
出典(引用元)
「樹木医必携」
・日本緑化センター
「最新・樹木医の手引き 改訂4版」
・矢口行雄監修
「樹木医が教える緑化樹木事典―病気・虫害・管理のコツがすぐわかる! 」
・村越匡芳監修
「庭に植えたい樹木図鑑」
・岩谷美苗著
「散歩が楽しくなる樹の手帳」
愛知県稲沢市生まれ。稲沢市が「日本四大植木産地」であることもあり、幼少期から植木に囲まれて成長。
東京農業大学卒業後、名古屋市内の造園会社に就職。公園の整備工事から国交省事業の国道整備工事における土木及び街路樹等の植栽工事に現場代理人として携わる。