日本の水道水は、そのままでも飲める安全性の高い水です。そういう国は、世界でも十数カ国しかありません。

この安全な水道水を支えているのが、水道に関する工事を施工する専門工事業者です。

建設業許可が必要な専門工事業のうち、水道に関するものは3つあります。水道施設工事業、管工事業、土木一式工事業の3つです。

この記事では、それぞれの工事業で施工する水道に関する工事の種類と仕事内容について紹介します。

高杉 有希子
監修者 エクステリアプランナー 高杉 有希子

静岡県御殿場市の土建屋に生まれ、大型重機が大好きな子供時代を送る。
建築に憧れ、三重短大で住環境を学ぶ。新卒でハウスメーカーFC工務店の「インテリアプランナー」に応募するも、社長の勘違いで募集したかったのはなんと「エクステリアプランナー」!!
ハウスメーカーで個人住宅のエクステリアを担当。その後、ゼネコン住宅事業部のインテリアプランナー、植木屋の外構プランナーを経て、現在は(株)ガーデンメーカーで営業設計を務める。

執筆者 お庭の窓口(転職情報)編集部

お庭の窓口転職情報の編集部です。 社内の造園・外構のプロたちから助言をいただきつつ、皆様に有益な情報を提供できるように頑張ります。

目次

水道施設工事

工場上にパイプが渡る写真

水道施設工事は、上水道、工業用水などのための取水、浄水、配水などの施設を築造する工事又は公共下水道もしくは流域下水道の処理設備を設置する工事です。

農業用水、かんがい用排水施設などの建設工事は、後述する土木一式工事になります。

「水道」「工事」という文字が入ると、住宅やビルの上下水道の配管工事が思いつきますが、水道施設工事は浄水・配水場とか下水処理場に関わる工事なのです。

水道施設工事の具体的な工事としては、「取水施設工事」「浄水施設工事」「配水施設工事」「下水処理設備工事」があります。

取水施設工事

取水施設とは、河川の表流水、湖沼や貯水池の地表水を、導水管に引き入れるための施設です。地下水の取水には、一般的に井戸が設置されます。

表流水・地表水を取水する施設には、取水堰、取水塔、取水門、取水枠などがあり、取水施設工事は、これらを組み合わせて施工します。

取水堰河川に堰をつくり取水する形式で砂や異物を除去する沈砂池を併設する
取水塔大規模な取水に用いられ任意の水深から取水できるというメリットがある
取水門水位や取水量を調節するためのゲートで浮遊物の侵入防止も兼ねる
取水枠水源の底に設置する取水施設で開口部は木材やコンクリートで保護する

浄水施設工事

浄水施設工事は、河川や湖沼から取水した原水を、安全に利用することができるように浄水処理する浄水施設を築造する工事です。

浄水施設では、導水管の水を以下のようなフロー(流れ)で浄水処理します。

  1. 着水井にたどり着いた水は処理槽に送水される
  2. 水は薬品混和池で凝集剤と共に混和される
  3. フロック形成池で異物を固形化させる
  4. 次に沈殿池で大きくなったフロックを沈める
  5. その後ろ過池で小さな汚れが取り除かれる
  6. それから配水管で各配水池へ送水される

この配水池(配水場)の水が、水道水として利用されるのです。

工業用水などは一般的に原水を沈殿処理するだけですが、事業体ごとに、用途に合わせてろ過処理して使用します。

配水施設工事

配水施設工事は、浄水場でつくられた安全な水を、各家庭に送り届けるための配水施設を築造する工事です。

配水施設は、配水池、ポンプ場、配水管からなる施設で、水道水を適正な水量・水圧に調整します。

この調整の中枢となるのは、配水センターの「配水情報管理システム」です。

コンピューターを使った配水情報管理システムは、配水池の刻々と変化する水位や流量などの情報を収集・解析して、水道水が常に適正な状態で各家庭へ配水されるように管理しています。

配水センターは、24時間体制で、配水施設の効率性や安全性を監視しています。

下水処理設備工事

下水処理設備工事は、下水管で集められた汚水や雨水を処理して、河川や海に放流する設備を設置する工事です。

下水処理設備では、下水管で集められた下水を以下のようなフローで処理します。

  1. 処理設備に送られた下水は沈砂池で大きなゴミや砂を除去する
  2. 「最初沈殿池」でゆっくりと流れながら小さなゴミや砂が除去する
  3. 反応タンクで下水と活性汚泥を混ぜて汚れを微生物処理する
  4. 「最終沈殿池」で活性汚泥とともに汚れを沈め水と分離する
  5. 水を有機物や窒素・リンを取り除く高度処理をする
  6. 「最終沈殿池」の上澄み水を消毒して下水処理水として河川や海に放流する
  7. 沈殿した汚泥物は汚泥処理施設へ送られ有効利用される

以上のような設備を築造するのが、下水処理設備工事です。

管工事

一般住宅の配管周り工事

管工事とは、給排水や空調、冷暖房、ガスに関わる設備や、管を使用して水やガス、油、水蒸気などを送るための設備を設置するための工事です。

水道に関する工事のうち、管工事業に該当する工事は、家屋・施設の敷地内の配管工事や上水道の配水小管設置工事、し尿処理施設の浄化槽建設工事の3つになります。

家屋・施設の敷地内の配管工事

管工事業で施工する管工事は、家屋・施設の敷地内だけです。敷地内には、建築物の中も含まれます。

わかりやすく説明すると、水道メーターから水栓までの給水管や止水栓を担当するのが管工事です。公道下の配管については、後述する土木一式工事が担当します。

水道設備に関係する工事で混乱しやすいのが、管工事と給水装置工事の違いでしょう。

例えば、管工事施工管理技士は、給水だけでなく空調・衛生など管工事全体をカバーできる資格ですが、エコキュートの取付は給水装置工事主任技術者の資格がないとできません。

また、給水装置工事でも、請負金額が500万円を超えると建設業許可の関係で、管工事施工管理技士の資格者がいないとできないのです。

上水道の配水小管設置工事

配水小管とは、口径が350mm以下の管のことをいいます。ですから、上水道の配水管工事で、口径が350mm以下の場合は管工事ということになります。

配水小管設置工事で一番多いのが、公道下に埋設してある配水管から給水管を敷地内に引き込んで、家庭で水を使えるようにする工事です。また、老朽化した既存の水道管を耐震化装置のついた新しい管と取り換える工事も多いです。

どちらも沿道の家庭にきれいな水を供給する大切な仕事になります。

し尿処理施設の浄化槽建設工事

管工事業と他の工事業との関連性で紹介しておきたいのが、し尿処理施設の浄化槽建設工事についてです。

し尿処理施設工事の浄化槽又は合併処理浄化槽建設工事は、規模の大小を問わず、管工事業が施工します。

公共団体が設置する、汲取方式で収集されたし尿を処理する施設の建設工事は「清掃施設工事業」、下水道により収集された汚水を処理する施設は「水道施設工事業」の施工となります。

土木一式工事

地面を掘り返す工事の写真

土木一式工事は、総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を建設する工事と定義されています。

水道に関する工事で、土木一式工事に該当するのは、敷地外の下水道の配管工事、公道下の下水道の配管工事、下水処理場本体の敷地造成工事の3つです。

また、農業用水、かんがい用配水施設などの建設工事も土木一式工事に該当します。

それぞれの概要について紹介します。

敷地外の下水道の配管工事

上記の「敷地外」とは、どのような土地でしょうか。

下水道の配管は、「敷地内」でも「公道下」でもない土地に埋設されているケースがあります。公道に面しているが家屋や施設のない土地、水路沿いの土地、私道の下などです。

このようなケースの場合、敷地外の下水道の配管工事として、土木一式工事に該当します。

公道下の下水道の配管工事

「公道」とは、法律で定義された言葉ではなく、公衆の通行のために設けられた道という意味の通称です。幅広い意味で使用され、一般的になっている言葉です。

道路法上の道路には、高速自動車国道、一般国道、都道府県道、市町村道があります。道路法上で、道路以外の公道になるのは、農道や林道、河川管理用道路などです。

上記のような道路の下にある下水道の配管工事は、土木一式工事に該当することになります。

下水処理設備の敷地造成工事

下水処理設備本体の築造は水道施設工事になりますが、築造前の敷地の造成工事は、土木一式工事の該当になります。

下水処理設備は公共設備であり、規模も大きいため、土木一式工事の総合的な施工能力が必要なのです。

水道に関する工事 まとめ

蛇口から出る水でお皿洗い

水道に関する工事は、いくつかの建設業許可にまたがる工事となっています。

水道施設工事、管工事、土木一式工事それぞれに該当する、水道に関する工事の種類と仕事内容の概要について紹介しました。

水道は、私たちの生活の基盤となる重要な設備のため、水道に関する工事はなくなる心配のない安定した土木工事の一つであるといえます。

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